先生の立てた作戦は完全に成功し、ハスミさんの放ったアーマーピアッシング弾は、ジープの上で驚愕の表情を浮かべたVという傭兵の額へと吸い込まれた。
完璧なタイミング、相手は完全に意表を突かれた。 叩き込まれたアーマーピアッシング弾もトリニティの治安維持機関、正義実現委員会ナンバー2であるハスミさんの神秘を限界まで込めた強力な一撃。
まさにこれ以上のない最高の攻撃だった。
私は今回の作戦でジープの運転を担当し、その光景を間近で見ていた。 直撃の風圧が私の髪をたなびかせ、汗すらも吹き飛ばす。 余波ですらこれだ。 流石はトリニティの正義実現委員会副委員長、情報局のデータを上方修正する必要がある。
そして遂に傭兵の体が傾き、踵が離れ、ジープから転げ落ちそうにーー
『生体モニター起動、血液ポンプ緊急稼働』
ーー止まった。 私の動きも、息も、傭兵の傾きも、時間が停止したかのように、それ以上動かなかった。
生体モニター? 血液ポンプ?
どういうものか、名前だけで想像はつく。 だがその無機質な声がもたらす結果を理解したくなかった。
「う、そ……?」
アレだけやってまだやれるのか?
遠くで異変に気づいた先生が大声で何か言ってるが聞こえてこない。 ミレニアムのセミナーも、トリニティの自警団も今まで見たことのない形相でコチラに全力疾走している。 ハスミさんは、スナイパーライフルを杖代わりに立つことしかできていない。 その表情は苦悶に満ちていて、まるで取り返しのつかない失敗をしたようだった。
だめだ、もう打つ手はない。 完全に手札切れだ。 それに比べて相手はどうだ? グレネードの早撃ち? 超加速? 圧倒的な移動速度? まだそれしか見せていない。 今ならわかる、あのスケバン達が言っていた意味が、この傭兵は絶対にこんなものじゃないと理解できる。 全力を出されたら敗北は必至だろう。
そして遂に、傭兵の双眼が開いて
パァン
雲ひとつない青い空に、赤い閃光弾が打ち上がった。 それは本来、救出を求める際に打ち上げるはずのもので……
「残業終了か」
そんな傭兵の声だけが私の耳に届いてきた。 そして止まっていた傾きも、本来あるべき重力に従い、ジープから落ちていった。
「っ! はぁ、はぁ、はぁ!」
呼吸がようやくできるようになる。 汗が今更吹き出して、体を湿らせていく。 体と頭が現実を認識しだす。
「ぶ、無事!? 大丈夫!?」
ミレニアムのセミナー、いえ、ユウカさんが私に心配そうな声をかけてくれた。
「だ、だい、だいじょ、ゲホッゴホッ!」
「ゆっくり息を吸って、大丈夫、落ち着いて」
トリニティの自警団、スズミさんが私の背をさすりながら声をかけてくれた。
“みんな! 大丈夫!?”
「ご無事、ですか?」
私がしばらく深呼吸を続けていると、ハスミさんを支えた先生が合流してきた。
「はい、皆さんのおかげでなんとか……あの、傭兵は?」
私がそう尋ねると、全員浮かない顔を浮かべてしまった。
「いなくなってたわ。 ジープから落ちたはずの場所には何もなかった。 そしてジープから走り去る様子も確認できずに完全にロストよ」
「まったく不思議です。 まるで存在がパッと消えたように痕跡も残さずにいなくなっていました」
“これは……正直手に負えないね。 今ので倒せないならどうすればいいかさっぱりだよ”
先生が顎を手に添えて考え込みながらそういうと、ハスミさんが先生の手を振り解いてコチラへ向き、頭を下げてきた。
「申し訳、ありません。 私の力不足がチナツさんを危険に晒してしまいました」
「い、いえ!? 頭を上げて下さい!! アレは……もうどうしようもないですよ」
“そうだよ、ハスミは良くやってくれたよ。 むしろ大きな負担をかけてしまってごめんね”
「そんなことありません、今回は私がーー」
と、ハスミさんと先生の謝罪合戦が始まりかけた時だ。 空にプロペラが回る音と共に黒い影が差し掛かった。 全員が見上げるとそこには連邦生徒会のロゴが貼られたヘリコプターがコチラを見下ろしていた。
「重役出勤って見てるとムカつくわね」
ユウカの言葉を内心で同意してると、連邦生徒会のヘリがシャーレがあるビルの前で着陸し、そこから連邦生徒会副会長七神リンさんが降りてきた。 正直言うと、今は会いたくない相手だ。
「先生、不良達の取り締まりご苦労様でした」
「ちょっと! 貴方今まで何をしていたのよ!? こっちは大変だったのよ!!」
「申し訳ありませんが今は時間がありませんので、後ほど説明させていただきます。 あの傭兵のせいで予想以上に時間がかかってしまい、連邦生徒会の混乱は深刻になってます。 先生、シャーレの地下へご案内致します」
こうして先生はリン副会長に手を引かれ、シャーレの地下へと向かっていったのだった。
「あーーもう! 一体なんなのよーーーー!!」
ユウカさんの叫びが、今ここに居る全員の声を代弁してくれた。
「お前達、無事か?」
「あ、Vさん!」
光学迷彩とサンデヴィスタンを解除した俺は信号弾の上がった場所へ向かい、銃撃戦でもあったのか荒廃した二車線道路で救出したスケバン達と合流を果たしていた。
「すいません、ウチらのせいで余計な時間稼ぎまでしてもらっちゃって……」
「別にいいさ、お前らが連邦生徒会に捕まって俺の事を喋られても面倒だと思っただけさ」
するとスケバン達が俺に整列し、腕を後ろに組んでから腰から曲げて頭を下げてきた。
「それでも! ウチらがVさんに救われたのは事実です! Vさんが時間稼ぎをしてくれなかったら、ウチらは全員連邦生徒会に捕まって散り散りになってました。 Vさんがいなかったら、また全員で集まる事はできませんでした!」
「あー、よせよせ、そういうのは慣れてないんだ」
「それに、あのメモと信号弾もVさんですよね? 逃げ切ったら使えって?」
「アレは、戦車の中にあった物を拝借しただけさ。 俺の持ち物じゃない。 ほら、続きはブラックマーケットのレストランでワカモさんと合流してからにしよう」
道路で銃撃戦にでも巻き込まれたのか、横転したトラックに近づきながらスケバン達を手招きする。
「お前らそっち持て、端のとこだ。 向かい側には誰もいないな? いくぞ」
俺はトラックの荷台部分掴むと、ゴリラアームを使って横転したトラックを立ち上がらせた。
立ち上がったトラックを見て呆然と立ち尽くしていたスケバン達は、俺が手を鳴らすと急いで車体確認を行った。
「燃料、十分です!」
「エンジンかかりました!」
「タイヤは……ちっとボロボロですがパンクはありません!」
「荷台に荷物がありますが、退かせば全員入れそうです!」
「よし、全員乗車! とっととD.U.地区からトンズラするぞ!」
リーダーの一声で全員がキビキビとトラックの中へ詰め込まれていく。 あんだけ数がよく綺麗に入れるな。
「どうぞVさん!」
そう言って運転席に座ったリーダーが助手席を指をさした。 どうやらここがVIP席らしい。
「ようやく車に乗れるのか」
俺が乗車するとトラックは静かに出発し、D.U.地区を抜け、ブラックマーケットへと向かった。
これで、俺のキヴォトス最初の仕事は幕を引いたのである。
メインジョブ 『目覚め』
・連邦生徒会と戦闘を行う
ジョブ完了
神秘ポイント+1
ようやくプロローグ編が終わりました。
多くの書き直しを経て、どうにかここまで漕ぎ着けました。 これも応援してくださった皆様のおかげです。 文才のない知力0の頭サイバーサイコな作者ですがこれからも何か変なとこがございましたら気兼ねなく感想や活動報告で教えて頂けると幸いです。
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