東方宿儺譚    作:雅之幻想

79 / 79
 クラウンピースと宿儺は面識こそありますが、積極的に関わったことはありません。
 (ピース→なんか怖そうじゃん 宿儺→ガキの相手は苦手だ)


70.『完成』には『完全』を

 ──マズイ。

 心臓を貫かれたことではない。確かに肉体の治癒に難儀する今では問題にする価値があるが、それ以上にマズイことが起きている。

 

 貫かれたところから、結晶が生えてきた。浜辺で見たものと同じ、黒曜石のような結晶。

 それが何なのか、理解したときには既に体が動いていた。

 

「うぇ……気でも狂った? アタイ能力使った覚えないんだけど……」

 

「──ほう……お前、の……能力、は、他者を……狂わせる……のか……?」

 

「そんなアタイから見ても、いきなり自分に剣を刺すなんて狂ってるとしか言いようがないよ」

 

 礼節も合理性も知らない、これだからガキは苦手だ。貫かれたところから生えた結晶を抑える為には、正のエネルギーを至近距離で当てる必要がある。だからこそ刃を傷の近くに刺し、症状の悪化を防いだ。それだけの話だというのに。

 

「差し支えはない……それに、直に受けたお陰で『完成』の能力のタネが見えた。差し引きとしてはプラスだな」

 

 元々、ある程度予想はしていた。同じタイプの能力か、或いは別の力から派生したか。

 仮に同系統、穢れに作用する能力だとすれば、この状況下で弱体化していないわけがない。だが『完成』は妖精と自分に能力を使った。しかも妖精の方は異常なほどに強化され、弱っているとはいえ穢れの神(俺)にも通じる程のモノ。前者は兎も角、後者はその気配すら感じさせなかったことを踏まえると、同じタイプの能力とは考えにくい。

 つまり、あの能力は穢れを操る類(たぐい)ではなく__

 

「──術式対象の拡張」

 

 無論、拡張するにしても”穢れ”にまで作用するほどの高い運用性と精密性は流石の一言に尽く。そしてそんな事ができる能力の方も、良いものを持ったと言わざるを得ないだろう。

 大祓や禊ともまた異なる穢れの抜け方。元に戻されるような、ありのままの自分にさせられるような、付き物が落ちていくような、釜の底が抜けるような、あの感覚。そこに浜で見た『完成』と妖精の異常な強化も加えれば、能力の真相は自ずと見えてくる。

 推し量るに、あの『完成』の能力は__

 

「あらゆる事象の純粋化……純化と言った方がいいか?」

 

 妖精を見据えながら、胸に刺さった剣を抜く。まだ内臓に欠損はあるが、結晶は中和できた。戦線復帰に支障はない。

 

 それに欠損など、これからどうとでもなる。

 

「出し惜しみはせん。本気で行く」

 


 

 クラウンピースは地獄の妖精として、それなりの数の実力者を見てきた側である。

 自らの主であるヘカーティア・ラピスラズリ、その友人である純狐は言わずもがな。地獄の下の方の連中もヤバい奴ばかりだし、幻想郷で戦った秘神も強かった。

 そしてピース自身も、純狐の能力によって自然の縛りから解き放たれ、今や神にも匹敵する力を有した実力者(あっち側)である。

 

 だからこそなのか、或いは根っこである「妖精」としての弱者故の勘か。

 心臓も射貫かれ、自身との力の差が歴然である目の前の敵から、形容し難い底知れぬ何かを感じた。主(あるじ)からも、地獄の者からも、他の誰からも感じたことのない”圧”。

 その”圧”を前に、クラウンピースは動くことができなかった。

 

 ──クラウンピースは(・)だが。

 

「──ー!」

 

 胸を回復しきった宿儺に対し、『友人様』である純狐が再び動く。

 クラウンピースの脇を、光線が抜けていく。先程は一本だけであったが、当たれば宿儺とてただでは済まない。そんな代物を、今度は複数。況んや純狐の方も殺意が高い。

 

 だが宿儺それを跳躍してあっさり回避。そう簡単には食らってくれないという訳か。避けられた光線は、無常にもそのまま木々の奥へと消えていく。

 

「……あれ?」

 

 だが不思議なことに、宿儺は何故か降りてこない。それどころか更に上へと飛んでいっている。

 なぜか? クラウンピースは考えた。過去に類を見ないほど頭を回して考えた。

 

「──まさか、友人様!」

 

 純狐の方を先に始末し、強化のなくなった弱った自分と戦う。それこそが宿儺の狙いなのだと、クラウンピースは結論づけた。

 それを阻止する。そこからの行動は早かった。

 

「月夢『エクリプスナイトメア』!」

 

 まだ上空にいる宿儺に対し、クラウンピースも光線を放つ。

『エクリプスナイトメア』はピースのスペルの中でも特に速い光線。友人様(純狐)に辿り着かれる前にこれで足止めをし、その間に宿儺の元へと移動。地面へと叩きつける算段だ。

 実際、その速度が功を奏した。光線は見事宿儺に命中し、着弾地点は爆煙に包まれた。

 

「よし!」

 

 想定通り。このまま引きずり落とし、完全なる決着に持ち込む。

 足首を掴んで投げ飛ばす様を思い描きながら、クラウンピースは宿儺へと迫った。

 

 ──だが悲しいかな、その思いは中途で途切れることとなる。

 

「ッッ──!?」

 

 背中に大岩が乗った……どころではない。足が、腕が、胴が、頭が、指先が、心臓が。全身が押さえつけられたような錯覚に、身動きが取れなくなる。生殺与奪の権を握られたような、一挙手一投足が死因となるような恐怖感。迂闊に動けば、待っているのは”死”であると本能が警鐘を鳴らしている。

 それをもたらした存在は、間違いなく先程まで劣勢だった……はずだ。

 

「──言った筈だ」

 

 声を聞いた耳が、頭を上げさせた。爆煙が晴れ、男の姿が露になる。

 ──だがその姿には、クラウンピースは見覚えがなかった。

 無理もない上、当然の反応だ。だって──

 

「『本気で行く』と」

 

 ──現れたのは、四ツ目四ツ腕、腹に口がある異形。そしてなにより、顔の右側が歪に変形した男だったのだから。




やっぱり完全体宿儺のデザインって凄いよね。異形なのにすんなり入ってくるというか
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定
▲ページの一番上に飛ぶ  X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。

評価する
点
一言
0文字 一言(任意:500文字まで)
※評価値0,10は一言の入力が必須です。参考:評価数の上限
評価する前に 評価する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。


  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

読者層が似ている作品 総合 二次 オリ

脹相転生inキヴォトス(作者:西中の虎の兄)(原作:ブルーアーカイブ)

ある朝、起きたら脹相に憑依転生していた男の物語。▼しかも、転生したのは呪術廻戦の世界ではなく、何処かの学園都市だった!?▼ブルアカをほぼ知らない彼はこの世界で生きていけるのか……▼ちなみに作者はブルアカはアニメの部分(アビドス編)までしか分かりません。▼あとはネットで流れてくる情報とpixivの某虎杖のアレしか知らないです。▼呪術廻戦はモジュロ3巻まで全部読…


総合評価:776/評価:7.65/連載:34話/更新日時:2026年10月15日(木) 19:00 小説情報

猟犬は透き通る空の夢を見る(作者:ピンカル)(原作:ブルーアーカイブ)

エアを打倒し、星を焼き尽くすコーラルの爆発に巻き込まれたレイヴン。▼ウォルターからの最期の通信を聞き届け、その命は炎の中で散ったはずだった。▼闘争しか知らなかった猟犬は、目覚めた世界でこれから何を成すのだろうか。▼今更ながら、アーマードコア6とブルーアーカイブのクロスオーバー作品です。▼自分が見たいため自給自足しました。▼C4-621がレイヴンの火ルートを終…


総合評価:2282/評価:8.75/連載:54話/更新日時:2026年10月17日(土) 12:00 小説情報

Fate/hollow adaptation――異戒の華は冬木に咲く​(作者:りー037)(原作:Fate/)

十年前の冬木。第四次聖杯戦争の裏側で、大聖杯のシステムすら想定し得なかった「致命的なバグ」が産声を上げた。▼魔術師たちの野望と妄執が渦巻く中、地獄のような環境から一人の少女が解放される。▼間桐桜。彼女の足元に広がる「虚数」の影は、マスターを失い世界から消滅するはずだった理外の怪物――あらゆる事象に適応し破壊する『異戒の神将』と奇跡的な融合を果たしていた。


総合評価:4005/評価:8.57/連載:32話/更新日時:2026年08月11日(火) 02:54 小説情報

七 色 ヘ イ ロ ー(作者:内海空洞)(原作:ブルーアーカイブ)

しかし色は1,680万色。▼本文はGeminiを使用しています。


総合評価:2508/評価:8.4/連載:18話/更新日時:2026年10月16日(金) 00:12 小説情報

虎杖悠仁によるトレセン学園勤務日記(作者:夕暮れの家)(原作:ウマ娘プリティーダービー)

 モジュロで言ってた呪物化して人類の守護者になって。ようやっと大勢に囲まれて死ねた虎杖が若人の成長を見守りながら幸せそうにしてるところが見たいなぁって。▼ だから良い子ばっかのウマ娘達に囲まれて楽しく過ごして欲しい。▼ 本当にそれだけ。


総合評価:11458/評価:8.98/連載:17話/更新日時:2026年10月16日(金) 21:17 小説情報


小説検索で他の候補を表示>>