東方宿儺譚    作:雅之幻想

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小説ってどう書くのが正解なんだ…?(今更)


61.亡き王女のためのセプテット

 全身に力が巡り、迸るエネルギーが溶岩のように滾っている。それは恐らく、赤月の夜という特別な時間だからだけではないのだろう。

 

「フラン……」

 

 妹の名前を呟いた。それが、それこそがエネルギー。姉妹愛こそ、彼女の力の源泉。

 

「ォォッッ──」

 

 魔虚羅が素早いラッシュを繰り出し、レミリア・スカーレットにダメージを与えんとした。

 右ストレート、左ジャブ、ボディブロー、右フック、左アッパー、etc……

 一撃でも喰らえば骨が砕ける__そんな一撃が瞬きする間に数多放たれる。

 

「悪いけど、今は絶好調なの」

 

 そのすべての拳が、寸分の狂いもなく正確に捌かれていく。躱され、いなされ、流され。

 その事実も恐ろしいものだが、真に目を見張るべきはそこではない。

 

「魔虚羅、貴様……」

 

 驚くべきことに、魔虚羅のラッシュは正確だった。

 __そう、正確だったのだ。宿儺(自分)ですら、同じ状況であればその行動を選ぶほどに。

 違いといえば魔虚羅の方が拳速が少し遅い程度で、しかしそれでもそうした筈だ。

「魔虚羅は未調整ゆえに仕方がない」としていた面があるが、そこを差し引いたとしても違和感を覚えずにはいられない。__妙に記憶がざわつくが、今はそれどころではない。

 

「……何かしたな?」

 

 仮にそうだとすれば、レミリア・スカーレットの方だ。

 赤い月のお陰で全体的な能力が向上しているのは分かる。実際スペック上は魔虚羅の攻撃への対応はできるだろう。が、同じ吸血鬼であるフランドールが反応に苦すのを見ている。得意不得意があれど、あそこまで正確に対応できるとは考えにくい。

 それに得手不得手の話をするなら、レミリアは武術に長けていない。一週間で見てきた立ち振舞や今の魔虚羅との戦いから断言できる。武術者としてだけなら、紅美鈴の方が上だ。

 

「そうなると、後疑うべきは能力だな」

 

 ──と、ここまで考えて思い出したことがある。

 それは、つい先程抱いた違和感。記憶の蠢きの正体。

 かつて、乙骨裕太の領域内で味わった感覚。

 自身の行動に対して先回りされている、あの不快感。

 

「──予知か!」

 

 首元のナイフから少し血が滴ったが、気にしなかった。

 


 

 運命というのは、はるか昔から決まっている。

 いかに頑張ろうとも、どう回避しようとも、運命からは逃れられない。そして誰にもわからない。そう、分からないのだ。いつ何が起こるのか分からないというのは人間にとっては__否、意思のある存在にとっては非常に恐ろしいのだ。だがもし、運命を見ることができたなら。この先何が起こるのか、覚悟を決めることができるだろう。

 私の『運命を操る程度の能力』は、まさしく覚悟を決めさせてくれる能力だ。

 

七重奏(セプテット)

 

 運命を操るとはいっても、本当に運命を操るような力はない。できることといえば精々少し先の()()()()()()_即ち運命を見るくらい。その運命を見る力こそ、七重奏(セプテット)だ。

 だがその時間は、僅か7秒。

 普段使いするうえで7秒というのは、ハッキリ言って短いことこの上ない。

 

「右、左、腹、右、左__」

 

 ただし、刹那のやり取りで命を落とす戦闘においては、それこそ生死を分けるほど長い時間だ。丁度今の攻撃を捌けた様に。尤も、未来を見たから対応できた、という訳では無い。未来視したうえで行動した結果が”運命”として見えただけだ。見えた運命をその通りなぞる()()()作業。運命で決められている以上、行動はそれしかできない。

 

「でも、今はそれでいい」

 

 兎に角、フランが回復する時間を作ることが最優先。撃破できるならそれに越したことはないが、どうもこの威力では無理らしい。手応え自体はあるので、最大火力を出せば話は別だろうが。

 

「大体なんで私と同じくらいのパワーがあるの、よ!」

 

 運命の通り、掴みかかってきた腕を下に抜け、懐に入り込んでアッパー。怯んだ隙を見逃さず、連撃を叩き込む。決め手に欠けるというだけで、腕や足をあらぬ方向へと曲げることはできる。

 これで徒手空拳は封じることができた。戦局としてはこちらが圧倒的に有利。あとは相手の体力が尽きるまで、損傷を追わせるだけ。……だが、念には念を。何が起きるか見ておこう。

 

七重奏(セプテット)

 

 何もなければそれでいい。タコ殴りにしている自分が映れば尚良い。

 そういう未来を信じて、運命を見る。見る__

 

 

 

ガゴンッ

 

 

 

「ッッ!」

 

 

 

 距離を取る。間に合わない。運命は既に決まっている。

 

 白巨躯の、折れたはずの足が即座に修復。地面が爆ぜ、一直線に向かってくる。

 この幻想郷に()いて、再生能力があるというのは珍しいことではない。私達のような吸血鬼然り妖怪や神、不死身の人間もいる。妖精も、落とした腕はいつの間にか元通りになっている。

 

 だが今の()()は、そんな次元を超えたものだ。

 

ドスッ

 

 鈍い、音がした。お腹の辺りに、言葉にし難い妙な感触があった。熱いものが込み上げてきた。

 見ると、今まで目立って使われることのなかった右腕の剣が、私の脇腹を貫通していた。

 

「か、はっ……」

 

 全く、これも運命の通りだ。

 




運命を操る程度の能力
7秒先の未来を見れる『七重奏(セプテッド)』が使える。時を飛ばしたりする力はない。
決まった未来のことを”運命”としているため、()()()()()()()()()であれば10年先だろうと見ることができる。
自分が見えた運命を周りに言っていたら、周囲からは「彼女が言ったことが起こる」と思われ、運命が操れると勘違いされた。尚本人はそこまで気にしていない。
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