『スケバン共も所定の配置に着いた。 いつ始めても大丈夫だよ』
オーナーからの伝達をワカモにも伝え、屋上から下の大通りを走るカイザーPMCの一団へと視線を向ける。 先頭に戦車、すぐ後ろに輸送車、そのまた後ろが人員輸送車が2台。
「随分な数ですね。 とても輸送部隊とは思えません」
「周囲は人払い済みで夜中にコッソリ、その上戦車までお出ましとは、余程大事な物でも詰まってるのか……」
「もしくはアビドスに運び込んでる事がバレる事を恐れているか、ですねぇ」
戦車だろうが大規模部隊が展開されようが作戦に変更の必要はない。 ワカモと俺はもう一度銃に弾が込められてるのを確認し、行動を起こした。
「さて、カルガモの群れから子供をいただこうじゃないか」
「親ガモはお任せを、貴方はさっさと奪ってとっとと尻尾巻いて逃げてくださいな」
俺はワカモと別れ、屋上から工事用の足場を使ってビルの裏手に降りると、大通りから大量の爆発音と情けない悲鳴が飛んできた。
「な、なんだ!!? 地雷でも踏んだか!?」
「隊長、最後尾を走っていた人員輸送車が横転しました!! こ、攻撃です! 何者かから攻撃を受けています!!」
「うふふ、これはこれは……カイザーの皆様がどうしてここにいるのか分かりませんが、わざわざ網に掛かったカモを逃してやる筋合いも無し、このまま平らげてあげましょう」
「わ、ワカモです! 七囚人のワカモが、我々を攻撃してきました!!」
「ええい! 今朝は連邦生徒会を襲撃したと思えば、今度は我々か、見境無しにも程があるだろう!? 全員応戦せよ! 決して積荷を破壊されるなよ!」
慎重に裏手から表通りを覗くと、そこには赤黒い桜の花びらが舞う滅茶苦茶となった戦場が広がっていた。戦車は履帯を破壊され碌に動くことも出来ず、人員輸送車は横転して扉が歪んでしまったのか誰も出て来ず『ドンドン』と内側から叩く音が聞こえてくる。
残りは一台の人員輸送車に乗っていた8人と運転手の2人、動けなくなった戦車に乗っていた2人と部隊を率いていたやたらと大きな盾を持った隊長一人。 合計13人。 これがキロシのスキャンモードで視認できた全員だ。
ケータイを耳に当て、その内容をワカモへと報告する。
「ワカモ、敵は全員ロボット、全部で13、内1人が盾持ちだ。 援護は必要か、お嬢ちゃん?」
『必要ございません、貴方は頃合いを見て輸送車を奪ってください。 アレがいつまでもあると邪魔です。 あと次お嬢ちゃん言ったらマジで撃ちますよ』
だいぶドスの聞いた声が返ってきたので現場へと目を向け、輸送車を奪うタイミングを測る。 敵部隊には次から次へと銃弾の雨霰が降り注ぎ、阿鼻叫喚の様相を呈している。 と、ふと気づいた。
「あれ? ワカモの使ってる武器ってボルトアクションのスナイパーライフルだよな?」
何だあの連射速度? 何か特別なカスタマイズでもしているのだろうか? もし強化パーツ由来のものなら是が非でもクラフト方法を聞きたい。 ダメだ、とても気になって仕事どころではない。 よしワカモに聞こう。
「その武器の連射どうなってんだ? 何かの強化パーツとかか? クラスはどれくらいだ? もしかしてその武器のアイコニックの効果か何かで……」
『さっさと仕事しやがれ武器マニア』
ケータイから大変ご機嫌斜めな返事が返ってきた。 いけない、この声の感じはガチでお怒りのやつだ。 具体的に言うと、装甲輸送艇という名の戦車の中でジョークを言ってしまったらブチ切れたパナムぐらいお怒りだ。 あのあと戦車から蹴り出されて、単装機関砲を向けられ死ぬ気で走り回りながら命乞いをした記憶がある。
俺はそそくさとケータイをしまって仕事に戻る。 ふむ、確かジョニーに怒った相手を宥める時は贈り物がいいと助言されたな。
『テメェはスーパーヒーロー願望でもあんのかイカレ野郎? 人を助けすぎて、女との関係が至る所で乱立してるじゃねぇか。 悪い事は言わねぇ、今すぐ贈り物なり謝罪なりでご機嫌取りしてこい。 レリックより先に女共に殺されるぞテメェ』
『何言ってんだジョニー? 全員仲のいい友達だろ。 殺されるとかそう言うジョークは面白くないぞ』
『そういうとこだっつってんだろうが知力3野郎』
結局ジョニーが何を言いたかったのかはサッパリだが、不機嫌な女性には贈り物が1番という事だろう。 ワカモにも何か探してみるとしよう。
「でもジョニーの言う事をマトモに聞いていいのか? アレもアレで頭のおかしい奴だからなぁ……と、数が減ってきたな。 そろそろ行くか」
俺は物陰から光学迷彩を起動して、銃弾が飛び交う戦場のど真ん中にある目的の輸送車へと向かう。 だが戦況不利を悟った敵部隊の隊長が新たな指示を飛ばした。
「く、こうなったら……輸送車は今すぐ目的地まで走れ! コレは理事からの最優先命令である!」
ちょうどいい。 どうやら向こうは輸送車だけでも戦場から逃がすべきだと判断したらしい。 それはつまり輸送車がここを去っても誰も疑問に思わない訳だ。
「ワカモ、仕掛ける」
『了解しました。 ですが先程の件で後でお話がございます、後輩』
……高い和菓子とかで許してもらえないだろうか?
「さ、サンデヴィスタン!」
俺は逃げるように叫ぶと、加速した世界へと入り込む。 発砲音が水の中で反響するようにくぐもって聞こえ、隊長の飛ばす指示が鈍く、低く響く。 銃弾も、飛ぶ瓦礫も、ありとあらゆるものが遅くなる中、俺だけが近所を散歩でもするように歩いていく。
そして今まさにアクセルを踏もうとしてる輸送車のドライバーをゴリラアームで殴り倒し、助手席にどかした。
「悪いね、カイザーはクビになるかもしれないがこっちも仕事なんだ。 オーナーの怒りを買ったカイザーを憎んでくれよ」
そしてサンデヴィスタンの効果が切れ、いつも通りの激しい戦場が帰ってきた。 光学迷彩もまもなく切れてしまう、俺は輸送車のアクセルを踏み込みスケバン達との合流地点へと向かう。
「こちらV、輸送車強奪完了。 間違って撃つなよ」
『わかっております。 では作戦通りに私がここで暴れてカイザーの注意を引きます。 後はお任せいたします』
ケータイを切ったと同時に、背後から凄まじい爆発音が轟いてきた。 まさか周りのビルを全部爆破でもしたのだろうか? ミラーで後ろを確認すると、燃え上がった戦場、内側から爆発して廃車と化した戦車の上に仮面越しに赤く目を光らせるテロリストの姿があった。
「だいぶ……鬱憤が溜まっていたのか」
それとも俺への怒りか、前者だと嬉しいのだが。 ワカモに対するアプローチを考えながら、今度はオーナーへと連絡を取る。 電話を掛けるとすぐに応答してくれた。
「オーナー、輸送車の強奪完了。 合流地点に向かう。 ワカモはカイザーの連中と踊り明かすようだ」
『流石だねV、だけど問題発生だ』
オーナーからだいぶ低い声色でそう言った。 問題発生? 何があったのだろう。 もしやワカモが暴れすぎて作戦地域外に被害でも齎したのだろうか、と考えていると予想外な相手の名前が飛んできた。
『小鳥遊ホシノ、アビドス最強の生徒が合流地点周辺をパトロール中だという報告がスケバンから上がった。 奴の勤勉さのお陰で囮用のトラックが一台おしゃかにされた』
俺は片手をハンドルに預けたまま手を額に当て天を仰いだ。
小鳥遊ホシノ、俺がこの世界に来て初めて会った生徒にして、水をくれた命の恩人。 それが障害として立ちはだかった。 そして更なる情報『アビドス最強』という不穏しかない言葉。
『こう見えておじさん、超強いんだよ』
くそ、なんて最悪のタイミングだ。
「幸いなことに、乗っていたスケバン共は全員無事だ。 別のチームに合流してもらっている」
「オーナー、小鳥遊ホシノには俺が対応しよう。 一先ずこのまま合流地点に向かう」
『ああ、頼んだよ。 念の為に言っとくが、今回一番重要なのは私達の存在がバレないとこだ。 万が一にでもカイザーに気づかれたらまだ力のつけてない私達はおしまいさ。 重々気をつけてくれよ、V』
次回 VS暁のホルス(未定)
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