サイバーパンクと青春記録   作:水面どり

17 / 65
遅くなって申し訳ございませんでした。


14話 メインジョブ 『砂塵の逃亡劇』 2

結局あの後、交渉を後回しにして仕事終わりの打ち上げという形で遅めの昼食、いや早めの夕食が取られることになった。

スケバン達もドリンクバーでいろんな味を試したり、いろんなソースを混ぜて遊んだりしながらも、キッチンの奥からレトルトやら冷凍食品やらを取り出して食事をしたりしながら、思い思いにこの時間を過ごしていた。 その中でワカモだけが眉を寄せて深いため息を吐いていた。

 

「はあ……どうしてこんなことに……」

 

「どうしたワカモさん? 具合でも悪いのか?」

 

俺はスパゲッティを音を立てながら啜り、依頼主の物憂げな様子を見た。 どうにもここに来てからずっとあの調子だ。 シャーレの地下で何かあったのだろうか?

 

「……いったい誰のせいだと……もういいですわ」

 

ワカモはそう言い捨てると水の入ったコップを2口飲み、此方へと改まって向き直り口を開いた。

 

「今回のお仕事、お見事でしたVさん。 見事に連邦生徒会のセキュリティシステムを破壊し、そして増援までも翻弄していただきました。 その活躍はそんじょそこらの生徒では到底、不可能な芸当です」

 

「よしてくれ、寧ろ俺は先生にいいように扱われただけさ、我ながら全く情けない話だと思うがな」

 

今更だが、なんだあの戦略眼。 ナイトシティだと基本的には物量のゴリ押し、もしくは圧倒的な技術力の差で圧倒するのが基本だ。 俺みたいに超強力な基幹システムしかり、強力なサイボーグで更に強化した超エースを集めた鎮圧組織マックスタックしかり、全身サイボーグの企業の最高テクノロジーオンパレードのアダムスマッシャーしかり、戦略なんて圧倒的な個の前には粉砕されるしかないと思っていた。

 

「鼻っ柱を叩き折られたよ。 まさか子供、生徒にあそこまで綺麗なヘッドショットを叩き込まれるなんて夢にも思わなかった」

 

どうやら俺もアダムスマッシャーと同じようにテクノロジー至上主義者側の人間だったようだ。 あの時、生体モニターを体に搭載していなければ、負けていたのは俺だっただろう。

 

「生体モニターと血液ポンプを念のために積んでおけと助言したジョニーは大正解だったわけだ」

 

今からテメェと俺はアラサカに正面から喧嘩吹っ掛けるんだ、命が幾つあっても足りるわけねぇだろ。 汚い妖精のありがたいお告げに中指を立てながら、俺は普段積んでるサイバーウェアを渋々外して生体モニターと血液ポンプを体に導入していたのだ。

 

「こっちに来ても、結局アイツに助けられるとはな」

 

お前は基本的に考えが無さすぎるんだよ、だから失敗からしか学べない。 この後どうなるかぐらい考えてから行動に移せバカ。

 

そんな相棒の嫌な言葉を思い出してしまうが、グゥの音も出ない正論なので舌打ちしながら受け取ることにしよう……実践できるかは怪しいが。

 

「Vさん、ワカモさん、お待ちどうさまです。 ワカモさん、顔が赤いですけどどうかしました?」

 

「い、いえ!? 全然別に!? 先生とか気にしてませんけど!!?」

 

「何言ってんだアンタ?」

 

ワカモが俺の話を黙って聞いていると、スケバンとそのリーダーが幾つかの料理を同時に抱えてきた。 俺と少しだけ顔を赤くしてるワカモがそれを受け取ってテーブルに並べていく。

 

「あの、Vさん」

 

「あん? なんだよ?」

 

俺が胸を弾ませながら、どれを食べようかと考えていたのにワカモがそれを静止させた。

 

「それを全部、食うつもりですか?」

 

「? そのつもりだが?」

 

そこに並べられたのは、ポテトフライ、たこ焼き、ピザ、クリームソーダ、ハンバーグ、ドリア、等々……ファミレスの定番と呼ばれる物がテーブルを埋め尽くしていた。 どの料理もナイトシティのものと違い、香ばしく、食欲を刺激する匂いを放っていた。

 

「おお、コレがキヴォトスの食事! 匂いが違う! 艶が違う! キブルやスコップの入ってない天然食材!! 絶対美味い!!」

 

「あなた達、コレに何か入れました? すごいハイテンションなんですけど」

 

「いえ全然。 チンしただけです」

 

何か外野が五月蝿いが、今はこの食事を楽しもう。

ポテトのサクサクとした塩っ気の効いた味わい、たこ焼きの熱々とふわふわしながらも中のタコがプリッとした食感が、ピザはナイトシティと比較してもし尽くせない程の豊潤な旨みの数々、クリームソーダのひんやりしたアイスと炭酸の効いたメロンソーダの絶妙なハーモニー、ハンバーグの紛い物が一切入っていない肉の油とソースの天才的な化学反応、ドリアは米の一つ一つがみずみずしく、それらに絡まる溶けた甘いチーズとマカロニ……なんということだ、食べ物の向こう側でジャッキーが手を振ってる!

 

「全部! 全部美味い!! ナイトシティはクソだな!! 何が夢の街だ、こっちの方がよっぽどドリームに満ちてるじゃないか! ここが約束されたメジャーってやつだなジャッキー!!」

 

「どうしましょう、完全に自己世界に入ってしまいましたわ」

 

「Vさん? おーい、Vさーん?」

 

 

 

「何やってんだいアンタたち?」

 

キヴォトス食の悦に浸っていると厨房の奥にある階段から貫禄のある声が降りてきた。

 

「あら、いましたのオーナー?」

 

ワカモの声に合わせて首を厨房へと向けると、そこには鋭い目つきの和服を着た黒猫獣人が煙管を吹かしていた。 どうやらワカモと知り合いのようだ。

 

「なんだワカモかい。 珍しいね、アンタが大所帯とは……もう出所するとは、矯正局じゃ随分と手緩い歓迎を受けたようだね」

 

「うふふ、オーナー? 私が出所するまで大人しくすると本気でお思いでしたか?」

 

「ああ、随分と狐どもに良いようにやられたようだったからねぇ。 そのまま尻尾振って山に帰るのかと」

 

「あらあらおほほ、口だけはホントに達者ですわねクソババア」

 

「お前さんが口も喧嘩も弱いだけだよクソガキ。 あとアンタの荷物は上に置きっぱだよ、さっさと持っていっておくれ。 邪魔でしょうがないよまったく……」

 

どうやら仲睦まじい関係とは言い難いようだ。 ワカモは額に血管を浮き上がらせ、それをオーナーと呼ばれた黒猫獣人がどこ吹く風と言わんばかりに返している。 周りのスケバン達はそれを遠巻きに観察していた。

 

「ワカモさん相手にあの態度……あの人もすげぇ人なのかな?」

 

「さあ……? 昔世話になったとか、そう言う感じじゃない?」

 

「そう言う割にはピリついてるというか、なんというか」

 

「スケバンさん達おだまり」

 

ワカモがひと睨みすると全員綺麗にテーブルへと着席した。 そしてメニューを使って顔を隠してヒソヒソ話を再開した。 噂好きの乙女の口に戸は建てられない、ということだろうか。

 

「随分と仲のいいお友達じゃないか」

 

「そんなんじゃありません。 ただの肉壁です」

 

こいつ、本人達を前に言い切った。 確かに節々からそんな雰囲気を感じ取っていたが、もしかしてワカモはジョニーよりヤバいやつなのだろうか?

 

「へえ、俺も肉壁かい?」

 

「避けられたら盾にならないので肉壁未満ですかね」

 

俺がジョークを放ったら、大袈裟な身振り手振りをしながらワカモもジョークを返してきた。

そんなやりとりを顎を撫でながら、どこか感心したような声をこの店のオーナーは上げた。

 

「ほぅ、あのテロ狐に洒落が言い合える娘ができるとはねぇ。 あんた、名前は?」

 

「Vだ。 よろしく頼むよオーナーさん」

 

「それはこっちのセリフさ、このバカ狐が道を完全に踏み外さないように見てやってくれないかい? 見ての通りの危険な娘でね、何をしでかすかわかったもんじゃないのさ」

 

「逆、オーナー逆、私がこの食べ物バカを見てるんです! なにしでかすか本当にわからないんですよコイツ!?」

 

ワカモが山盛りの空き皿と俺を交互に指差して、異議を唱えた。 おい、誰がバカだこの小娘。

 

「じゃあいいじゃないか、似たもの同士で」

 

オーナーは呆れたように言い捨てると、リモコンを取り出してテレビをつけようとポチポチといじり始めた。 だが故障しかけているのか、客全体に見えるように宙吊りにされたテレビはウンともスンともいわない。

なんだろう、この人からはナイトシティのフィクサー、ウエストブルックを牛耳るワカコさんと似た雰囲気を感じる。 少なくとも俺が頭を上げれる存在じゃないだろう。

 

俺が最後の皿を空き皿のタワーへと乗せると、周りから拍手が送られた。 スケバンの一人がそそくさと空き皿を回収して厨房へと運んでいくと、別のスケバンが俺のコップに水を注ぎながら疑問を投げかけてきた。

 

「Vさんは健啖家っすね。 いつもそんな量食ってるんすか?」

 

「いや、普段だったらこんな量は食わないな。 余りにも美味しすぎて食いすぎてしまった」

 

コップの水に軽く口をつけて、痺れや毒が無いのを確認してから一口二口と飲み始める。

 

「美味しすぎるって、ただのファミレスのレンチン料理っすよ? 普段どんなの食ってたんすか?」

 

「うーん、そうだな……カリカリと虫の合わせたなんちゃって肉に健康度外視にありとあらゆる味付けをしたホットドッグ、 イナゴのピザとかかな?」

 

「虫? カリカリ? イナゴピザ? マジで何処で育ったんすかVさん?」

 

と俺がナイトシティのクソマズ飯を語っていると、オーナーがようやくテレビに電源を入れるのに成功した。 ブラウン管と呼ばれるだいぶ古い形のテレビには、整ったスーツを着たロボットがニュース内容を読み上げる姿が映し出された。

 

「キヴォトス特有の生きてるロボットとか、いつまでも慣れねぇな」

 

複雑な感情を水を飲む事で落ち着けようとした……

 

 

 

『えー続いては、「連邦生徒会、連邦生徒会長の失踪を発表」

連邦捜査部シャーレの手により行政執行権を回復に成功した連邦生徒会は、連邦生徒会長の失踪を発表しました。 失踪理由は未だ不明であり、捜索に力を注ぐとこれからの方針を口にしました』

 

「うわ、見てくださいよ、この連邦生徒会の首席行政官様の仏頂面、いつ見てもムカつくっすねー」

 

『行政執行権復旧の際、矯正局を脱走し、徒党を組んで妨害してきた「七囚人」の一人、厄災の狐、孤坂ワカモは未だ逃亡しており、その目撃情報を募集しております』

 

「ワカモさん、なんか凄い肩書き持ってたんだな」

 

「別に名乗った記憶はございませんが、そうらしいですわね」

 

 

 

 

 

 

『そして新たな指名手配犯として、傭兵を自称する謎のテロリスト「V」についても情報をーー

 

 

 

 

 

俺は飲んでいた水を全部吹き出し、対面に座っていたワカモをビショビショにしてしまった。

 

 

 

当然、『テロリストV』はワカモに殴られた。




マッドスタックじゃなくマックスタックだろおるるああああああん!!
バカな作者で申し訳ない!!

貴方はどれくらい知識がある?

  • サイバーパンクは名前だけ知ってる
  • サイバーパンクは動画勢
  • サイバーパンクは雰囲気でプレイ済み
  • サイバーパンクはガチでやった
  • サイバーパンクで知らないことなど何もない
  • サイバーパンク? なんそれ?
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。