「私が聞きたいのは、アビリティカードの売人を退治したという事実についてです」
普段通りの丁寧口調で、ネタが見つかった事に頬を緩める射命丸。
しかしその瞳は、ソレとは別の感情を秘めていた。
「退治したわ。それがどうしたのよ」
「__まさか、アビリティカードの売買についてのルールをご存知ないと?」
「知らないわよ。そのカードのこと知ったのもつい最近だし」
「は、はぁ」
悪びれもせずそのことを言う霊夢に、密かに抱いていた警告の念は打ち砕かれてしまった。
「で、なんかルールでもあるの?暴力じゃなくてお金でとは言われたけど」
「あやや、それを知ってるのならなぜ退治を?」
「妖怪は退治するものでしょ」
「ま、貴方はそういう人ですからね〜。・・・その台詞を含め記事にしても?」
「あら、こんなところに退治の対象が」
「おおこわい」
お祓い棒を取り出す霊夢に、笑いながら肩をすくめた射命丸。口では恐怖を訴えているが、そうは感じていないようだった。実際そうだが。
「では『アビリティカードの売人が妖怪だったから退治した』ということでいいんですか?」
「違うわよ。アビリティカードを持っていたから退治したの」
「あややや?」
「アビリティカードは危険だって判断して、渡せって言ったら拒否してきたから退治したのよ」
「な、なるほど」
呑気な顔でお茶を飲む少女から出る言葉とは思えないほどに苛烈で理不尽な言葉に、言葉を失ってしまう。
「騒がしいと思って来てみれば、天狗か」
そんな折に霊夢の後ろから、射命丸の失った言葉を強引に埋め合わせた男が出てきた。
「宿儺さんじゃないですか、居たんですね」
「カードはもう良いの?」
「ああ。術式構造自体はそう大したものではなかったからな」
宿儺はアビリティカードを霊夢に返した。アビリティカードに刻まれていた式は二種類。一方はもう一方の力を制御&コントロールするためのもので、特別複雑なものではなかった。そのもう一方の力も、■■■■■を加工した産物だったため、敵自身の力はあまり期待できない。
「で、なんか敵のヒントは掴めたりした?」
「おや、そういうことならぜひ私にも聞かせてください」
「・・・特には掴めなかった」
「なあんだ。やっぱり勘に頼った方がいいのね。待って損したわ」
「そもそも術式だけで個人ないし種族の特定はほぼ不可能だ。俺の知っている術者の術式であれば話は別だが、そんな事はそうある話ではないだろう」
「あんたなら出来るって思ってたのに。まあいいわ、調査に行ってくる」
「俺とてそこまで万能ではない。それと、調査に行くならこれを持っていけ」
そういって渡したのは、鏡の描かれたカードだ。
「なにこれ」
「俺特製のアビリティカードだ。3度までなら、被弾しても復活できるぞ」
「へえ、便利な効果ね」
「売るなよ?」
「売らないわよ・・・多分」
「おい」
「『遂に巫女が巷で話題のアビリティカードの調査に赴く!』次の見出しはこれで決まりね!」
天狗は天狗でネタが見つかって楽しそうだ。恐らくこのまま密着取材でもするのだろう。
「__博麗、前言は撤回する。一晩待ってもらう必要は無くなった。好きにしろ」
「言われなくても、好きにするわよ」
「それと天狗、お前は残れ。少し話がある」
「あや、私はこれから異変解決に同行してネタを確保するんですが」
「お前の速度であれば間に合う程度のものだ。付き合え」
「…仕方ありませんね、わかりました」
「夕飯は適当に食べて」
「山菜でも狩るとしよう」
渋ってはいたが天狗を納得させ、博麗霊夢は異変解決へと赴いた。
「──で、話ってなんですか?つまらない話であれば、ただでは済ましませんが」
「お前だけで何ができる__と言いたいが、新聞の影響力は馬鹿にできんからな」
この半年間、宿儺なりに幻想郷に馴染みを覚えてきたつもりだ。その中で、新聞が社会に与える影響というのは大きい。どうでもいい話であれば流されるが、興味深い内容はすぐに広がる。特に失態のスクープなどは特に伝わりやすい。更に眼の前の天狗_射命丸文は、天狗の中でも人里に近い記事を書く『文々。新聞』の発行者だ。そんな新聞に自らに不利な情報を載せられようものなら、宿儺はともかく博麗霊夢に悪影響が出る。人里への買い出しも困難になるだろう。
「まあ安心しろ。わざわざ残した以上、損はさせないつもりだ」
「勿体ぶらずに本題にどうぞ」
「・・・伊弉諾物質、というものを知っているか?」
宿儺もちょいちょい買い出しに行きます。というか行かされます。