東方宿儺譚    作:雅之幻想

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霊夢が目を覚ましたのは気を失ってから15分程経った頃です。


48.盗掘者

 鏡の中から大の男が出てくる光景というのは、中々にシュールなものだった。

 

「待たせたな」

 

「その鏡、随分と便利ですね」

 

「目視できる範囲か半径100mのどちらかを満たしていれば、好きな場所に配置可能だ」

 

「いま出てきた場所はどちらも満たしていない気がしますが」

 

「元々出しているものについては、俺が解除しない限り存在し続ける。勾玉を含めな」

 

 外から見たら暗い虹龍洞の中は、最初の方こそ本当に暗いが、奥に行けば行くほどに龍珠が輝きを放つようになる。正確には出る魔力に反応して光っているのだが、細かいことは別にいい。

 

「そんなことよりもお前の用事だ。俺を巻き込んだとなれば、それ相応の事情だとは察するが」

 

「ええ、そうです。こと今回に関しては、中々に厄介な事が起きました」

 

「勿体ぶるな。本題に入れ」

 

「貴方には、この虹龍洞に現れた蜈蚣(ムカデ)を退治していただきたいのです」

 

「百足だと?」

 

「ええ。但し、龍珠を喰らい強大な力を身に宿している蜈蚣です」

 

「……その蜈蚣を倒せ、と」

 

「醜悪なフォルムと不快な毒故に、何かと嫌われる蜈蚣の妖怪。その負の力が龍珠によって私でも手が付けられなくなるほど増幅されています」

 

「姉k……天照大神にも認められたお前がそこまで言うとなると、相当な力だろうな」

 

「怖気づきましたか?」

 

「いいや。寧ろ面白味が増した」

 

「……やり方はお任せします。ですが条件を一つ。この虹龍洞が崩落してしまうようなことはやめて下さい」

 

「どうせ俺は契約のせいで逆らえんからな。従うしかあるまい」

 

 存在を滅するような命令は聞かないような契約だったが、もう少し条件を縛るべきだったと、宿儺は過去の自分を恨んでいた。しかし、百足の強さを想像することで不快感を中和し、水鏡のような平たさを保ち続けていた。

 

 ──その水鏡は、眼前の少女の放つ負のオーラによって大きく波立ってしまった。


「__あれか」

 

「ええ、あれです」

 

 呪力とも穢れともまた異なる(マイナス)の力。

 恐らく龍珠の力によって、新たな力の形となったのだろう。

 

「誰だおめーらは」

 

 ガラの悪い中学生の様な口調に対し、一歩出たのは魅須丸だった。

 

「私は玉造魅須丸。龍珠の正当な所有者です」

 

「みすまる、だと?典が言っていた盗掘者って奴か?」

 

「盗掘者とは皮肉ね。妖怪の山を掘りまくって伊弉諾物質を盗み出しているのは、お前たち大百足率いる妖怪集団じゃないか」

 

 若干素が出たが、今はそんなことを気にしている場合ではない。

 

「……こえてますか?」

 

「今度は誰だ!盗賊者どもめ、大勢で来やがったな!」

 

 突然、大百足妖怪の方から声がした。だが、声の主はどこにも居ない。

 

「百々世どの、賊ではありません。典でございます」

 

 声の主は狐の描かれたカードだった。恐らくはアビリティカードだろう。宿儺のやつと似たような能力でも乗せているのか。

 

「そちらにカラフルな魅須丸って奴がいると思いますが、それが私の言っていた盗掘者です」

 

「もう一人よくわからんのがいるんだが」

 

「ここの龍珠を根こそぎ奪うための仲間でしょう」

 

「……そういうことですか」

 

 あの耳元で囁くような仕草とカードに描かれた狐から推測するに、あれは菅狐だ。

 先の話に出てきた典という者こそ、そのカードのオリジナルなのだろう。

 

「このままでは虹龍洞は封鎖せざるを得なくなります。こちらにも足止めとして二人来ました」

 

「……博麗は目が覚めたようだな。もう一人は……魔理沙辺りだろう」

 

 事態を静観していた宿儺がようやく口を開いた。彼の心中で何が渦巻いているのかは知ったところではないが、戦闘となったら契約の履行が優先される。問題はないだろう。

 

「しかし飯綱丸様はまだこのことを知りません。一旦飯綱丸様に報告しますので、判断を仰いで貰いましょう」

 

「……ふっふっふ、待て」

 

「百々世どの?」

 

「こっちに賊がいるってこと、飯綱丸はまだ知らないんだな?」

 

「……ええ」

 

「大暴れ出来るチャンスじゃないか」

 

 笑いながらそう言う百足を見て、説得は無理だと確信できた。やはり宿儺を連れてきたのは正解だったと思いながら、そちらをチラと見ると、宿儺も宿儺で愉しそうな笑みを浮かべていた。

 

「盗掘者相手に天狗の判断など不要!現場判断で十分だ!この場で叩きのめしてやろう!」

 

「…玉造」

 

「…」

 

「良いな」

 

宿儺が一歩、二歩と歩を進め、笑みを浮かべながら横を抜けていった。

──訂正しよう。あれを笑みと呼ぶのは可愛げがありすぎる。頬を歪めたと、そう訂正すべきだ。

 

「魅須丸とやらは戦わないのか?」

 

「そういう契約でな」

 

「そうか。なら、お前の準備はもういいか?卑怯な盗掘者!」

 

「軽く、ウォーミングアップ位は」

 

そう言って、宿儺はその場で跳ねたり伸びたりし始めた。

 

「何をしても許される敵を探していたんだ」

 

「よし、と」

 

「喜び震えよ!山がお前の墓標だ!」




 典の種族は菅狐ということで、カードは雌雄一対をイメージした分身体の様なものにしました。
 尚、百々世と話している最中、典は飯綱丸の所へ急いでいますが、霊夢たちはまだ飯綱丸に会う一歩手前くらいのイメージです。
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