サイバーパンクと青春記録   作:水面どり

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なんか思いついちゃったので書きました。 そして残す事なく連続投稿ポイー。


17話 幕間 ホシノの苦難

アビドス高等学校、屋上

 

砂に覆われたその場所で、心地よい太陽の光に照らされたピンク色の髪をした少女、小鳥遊ホシノが廃校対策委員会のメンバーには『おじさんはお昼寝してくるね〜』と伝え、寝っ転がっていた。

だが寝ている訳ではなく、実際は目を閉じて昨日のパトロール時に遭遇したプラチナブロンドの髪をした傭兵の事を思い出していた。

 

(結局、アレはなんだったんだろう)

 

脳裏によぎるのは、残像すら見えるほどの圧倒的な速度。 その速度から叩き出される正確精密な連続射撃、放った弾丸全てが私達を囲んだバイクの弱点へと吸い込まれ、爆散し、周囲全てを炎に変えた。

 

(どう考えても、持ち前の射撃技術の賜物……じゃないよね?)

 

それだけではどう考えても実現不可能な速度だった。 かく言うホシノ自身もピストルを使う事もあるが、精密性ならともかく、あの一瞬で全てのターゲットに当てれるかと言われたら絶対に無理と答える。

 

「確か、サンデヴィスタン、だっけ?」

 

昼と夜を思わせるオッドアイの瞳を開き、寝っ転がった状態から飛ぶように立ち上がる。 風に乗って砂と共に屋上に飛ばされてきたゴミを自身を囲うように置いていき、あの時の状態を可能な限り再現させていく。

腰に下げたピストルを抜き、中に弾が入っていないのを確認した後、偽名にしか聞こえない名前の傭兵『V』のように顔の前に縦にして構える。

 

「サンデヴィスタン」

 

可能な限り早く6つのターゲットに向けて銃を抜き、引き金を引く。

 

カチッカチッカチッカチッカチッ、カチッ……

 

静かになる引き金の音が、6回順序よく響いた。 到底同時に6回鳴らすように撃つなどやはり不可能だった。 ピストルを腰に収めて、その場に座り込んでウンウンと頭を捻らせる。 少なくともあの『サンデヴィスタン』という言葉が魔法の類ではないのはわかった。

 

(いったいどういう仕組みなんだろう? ピストルをかなり軽量化してる? いやでもあの銀色のピストルがとても軽いようにはみえなかったし……まさか腕に何か仕込んでいて、それが同時に発砲していた? でも音はどれも同じ射撃音だったはず)

 

銀色のピストルから吐き出されたその音は、もはやリボルバーやハンドキャノンの発砲音同然の衝撃を放っていた。 当然そんな威力で撃てば反動だってタダな訳がない。 撃ち方やカスタムによっては反動を軽減できるかもしれないが、アレを完全に消し去るなど通常の方法ではまず無理だ。

 

(だけどVちゃんはその問題をクリアしてあの高速射撃をモノにしてる)

 

本当にどうやっているのだろうと再び頭を捻らせようとした時、肩をチョンチョンと叩かれた。

 

「うひゃあ!?」

 

ホシノが驚きながら振り返ると、そこには愛すべき後輩がいた。 白いセミロングの髪に空のような青い瞳、砂狼シロコがキラキラとした表情でそこにいた。 はて、と何故こんな表情向けられているのかわからないホシノを無視して目の前の普段はクールだが一度走り出せば止まらない白い暴走機関車が口を開いた。

 

「ん、ホシノ先輩! 今の何!」

 

「え、えっと……シロコちゃん? どうしてそんな興奮してるの?」

 

「それはホシノ先輩がすごい早撃ちをしてたから! かっこよかった!」

 

あー、見られてたかー。 と少し恥ずかしくなりながらも、カッコいいと言われてまんざら悪い気はしないホシノ。 でもスゴイ早撃ちと呼ばれても、実際にはもっと凄まじい早撃ちを目撃したホシノとしてはあまり喜べない言葉でもあった。

 

「えへへ〜、そうかな〜。 でも、おじさんなんてまだまだだよ」

 

若干の不安もあったが、この様子なら暴走することもないだろう。 ホシノは僅かに感じていた緊張感を解き、今まで通りの緩い言葉で返した。 それが間違いだとも知らずに。

 

「私も真似してみる」

 

「んぇ?」

 

おっと? 雲行きが怪しくなってきたぞ?

 

シロコは己の愛銃、WHITE FANG 465を縦に構えて、つぶやいた。

 

「ん、サンデヴィスt」

 

シロコがその言葉を完全に言う前にホシノがその口を迅速に塞いだ。 その表情は若干赤く、笑顔の表情なのに妙な迫力があった。

 

「シ、シロコちゃ〜ん。 いったい何処から見てたのかな〜……」

 

「ホシノ先輩がゴミを拾って並べてるところから」

 

見られていた。 しかも最初から。 相手には悪意がないのはわかってはいるが、だからこそ恥ずかしい。 しかも相手は暴走機関車シロコだ。 この口をどうにか塞がなければ対策委員会のメンバー全員に話しかねない。

 

 

 

「ん、ホシノ先輩がすごいカッコいいセリフを早撃ちしながら言ってた」

 

からの全員の気まずそうな視線が自分に注がれる光景が見える見える。 先輩としての尊厳にヒビが入りかねない。

 

「ま、まあそう言う時もありますよね〜」

 

「え、えっと、あまり気になさらないようにしてくださいねホシノ先輩」

 

「ホシノ先輩ってアニメとかの影響とか受ける人なんだ……なんか意外かも」

 

 

 

ダメだ。 そんな事を愛すべき後輩達に言われたら立ち直れる気がしない。 というかしばらく顔を合わせられなくなる。 そして死にたくなる。

 

「シ、ししシロコちゃ〜ん、ちょーっとおじさんとお話ししようか!」

 

「ん、そうだった。 対策委員会のみんなが話をするからってホシノ先輩を呼んできて欲しいと頼まれたんだった。 続きはみんなの前で話そう」

 

違うそうじゃない。 みんなの前じゃダメなのだ。

 

さてどうするホシノ、暴走機関車からバージョンアップした暴走特急シロコ号を止めるには実力行使以外では相当厳しい難題だ。 まさか後輩に暴力を振るって黙らせるなど言語道断だろう。

 

シンプルにお願いしてみる? ダメだ、それだけではこの後輩は絶対に口を滑らせる。 物で釣ってみる? これもダメだ、シロコには強い物欲はないし、食事にうるさい訳でもない。

 

何かないか、砂狼シロコが夢中になっているものは……!

 

シロコがホシノの手を握って屋上の扉を開けようとしたその瞬間! ホシノに電流走る!

 

「シロコちゃん」

 

「何、ホシノ先輩?」

 

「銀行強盗したいって言ってたよね」

 

「うん、でもダメだってホシノ先輩やみんなが」

 

「……この事黙ってくれてたら、すぐには無理だけど“いつか”対策委員会みんなで銀行襲う事を約束するよ」

 

「本当!? 約束だよホシノ先輩!」

 

そう、いつかである。 つまりどんなに先送りしても許されるのだ。 後輩を騙した気がしないでもないが、嘘はついてない。 つまり騙してない。 QED。 意味は違うと思うがホシノは己にそう言い聞かせて一息つく。 これで未曾有の大災厄シロコから心の平穏が守られたのだ。

 

 

 

 

 

まさかこの約束が、割と早く果たされることになるとはホシノ自身も予想していなかった。

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