「……おお」
この幻想郷の中では、宿儺の背丈はかなり高い方だ。今まで会った中で自分の背丈を超えていたのは星熊勇儀のみ。時点で宿儺、八意永琳が同じくらいの丈だ。
そんな宿儺の背丈をゆうに超える棚高、恐らく7mはあるであろうそれには、一番上の段までぎっしりと本が入っている。
部屋の奥に申し訳程度の明かりは見えるが、その殆どを本棚が遮ってしまっている。
「パチュリー様はいらっしゃるようですね」
「この本棚の全てが魔導書なのか?」
「ここの本に関しては私の管轄外ですので、あまり詳しいことは分かりませんが、このような本棚があと数十列はありますので、飽くことはないでしょう」
一体どれだけの本を集めたのか。その努力と執念は想像に難くない。或いは海外ではこれが普通なのだろうか。
「一冊や二冊持っていこうと、バレることは無さそうだな」
「──パチュリー様は本の種類や冊数、位置などを正確に記憶しておいでです。泥棒が入ってもすぐに気づかれますよ」
唐突、闇の中から声がした。気配で誰かが来ていることは察していたため驚くことはなかったが。
「貴方が宿儺様ですね? お待ちしておりました」
「待っていた? 俺をか?」
「咲夜さんがフランドール様の相手に選んだ相手ですので、パチュリー様が珍しく興味を示されまして。明日にでも会っていただこうかと思っていました」
「ほう……して、お前は?」
「申し遅れました。パチュリー様の使い魔の小悪魔です」
種族名なのか、そういう名なのか。別段興味がある訳では無いので触れはしない。
「それじゃあ小悪魔、あとは任せてもいい?」
「はい、咲夜さん」
小悪魔に役割を託し、咲夜は消えてしまった。超スピードだとか、瞬きをしてしまっただとか、そんなちゃっちいモノではない。比喩でも何でもなく、本当に消えたのだ。
「分からんな……」
「それでは宿儺様、パチュリー様のところへ案内致します」
「ああ」
疑念を余所に置き、素直についていくことにした。
薄暗い通路だが、足元やすぐ近くの本棚に置かれた本の背表紙くらいなら辛うじて見える。洋語で書かれているので内容はさっぱりだが。
「それにしても暗いな。照明はないのか?」
「パチュリー様曰く、自分の手元以外で魔法書を読むことがないので置いても意味がない、だそうです。魔導書の位置も把握してらっしゃるので、視覚に頼らずとも欲しい本は見つけられる、と」
「お前の方は不便ではないのか?」
「私も本の”声”を聞いて場所を特定しますから、問題にはなりませんね」
”声”というワードに引っかかりを覚えたが、まあそういう能力なのだろう。穢れの量で寿命を見るのと似たようなものか。
「曲がります」
右へ曲がる、真っ直ぐ
「曲がります」
左へ曲がる、再び真っ直ぐ
「迷路かここは」
「古今東西、様々な魔導書が種類ごとに置かれています。種類分けをしたらこれが最適な配置だったんですよ」
「それと引き換えに、本棚の配置の適当性は失ったわけだ」
「ちなみにここは火系の書棚ですね」
「火か……」
ふと、手を伸ばせば難なく届くところにあった本をなんとなしに手に取ってみた。背表紙にも表紙にも何も書いていない、いかにもな感じの本だ。
そしてまた、なんとなしに本を開く。やはり字は洋語で読めない。何が書いてあるかさっぱりだ。だが不思議なことに、書いてある言葉は理解できずとも、そこに書かれているであろう術式の形がなんとなくだが理解ができた。
「宿儺様?」
魔
「それはエシディ・アドゥールの火熱技法論ですね。パチュリー様曰く、かなりの技術を要する一冊なはずですが……」
「術式はなんとなく理解した……こんな感じだな」
試しに術を発動させてみる。すると、掌に火の玉が一つできた。
「……これがかなり技術を要する代物か?」
「パチュリー様が使っているところを見たことがないのでなんとも……」
そう思った瞬間だった
「きゃあっ!」
掌の火の玉が紐状になり、小悪魔を縛り上げた。
「あ、熱い! 熱いです! 早く解いてくださいー!」
「これが火熱技法か。なるほど、確かに面白い」
この術を開拓すれば、紐状の炎をコントロールして攻撃、なんてこともできるだろう。
前言撤回、拡張には十分使えそうだ。
そんなことを考えていると──
「ベリーインレイク」
突如上から水が降り、小悪魔を縛り上げていた
「図書館では火気厳禁よ」
上から降りて来たのは、髪色・服・雰囲気が紫の少女だった。背丈は小悪魔よりも小さい位か。
尤も、彼女が誰であるかは、その魔力を見れば検討が十分につく。
「お前が、パチュリー・ノーレッジか」
「貴方が宿儺……成程、レミィが期待するのも分かるわ」
1年間、感想、届いていません!作者の腕が悪いせいだな!