「よかった、雨が止んで。これで調査が捗るわ。」
勘の導くままに妖怪の山に来た霊夢。突然の雨に服が濡れてしまったが、別にいいだろう。
それよりも、かなり山奥に来てしまったことの方が問題だ。
「こんな山奥、何が潜んでいるのか判ったもんじゃ無いわ。」
今はひとまず、アビリティカードの売人を見つけて、少しでも情報を手に入れたいところだが…
「本当にこんな所に売人がいるのかなぁ」
やや諦めの色を見せていた。その時、
「おー、よく見たら博麗の巫女だー」
風景の緑が動き、声をかけてきた。
「こんな僻地に珍しいね」
「あんたは河童…じゃないわ。山童ね。」
確か山童とは、陸上生活に適応した河童のことだった筈だ。前に色々あって玄武の沢から河童が立ち退かなければならなくなり、普段の水辺の生活圏からその上流である山へと入っていった事がある。その際に立ち退いた河童は一時的に山童として、山で生活していた。そのまま山で生活している河童もいたというのか。もしそうだとしたら__
「この辺りに、あんたたち山童の住処があるのかしら?」
「そうさ、読みの通りこの崖は我々、山童のアジトだ。人間の来ていい場所じゃない。さっさと帰った帰った。」
普段なら潰していくところだが、今はアビリティカードの調査のほうが優先だ。ここは先を急ぐとしよう。そうして目線を少しずらすと、たまたま山童の手元のものが目に入った。
「待って、貴方の手に持っているのはアビリティカードでしょ?」
「カード、か……やはりそれを嗅ぎつけてきたか。」
そう言うと、山童は目の色を変えた。それは山の獣の様な、獰猛な目__
「騒ぎが大きくなる前に始末しないとなあ!」
「伊弉諾物質、か・・・」
虹を肴に酒を呑む宿儺だったが、その目は虹ではなく、白色の勾玉を見ていた。宿儺の3つの術式
の一角である”十種神宝”。その宝の一つである、道反玉だ。その力は通常の錬成術では考えられないほどに強力で、アビリティカードの比ではない。そもそも道反玉を含めた四つの勾玉は、一柱の神の最高傑作なのだ。ろくな錬成もせずに殆どそのまま伊弉諾物質が使われているようなアビリティカードのとはわけが違う。
「史上初の純度100%勾玉…それを四に分割したものだったな。」
伝承に乗せるためには仕方なかったとはいえ、四分割の話をした時は制作者には嫌な顔をされた。
「クハッ」
その顔を思い出して、笑みが溢れてしまった。
「強すぎる……だが、残念だったな」
威勢の良さは何だったのか、全くと言っていいほど強くはなかった。むしろ弱い。
「何が残念なのよ。」
「暴力ではカードは奪えない。そう決められているんだ。」
「あー、判った判った。なんでそんなルールがあるのか判らないけど、買うから。その代わりに知ってる情報を教えて貰うわよ!」
「あら、お客さんだというのなら話は別だわ!」
さっきまでの高圧的な態度はどこへやら。現金なものだ。
「情報といえば、カードの売買にはもう一つルールがあるの。」
まあ情報が手に入るのなら何でもいいが。
「一回につき購入は一枚だけなの。破ると恐ろしいことになるらしいよ。」
「・・・貴重な情報をありがとう。」
「さあどうぞ!どれも全て貴重な品よー」
「騒がしい……失せな!煙草の味が濁る。」
宿儺は鏡越しに妖怪の吸う煙草を見つめていた。
人里では見かけたことがなかったが、妖怪の中では流通しているのか。外の世界のものはあまり好ましい匂いではなかったが、幻想郷ならばいい香が期待できそうだ。
「流石にこの距離では、匂いが届かんか。」
博麗霊夢に預けたカード、それは鏡をベースとしたアビリティカード
「おお、第二戦か。」
酒を片手に、博麗霊夢の様子を見る。肴が消えた今の宿儺には、これが新たな肴だった。鏡を仕込んでおいてよかったと思う。
「あの妖怪の後ろの洞窟…妙な気配がするな。」
こんな怪しげなものを博麗霊夢が放って置く訳が無い。
それが、半年間博麗霊夢とともに過ごした宿儺の出した答えだった。
「__見せてくれ、博麗霊夢。俺の抱いた妙念の答えを!」
一つの勾玉を4つに分割することで、通常一つの勾玉につき一つしかもたせられない模倣物を4つまで模倣できるようになります。更に、元を辿れば一つの勾玉なので、一つの術式をそれぞれの勾玉に分割して持たせ、空いたリソースには別の術式を入れる、なんてこともできます。