サイバーパンクと青春記録   作:水面どり

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お待たせしました!

先日はお見苦しい物をお見せして申し訳ございませんでした。


10話 メインジョブ 『目覚め/NO SAVE POINT』 4

「さて、どうしたものかな」

 

俺は戦車の上でリロードを終え、辺りを見渡し状況把握に努めていた。

 

スケバンは全滅、クルセイダー戦車は大破、ワカモは連邦生徒会のビルで破壊活動中。 つまり味方なしで足止めする必要がある。

 

次は敵だ。

戦車を破壊したということは対戦車用の装備の所持、もしくは重火器を持っている可能性がある。 だが何処にもそんな武装は転がってはいない。 キロシのスキャンモードで痕跡を探しても反応なし。

 

まさかプロジェクタイルランチャーか?

 

一瞬、腕に内蔵するロケット砲を想像してしまったが、ここは俺のいた世界じゃないしそれはないだろう。 仮にあったとしても、大人ならともかく生徒の腕にプロジェクタイルランチャーを内蔵できるほどの大きさはない。 仮に内蔵できたとしても……

 

「まさかあの青髪女の太腿とか? いや使いづらすぎるか」

 

それにどの生徒もサイバーウェアのインプラント手術をした痕跡も見当たらない。

 

当然それはあの大人にも。

 

“やあ、こんにちは”

 

「……普通戦場で話しかけるか? チューマ」

 

“え、えっと、ちゅーま?”

 

「あー、ブラザーとか、アミーゴとか、そういう親愛的な意味だ」

 

“そうなんだ! ありがとう!”

 

ありがとうじゃないんだよ。 初対面で、しかも戦場の敵同士でそんな言葉が投げられる訳がないだろ。 この大人には皮肉が伝わらないのか?

 

戦車の上から降りて、俺はこの大人に拳銃を向けて警戒する。 さて、何が目的だコイツ? 手を上げて人のいい笑みを浮かべるコイツの後ろに回り、じっくりと観察する。

 

「下手な動きはするなよ。 じゃないと俺のマロリアンアームズが火を吹くからな」

 

“そのハンドガン、マロリアンアームズって言うんだ。 銀色でかっこいいね!”

 

「いや、かっこいいねじゃなくてだな」

 

何だ、この裏表のない言葉は? まるで子供を相手してるみたいで、調子の狂う相手だ。

 

「ったく、やりづらいな。 真面目に警戒してるこっちが馬鹿みたいじゃないか」

 

“キミがスケバン達が言っていたVでいいのかな?”

 

「ああ、傭兵のVだ。 そういうアンタは?」

 

“私はシャーレの先生だよ。 今日キヴォトスに赴任しにきたんだ”

 

先生? 先生っていうと、あの生徒に勉強を教えるとかの先生か? ナイトシティじゃ企業の息がかかった差別偏見上等の教師ばかりだったので、どうにも警戒してしまう。

 

「その先生様が、どうしてこんな戦場に? まさか教鞭を振るって戦うとか言わないよな?」

 

“うーん、ちょっとそれは難しいかな。 私はキヴォトスの外から来たから、銃弾を浴びたらすぐに倒れちゃうんだ。 だから生徒の戦術指揮を今は取らせてもらっているよ”

 

つまり、司令官ということか? 後ろからやたら指示出してる大人がいると思えばそういう理由だったか。 それに今、『キヴォトスの外』と言ったな、更に問い詰めて行くとしよう。

コイツのいうキヴォトスの外が俺の住んでいたナイトシティか、それとも文字通りキヴォトスの外なのか。

 

「正直、俺からの第一印象は最悪だったぜ先生さん」

 

“ええ!? そうなの!?”

 

「そりゃお前、生徒を盾に後ろから指示しか飛ばさない大人とか最低のクズ野郎だろ?」

 

“ゔ、反論できない”

 

「まあ、とはいっても、キヴォトスの外から来たんじゃなあ……なあ、キヴォトスの外ってどんなとこだ?」

 

ここだ、ここの説明次第でコイツの命運が変わる。 あまり考えたくはないが、最悪の場合事故を装って殺すしかない。

 

さあ、どんな答えが出てくる。

 

“こことは違って、大人の人間も沢山いて、少なくとも生徒が街やら地区を運営してたりはしないかな。 それに銃撃戦なんて滅多なことじゃ起こらないから、スケバン達と生徒達が撃ち合いを始めた時驚いちゃったよ”

 

……これは、どうなんだ?

 

滅多な事では銃撃戦は起こらない……ナイトシティ出身じゃない。

人間の大人がたくさんいる……ナイトシティもそう。

スケバン達との銃撃に驚いた……まあ子供が意気揚々と銃撃したら何処だって驚く。

 

本当にどうなんだこれ? 見事にナイトシティぽいのと、ナイトシティぽくないのと、何とも言えないのが全部出てきてしまった。

 

最悪のパターンというのが、実は先生はナイトシティのクソコーポで生徒達を人体実験や兵隊にしているというパターンなのだが……俺がいるんだから、俺以外のナイトシティ出身がいてもおかしくないという考えの元で警戒していたが。

 

「考えすぎたか? いっそゴリラアームをチャージ展開してるところ見せて表情を伺うか? いやしかし俺がナイトシティ出身とバレて、向こうがナイトシティ出身の場合、絶対情報戦で後手に回るんだよなぁ」

 

コーポ相手に情報戦で後手に回るのはいくらなんでも不味い。 その場合こちらが何も知らないうちに向こうの掌の上で踊る事になる。 それを俺はメレディス・スタウトというクソコーポの女で思い知ったのだ。

 

今でもあの女を思い出すと腑が煮え繰り返りそうになる。 何か企んでると思ったらウイルス入りのクレジットを渡されるとは、あの時は思いもしなかった。 結果そのクレジットを使った取引はご破算、取引先とドンパチする羽目になった。

 

“えっと……V?”

 

俺がちっとも嬉しくなれない思い出に浸っていると、放置された先生が心配そうに声をかけてきた。 本当にそういうところだぞお前。

 

「あのなぁ、俺はお前の敵だろうが、なのにそんな声をかけてくるな。 仕事がやりづらい」

 

“あはは、随分手厳しいなぁ”

 

呑気にそう言う先生に大きな溜息を吐いて、呆れてしまう。 うん、間違いなくコイツはコーポの人間じゃない。 こんな馬鹿みたいなコーポが俺の世界にいてたまるか。

 

 

 

カチャリ……

 

 

 

とそこで視線を感じたので真横へダッシュすると、俺が先ほどまでいた場所にスナイパーライフルの銃弾が飛んできた。場所は当然頭部、いい腕をしてる。

 

「避けられた!?」

 

続く制圧用にばら撒かれたアサルトライフルの連射を壊れた戦車の影に隠れてやり過ごして回避する。 狙いは先生の救出か。

 

「先生! 早くこちらへ!!」

 

“ハスミ! スズミ!”

 

「お怪我はありませんか先生!?」

 

“うん、特に何もされてないよ。心配してくれてありがとうチナツ”

 

「うう、背中痛い、アイツ絶対許さないんだから!!」

 

“ユウカは大丈夫? すごい威力で殴られてたけど”

 

「はい、チナツのおかげで何とかみんな回復しました。 これより作戦行動を再開します!」

 

「先生、戦術指揮を改めてお願いします」

 

“わかった。 みんな、ここが正念場だ!”

 

 

 

 

「向こうはすごい盛り上がってるな。 だがここを通すわけにはいかなくてな」

 

悪いが負ける気はないぞ、先生。

 

「かかってきな、チーカ共!」

 

 

 

START!

 

 

 

俺は戦車から顔を覗かせ、敵の配置を確認する。

 

「全員復帰か、特に青髪はゴリラアームで殴って一番ダメージが大きかったはずだが……キヴォトス人はサイバーウェアもないのに本当に頑丈だな」

 

フロントはSMGの青髪

 

ミドルに白髪のAR

 

バックに黒髪のSR

 

完全に射程距離外の先生とピストル持ち。

 

全員遮蔽物に身を隠してこちらの様子を見てる。

 

「定石どうりって感じだな」

 

さて、どう切り出してくる? 何が起きてもいいようにピストルを胸の前に持っていき、『デッドアイ』と『集中モード』を発動できるようにする。

 

俺の目的は時間稼ぎ、決して殲滅ではない。 どうせすぐ倒してもまた復帰されても面倒だ、今回はじっくりいこう。

 

青髪がSMGを構えて俺の隠れる戦車へと制圧射撃を始める。 俺の動きを止めるつもりか。

 

そこで白髪のAR持ちが何かを取り出した。 遮蔽物に隠れて動けない奴に使う物といえばグレネードなどの爆発兵器だろう。 サンデヴィスタンをいつでも発動可能状態にしておく。

 

「天罰の光を!」

 

「サンデヴィスタン!」

 

俺は丁度手を離したばかりのキロシが危険性を示した投擲物を、加速した世界で打ち抜く。 そしてグレネードと合わせて突撃しようとしてきた青髪の肩に1発。 そして再び戦車に隠れてからサンデヴィスタンを終了させ、いつもの時間の流れに戻す。 戻した瞬間にスナイパーライフルの銃弾が飛んできた。 サンデヴィスタンを使ったというのに油断も隙もない優秀なスナイパーだ。

 

「悪いが無神論者でね。 天罰だとか、そういうのはギャリーで間に合ってんだ」

 

俺がそう告げると、敵陣の遮蔽物の向こう側から強烈な光が発せられた。 絶対に天罰の光じゃないだろ、思いっきりスタングレネードじゃないか。

 

「きゃあ!?」

 

「いったぁ!?」

 

「なんて早撃ち!」

 

「皆さん、治療します!」

 

敵が混乱している内に、ダッシュを使って違う遮蔽物へと向かう。 その間にもスナイパーライフルの弾が飛んできていた。 よく見たらあのスナイパー、ロングスコープは疎かホロサイトすらつけていなかった。

 

「本当に優秀なスナイパーだ。 どこかの軍属だったりするのか? サイバーウェアのサポートも無しでよくやるよ」

 

というかあのメガネの子、今デッカい注射で青髪を刺してなかったか? 注射の中身が水色の液体だったが、あれ大丈夫なのか? あんな色の液薬見た事ないが……あれで死なれたら俺の仕事は失敗にならないよな?

 

「ゲヘナの薬ですか……」

 

おい、目薬をさしてる白髪の子がとんでもない物見てる目をしてるが本当に大丈夫だよな!? ゲヘナの薬って何!?

 

俺が別の意味でハラハラしていると、青髪が顔を青くしながら立ち上がった。 よかった、危うく仕事失敗になる所だった。

 

「……チナツ、大丈夫なのよねこの薬? ブルーハワイみたいな色してるけど」

 

「? ええ、問題あるものは使用してませんよ」

 

じゃあ何でそんな色になるんだよおかしいだろ。 バイオテクでもこんな色の薬は売らない。

 

「あー、そろそろいいか? それともトイレ休憩でも必要かい?」

 

俺がそう尋ねると、すぐさま銃弾の雨という返事が帰ってきた。 コント始めたのそっちだろうが!? 俺は遮蔽物が壊れそうになるのを感じてサンデヴィスタンで別の遮蔽物へと再び移動する。

 

「あーもう! 撃つのも動くのも速すぎるのよ貴方!」

 

「先生、どう攻略しましょう? 私の閃光弾も逆効果です」

 

“うーん、このままじゃジリ貧だね”

 

「この戦況を打開したいですが……迂闊の行動は、さっきの不意打ちの二の舞になるかと」

 

「幸いにも、向こうはこちらに積極的な行動はしてきてません。 もしかしたら時間稼ぎが目的かもしれません」

 

こちらも威嚇目的に顔も出さずにマロリアンアームズで普通に撃ち返す。 当然だが手応えは帰ってこない。

 

「しかもあのハンドガンの威力もかなりのものです。 不意打ちとはいえ、ヘッドショットで生徒の意識を奪える程とは……」

 

「どんなチューニングしてるのよそれ!?」

 

「はは、そんな褒めんなよ、照れるぜ」

 

「もう、もう、もう!!」

 

一通りの射撃で遮蔽物を破壊した青髪がSMGを打ちながら俺を追いかけるが、それをダッシュの連打で回避していく。 そして再び戦車の裏へ。

 

「うう、そこは……」

 

ゴリラアームで殴られた記憶が蘇ったのか、青髪が無防備にも足を止めた。 そこへ俺はわざと当てないように射撃を返してやる。

 

「はっ、臆病者が戦場に出てくるとはな」

 

「ば、馬鹿にして……!」

 

“ユウカ、落ち着いて今は引いて”

 

先生の指示が出されると、青髪は遮蔽物に隠れた後に深呼吸して先生の元へ移動した。

 

“V!”

 

「なんだ! もしかして降参か!」

 

“作戦タイム!”

 

「ばかじゃねぇの! なあ、ばかじゃねぇの!?」

 

ガキのやるスポーツじゃないんだぞ! なんだろう、すごく帰りたくなってきた。

 

俺はもうどうにでもなれと手を振って「勝手にしろ」とジェスチャーを送ると、何人かが、「いいんだ……」とリアクションを返した。 いいんだよ別に時間稼ぎが仕事だからな。

 

さて、リロードしてますか。




セミナーオオフトモモプロジェクタイルランチャー

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