サイバーパンクと青春記録   作:水面どり

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20話 メインジョブ 『砂塵の逃亡劇』 6

合流地点に到着した俺はカイザーPMCから強奪した輸送車をスケバン達に任せ、小鳥遊ホシノの足止めに取り掛かる事にした。

 

「最優先事項は俺とオーナー、そしてスケバン達の存在がカイザーPMCにバレない事。 可能な限り目撃者は減らした方がいいよな」

 

そうなると完全ステルスで行動するしかない。 となると、どう行動したものか……

 

「マロリアンアームズは使えないし、サンデヴィスタンは既にホシノに見られている。 使えるのはゴリラアームだけか」

 

俺の使用してる拳銃、マロリアンアームズは非常に目立つ。 銀色の銃身に赤いグリップという自己顕示欲増し増しなデザインがなされている。 まあ元の持ち主を想像すれば、らしいと言えばらしいのだが。

 

そしてサンデヴィスタン。 一瞬とはいえ、見せてしまった超加速装置。 見えてないところで使えば問題ないのだろうが、捕捉されてる最中使えば絶対にバレてしまうだろう。

 

「キヴォトスの住人からすれば、絶対にありえない加速をしてるらしいからな。 オーナー曰く、アビドス最強の小鳥遊ホシノに気づかれる可能性はあるか」

 

小鳥遊ホシノが最強と言われてる事に違和感はあった。 他の生徒に比べても小柄な体に、適当すぎるゆるそうな口調、とても強そうには見えなかった。 だがあのオーナーが最強と言うのだ、警戒はするべきだろう。

 

「まあ、やりようはいくらでもあるか」

 

こちらにはまだ見せてないサイバーウェアだってある。 スケバン達が荷物をオーナーの所に運ぶまで時間稼ぎぐらいできるだろう。

 

 

 

 

 

 

見つけた。 アビドスのゴーストタウン、スケバン達が襲撃されたという場所で目標を補足した。 長いピンクの髪に、チョンと生えたアホ毛、赤と青のオッドアイ、白いカラーリングのショットガンに畳まれた盾を背負う少女、間違いなく俺に水筒をくれた少女、小鳥遊ホシノがそこにいた。

 

物陰に隠れた状態でキロシのスキャンモードを起動させ、顔のサイバーウェア、行動インプリント連動フェイスプレートと連動させる。

 

「正直に言うと、やりづらいな」

 

相手は自分に親切にしてくれた恩人であり、何よりあの小柄な体躯だ。 いくら傭兵といえど、10歳過ぎたかどうかぐらいの小さな子供に銃を向けるのは抵抗がある。

 

「とはいえ、あんな小さい子供ですら銃を抜くのがキヴォトスか……慣れるのに時間がかかりそうだ」

 

先生の生徒達ぐらいの年齢ならあまり抵抗もなかったのだが、と考えている間に小鳥遊ホシノの生体スキャンが完了したようだ。 これでいつでも小鳥遊ホシノになれるようになった。 試しに起動してみるとしよう。

 

「フェイスプレート、小鳥遊ホシノ」

 

行動インプリント連動フェイスプレート

これは顔全体に埋め込むタイプのサイバーウェアだ。 キロシなどで取得した生体データを元に自身の体を擬態させ、完全ななりすましを可能にするFIAからのプレゼントだ。

その擬態はとにかく凄まじい。 見た目はもちろん、声、ID、それどころか生体組織すらも再現する、FIAの超技術の結晶のような代物だ。 

代償として俺の元の顔は綺麗に剥がされてしまったが。 サイバーウェアの手術が終わって自分の顔がテーブルの上に置かれていた時はギョッとしたものだ。 直ぐに奥のリパーの部屋に持っていかれたが……いったい俺の顔をどうするつもりだったのだろう?

 

「流石に、身長は厳しいか……この輪っかも変わらないな」

 

自分の声がだいぶ高くなっているのを感じながら、自身の体を観察してみる。 黒い無地のTシャツに、青色のジーンズ、長いピンクの髪、頭の上に浮かぶRelicのマークが浮かんだ四角い濃い青色の天使の輪、見えてる景色が変わらない事から身長は変わっていない、顔は……鏡がないので把握できない。

 

「……この天使の輪っかでバレるか?」

 

ヘルメット団を撃退した時に自分の天使の輪も見られていただろう。

だが何もしないよりかはマシだと判断して、自身の姿をそのままにして小鳥遊ホシノへと視線を戻す。 彼女は盾の裏で何かを数えている様子で、次にショットガンの中身を覗き出した。

 

「そろそろ調査を終えて動き出しそうだな。 仕掛けるとするか」

 

マロリアンアームズを隠すように仕舞い、ゴリラアームを稼働状態にさせる。 そして軽く殺気を飛ばしてみる。

 

「ッ!?」

 

「おっと!」

 

すぐさま此方へと銃を構え迎撃態勢をとったホシノに驚きながら、俺は光学迷彩を起動させる。

 

「随分と敏感な反応を示すな……キヴォトスじゃ殺気を放つ奴なんていないのか?」

 

俺は光学迷彩の効果が終わる前に決着をつけるべく、小鳥遊ホシノに向かって移動を開始した。 以前の先生への時間稼ぎの際、積極的な行動は控えていたのだが、それが原因で敗北しかけたので今度は速攻で勝負を終わらせるとしよう。

 

砂のおかげで足音はしないし、ステルス日和だな。 そんな事を考えながら慎重に自身の接近に気取られないように小鳥遊ホシノの足跡の上を歩きながら近づいていく。 あと少し近づいたらサンデヴィスタンをちょっとだけ起動して、後ろに回ってグラップルを決めよう。 そうすれば俺の勝ちだ。 そしてあと3歩のところまできたその瞬間

 

唐突に白いショットガンが火を吐き出した。 合計8発の破壊の嵐が俺へと襲いかかったのだ。

 

「いってぇ!!?」

 

すぐさま横へとダッシュを行ったが、何発かはモロに命中を貰ってしまった。 どうやらホシノのショットガンの弾は貫通性能の高い代物らしく、俺はキチン皮膚すら無視したダメージを受けてしまった。 折角食事で補充した血が、血液ポンプとして消費されてしまった。

 

「光学迷彩に気づくか普通!? どんな直感してやがるこのチンチクリン!?」

 

「いや驚いたのはこっちなんだけど。 直近まで迫っているのに気づいた時、おじさん驚きすぎて心停止するかと思っちゃったよ」

 

俺がホシノの声で悪態を吐くと、ホシノ本人は余裕でもあるかのように返事を返してきた。 完全に見誤った、アビドス最強をグラップルすればゴリラアームでどうにでもなるとか思っていた自分を殴りたくなってくる。 

とにかくこの姿を見られるのはまずい。光学迷彩のタイムリミットが近いので物陰へと避難、ホシノはショットガンを慣れた手つきでクイックリロードしながら俺の位置へと歩きながら迫ってきていた。 俺は光学迷彩を強制解除して、量子チューナーを起動。 本来あるはずの光学迷彩のクールダウンをすぐさま終わらせて、再び光学迷彩起動して今度は廃墟へと逃げ込んだ。

 

「まずいまずいまずいまずい! どうする俺!」

 

マロリアンアームズの使用する? ダメだあんな銃を使えば俺の存在がバレる。 サンデヴィスタンで無理矢理制圧する? コレもダメだ、超加速に気づかれたら『V』まで辿られる可能性が高い。 光学迷彩の奇襲も何故か失敗した。 唯一の武器であるゴリラアームは近づかないとどうしようもない。

 

「くそ! 打つ手がねぇ!!」

 

他に何かないかとポケットを弄るが、あるのはワカモから貰ったクレジットとケータイだけだ。

 

「……ワカモと、ケータイ?」

 

…………あまりやりたくないが、選り好みできる状況じゃない。 そもそもこの状況は俺が招いた物だ、怒られるのを覚悟して腹を括るべきだろう。

ケータイの連絡先からワカモを選択して、通話をかける。 頼む、出てきてくれ。

 

『あの、仕事中なんですけど。 またくだらない内容でしたら……』

 

「ワカモ! お前のやっていたスナイパーライフルの連射ってどうやるんだ!」

 

『切りますね』

 

「待って待って待って! さっきとは違うんだって、お願い待って、本気で待ってくださいお願いします!」

 

2階への階段を駆け上がりながら、ケータイに必死に懇願した。 厳密に言えばその向こう側にいる相手に。 

 

「小鳥遊ホシノに負けそうになってんだよ! 助けて頼れる美人のお狐様!」

 

『……もしかしてマジでピンチなんですか?』

 

「はい! オーナーからの要請で小鳥遊ホシノの足止めしてます、拳銃なしで!」

 

『思った以上にとんでもない無茶振りされてますね!? アビドス最強相手に銃なしはいくらなんでも無理では?』

 

ケータイ向こう側からは爆発音と悲鳴、銃声がひっきりなしになっているが、ワカモは余裕そうに電話で応対してくれた。 頼りになる仕事仲間に感謝しながら現状を説明しながら、俺は2階の一番奥の部屋へと入った。

 

 

 

俺は室内の1番奥の机の裏に隠れて、ワカモへの現状説明を終えた。 小鳥遊ホシノはまだ2階に上がってきてないようだ。 俺の光学迷彩による奇襲を相当警戒しているのだろう。

 

『なるほど、要するに自分の存在がバレないように小鳥遊ホシノの相手をする必要があると……』

 

「ああ、先生の時の事を反省して、今度は速攻でけり付けようとしたんだが完全に裏目に出てしまった」

 

『なるほど、それで私に神秘の使い方を教わりたいと』

 

……神秘? なんか急にファンタジーな言葉が出てきたな。 どうしよう、アテにしようとした代物が急に手が届かない所にあるみたいになってしまった。

 

「その、なんだ神秘って?」

 

しまった、お願いしてる立場なのに胡散臭い声をあげてしまった。 だが俺の心配と裏腹に、現在進行形で火の海を作ってるテロ狐は割とノリノリで説明を始めてくれた。

 

『コホン、神秘とは我々キヴォトスの生徒が持っている摩訶不思議のエネルギーです。 その詳細は未だよくわかっていませんが、本来不可能な連射だったり、爆発が独特な広がり方をしたり、自身にあり得ないほどの再生力を齎したりとさまざまです。 神秘はヘイローと深い繋がりがあるのではと言われてますが……それもまた不明です』

 

ダメだ、全く理解できない。 だんだんワカモとギャリーが重なって見えてきた。 超胡散臭い。

 

「あー……それは、俺にもできるのか?」

 

『可能かと思います。 貴方の頭の上にも浮いてるでしょう? ヘイローが』

 

ヘイロー? そう思って頭の上に視線をやると、濃い青色のしたRelicのマークをした四角い天使の輪があった。

 

「もしかしてこの、天使輪っかの事か?」

 

『ええ、それが神秘をその身に宿す何よりの証です。 後はただ念じれば上手くいくかと』

 

「いや、念じればってそんなオカルトチックな……」

 

そこで「カツン」と部屋の外からコンクリートと靴がぶつかる音がしてきた。 やばい、もうそんなに時間がないぞ。

 

「くそ、来やがったか……」

 

『Vさん、神秘使う際に重要なのはイメージです。 自分がどんな風に敵を倒すとか、自分の可能性を信じることです』

 

「だからその神秘ってのがそもそもなんなのか理解できないんだ。 神秘っていったいなんなんだ」

 

『ですから……!? すみませんVさん、此方も少し立て込みそうです』

 

一際大きな爆発音がケータイから響いてきたと思えば、急にワカモが焦ったような口調で応答した。 言いたい事、聞きたい事はたくさんあったが、此方も無茶を承知して電話をかけたのだ、仕方ないだろう。

 

「……そうか。 ありがとうワカモ、気をつけろよ」

 

『ええ、後輩もご武運を』

 

そしてケータイからは、ツーっと通話が切れた音が鳴り出した。 俺はケータイを仕舞い、戦闘中にも関わらず俺に助言をくれたワカモへと感謝しながら思考を切り替える。 焦りはいらない、今必要なのはクールな思考だ。

 

「フーッ、正念場だ。 年下にいい格好くらい見せてやるとしよう」

 

さあ、追い詰められた傭兵程おっかない物はないという事をあのピンクのチンチクリンに教えてやるとしよう。

 

ガチャンとこの部屋の扉が開く音が聞こえてきた。

 

重要なのはイメージだ。 今必要なのは何か? それは完全に姿を変えることができるモノだ。 両手を自分の顔、フェイスプレートへと触れさせ、念じる。 ワカモができたんだ。 俺にだってできる。 可能性を信じろ、自分を疑うな。

 

 

 

 

 

行動インプリント連動フェイスプレート

クラス5++ レジェンドリー/アイコニック

サイバーウェア

コスト0

・フェイスプレート起動すると肉体とデジタルの両方でIDが改変され、別人に成りすませる。 非戦闘時には治安維持部隊の追跡を簡単に振り切ることが可能(手配レベル4まで)

・クールダウン900秒

 

 

 

神秘ポイントを1消費して強化しますか?

 

YES

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

行動インプリント連動フェイスプレート

クラス6 ミスティック/アイコニック

サイバーウェア

コスト0

・フェイスプレート起動すると肉体とデジタルの両方でIDが改変され、別人に成りすませる。 非戦闘時には治安維持部隊の追跡を簡単に振り切ることが可能(手配レベル4まで)

・神秘による更なる強化で身長、更にはヘイローまでも擬態可能になった。

・クールダウン900秒

 

神秘強化可能なサイバーウェア 1/1

 

残り神秘ポイント 1

 

 

 

 

 

……これでいいのだろうか。 だが今は自身の体を観察する暇なんてない。 大丈夫だと信じて次だ。

 

「おーい、イタズラ少女ちゃん出ておいでー、別に取って食ったりしないからさ。 おじさんも驚いちゃってつい本気で発砲しちゃったんだよ〜、ごめんねー」

 

この状況を打開するには、武器がいる。 それも小鳥遊ホシノの盾すら弾き飛ばせるほど超強力な火力を誇る武器がだ。 生半可な武器ではアレに太刀打ちなんて不可能だ。 できるかどうかなんて今は無視しろ、イメージするんだ。 あのショットガンを……

 

 

 

 

 

神秘ポイントを消費してカーネイジGUTS をアンロックしますか?

 

YES

 

残り神秘ポイント 0

 

 

 

カシャンと、隣に何かが落ちてきた。 それは俺のヘイローから落ちてきたようにも見えたが、間違いなくソレは俺が想像した通りの武器だった。

 

緑色のメインカラーにピンクのサイドカラー、奇抜なカラーリングが施された巨大なショットガン。

 

カーネイジGUTS

 

カーネイジとは、バジェットアームズ社が開発したポンプアクション式の超火力ショットガン。 だが超火力故に反動も凄まじく、サイボーグ化をしていない者が取り扱おうものならトリガー引いたと同時に自分の腕も引きちぎられるという、血の海を作るならこれ以上ない武器となっている。 尚、1番恐ろしい事実はこの武器が一般販売されてることだろう。

 

そのカーネイジを更にカスタマイズした代物が今、手の内にあるカーネイジGUTS

通常のカーネイジより、連射力、装弾数、威力が上昇しているが、サイバーウェアで強化した俺の体ですら大きくのけぞる程の反動があり、ショットガンでありながら何処に飛んでいくかもわからないほど精度も非常に悪い。 この武器は拾い物で、ナイトシティのメモリアルパークで見つけた物だ。 元の持ち主も相当な気まぐれな性格だったのは想像に難くない。

 

「はい、鬼ごっこはこれでお終い。 両手をあげて降伏……え」

 

俺は即座に振り返り、呆けている様子の盾と銃を構えるホシノに向けてカーネイジGUTSを向ける。

 

「うへぇ、おじさん見つかっちゃったよー、でいいか?」

 

俺は煽りながら発砲、カーネイジの弾、一射撃で20発の散弾が小鳥遊ホシノの盾へとぶつかり、その衝撃が彼女を壁へと叩きつけた。

 

俺はその様子を見ることなく即座に退散。 鍵をかけられたドアをカーネイジの射撃で粉砕し、最後に小鳥遊ホシノに向けて告げる。

 

「うへぇ、お兄さん、じゃなかった。 おじさん逃げるね、じゃあねー、お・ば・さ・ん」

 

そして俺は廃墟からダッシュで逃亡を開始した。 上手く挑発に乗ってくれるといいのだが、もし俺を追いかけてこなかった場合はスケバン達とオーナーには申し訳ないが逃げてもらうとしよう。

 

「誰がおばさんだ待てやごらあああああああーーーー!!!」

 

……どうやら心配は杞憂だったようだ。 2階からの怒号を聞きながら、俺は廃墟からゴーストタウン、いや、アビドス自治区全体を巻き込んだ逃亡劇を披露することになった。

 

「おっかねぇチビだな」




という訳で遂に神秘ポイントの使い道が出てきました。 他にもパークなども想像しています。

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