「これ、貴方がやったの?」
服だった布の切れ端……もとい焼け端を押さえ、涙目でこちらを睨む小悪魔を指さしながら、パチュリー・ノーレッジはそう訪ねた。
「故意ではなかった。如何なる術か読めなかった故、発動させてみることにしただけだ」
「術? どの術のこと?」
「この本だ。そこの悪魔は火熱技法論と言っていたぞ」
「エシディ・アドゥールの火熱技法論? なら魔法は
「いいや。魔法を扱うのはこれが初めてだ」
見るだけなら霧雨魔理沙のものを幾度と見てはいた。なんなら口出しもした。そういえば「研究だぜ」と言って家から出てこない日もあったが、成程確かにこれは研究の甲斐がありそうだ。
「まあその話も後でしましょうか。それよりこあ、怪我は?」
「あ⋯いくつかヤケドしてしまいましたが、全部軽症です。司書の仕事に、支障はきたしません」
「ししょだけに、か? ケヒッ、中々面白いことを言う」
「た、たまたまです! たまたま偶然こうなっただけで、決して狙ったわけではありません!」
「すまん、悪かったな」
「謝るのなら、まずそのニヤけ面やめてくださいよ!」
「悪かったと言っているだろう」
まだ頬の歪みが堪えきれていないが、嫌な顔をする小悪魔に近づく。体の火傷を見てみるが、自己申告の通り軽症のようだ。大きめの胸も無事である。
「中々いいモノを持っているな」
「何を言って⋯」
小悪魔の言葉を遮るように手を置き、反転術式を流した。火傷はみるみる引いていきあっという間に完治した。
「ほれ、着ろ。目のやり場に困る」
続けて礼を差し出し、羽織るよう促した。本当に美味そうな胸をしている。
胸というのは人体の中でも特に美味い部位だ。程よく弾力があると尚良い。おすすめは軽く煮込んで醤油をかけるだけの”人胸煮”だ。因みに女體の中では次点で子宮が美味い。女というのは美味い部位が多い。ただ逆に筋肉も少ないので、可食部の総量は男に比べると少ない。尚、人で一番美味いのは子供の脳である。
「幻想郷の少女供は貧相な体をしているからな。お前のようなのは珍しい」
「どこ見てるんですか!」
「さてパチュリーよ、フランドール⋯だったか? それについて話をしよう」
「この先に、椅子と机があるわ。そこで話しましょう」
「無視しないでくださいー!」
小悪魔の悲痛な叫びは、しかし無情にも図書館の闇の中へと消えていってしまった。
「──以上がフランドールの概要だけど、なにか質問はある?」
「吸血鬼としての身体能力・再生能力に、破壊の力か……性能だけを見れば、神にも匹敵するな」
無論破壊の力や再生能力にも限界があるだろうが、精神的に幼い少女が持つには大き過ぎる力であることは間違い無いだろう。
「というか、破壊の力があるのだから、閉じ込めている意味がないのではないか?」
「閉じ込めているというより、自ら閉じ込められに行っている感じね。出ようと思えばすぐに出てこれるし、実際それでちょくちょく私の図書館にも本を読みに来るわ」
「破壊される心配はないのか?」
「あの子は魔導書を読まないから、私にはあんまり関係ないわ」
「そうか」
「で、これが赤月予測の表よ」
「赤月、か……」
とはいっても、赤月というのは
家族のことだと月夜見は一気にキャラが崩壊する。いいことだろうと悪いことだろうと、だ。
因みに宿儺は天照とはあまり面識がないが、生まれたときに彼女は自分に一つギフトを与えた。それは今でも、宿儺の役に立っている。そういう神としての立ち振舞いには今でも尊敬している。
「まあ、月の力が高まっているのは感じる。この予想表の通り、赤月の時は近いだろうな」
「……ちょっと、楽しみにしてる?」
「そうだな。心躍らぬと言えば嘘になるな」
「……盛り上がるのはいいけど、この図書館には配慮してよね」
「わかっている。俺とて、予測日までにここの本に全てを読み切れるとは思っていない」
「ならいいけど」
「それよりも、いい魔導書はないか? 俺の術式の拡張に使いたい」
「術式って、さっきの炎? だったらオススメは”メラシリーズ”かしら」
こうして、二人の探究心を持った者はそれなりに打ち解けた。
宿儺は赤月まで、殆どの時間を大図書館で過ごす様になった。膨大な資料と、程よい静寂感が気に入ったのである。おまけに呼べば茶菓子も出る。全く、最高の空間である。
──そして、時は流れ、赤き月の夜が訪れた
この小説における魔法書と魔導書の違い
魔法書は魔法そのものが書いてある本のことです。魔法の才能がある者であれば、書いてある術式を理解し、詠唱などを用いて扱えるようになります。
魔導書は本そのものに術式が刻まれている、一種の呪具のようなものです。魔力を流すことで術式を発動させることができます。書き込まれている文字は魔法の概要や魔法陣、呪文など様々。