41.アビリティカード
「アビリティカード?」
「なーんか最近流通しててねぇ。得体が知れなさすぎて調査の必要が出てきちゃって。」
蒸し暑い6月。まとわりつくような湿り気が不愉快極まりないこの時期に、博麗霊夢はソレとは別の理由で眉をひそめていた。
「何故俺にその話を?」
「あんたの意見が聞いてみたくて。」
そう言うと、袖から一枚のカードを取り出した。
「これがそのアビリティカードなんだけど。」
宿儺はカードを受け取り、見定めた。どこか懐かしい気配がするが、それよりも術式構造だ。
「変な猫妖怪が持ってたのよ。」
「猫又か?」
「多分違う。」
猫又ではない猫妖怪もいるのか、と思いつつ、宿儺はカードを見定めた。スペルカードの派生の様なものだろうか。様々な考えが浮かぶ中、真っ先に目についたのは、その絵柄だ。
「この模様、お前を意味してるんじゃないのか?」
「そうなのよ。別に私こんなもの作ってないのよねぇ。」
通常、陰陽玉と言えば白と黒だ。それがこのカードでは紅と白になっている。この幻想郷においてこの組み合わせの意味するところといえばたった一つ__博麗の巫女だ。
「お前は知らないところで、異変に巻き込まれているということか。」
「だから解決したいのよね。」
「成程な。事情は把握した。」
「カードのことは何か解ったの?」
「術式構造の解析はこれからだ。」
「よろしくね、私にはわからないから。」
「お前は感覚派だからな。」
五条悟に近いタイプだ。博霊はぶっつけ本番で自爆技をやる手の人間だろう。
「博麗、一晩待てるか?」
「え、一晩も?まあいいけど・・・」
「助かる。」
興味が半分。もう半分は懐かしい気配を明確にしたい欲だ。
アビリティカードの解析のため、宿儺は部屋に籠った。
「宿儺はあーゆうとこあるから、一緒に住んでて楽なのよね。」
博麗霊夢はかれこれ半年以上、宿儺と一緒に住んでいる。饕餮に勝つ程の実力者と聞き、どれほどヤバい奴なのかを少し不安に思っていたが、蓋を開けてみれば分別のできる人間だったことは幸いだった。強いて欠点を上げるなら目が二組あり、体に謎の文様があるだけで、羽が生えていたり尻尾が生えていたりする存在を大勢見てきた霊夢にとっては、そんな事は欠点にもならなかった。そこらの妖怪よりも余程
「偶に食料も獲ってきてくれるし、能力で火も出してくれるしで、何かと助かるのよね。」
総評すると、霊夢は宿儺を気に入っている。周囲との関係を重視しない者同士、図らずとも波長が合ったのかもしれない。
「宿儺は籠もっちゃったし、私はお茶でも・・・」
「どーもどーも霊夢さん。毎度お馴染み、文々。新聞の射命丸です。」
そう言いながら凄まじい速度で降りてきたのは、天狗のブン屋の射命丸だ。騒がしい。
「あんた何しに来たのよ。」
「いえね、風の噂で耳にしまして。それの確認と取材ですよ。」
「噂?」
「何でも、アビリティカードを売っていた猫妖怪を退治したそうじゃないですか。」
「それがどうしたのよ。妖怪退治は巫女の仕事よ。」
「ええ、それは知ってますとも。私が聞きたいのはそこではなくてですね、
なんだかんだ半年以上経っています。空白の半年間の話はまた後々。
霊夢が宿儺と住むのに不安がっていたのは、自分の平穏な時間をぶち壊される事が嫌だったからで宿儺本人にビビっていたわけではないです。