東方宿儺譚    作:雅之幻想

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完全に当て字の題名。特に深い意味はないです


59.瑠ーネイトエル布

 必要なものは『能力』である。

『十種神宝』

 神の創りし可能性の塊が”強さ”を先へ進めてくれるのだ。

 

 必要なものは『程よく厄介な強者』である。

 彼は複雑な能力を持っている者でなくてはならない。

 領域展延でも防げず、使用条件も殆どない能力を戦闘で用いる者。肉弾戦もできると尚良い。

 

 必要なものは『手本』である。

 手本は能力の可能性を引き出すことができるからだ。

 

 必要なものは『詠唱と手印』である。

 引き出された”可能性”を大きくしてくれる。

 

 必要なものは『精神力』である。

 呼吸をするように、道端の枝を折るように、「できて当然」と思わなければならない。

 それは、”大きな可能性”を現実にするための土台であり、最後の後押しになる。

 

 能力は手本を見て可能性を芽生えさせる。

 それは詠唱によって成長し、精神力によって完成されるのだ。

 

 ──程よく厄介な強者を踏み台に、能力は新たな段階へと踏み込む。

 


 

「布瑠部由良由良」

 

 手印と詠唱によって、全ての神宝を召喚。

 それらすべてが宿儺を中心に融合し、新たな存在を出現させる。

 

「───ッッ!」

 

 何かが起こると判断したフランドールの本能は、その出現を阻止しなければと考えた。

 分身体を引っ込め、破壊の力を取り戻して突撃する。

 常人では目で追うことも不可能な、音をも置き去りにする速度で突っ込んでくる吸血鬼。

 

 しかし、間に合わない。

 

 真っ直ぐに向かって来たフランドールは、白い何かに横から殴られ、強制的に軌道を変更させられた。流石の吸血鬼も、音速からすぐに止まれるほどの機動力は有していない。故に、壁に激突する未来は最早変わることはない。

 だが、壁に激突するまでの僅かな時間で、目撃した。

 

 天使のように白く、顔に翼のようなものが生えた、異形の巨躯。そして──

 

「フラン!」

 

 そして、心配そうな声を上げる姉の姿を。

 


 

「良い」

 

 少し離れた場所から彌虚葛籠で気配を消しつつ、魔虚羅の様子を眺める。

 結界術の応用で形作った白い肉体に、礼と勾玉によって造られた方陣。その神秘的な恐怖を抱く御姿(みすがた)は、時代が時代なら神と間違えられただろう。実際神の力によって創り出された代物なので間違ってはいないが。まあ何にせよ、我ながらよくできていると思う。

 そしてその最大の魅力は、やはりその方陣にある。

 

「ガァッッ!!」

 

 吹き飛ばされてもすぐに復活し、再度突撃してきたフランドール。その攻撃を、魔虚羅は真正面から受ける。恐らく七三術式と同系統の能力。その一撃を受けた魔虚羅の腕は爆ぜ、跡形も無く消し飛んだ。だが──

 

「それで、良い」

 

 解析を始めるには、まず攻撃を受けなければならない。そして攻撃を受けた今この瞬間から、適応はスタートする。攻撃を受ければ受けるほど、適応は加速していくので、そういう点では考えなしに攻撃してくる暴走状態というのは都合がいい。

 また、魔虚羅の思考回路は宿儺の思考回路を模倣したものになっている。それは即ち、体術や戦略は宿儺と殆ど同じであるということ。ある意味、宿儺の思い通りに動いてくれる。

 

 宿儺が魔虚羅を顕現させるに当たって、下した縛りは多くある。

『エネルギー源は事前に与えた穢れのみ』『魔虚羅への命令は口頭で行い、最終決定は魔虚羅自身が下す』『魔虚羅が破壊された場合、十種の術式が使用できなくなる』etc.

 これだけしなければ術式の再現が不可能だと判断したが故の多さだが、その幾つかは踏み倒す算段があるため、実際の魔虚羅の運用にはそれほど不自由がない筈だ。

 

「ただ逆に、想定よりも穢れの減りが早いな……このままでは、持って5分といったところか」

 

 無論、5分あれば大抵の敵は殲滅できるが、今回の相手はその「大抵」には含まれない。

 付け加えれば、彼女の能力は結界術などでは対処できない”厄介”な代物だ。

 

「5分の内に適応できるかどうか……魅せてみろ、魔虚羅!」

 


 

 ──1分、経過

 


 

 魔虚羅とフランドールの一戦は、今のところフランドールの方が優勢だ。

 戦いは秒を刻むごとに激しさを増し、宿儺との戦闘で既に半壊状態だった地下室は完全に使い物にならないほどになっていた。ただそれでも、上の屋敷にまで遊び場(戦場)にならなかったのは

 正に奇跡の産物だ。

 

「ウガアアアアアッ!!」

 

 ただし、その奇跡は長く持ってはくれなかった。

 

「ォ……ォ……」

 

 鈍い音がした。フランドールの拳が下から魔虚羅の腹を穿ったのだ。

 腹が弾け、肉体が拳の勢いそのまま天井に突っ込んでいく。

 ぶつかった天井は打ち砕け、しかし白き巨躯は止まらない。次々に上階へと上がっていき、遂に月明かりが通るようになってしまった。

 赤い光がスポットライトのように降り注ぐその中を、フランドール・スカーレットが飛び立つ。中空で身動きを取ろうとする魔虚羅に対し、トドメの一撃を叩き込もうと向かっていく。

 狙うは、顔面。破壊の力で粉々にし、この世から葬り去る__などという思考はない。あるのは生物としての弱点を突こうという、酷くシンプルな理由だ。

 

「しばッ!」

 

魔虚羅の顔面へと、吸い込まれるように拳が放たれる。

戦闘に終止符を打つ究極の一手。喰らえばフランドールの優勢は決定的なものになるだろう。

ーー否、結果としては命中した。顔のど真ん中へと、フランドールの拳は入った。

だがその拳が入る前に、音がした。

 

 

 

 

 

 

ガコンッ

 

 

 

 

 


 

「「一手」遅かったな…2分経過」

 




やっと、やっと魔虚羅の話を書ける・・・!
勾玉と礼で方陣作るか、ってのはもう連載したときから温めてました。

なんて編集してたらモジュロの方でも魔虚羅だよ!やったぜ!
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