東方宿儺譚    作:雅之幻想

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前回の更新からもう一月...ちと時間が空き過ぎました。


46.酸欠

神宝

神の時代に作られた、神々のための飾り物。刀剣・勾玉・鏡など、その形状は多岐に亘る。

その本質は、神々が宿る依代であるという点。この点だけであれば、別に特別なものである必要はない。付喪神然り、日常のあらゆる物に神は宿るからだ。では何故、刀剣や勾玉である必要があるのか。込められた意味・成せる役割は二の次三の次__単純に、見た目が良いからである。

刀剣や勾玉のようなものは、それだけで信仰を集めやすい。姿形が美しいものであれば尚更だ。信仰心を集めるために、見た目を重視する。故に神宝には刀剣や勾玉が用いられる事が多いのだ。

──玉造魅須丸は、そんな勾玉を加工する神であった。

 


 

「玉符『陰陽神玉』」

 

円状に放たれた無数の陰陽玉が、狭い洞窟の壁に跳ね返って複雑な軌道を構成している。しかし霊夢は交錯する陰陽玉の隙間を舞うように避け、魅須丸にショットを打ち込んでいく。

 

「──詰まりましたね。」

 

そんな幻聴が聞こえた気がした刹那、現実が来る。

パターンを見誤り、迫りくる玉壁に詰められた。

 

「―ッ!夢符『封魔陣』!」

 

詰みからの回避を試み、スペルカードを宣言。霊夢を中心に、玉をかき消す領域が広がっていく。

詰みの盤面を無敵で回避し、次の攻撃の心構えをしておく。

 

「女王珠『虹の扉の向こうに』」

 

放たれた巨大な陰陽玉。通った跡には小さな陰陽玉が張られ、動き出した。

──先刻、迫りくる玉壁に詰められたと言った。あの程度を壁と評するならば、眼前の光景をなんと表すのか。現代人であれば津波とでも評するだろうが、霊夢には適当な言葉の持ち合わせがなかった。故に、

 

「────」

 

黙って、波のように迫る陰陽玉を回避する。時折できる小さな隙間に体を滑り込ませ、挟まれれば抵抗なく砕ける様な攻撃を避けていく。恐怖に怯えていてもおかしくない瞳に、ただ目の前の弾幕を映し、脳へと指示を送っている。__少しの疲れを除けば、無駄な感情は一切ない。

 

「あとがあるんだもの ハアハア こわいわけないでしょ。」

 

とはいえ、後に頼るようなことはしない。宿儺から貰ったカードはあくまでも保険。故にここは回避し切る。その決意で妙に動かない肉体を強引に動かし、描いた未来を現実のものとする。

 

「…流石は陰陽玉の継承者ですね。」

 

女王珠を避け切り、息の上がった霊夢を見る玉造。

その目には、微かに悲哀の感情が浮かんでいた。

 

「これで最後です。『陰陽サフォケイション』」

 

無造作に放たれる大陰玉と、回転をかけながら放たれる円環状の小陰陽玉。最初のスペルと違い大きいほうが無造作な分、完全なパターン作りは不可能。気合で避けるしかない。だが__

 

なん、か…おもうように、うごけ…」

 

酸欠の症状の出てきた霊夢には、パターン作りも気合避けも無理だった。

そしてその症状には、視界の狭窄も含まれていた。

 

────ぁ

 

故に、横からやってきた陰陽玉に気が付けなかった。

本来の霊夢であれば、この距離でも回避は容易だった。しかし今の霊夢には、回避行動を取る体力が残されていない。あるのは、己の命を守る為の必要最低限のものだけ。

その、最低限すら刈り取らんと陰陽玉が迫り__

 

「──頃合いだな。」

 

薄れゆく意識の中、それだけは鮮明に聞こえた気がした。

 

直後、美しい切断面を見せて陰陽玉が割れた。

触れれば、その滑らかさに鳥肌が立つであろうほどの切断面。

その切断者は__

 

…宿儺、ですか。

 

そろそろ、俺の勾玉の点検をしてもらおうと思ってな。

 

──博麗霊夢の記憶は、ここで途切れた。




〜オマケ〜
魅須丸の専門は勾玉や陰陽玉で、神々から依頼を受けて特注のものを作っています。
彼女以外にも勾玉制作者はいますが、彼女ほど腕の立つ者はいません。
刀剣や鏡の神も居てほしいところ。
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