東方宿儺譚    作:雅之幻想

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前半は回想、後半は霊夢パートです。


47.対価

「──貴方ですか」

 

「そろそろ、俺の勾玉の完成が近いだろうと思ってな」

 

無理難題の注文をつけた”それ”は、そう言いながら工房へと入ってきた。

 

「まだ終わっていませんよ。私としても初の試みですから慎重に…」

 

「勘違いするな。俺は『完成した』とは言っていない。『完成が近い』と言ったのだ」

 

もはや屁理屈だ。とはいえ顧客を無下に扱う訳にはいかない。最近は同業者がやたらと増えて仕事もなかったので尚更だ。

 

「…では、何の為に?」

 

「進捗だけ見にな。ある程度でも中身の構造が分かっていれば、何処かで役立つかもしれん」

 

「メカメカしい要素があったりはしませんよ。違うのはサイズと素材…サイズは小さくなりますし素材はかさ増しがなくなって純度100%になっただけです。あとは普通の勾玉と変わりませんよ」

 

通常、勾玉というのは龍珠と普通の鉱物の二種類を素材としている。普通の鉱物を混ぜることで加工や量産を容易にする為だ。ただし、普通の鉱物では耐久に限界が生じる。幾度も神の力に晒されれば普通の鉱物は耐えきれずに壊れてしまう。だが玉造部としては、寧ろそれで良いのだ。壊れれば、再度勾玉制作の注文が来る。神としての格を保つには、定期的に壊れる方が都合が良いのだ。

 

「だがその純度100%のお陰で壊れることは無いんだろう?」

 

「経年劣化や神格に耐えきれずに壊れる、といったことはありません」

 

勿論通常の衝撃への耐久性も普通にあるが、特筆すべきはやはり神格への耐久性、というよりかは耐久性など気にする必要がなくなる点だろう。普通の鉱物を使用する為に生じる「力に耐えられない」という問題は、同じく神の力を有する伊弉諾物質のみを使用すれば起こることはない。こと龍珠に関しては、元々の性質も相まって勾玉作りに非常に向いている。

 

「とはいえ、物理的な汚れや外傷に関しては手入れが必要です」

 

「気をつけるとしよう。とはいえ、お前も偶には点検をしてくれるのだろう?」

 

「依頼としてなら受けます。タダ働きは御免ですよ」

 

「相応の対価は用意しよう…そう云えば、お前は今回なにを対価として望むんだ?」

 

「ああ、決めてませんでしたね」

 

玉造部のプライドを四つ折りにしただけの対価は、勾玉の可能性の拡張で十分だと思っていた。

だが宿儺はそれを必要経費として、報酬には組み込んでいないらしい。

 

「では一つ。──今後一度だけ、私の命令を聞くこと。今回はそれを対価とします」

 


 

もしもし、霊夢さーん、もしもーし

 

 

誰かが呼んでいる。遠いようで近い。…遠いのは自分の意識の方だろう。だから自分で、意識を取りに行く。そうして自分と意識の距離を縮めたら、あとは物理的な距離を認識するだけ。その為に重い瞼を動かして、目を開ける。

 

 

「あ、霊夢さん。起きましたか」

 

「さ...なえ...?」

 

「ええ、早苗です。守矢神社の巫女の東風谷早苗ですよ」

 

視界がぼやけてよく見えないが、声は間違いなく早苗のものだった。

 

「なんであんたがここに…」

 

「調s…散策していたら霊夢さんが洞窟の前で倒れてたんです。本当にびっくりしましたよ〜」

 

「隠しきれてないわよ。あんたも異変の調査でしょ」

 

「エヘヘ…って、異変?ですか?私が調べているのはアビリティカードですが…」

 

「それが異変よ」

 

「あー・・・そういう感じですか」

 

察してくれたらしい。

 

「あーあ、同業者が増えるのは困るわねぇ」

 

「旅は道連れって言いますし、一緒に行きませんか?」

 

「当てでもあるの?」

 

「ええ。実は今日、山の頂上で市場が開かれるという話を聞きまして」

 

「洞窟じゃなかったのね。空振りだったわー」

 

いつもの勘が珍しく外れた。悔しいところだが、あの洞窟にいた奴は本当のことを言っていたということだろう。結局息が詰まって戻ってしまった訳だが__

 

「…あれ?私、どうやって外に出たんだろう?」

 

「自分で出てきたんじゃないんですか?」

 

「あんたが出してくれたって線は消えたわね」

 

そもそもあれ(魅須丸)は、「酸素が無いと死ぬ」と言っていた。ならばなぜ、自分は無事なのだろうか。

 

「──宿儺の、あのカード」

 

思い当たる節。それを思ったときには既に、霊夢の勘は働いていた。

勢いよくカードを取り出し、その描かれた模様を見た。

 

「__色が薄くなってる?」

 

やはりこのカードのおかげだった。そう思い、宿儺に少し感謝の念を抱いた。

 

「霊夢さん?」

 

「何でもないわ。さ、行きましょう。道案内はあんたに任せるわ」

 

そう言って紅白の巫女と、緑白の巫女は飛んでいってしまった。。

夕暮れとなって影を落としていた洞窟は、夕日に照らされた二人の並ぶ姿を見ていた。

 

 

 

 

 

──ところで、博麗霊夢の勘は本当に外れていたのだろうか。

 

──断じて、否。

 

それは後に玉造魅須丸・宿儺の二人が証明することとなる。




天弓千亦の方のルートは、この後は原作の通りに進みます。
なのので、霊夢&早苗の連携弾幕話を書くことはありません。
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