サイバーパンクと青春記録   作:水面どり

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11話 メインジョブ 『目覚め/NO SAVE POINT』 5

先生達が作戦会議を始めたので、俺は戦車の上でマロリアンアームズのリロード、そして軽いメンテナンスを行っていた。

 

「残弾は……箱の中身が半分か。 自販機で売られてたから量は期待してなかったが、あと1マガジンとちょっとか」

 

流石に心許なくなってきたと、今後の戦闘方針を考えていると視線を感じたのでそちらに顔を向けると

 

「……」

 

「……」

 

黒い髪と翼を生やした生徒がコチラを警戒していた。 なるほど、開幕に行った不意打ちをケアしたいのか。

 

俺が先生の所へ行けと、しっしっとジェスチャーを送るが、あのデカ女はまるで聞く耳を持たず、更に怪訝な目で睨んできた。 頑固な女だ。 スナイパーは柔軟でスマートな思考と忍耐力が重要だと思っていたが、そうでもないのか?

 

「俺はあまりスナイパーライフル使わないしなぁ」

 

遠い何処かで、「じゃあ何であんな集めてんだよ重いんだよ墓まで運ぶの大変だろうが特にグラードとラセツ!!」とメガビルディングの階段で息を切らした汚い妖精の声が聞こえた気がするが気のせいだろう。

 

戦車の上でデカ女の熱い視線を一身に受けていると、連邦生徒会のビルからキラリと光の反射が映った。 現在あのビルにいるのは依頼人のワカモだけなので撃たれるということはないだろう。

デカ女に気づかれないようにワザと背伸びをしながら背中を向け、ビルの窓越しにジェスチャーを送るワカモを視界に捉えた。

 

下? それから耳?

 

指を下に向け、それから耳へと指した。 俺の下には破壊された戦車があって……

 

「なるほど」

 

俺は戦車の蓋をゴリラアームでこじ開け、中へと侵入する。 そこには黒焦げになったスケバンが2人が白目を剥いて気絶していた。

 

「コイツ、俺をスカウトした奴か?」

 

片方がスケバンの中でもまとめ役に徹していた奴だと知り、その耳へと手を伸ばすと

 

「あった、旧式のインカムか」

 

爆発のせいか煤けてはいたが、まだ稼働可能な通信機を発見した。 俺は軽く払った後にそれを耳につけ、電源を入れた。

 

「あー、あーあー、コチラ傭兵、聞こえているか?」

 

『はい、聞こえておりますVさん』

 

俺から通信をかけてはいたが、それを促したのは依頼人であるワカモだ。 つまりワカモから話したい事があるという事だ。

 

「仕事はもういいのか?」

 

『ええ、見事連邦生徒会を手玉に取ってくださいました。 私はその間にビル内のセキュリティは全て破壊、これで誰でも顔パスで通れます』

 

「永久フリーパスってか?」

 

『何度も来るような場所でもありませんけどね』

 

と、依頼人から仕事完了のお言葉を頂いてしまった。 

 

『Vさん、お疲れ様でした。 私は今から地下に野暮用で向かいますが……後ほどまた合流致しましょう。 ブラックマーケットのレストランで打ち上げといきましょう』

 

「あー、それなんだがワカモさん。 ちょっと厄介なことになってな……」

 

俺は戦車から顔を出して、先生達を確認する。

 

そこには自販機で大量に何かを買う青髪、あーだこーだと話し合うメガネと先生、デカ女に何かを耳打ちする白髪。 向こうがあんなにやる気なのに俺が帰り出すのは……流石に酷いだろう。

 

「……どうやら残業になりそうだ」

 

『あら……意外とお優しいですね』

 

「茶化すな、そんなんじゃねーよ」

 

俺はインカムを切り、戦車の中で気絶したスケバンを抱えて外へと出る。 そして他のスケバン達を戦闘に巻き込まないように運び始めた。

 

 

 

 

 

“ね、結構良い娘でしょ”

 

「……まあ、根っからの悪人ではないようですが」

 

そんな様子を見たチナツと先生は彼がスケバン達を助け終えるまで作戦の再確認を行った。 そこで大量のグレネードを抱えたユウカが帰ってきたのだ。 

 

 

 

 

 

スケバン達を退かし終えた俺は先生達に向き直り、壊れた戦車の横に立つ。

 

「もーいいーかーい? ってか」

 

“まーだだよーって言ったら?”

 

「俺が鬼になってテメェらを追い回す」

 

ふざけたジョークを抜かす先生に俺もジョークで返す。 どうやら万全のようだ。

 

「さあ、かかってきな」

 

俺が指で煽ると、一斉に銃を構えた。 俺は再び戦車の後ろに隠れて様子を見る。 だが銃弾は飛んでこない。 俺を隠れさせるのが目的か。

 

「もう一度!」

 

そこで白髪がグレネードを取り出したのを見て、再びサンデヴィスタンを発動させる。

 

「それはもう見たぞ、サンデヴィスタン!」

 

加速していく中、グレネードを撃ち落とそうと身を乗り出してピストルを構える。

 

「なるほど、数を増やせば撃ち落とされないとでも考えたか」

 

生徒全員がグレネードを投げている姿を見て、思わず鼻で笑ってしまう。 俺のサンデヴィスタンはそこまで甘くない。 合計4個のグレネード全てに銃弾を当てていく。 サンデヴィスタンを切り、自分の投げたグレネードに目をやられる様を想像する。

 

だが

 

 

 

 

プシュウウウウウウウウウーーーー!!!

 

 

 

 

 

「なんだと!?」

 

吹き出したのは眩い閃光ではなく、白い煙、スモークグレネードだったのだ。 白い分厚い煙が、両陣営を完全に分断してしまう。

 

「だがそれじゃあ、まともに狙えないよなぁ!」

 

分厚い煙の向こう側から、大量の鉛玉が手当たり次第に既に壊れている戦車に雪崩れ込んでくる。 それだけでなく色々なグレネードまで投げ込まれている。

 

ガンガンガンガンガンガンガンガンガンガンガンガンガンガン!!

 

ドカーン!! ドカーン!! ドカーン!!

 

鉄と鉛がぶつかり合う音と爆発が地面を抉る音が俺の鼓膜を揺らす。 だがその1発も当たることはない。

 

「というか、あのデカ女も撃ってやがるな、アイツの弾が1番うるさいぞ」

 

至近に投げ込まれそうなグレネードをサンデヴィスタンの射撃で撃ち落としながら、煙が晴れるまで耐えようと考えた。

 

「これが作戦か先生! 随分とお粗末な物だが、これじゃあ俺は倒せないぞ!!」

 

煙が晴れたら、後は光学迷彩とサンデヴィスタンを使って後ろに回って、全員にゴリラアームを叩き込んでやろうと戦略を組んでいた

 

その時だ。

 

 

 

 

 

大きな影が、通り抜けていった。

 

 

 

 

 

「……は?」

 

 

 

 

 

それは横に連邦生徒会のマークを貼ったジープ、運転席にはメガネをかけた生徒、その助手席にはスーツを着た人影が

 

 

 

 

 

「考えやがったなあの野郎!?」

 

全然気づけなかった。 スモークで隠れた視界、射撃と爆発による聴覚封じ、これにより成し遂げた戦闘車両のステルス化。

 

敵の目標は決して俺の撃破ではなく、シャーレのビルへの到達。

 

完全に出し抜かれた。 ジープは既に最高速度であり、単純な足では追いつく事ができない。

 

「サンデヴィスタン!!」

 

まだだ、まだ間に合う。 距離はだいぶ稼がれたが、まだ間に合う。加速した中で走りながらマロリアンアームズを構え、タイヤに向けて3発放つ。

 

そしてサンデヴィスタン終了まで走り続ける。 そこでタイヤに銃弾が命中、ジープのバランスが崩れ、スピードが落ちていく。

 

「量子チューナー! サンデヴィスタン!!」

 

サンデヴィスタン終了後、量子チューナーで再補充、すぐさまサンデヴィスタンを再稼働させる。

 

再び加速した空間を全力疾走で駆け抜ける。 そしてついにジャンプ、空中ダッシュ、ダブルジャンプでジープの上に着地した。 間に合った。

 

「いい作戦だったが、一手足りなかったな!」

 

俺が先生に向けてマロリアンアームズを構えたタイミングでサンデヴィスタンの効果が終了。 量子チューナーも使い切ってしまった。

 

「降参しろ。 お前の負け……だ……?」

 

そこで気づいた。 気づいてしまった。 キロシがスキャンし情報をもたらした。

 

 

 

上着の掛かったマネキン、生体反応なし。

 

 

 

「貴方の負けです」

 

 

 

メガネが何か言ったが、関係ない。 今はともかく先生を探せ。

 

先生の行方を探すために顔を動かした。 スモークが晴れたそこには、上着を脱いだ先生とスナイパーライフルを構えたデカ女がコチラを見ていた。

 

“私達の勝ちだ”

 

「目標捕捉」

 

足場はスピン中の不安定なジープの上、ジャンプ、ダッシュ不能

 

サンデヴィスタン、クールダウン中

 

「っ!!!」

 

アーマーピアッシング弾が、サイバーウェアのアーマー値を無視して俺の頭部にぶち込まれたのだ。

貴方はどれくらい知識がある?

  • サイバーパンクは名前だけ知ってる
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  • サイバーパンクで知らないことなど何もない
  • サイバーパンク? なんそれ?
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