目的地までスキップする。
「Vさん、つきましたよ」
いつの間にか沈んでいた意識が、スケバンの声によって浮上した。
「……ん、そうか」
どうやら車内の心地よい揺れに誘われて寝てしまっていたようだ。 しまった、街並みやら、ラジオの内容に耳を傾けようと思っていたのだが……疲れが溜まっていたようだ。
「……!」
声を出さずに背伸びをすると、寝てる間に行われたサイバーウェア自己メンテナンスの報告がキロシに映りだす。
『メンテナンス完了。 異常なし、リパードクの定期検診まで6ヶ月」
嫌な現実をサービスで教えてくれる眼球に思わず舌打ちをしてしまう。
インプラント手術ができるリパードクなんてこの世界にいるのだろうか? いるにしても、いないにしても、この問題はいつまでも放置していいものじゃない。 アビドス自治区のゴーストタウンで起きたようなサイバーウェアの不調が戦闘中にでもなったら大惨事だ。 今すぐじゃないにしても、解決策を考えなければならない。
「とはいえ、どうすればいいんだか……」
幸いにも、アラサカタワー突撃直前にリパードクに寄って最終調整を済ませたばかりだ。 流石に親友のヴィクターの所で調整はできなかった……いや、厳密に言えば避けたのだ。
今から一人でアラサカタワーに突撃するから最終調整よろしく!
そんな事言おうものなら手術台の上で永遠に拘束されるだろう。 なんだったら麻酔なしの特別料金インプラント手術コースになりかねない。 お代はお前の命な。 そう言う車体メンテナンス用のスパナを持ったヴィクターを想像できてしまう。 インプラント手術で絶対それ使わないだろ。
どんなに最強な傭兵でも専属リパードクには頭が上がらないものである。
俺が脳内ヴィクターにブルリと身を震わせると、トラックを運転していたスケバンリーダーが心配そうな顔を向けてきた。
「どうかしました? クーラーが強すぎましたか?」
「いや、大丈夫だ」
もしあの時、俺が生きて帰ってたらヴィクターに殺されてたんだろうな……そういえばジョニーは大丈夫だろうか? 殺されてない事を祈ろう。 最悪の場合第二のアダムスマッシャー(剥製)になってるのかもしれないが。 まあ、ジョニーなら別にいいだろう。
遥、遠い何処から、手術台に縛られて車体チューニング用の工具一式に囲まれた汚い妖精の断末魔が聞こえた気がするが、聞こえなかったことにしよう。
「ここがブラックマーケットか」
ブラックマーケットと聞いて、碌に整備もされていない荒れ放題で黒ずんだ場所を想像していたが、どうやら間違いだったようだ。
「ナイトシティよりもずっと綺麗じゃないか」
建物には確かに銃痕やら爆発の焦げ跡やらと傷はあるが、道がゴミに埋め尽くされてるという程ではない。 それに殺意をばら撒きながら物々しい雰囲気を出す連中もおらず、多少の警戒はあれどそれ事態が治安悪化を招いているようには見えない。
「少なくともBDと『アレ』を使って腰を振るう奴はいないようだな」
ナイトシティの汚すぎるありふれた一コマを想像して、すぐさま切り捨てた。 そこでスケバン達が全員降車を終えたようだ。 やはり狭かったのだろう、スケバン達は全員ヘロヘロになっていた。
「それじゃあ店に入っちまいますか」
スケバンリーダーが『営業休止』の張り紙の貼られた鏡張りのスライドドアを2回ノックし、そのあと5回ノックした。 するとドアは横へと滑り、来店を知らせる音が店に響いた。
「店の名前は……『レストラン』? ブラックマーケットのレストランで合流ってそういうことかよ」
俺はスケバン達の後に続くように、レストランへと足を踏み入れた。
時刻は既に夕暮れ時、狐の面をつけた停学中の生徒ワカモはD.U.地区からブラックマーケットまで爆走していた。 それはまるで火のついた車のように、その熱を冷まさせるかの如く、全身に風を受けて走っていた。
普段であればこんな事はしないだろう。 車やバイクを勝手に拝借したり、タクシーに銃口を向けてお願いをしたりなどで済ませるのだが、今のワカモは通常ではなかった。
(なんなんです、なんなんですの!? いったいなんなんですか!!?)
ワカモ心の奥底から無限に湧き上がるこの昂り、鳴り止まぬ心臓の高鳴り、いつまでも残り続ける脳裏と瞳に焼きついた先生の姿、耳の中で反響を続けるあの声、この未知の感情によってワカモは熱暴走していた。
爆走すること数時間、気づけば合流予定場所の『レストラン』へと到着、未だに心は平常を取り戻せてはいないが、これ以上時間をかけ、仕事仲間の機嫌を損ねるわけにもいかなかった。
普段であればどんな相手だろうとワカモが相手に合わせるということは絶対になかったのだが、今回ばかりは話が違う。
「傭兵、V」
少しだけ戦闘を拝見したが、キヴォトスの住人とはまるで違った。 戦いに赴くスタンスというべきか、緊張感とでもいうのか、キヴォトスの生徒に比べても戦いに向ける姿勢が天と地ほどの差があった。
(アレは間違いなく、人を殺していますわね。 しかも大量に、夥しい数を)
しかも何より相手に向ける視線だ。 殺気なのは間違いないが、余りにも感情が乗っていない。 まるで機械のようだった。 そして機械は殺気なんて放ったりしない、そこが異質さの根幹だった。
(殺す必要があるから殺した、仕方ないから殺した、生きるために殺した、そんな殺しを繰り返しすぎてああなったのでしょうか)
おそらくアレは私の忠告は聞いていても、殺す必要が有れば迷いなく殺人を犯していただろう。 ワカモからすればVという傭兵はキヴォトス最大の爆弾に見えて仕方がなかった。
(とはいえ、実際に話が通じない相手ではないことは確認いたしましたし、それに普段は割と気の良い人、かなりのお人好しでした)
考えを纏めながらレストランのドアを2回ノック、そして軽い深呼吸した後5回ノック。 するとドアは音を鳴らしながら横へと滑り、その光景をワカモに叩きつけた。
「もぐもぐもぐもぐもぐもぐもぐもぐもぐ…………」
すんげー目をキラッキラに輝かせて一心不乱に山盛りポテトを頬張る傭兵がそこにいた。
「…………」
さっきまでの考えはどこへやら、遥か地平線の彼方まで吹き飛んでいってしまった。 むしろこんなのに頭を抱えていたのかとバカらしくなってきた。
「Vさん、Vさん! ワカモさん来てますよ!」
ピタリ
スケバンの声でようやくワカモに気づいた傭兵はポテトに手を伸ばした姿勢のまま固まった。
ゴクリ
そして頬張っていたポテトをクロームの力を借りて全て胃へと流し込んだ。
「……」
「……」
ワカモの怪訝な顔とVの何も考えてない顔が交差し、Vが手の上に顎を乗せ口を開いた。
「さあ、依頼主様。 報酬の話をしようか」
カッコつけながらそんな事言い出した知力3の傭兵の頭をワカモは軽く叩いた。
「なんでだ!?」
「そういう事は口周りの食べカスを拭いてからにしてくれません?」
このどうにも強いけどイマイチ締まらない傭兵にワカモはため息をつきながら、山盛りポテトのテーブル着いたのだった。
「先ずは交渉より先にポテトを処理してくださいな?」
「あ、じゃあおかわり」
「撃ち抜かれてぇのかバカやろう?」
交渉するって言ってんだろうが。 ワカモがここまでイラっときたのは、初めてだった。
貴方はどれくらい知識がある?
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