サイバーパンクと青春記録   作:水面どり

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27話 幕間 ワカモとナイトシティ談義

その後、ゆっくりと身も心も暖めた俺と先輩は脱衣所でドライヤーやらタオルやら化粧品やらで身支度を整えていた。 先輩はテキパキと手慣れた様子で身だしなみを整えていくが、それとは対照的に俺は悪戦苦闘を強いられていた。

 

「……」

 

手に摘まれた一枚の布切れが原因だった。 その名はパンツ、別になんて事のない一般的な代物だ。 別にどぎつい見た目をしてるとか、ほぼ紐同然とか、汚くなってるとかではない、シンプルな無地の三角形である。 なんだったら今まで履いてきたものだ。

 

「そんな獅子身中の虫を見つけたように睨んで、どうかしました?」

 

今まで意識する事もなかったので気づかなかったが、住処と金銭と頼りになる先輩ができた事で余裕が生まれてしまった影響か、変な抵抗を覚えてしまう。 この女性物下着を自ら履くという行為に。

 

「ワカモ先輩」

 

「はい」

 

「トランクスとか持ってないか?」

 

「持ってる訳ないですよね? 私が男にでも見えましたか?」

 

先ほど頼りになる先輩言ったが訂正、肝心の所で役に立たない先輩である。 俺は抵抗を諦めて、下着を放り投げそのまま青いジーンズを……

 

「待てコラ」

 

ガシリと肩を力強く掴まれてしまった。 いったいどうしたのだろう? 別に何かやらかした記憶はないが先輩の表情はニコニコと笑顔だが何処か黒い怒りのような感情が見えている。

 

「何故下着を履かないのでしょうか、後輩」

 

「……履くと自分の中の大切なものを失うから、かな」

 

「可愛い後輩から下着を履かない変質者にジョブチェンジされたら、私からの評価を失いますよ」

 

そもそも野郎が女物下着を自分からつけてる時点で変質者である。 そしてそんな事をしたら男としての大事な物がなくなってしまう。 二つ失ってしまうのだ。 一つ失うか二つ失うか、簡単な数字の問題だろう。

 

「悪いな先輩、男には失っちゃいけない物があるんだ」

 

「貴方女でしょうが」

 

「ちがーう!! 俺は男だ!! アイアムマン! アンダスタン?」

 

「ノットアンダスタン。 バカ言ってないでパンツ履きなさい」

 

ファッキュー、心の中で叫ぶと先輩が放り投げたパンツを拾い上げてジリジリとにじり寄ってきていた。 気づけば扉に施錠までされてるではないか。 まあ別に問題はない、俺にはコレがある。

 

「悪いな、サンデヴィスタン」

 

加速する世界、ゆっくりと迫ってくる先輩、水の中で反響するかのように聞こえる声、俺は加速装置を起動させ、余裕を持って扉の施錠を解除して退出する。

 

「あばよ、パイセン」

 

脱衣所から廊下繋がる扉を潜り、俺は迫り来る妖怪下着履かせから逃げ仰せ

 

「あん?」

 

足が進まない。 動いてはいるのだが前に進まない。 

 

「なん、だ? 動きが、にぶい、ぞ。 いや違う、コレは、う、動けん!?」

 

そしてサンデヴィスタンの効果が解除され、ワカモ先輩が狐のお面を押さえながら背後で仁王立ちしていた。

 

「それは私がこんな事もあろうかとトラップを仕掛けておいたからです」

 

足に張り付いていたのはネバネバとした白いガム、とりもちだった。 しかもどんな力自慢な生徒でも引き剥がすのが困難なほど強力な粘着力が発揮されていた。

当然、強化腱で強化された足程度では引き剥がす事はできない。 チャージジャンプのできる強化足関節であれば無理矢理突破もできたかもしれないが、持っていないものはしかたないだろう。

俺がガシャンガシャンとダブルジャンプをダメ元で発動させるが超強力とりもちは剥がれず、そんなこんなしてるうちにパンツを持った黒狐が足へと手を伸ばしてきた。

 

「はーい、あんよ上げてー」

 

「おいばかやめろ。 いい年した女が野郎に下着持って近づいてくんじゃねぇよ、待て待て待って、お願いします待ってください、だれか、だれかーーー!! いやー!! 発情した狐に襲われるーー!! ジョニーーーーーー!! へールプ!!」

 

その世界にいるはずの無い汚い妖精へと救援要請上げても、当然奇跡など起きる事もなく、俺は無慈悲にも白い三角形を履かされたのである。

 

 

 

 

 

数分後、生気の失った白い顔に、燃え尽きたように項垂れるパンツ一丁の俺の頭は、ドライヤーと櫛を巧みに使う先輩の手によって整えられていた。

 

ブォォーンというドライヤーの熱気を放つ音と細い櫛が髪を掻き分けてく感触を黙って味わっていると、不意に首元をくすぐられた。

 

「……なんだよ」

 

さっきまでの意趣返しも兼ねて不機嫌そうに問いただすが、我関せずと言わんばかりにぺたぺたと俺の首周りを触り始めた。

 

「首にソケットがあったのでつい、貴方はどこまで体を機械化させてるのですか?」

 

ゴリラアームを搭載した腕に手を回しながら俺の体を調べ上げようとしてくる先輩に、完全に脱力してされるがままになる。 もう好きにしてくれ。

 

「あー、内臓はあらかた機械化してるな。 俺たちのいた世界じゃ大気汚染が深刻でな、確か……空気質指数が200を超えてる所がほとんどだな」

 

空気質指数とは、簡単に言えばどれくらい汚染されていてどれほど人体に有害かを数字にした物と覚えてくれればいい。 200は極めて健康によくない、らしい。

 

「え゛、死にませんそれ?」

 

「だからみんな内臓を取っ替え引っ替えしてる。 肺とか完全に消耗品だ。 空気が酷けりゃ、当然水だって最悪だ」

 

ウエストブルック地区のチャーターヒルの水は重金属で汚染され、ヘイウッド地区のウェルスプリングでは水道水を誤って飲んだら喉のサイバーウェアを交換しろと言われる。 昔は青かったと聞いた海は工業用廃水で茶色く濁っている。

 

「普通そういうのは管理者とか、都市運営を任された人がどうにかするものでは?」

 

「ははは! その責任者が企業で、その企業がだした汚染物質が空気を汚してんだぜ。 しかもみんな知らぬ存ぜぬの一点張り、その状態で綺麗な水まで売り出すぞ」

 

陰謀論ではあるが、水を売っているオールフーズが圧力をかけて水道管理予算を減らしているという話もある。

 

コレらの点を踏まえると、ジョニーの言ってた『企業は農民から水を奪った』という話は比喩でも何でもなく事実なのだ。

 

「うっわぁ、聞けば聴くほど酷さが上塗りされていきますね」

 

「因みにシャワーは硬水で髪がギシギシになるぞ」

 

「それ入浴した後にいいます?」

 

と、そろそろ湯冷めしてしまいそうな時間になってしまった。 そろそろ出るべきだろう。 それに帰ってきてから何一つ口に運んでおらず、腹も減ってきた。

 

「続きはレストランで飯でも食いながら話そう。 めっしだ、めっしだ、めっしっだー」

 

今日は何を食べようか? メロンソーダは絶対に頼むが、ナポリタンか? それとも、ハンバーグか? どんな食べ物が俺を待っているのだろう。

 

「ふふ、何だか微笑ましいですね」

 

先輩は手入れ道具を片付け、俺は手早くいつもの黒いTシャツに青いジーンズに着替える。

 

「さあて、今日も頑張りますか」

 

気づけばそんな言葉を口にしていた。 俺もキヴォトスらしくなってきたのかもしれない。

 

 

 

チュートリアル・浴場

・Vの運営するビルで浴場のロケーションがアンロックされました。 ここではサイバーサイコシスの進行を下げる事が出来ますが、一日一回の使用しかできません。

・生徒と共に入浴すると、生徒から会話をされる事があります。 浴場での戦闘は御法度なので、どのような関係の生徒でも親交を深めることが可能です。 仲の悪い生徒との関係修復にはもってこいのアクティビティです。 積極的に活用しましょう。

貴方はどれくらい知識がある?

  • サイバーパンクは名前だけ知ってる
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  • サイバーパンクで知らないことなど何もない
  • サイバーパンク? なんそれ?
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