サイバーパンクと青春記録   作:水面どり

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28話 メインジョブ 『悪友/』 4

時刻はお昼が過ぎ、ランチタイムの客ラッシュが収まった丁度良いタイミングだった。 入浴を終えた俺とワカモ先輩はビルを表方向から出て、鏡でできたスライドドアからレストランへと入店した。

 

「いらっしゃーせー、ってVさんじゃないっすか!」

 

「よう、似合ってるじゃないか」

 

黒のドレスに白いエプロンを纏ったウェイトレス姿のスケバンを軽く茶化しながら、周りを見渡す。

レストランの内装は以前ワカモから報酬を受け取った時とは見違えるように綺麗に掃除され、俺たちはスケバン達の努力が感じられるほどピカピカと磨かれたテーブルへと案内された。

 

「馬子にも衣装、ですね」

 

「ワカモさんもあまり揶揄わないでくださいよ。 それじゃ、ご注文をお伺いします!」

 

俺たち以外に客は見受けられず、どうやらフロントを担当してるのはこのスケバンだけらしい。

 

「他の連中はどうした? 休憩中か?」

 

「そうっすね。 この店はオーナーが管理者っすけど、あの人は基本2階のオフィスで紙と睨めっこしてますから実際はウチら4人で回してる感じっす」

 

「4人? あとのメンバーはどうしたんだ?」

 

「残り3人はランチラッシュを終えて休憩室でグロッキー状態。 リーダー達はビルとガレージの掃除、整理、後はワカモさんに頼まれた装置を輸送車に取り付けてるっす」

 

装置? そういえば今日はショッピングに行くとか言っていたが、あの輸送車で行くつもりなのだろうか?

そんな事を考えながらメニューをペラペラと捲り、記載されている写真と睨めっこを開始した。

むむむ、このオムライスという黄色い奴はなんだろう? 試しに頼んでみるとしよう。 後はメロンソーダと……肉が要る。 アビドス連中との戦闘で消耗した血液ポンプの血を補充しなくてはならないので大量の肉類が欲しい。

 

「リパードクがいれば血液なんて簡単に補充出来たんだがなぁ。 とりあえず、肉、肉系をくれ」

 

「うっす。 ワカモさんはどうします?」

 

「私はライスを。 後は後輩が頼んだ物を適当に摘もうかと」

 

「了解しました。 んじゃ直ぐにお持ちしますんで」

 

注文票にライスと書いて、その場で切らずに厨房へと早足でスケバンウェイトレスは消えていった。 それと入れ替わるように煙管を吹いた黒猫、オーナーがフロントへとやってきた。

 

「おはようさん、ガキども。 何やV、随分とスッキリした顔つきになったじゃないか。 ワカモが風呂に連れてくと言った時はどうなるかと思ったが、意外に上手くやるもんやねぇ」

 

「意外とはどういう意味でしょうか」

 

「そりゃあアンタ、普段は破壊と略奪の限りを尽くし、キヴォトス中から指名手配される生徒だろう? てっきり殴り合いで解決するもんだとてっきり。 言いそうやない? 『悩む暇あったら銃ぶっ放せー』とか」

 

どうしよう、否定できない。 寧ろそっちの方がしっくり来るぞ。 目を閉じるとスナイパーライフルを肩に構えてビル一階を火の海に変えてる先輩の姿がありありと想像できた。

 

「オーナー、私だって何も破壊と略奪しかできないわけじゃないのですが……後輩、ウンウンと頷かないでもらえますか?」

 

俺の頬をムニーと伸ばして抗議を始めたワカモ先輩をゴリラアームでなんとか引き剥がそうとするが、なかなか力強い。 やはりパワーセーフティをかけたままでの純粋な力勝負では五分五分ぐらいか。

 

「先輩と後輩、ねぇ。 本当に仲良くなったみたいだね。 そのままガールズトークに花でも咲かせる気かい?」

 

「おいおい、俺は男だぞ。 よしてくれ」

 

俺が勘弁してくれと言わんばかりに手をヒラヒラと振ると、2人に呆れた視線を送られてしまった。

 

オーナーは先輩を奥へと追いやり、自身もテーブルへと着き改まって此方へと向き直った。

 

「そう言えばV、アンタにはまだ報酬の話しかしてなかったねぇ。 今回の仕事の顛末は気にならないかい?」

 

「あん? 顛末ならもうスケバン達とワカモ先輩がそれぞれしくじったけど、仕事自体は完了したで終わったんじゃないのか?」

 

「まだ話してないだろう。 積荷の中身についてさ」

 

……そういえばそうだった。 今回の仕事はアビドス達と追いかけっこするのが仕事ではなく、カイザーの積荷強奪がメインだ。

俺は軽く深呼吸して意識を切り替える。 真面目に話をするとしよう。

 

「積荷の中身は?」

 

「戦車のパーツ、砂地用の改造モジュール、整備用品、武器弾薬の数々、どう考えても戦争の準備にしか思えない代物ばかりさ」

 

「カイザーはアビドスで誰かと戦う気か? いったい誰と……」

 

「後輩、話はそう単純ではなさそうです」

 

先輩が頭を抑えてそう言い出したので、俺も更に一歩踏み込んで思考を回す。

 

「……まさか、支援物資?」

 

「はい。 私が急に電話を切ったのを覚えていますか」

 

「確か、小鳥遊ホシノに追われて俺が先輩に助けを求めた時のやつだよな」

 

「あの時、確保していた退路から別の敵勢力が出現したのです。 アビドス方面からヘルメット団が」

 

「……ヘルメット団?」

 

脳裏に浮かぶのはバイクをブイブイ鳴らしてやたら喧しい紫ヘルメット連中。 インテリパワーがどうこう喋ってた超五月蝿い馬鹿どもだった。

 

「まだアイツらいたのかよ」

 

バイク諸共コテンパンに叩きのめしたのに、まだ鉛玉と爆炎が足りないらしい。 俺はマロリアンアームズの銃身を撫でながらそう考えてると、先輩から理解困難な現実を知らされた。

 

「ヘルメット団はたくさん種類がいるので、後輩が想像してるヘルメット団かどうかはわかりませんよ」

 

「えぇ……種類ってなんだよ……」

 

「パカパカ、メカメカ、ピチピチ、ジャブジャブ、などなどエトセトラ。 彼女達はたくさんの分派がおりますので」

 

「……俺が会ったのはイケイケ、だったな」

 

「新進気鋭のヘルメット団ですね。 スピード重視でノリと勢いだけで割とどうにかなるが心情のめちゃくちゃな連中です」

 

頭が痛くなってきた。 そういえばアイツら、距離とって一方的に攻撃するとか言っときながら開幕突撃して来なかったか? しかも全員合図もなく、てっきり無線か何かで突撃タイミングを測ったのかと思っていたが、単純にみんなの突撃タイミングが噛み合っただけなのかもしれない。

 

「話が脱線してるね、戻すよ。 カイザーは輸送車を使って秘密裏にアビドスへと戦略物資を運んでいた、それも非合法の代物をね。 それを襲撃すると、深夜だというのに突如やってきたヘルメット団。 どうにもきな臭いねぇ」

 

「カイザーがヘルメット団を支援してるって事でしょうか?」

 

「でも何故? カイザーなんて大企業がヘルメット団を支援する意味は無いはずだ。 アイツらは自前でPMCを立ち上げてた。 敵がいるなら自分達で解決できるはずだ」

 

「……ヘルメット団がただの火事場泥棒だったら?」

 

「厄災の狐相手に? それこそありえないだろうさ。 ああいう手合は長生きする為に身の程に合った危険にしか突っ込んでいかないよ。 何されるか分かったもんじゃないアンタに喧嘩売るわけないさ」

 

その後も何度か意見や考え、予想を出し合ったが、結局コレと言った決定的な物は出てこなかった。 そうこうしているうちに数名のスケバンウェイトレスが大量の料理を持って俺たちのテーブルへと運んできた。

 

「ま、これ以上考えても何も出なそうだね。 こっちの方で伝手を頼って情報収集でもしてみるさ。 ご苦労だったね、V、ワカモ、何にしてもアンタらのお陰でカイザーを揺するネタを入手でき、こうしてレストランも再開できた。 助かったよ」

 

「こっちだって住む場所を提供してもらえたんだ。 ギブアンドテイクさ」

 

「そうかい。 じゃあせめて好きなだけ食ってきな、私からの奢りだよ」

 

オーナーは立ち上がりながら黄色いカードをテーブルに置くと、そのまま厨房へと姿を隠してしまった。

 

「奢りですって後輩」

 

「ああ、素寒貧にしてやろう」

 

俺と先輩は何の躊躇いもなく追加注文を頼むのだった

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