「さて、いい加減に報酬の話としましょうか」
「おう」
外皮系サイバーウェアのキチンを思いっきり殴ったせいで手を痛めたワカモと顔の右側を赤くした俺はようやく本題に入る事ができた。 打ち上げは締めの段階に入ったようで、全てのテーブルがスッキリ綺麗に片付けられスケバン達も静かに此方を向いている。
「先ずは約束通り、3万クレジット」
ワカモはテーブルに『10000』と書かれた黄色いカードを3枚並べた。 コレがこの世界の通貨か。 そう思いながら1枚手にして眺めて見る。
「電子通貨の類か、使えるんだよな? 期限切れで使えませんとかやめてくれよ」
「そんな図書カードじゃないのですから」
俺がクレジットをテーブルに戻すと、スケバンの一人が木箱を持ってテーブルの脇に音を立てながら置いた。
「此方はシャーレに置いてあった銃になります。 お好きな物を一丁どうぞ」
木箱の蓋が開くと、そこには多種多様な銃の数々が押し込められていた。 アサルトライフル、ピストル、スナイパーライフル、サブマシンガン、ショットガン、ライトマシンガン、リボルバー、そして……
「ほう……どれもナイトシティじゃ見た事ない銃ばかりだな。 流石異世界と言うべきか……これは?」
赤いカラーリングを施されたタンクに、独特のフォルムの銃部、そして三角のマークに危険を知らせる『!』の文字、戦闘において使い道は限られるが、もし効果発揮をすれば一気に戦況を傾けられる代物の名前は
「火炎放射器……フレイムスロワーです」
「向こうでも使った事はないな」
タンクから伸びる銃部に手を伸ばし、状態を確認してみる。
タンクから流される燃料を受け止める貯蔵器、噴出の要であるバネ式の弁、噴出した燃料に火を灯す点火システム、どれも新品同様の状態だ。
「だがノズル部分は型が古すぎるな。 ここは買い替えが必要だな」
次にバックパック式の燃料タンク、銃撃戦に巻き込まれても引火しないように重装甲が用いられてるが、それが原因でだいぶ嵩張ってしまっている。 コレでは機動性が大きく落ちてしまう。
「運用するにしても、もっと工夫がいるな」
近づかなければ意味がない兵装なのだが、このままでは使い道が乏しすぎる。 リーチ、爆発の危険性、機動性、この3つの難題を解決しなくては。
「それになさいますか? 随分と難のある武器のようですが……」
「ああ、コレを貰おう」
何にしても今まで入手した記憶のない武器だ。 確かに使いづらい武器ではあるがコレクションとしての価値もある。 報酬はこれでいいだろう。
フレイムスロワー クラス2
+炎上率100%
戦闘にはあまり向いていない武器。目立つ上に動きも遅くなる。火をつけると言う点では100点満点。
炎の取り扱いには十分注意しよう。
「とはいえ、受け取ったは良いが何処に仕舞ったものか」
俺がウンウンと頭を捻っていると、スケバン達から叫び声が上がった。 今にも銃声がなりそうな程、剣呑な雰囲気だ。
「あ゛あん!! アタシたちに報酬が無いとはどう言う事だワカモさん!!?」
ダン! とスケバンのリーダーがテーブルを強く叩きつけ、ワカモに眼を付けて威圧するが、彼女は気にする素振りすらなく淡々と言い放った。
「当然でしょう。 貴方達、今回何かしました? ビルのセキュリティはVさんと私が破壊、連邦生徒会の足止めも戦車を使っても満足にできてない。 見捨てられて連邦生徒会に捕まってないだけ御の字ではございませんか?」
「ぐ……それは……」
正論を並べたワカモに何も言い返せないスケバン達。 さっきの勢いもすっかり萎んでしまっていた。 気の毒とは思うが、コレに関しては当然の事だと思うし、第一に俺が口を挟む事じゃない。 俺はあくまでも傭兵なのだ、決して依頼主側ではない。
「ですのでさっさと帰って頂いて結構ですよ。 ご安心ください、ここでの飲み食いの代金ぐらいは払っといてあげますので」
「本当か、存外に気前がいいじゃないかワカモさん」
「ええ、勝手に食い始めていた貴方のボーナスから引いてますから」
割り勘とか、各々食った分を払うと考えていたが予想外な朗報が齎された。 だが直ぐに帰ってきた答えはボーナス天引きという悲しい現実だった。 流石狐、人の鼻を摘むのが得意のようだ。
「で、でもこれからアタシたちにどうしろと!? もうD.U.地区には当分戻れないし、金だって少ない。 全員行き場所がもう……」
「知りませんよそんなの、自業自得でしょうに」
ワカモの発言どおり、俺も自業自得としか言えない。 道を踏み外した者が失敗すれば多くの物を失うのは珍しい事でもなければ予想外の事でもない。 どうやらそういった点はナイトシティと同じのようだ。 命があるだけ儲け物という事だ。
だが時偶、幸運に恵まれて情の深いフィクサーに拾われる者だっている。
俺がそうだ。 紺碧プラザであんな大失敗した俺にナイトシティのフィクサー達は仕事を与えてくれた。 なんだったら力を貸してくれた事だってある。 捨てる神あれば拾う神あり、何処の諺だったか。
「なんだいアンタ達、行くアテもないのに連邦生徒会に喧嘩売ったのかい? バカだねぇ……」
今回も似た話という事だろう。 やれやれと言いながらスケバン達の前に出て、何人かに目をつけると指を突きつけた。
「アンタとアンタ、それとそこの二人、採用。 ウェイトレスとして働きな」
「は? いや急に何だよ婆さん?」
「行くアテがないんだろ? ちょうど良いと思ってね、ババア一人でファミレスを運営するのも限界だと思っていたし、さっきからテキパキと皿を片付けしてたからバイトの経験もあるんだろう? それに住むとこなら隣の廃ビルが空いてるよ」
「いや、でも」
「それに隣の廃ビルでやたらドンチャン騒ぎするヘルメットもいてね、それも夜中にギャンギャンと迷惑なんだ。 誰か掃除してくれないもんかねぇ」
「……いいのかよ」
「ああ、最近じゃこの辺りもカイザーとかいう連中が幅を利かせていて営業もままならないのさ。 隣の廃ビルだって、カイザーが介入したせいで建設が頓挫したマンションなんだよ。 どうせ誰も使いやしないんだ、うるさくしなきゃ構やしないよ」
俺はそのやりとりを頬杖をつきながら見守りながら、ワカモに尋ねた。
「ワカモさん、アンタこうなるのわかってただろ」
「さあ? 何の話かさっぱり」
嘘だな。 本当に報酬渡す気がなければ最初から俺以外をこの店から叩き出していたはずだ。
「お人よしだな」
「貴方には言われたくありません」
俺はいつの間にか仮面を付け直していたワカモにウィンクをかまして煽ると、くだらないと言わんばかりにそっぽを向かれてしまった。
「そうと決まれば……V! アンタ傭兵とか言ってたね、さっそく頼み事してもいいかい? ワカモ、アンタにもだ! 最近ブラックマーケットでデカいツラしたロボット連中の鼻を明かそうじゃないか」
と、オーナーからご指名を頂いてしまった。 急に頼んでくるとは只事ではなさそうだ。 ワカモもそれを感じ取ったのか怪訝な視線をオーナーに投げている。
「どうやらシャワー浴びて布団で一眠りとはいかなそうだな」
「いい加減好き勝手に暴れたいのですが」
シャーレのビルで暴れていたはずだが、どうやらまだ暴れたりなかったらしい。 こいつさてはサイバーサイコか?
オーナーが一枚の紙をテーブルに広げ、駒を置いていく。 コレは地図か? 今までデータチップで作戦のやり取りをやっていたので新鮮に感じながら、テーブルに前屈みになり作戦概要に耳を傾ける。
「ウチもウェイトレスを雇うんだ。 いい加減営業再開と行きたいが……カイザーの連中がここ最近ブラックマーケットで幅を利かせている。 それもなんの脈絡もなく急にだ。 隣の廃ビルしかり、ウチの営業停止の通告してきたりね、コイツは妙だと思ってツテを使って探りを入れてみたら、アビドスに何かを運び込んでるときたもんだ。 コイツがなんなのか調べたい。 もしかしたらカイザーの弱みを握れるかもしれない」
さて、と言いながらオーナーは手を叩いて幾つかの駒を手に取りながらペンで作戦地点と思われる場所に丸を書き込んでいく。
「ワカモ、アンタにお望み通りの大暴れができる仕事だよ。 V、ステルスはできるかい?」
「ああ、光学迷彩がある」
「すごいじゃないか、最高だよ。 今回のターゲットはカイザーPMCの輸送車、場所はブラックマーケットとアビドス自治区の間のこの区間さ」
道に黒い四角形の駒が置かれ、それがブラックマーケットからアビドス自治区の境界線の作戦地点へと移動する。 そこに更に狐の駒が置かれた。
「ワカモ、輸送車以外は好きにしな。 この車両が通る時は周りに一般人はいない、せいぜい火の海にでもしてやりな」
丸い駒に何かをマジックペンで書くと、それを車両の駒の上に置いた。 駒にはVの文字が記されていた。
「なるほど、私が暴れている間にVさんが車両を奪取するのですね」
「ああ、ワカモは元々見境なしのデストロイヤーでキヴォトス中に名は知れてるから今更目立っても問題はない。 車両が消えても粉々に粉砕されたと思ってくれたら儲け物さ」
Vの駒を載せた黒い四角形の車がアビドス自治区の更にその先、ゴーストタウンへと移動する。 そこには赤、黄色、青の三つの車両の駒、そして三角形の灰色の駒が配置された。
「Vはその後アビドスのゴーストタウンでスケバン共と積荷を別のトラックに変えておくれ。 全部でトラックは3台、うち2つは囮だよ。 Vには本命の車両を別の車で追従して護衛して貰う。 ワカモはとにかく強奪場所で暴れ続けな、カイザーの視線を独り占めとは罪な女だね」
「機械のモノアイを向けられても嬉しくありませんね」
そう言いながら、オーナーが降りてきた階段へと登っていくワカモ、 そういえばオーナーが荷物がどうとか言っていたが、それを取りに行ったのだろうか?
「本命がこの店まで到着すれば作戦完了さ。 本命以外のトラックは適当な場所まで運転したらそのまま捨てていいよ。 どうせ本命以外は廃車寸前のオンボロだ。 安心しな本命の方はキチンとボロボロに見えるように塗装は施す。 スケバン共、トラックは裏手にあるからとっとと汚してきな!」
「「「「「は、はい!!」」」」」
そうオーナーが吠えるとスケバン達は全員起立してキビキビと店の裏手へと向かっていった。
「作戦概要は以上だよ。 何か質問はあるかい」
と、聞かれてしまったので改めて作戦を振り返る。 そうだな……
「スケバン達を今のやりとりで掌握したオーナーがかなりのやり手の婆さんだという事は理解したが……一体何者なんだ?」
「はっ、乙女の秘密は暴くもんじゃないよ」
乙女って歳かよ。
ビュン!
そう考えた直後に何処に持っていたのかもわからない包丁が脳天めがけて投げられた。 咄嗟にしゃがんで回避できたが、投げられる直前まで全然反応できなかった。 心臓をバクバクと鳴らしながら両手を上げて物申す。
「何も言ってねぇよ」
「目が言ってた」
俺の目はキロシなんだが。
投げられた包丁は、何の変哲もない窓ガラスに割れる事なく突き刺さっていた。
メインジョブ 『砂塵の逃亡劇』
・作戦地点でワカモと合流する
アビドス編への布石(作者のノープラン戦略)
貴方はどれくらい知識がある?
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サイバーパンクは名前だけ知ってる
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サイバーパンクは動画勢
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サイバーパンクは雰囲気でプレイ済み
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サイバーパンクはガチでやった
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サイバーパンクで知らないことなど何もない
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サイバーパンク? なんそれ?