護りながら戦う、というのは実に大変だ。
相手だけではなく護る対象にも気を配らなければならない。単純に疲れる。
その上、護る対象は自分の思うようには動かない。
故に衝撃の余波や剣先、拳の降ろしどころにも細心の注意を払わなければならない。
護る対象が、動かない無機物ともなれば尚更だ。
「シッ──!」
実に十八合に及ぶ切り合いは、両者の力の差の薄さを示すには十分な証拠を提示している。
それぞれの得物がかち合う度に、戦いの熱気は増し、互いのボルテージが上がっていく。
「中々やるな」
「そっちもな!」
此方の得物は、伝説級の武器である神剣『八握剣』。草薙の剣や天羽々斬と同列に語ることの出来る数少ない神剣の一つだ。神剣は原料の希少性も相まって、月の都にすら二振りしか存在しない
しかし相対する百足が手にするシャベルとツルハシは、龍珠によって増幅されたであろう出鱈目な出力によって、神剣『八握剣』との切り合いを可能にするほどに強化されていた。
そして出鱈目に強化されているのは、何も装備品だけではない。
「オラァッッ!」
「──ぐ、っ」
見た目の年相応の細さをした少女の足から放たれた蹴りは、見た目と相反する力を秘めている。
百足の名の如く、百の蹴りを同時に受けたような威力。それが胴に直撃し、呻き声が漏れた。
少しばかり顔を顰めつつも、次なる切り合いへの対処へと思考を切り替える。
その様な競り合いが三度続き、計五十三合を終えた時、違和を感じたのは百足の方だった。
「おめー、さては手加減してるな?」
「手加減? 何の話だ」
「とぼけやがって。こんだけ切り合えば分かんだよ」
「流石にそれには気が付くか」
「六十近い攻撃してんのに、全然状況が動かねーんだ。違和感覚えるに決まってんだろ」
実際当たりだ。宿儺は手加減している。一応手加減の中でもかなり本気だが、仮にこれが本気の本気であったとしたら、三合あれば決着には事足りていた。
「何が狙いだ? まさか俺を舐めてるってことじゃないだろうな」
「──折角の機会なんでな。慣らし運転に付き合って貰おう」
そう言いながら剣を地に刺し、羽織りを脱ぎ捨てる。
そして勾玉を
「──
刹那、脱ぎ捨てられていた羽織が勾玉を目掛けて飛び出し、そのまま覆ってしまったかと思えば二、三脈を打つような仕草を見せ、
「───一ッッ!」
一瞬のうちに、百足の左腕を噛み千切った。
群馬の日光市には、大百足に変身した赤城山の神と、蛇になった二荒山の神の争いの伝説がある。この戦いは、奥州の熱借山の猿麻呂に加勢を頼んだ蛇の側に軍配が上がった。
これとは別に、近江国で藤原秀郷がやはり蛇神に頼まれて大百足を退治する話がある。
百足というのは蛇に勝てない運命にある。
尤も、宿儺はその伝説を知らない。姫虫百々世も同様に、この伝説のことを知らない。
ーーだが、姫虫百々世の本能は、『龍喰らい』の魂は、蛇への恨みを憶えている。
故に、その口から出た言葉は文字通り、魂の叫びだった。
「イヤミか貴様ッッ」
前に作ったやつとか見てるとまだ未熟だったなって思うけど、今書いてるやつもいつかそう思われるんだろうなぁ。