アビドス自治区.ゴーストタウンのトラックが突撃した廃墟
夜空に点々と光る星々とぼんやりと灯る月明かりを頼りにしながら、無人となった静かな町を小鳥遊ホシノはパトロールを行っていた。
その顔はいつもの間の抜けた顔つきではなく、オッドアイの鋭い目つきで廃墟に突き刺さったトラックを睨みつけていた。
(このトラックとスケバン達は、何か変だった)
余りにも簡単に破壊できた輸送車輌、碌に抵抗も発砲もすることなく速やかに撤退したスケバン達、キヴォトスでは余りにも奇妙すぎる光景にホシノの経験則から猜疑心が生まれていた。
(不良達が余りにも拍子抜け過ぎる。 今までだったら恨み言の一つや二つ吐いて銃を抜いてくるのに、それすらない。 戦闘が起こらないに越した事がないわけだけど)
それに、不良達が言っていた言葉も妙だ。
『オーナーに連絡を取れ! トラブル発生だ! これ以上あの人に迷惑かけられないぞ!』
(オーナーって言葉から察するに、依頼主かな。 だけどあの人って何だろう?)
言い方からして、不良達が相当入れ込んでる相手なのは間違いない。 キヴォトスの不良グループはリーダーとかがいても基本的には対等な関係を築いている。 あくまでリーダーは統率力に秀でた友達という枠組みだからだ。 だからこそ敬愛を込めてまで「あの人」と呼ばせるほどの存在がチラついて仕方がなかった。
「イケイケヘルメット団の次はスケバン達を束ねる存在か〜、おじさんも大変だよ〜」
まだカタカタヘルメット団の問題も片付いていないのに次から次へと湧いてくる問題事に辟易となりながらも、今は亡き先輩から託された学校と愛すべき後輩達を守るために夜間パトロールを続行するしかないだろう。
(まず調べるべきはスケバン達の目的かな。 あのガタガタのトラックで何をするつもりだったんだろう)
まさか2発発砲しただけで後輪が全部脱輪するとは思わなかった。 せいぜいパンクさせて止めてやろうと思ったぐらいなのに、そのまま廃墟に激突、衝撃で舞った砂煙が邪魔してスケバン達を取り逃がしてしまった。
(でも向かおうとしていた方向はわかった。 おそらくここから北東に少し行った、元々公園だった広場)
スケバン達との戦闘に備えて愛用のショットガンに弾が入っているのを確認し、盾の裏側に仕込んだショットガンシェルの数を数える。 ぶら下げられたグレネードが2つ、ピストルはすぐ抜ける位置にある。 自身の武装の再確認を終えたホシノは砂に覆われた道路を踏みながら目的地へと向かう
はずだった。
「ッ!?」
視線。
それも強烈な殺気だ。 その方向へとすかさず愛銃と盾を構える。
だが何もない。 風によって軽く舞う砂に、静かな廃墟達、漆黒の夜空に、いつも通りの人っこ一人いないゴーストタウンが広がっていた。 だがそれが不気味だった。 夜風が冷や汗を撫でていき、体温が数段と冷えていく。 そしてしばらくすると、その視線も消えていった。
(なん、だ……? 気のせい? いやでもさっきのは……)
昼と夜を思わせるオッドアイを忙しなく動かして状況把握に努める。 廃墟からは何も覗いてこない、灯りの灯らなくなった街灯が倒れている、何処からか飛ばされてきたのかすらわからない看板、砂に残った自分の足跡……?
(あれ、私の靴ってあんなに大きかったっけ?)
小鳥遊ホシノはキヴォトス全体から見ても小柄な生徒だ。 故にありとあらゆる身体的特徴が低めである。 だからこそ気づけた、未確認の存在の接近に。 ソイツはホシノの足跡をなぞるように移動しており、途中からホシノの足跡は大きな足跡へと変化していた。
その距離、残り3歩まで
「!!?」
即発砲、愛銃Eye of Horusが連続して火を吹いた。 その数8発。
「いってぇ!!?」
フルバーストで放たれたショットガンシェルは、聞き覚えのある悲鳴という形で帰ってきた。 見えない敵に数発のシェルが命中し、残りは回避されてしまった。
「光学迷彩に気づくか普通!? どんな直感してやがるこのチンチクリン!?」
「いや驚いたのはこっちなんだけど。 直近まで迫っているのに気づいた時、おじさん驚きすぎて心停止するかと思っちゃったよ」
見えない敵は何処かに隠れたのだろう。 恨み言を吐きながら一時撤退したようだ。 取り敢えず正体不明の相手が鉛玉がすり抜けるオカルトではないのは確かだろう。
「とはいえどうしようかな。 透明お化けさんを追うのは大変だろうけど、あれに付き纏われながら調査は続けられないよね」
この敵がスケバン達とどう関係するのかはわからない。 流石に無いとは思いたいが、もしも無関係でただのイタズラだった場合なら相応に痛い目に遭ってもらうとしよう。
クイックリロードしながら、正体不明の敵が残した足跡を罠が仕掛けられてないか警戒しながら辿る。 この手の敵は一度逃したら始末に負えない、焦らずじっくりと進み完全に仕留める。
敵はどうやらトラックが突撃したものとは別の廃墟に逃げ込んだようだ。 1階には砂が広がっており、足跡はそのまま2階へと続いていた。
(近づいてきたって事は相手も私と同じショットガンなのかな。 まさか無手で突っ込んできたわけじゃないよね)
盾を構えながら2階へと上がる。 砂は少なくなり、硬いコンクリートと靴がぶつかる音が軽く反響する。
(さて、幽霊くんは何処に逃げ込んだのかな)
上の階に続く階段はシャッターで閉められており、すり抜けでもしない限り登るのは不可能のようだ。 つまり敵はこの階の何処かで潜んでいる。
「だ……その……って………………、神秘………………」
訂正、どうやら潜んですらいなかったようだ。 どうやらこの状況で敵は誰かと楽しく会話をしているようだ。
(本当にただのイタズラだったのかもね)
肩透かしをくらいながらも、愛銃を構えながら声の聞こえた部屋へと入る。
どうやらこの廃墟はオフィスビルだったようで、その部屋には連結された机に大量のパソコンの残骸、砂とクズの入ったゴミ箱、稼働できない印刷機とコピー機、そして社内案内用のポスターが貼ってあった。
部屋へと入ったホシノは扉を閉めて、後ろ手で鍵をかける。 これで逃げられる心配はないだろう。
「おーい、イタズラ少女ちゃん出ておいでー、別に取って食ったりしないからさ。 おじさんも驚いちゃってつい本気で発砲しちゃったんだよ〜、ごめんねー」
ホシノはいつも通りの口調で降伏勧告を通達するが、返答は『カシャン』と物の倒れる音だけだった。 びびって物を倒してしまったのだろうか。
(流石にフルバーストで撃ったのは、不味かったかな)
今思えばだいぶ過剰防衛だったのかもしれない。 だがどうにもチグハグな相手という考えがホシノの頭から離れなかった。
(でも最初の殺気からこの流れ、なんか妙だよね)
そもそも最初の殺気はイタズラ目的で放てるものじゃない。 だがステルス状態で近づいてきて発砲の一つもしない。 逃げ込んだオフィスビルには罠一つも仕掛けられていない。 そして迎撃らしい迎撃が何一つない。 端的に言うと手応えがなさ過ぎる。
物を倒した音の発生源に向かってショットガンを構える。 そして一歩一歩、慎重に近づいていく。 脳裏によぎる不可解な点、胸に抱えた不安感がホシノの歩を遅らせる。
そして遂に、幽霊が隠れているだろう一番奥の机にまで辿り着く。 覚悟を決めて、一気に身を乗り出してショットガンを構える。
「はい、鬼ごっこはこれでお終い。 両手をあげて降伏……え」
そこにいたのは、アホ毛を揺らしピンクの髪をした、昼と夜を思わせるオッドアイが特徴的な小柄少女、小鳥遊ホシノがいた。
思わず、硬直してしまう。 鏡でも見ているかのような光景だった。 自分そっくりではなく、自分そのものといっても過言ではない。 双子と言われても否定できないほど同じだった。
「うへぇ、おじさん見つかっちゃったよー、でいいか?」
偽ホシノはイタズラに成功したような笑みを浮かべながら、体型に見合っていない程大きな緑色のショットガンを既に構えており、それを本物ホシノへと発砲した。
同じショットガンとは思えないほど凄まじい衝撃が盾越しにホシノへと叩き込まれ、オフィスの壁へと背中叩きつけられる。
ガハッと肺の空気を強制的に排出されて、盾を手放して地面へと倒れ込んでしまう。
「うへぇ、お兄さん、じゃなかった。 おじさん逃げるね、じゃあねー、お・ば・さ・ん」
そのまま偽ホシノはオフィスの扉をショットガンで破壊して、ぴゅー、と逃走を開始。
「ふ、ふふふ、いやーおじさんちょーーっとだけカチンときたかな……」
ゆらり、とてもお茶の間に放送できない形相で立ち上がったホシノおばさんは、スケバンの事など頭に残っていなかった。
「誰がおばさんだ待てやごらあああああああーーーー!!!」
普段の言動を知ってる者からすれば、あり得ないほどブチ切れたホシノが爆誕したのだった。
こうして、アビドスのゴーストタウンで本物ホシノと偽ホシノの追いかけっこが始まったのだった。
行動インプリント連動フェイスプレートの悪い使い方。
そして遂に登場したあのショットガン・・・
貴方はどれくらい知識がある?
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