東方宿儺譚    作:雅之幻想

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宿儺と魅須丸だと魅須丸の方が500年ほど年上です。神様的には割と誤差。



51.終わり

「これで終わり、ということで?」

 

「封じ込めただけで生きてはいるがな」

 

 蛇と同じ模様の描かれたキューブを拾い、術式が正常に動いていることを確認。百足の妖怪(戦闘中は気に留めなかったが、確か百々世)の封印は完了した。

 自分の中では不本意な決着だったが、仮に戦闘を続けていた場合、未調整の大蛇(オロチ)では太刀打ちが出来ないほど成長し、戦いの余波で洞窟の崩壊を招いたかもしれなかった。というかあの時点で既に大蛇(オロチ)相手に善戦していた。やはりこれで良い。

 

「その様なやり口があるのなら最初からやればよかったのでは?」

 

「これは俺の趣味だな。才ある者を導くのは殊の外楽しい」

 

「まあ、気持ちは分かりますが」

 

 霧雨然り博麗然り、幻想郷には才能がある者が多い。それらを導き、才能を活かせる様になれば退屈紛れになる。尤も、前者はこの世界の魔法体系に興味が、後者は教えると逆に強みを潰すことになりそうなので、どちらもまだ見守るに留まっている。

 

「ところで魅須丸、今何時だ」

 

「出る頃には朝でしょう。私の住処で一息ついていきますか?」

 

「いや、博麗の朝食を作ってやらねばならん。どうせ異変の後で疲れているだろうしな」

 

 それに、酸欠による身体への負担も無視できないはずだ。

 

「それよりもこいつの処遇だ」

 

「ずっと封じ込めておけば良いのでは?」

 

「俺の御厨子が持ち腐れる。却下だ」

 

 それに羽織も一枚使えなくなる。不便だ

 

「処遇に関しては博麗と相談だな。どうせ宴会で首謀者勢揃いとなるだろう」

 

「では私も、それに参するとしましょう」

 

 もうこれ以上処遇について考えても仕方が無い。そもそも百足を封じ、外に持っていけばそれで契約は終了するのだ。深入りする理由がない。

 

「いや、処分となったら折角の代物が台無しだな」

 

「蜈蚣も蜈蚣であの狐に唆されていたようなので、そこまで悪いようにはしませんよ」

 

「なら良い」

 

 懸念も消え、今回の件が他人事になった。個人的には百足さえ生きていればあとはどうでもいい。

 

「宴会か……。酒やら食材やらを準備せねばな」

 

 宴会は、終わりの証。一つの異変が、終わりを告げる。

 異変とは、退屈な日常に差し込まれるイレギュラー。時々のモノだからこそ、面白い。

 

 初の異変を、宿儺はそう評した。

 

 暗がりの洞窟の中で、虹だけが異変の終わりを祝福していた。

 

 


 

 変化の薄いこの地では、天気の変化はほぼ無い。雨も雪も降らないし、虹も架かることがない。

 窓から外を眺めながら、不意にそんなことを思った。

 

「……」

 

 丸型の窓からは、病的なまでに綺麗に並べられた町並みを見ることができた。悲しいかな、この景色が雨でかき消されたことはない。この窓から外を見るということは、病を眺めるということだ。

 

「……でも」

 

 それでも、眺めてしまう。

 あの人の所為(せい)だ。

 

「__失礼します」

 

 一人の兵が入ってきた。こちらの返事はまだだが、下手に言を紡げないこの力を考えると正しい判断だ。

 

「そろそろ時間です。大広間へお願いします」

 

 ()から目を背け、兵士と目を合わせる。

 直に兵士は後ろを向き、自分に付いてこいと言わんばかりに部屋を出ていった。

 喋れない自分が評議に出る意味は果たしてあるのだろうか。

 そんな疑問をよそに、黙って兵士に付いて行く。

 

 ──稀神サグメは、自分が月の都の運命を動かす歯車になるとは、この時はまだ知らなかった。




虹龍洞編 完!
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