サイバーパンクと青春記録   作:水面どり

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30話 メインジョブ 『悪友/』 6

トリニティ自治区

そこは、学園都市キヴォトスの中で三大学園の一つに数えられるトリニティ総合学園によって管理された地区であり、基本的には金銭が裕福なお嬢様が生徒として活動している場所である。

そのため、大通りなどにはお嬢様ウケが良く金に糸目を付けないオシャレなカフェ、総合学園内よりは小規模な文化施設、大規模なショッピングモールが立ち並び、そこを優雅にお嬢様方が闊歩するのが普段通りであり、日常だろう。

 

 

 

 

 

そこを悪趣味極まりない真っ赤に塗装された輸送車が埃と排気ガスを舞上げ爆走するなど、絶対にあってはならない事だった。

 

 

 

 

 

ーーと言う感じです」

 

「ほーん」

 

仮面を付けたワカモ先輩が雑にまとめたトリニティ自治区の情報に適当な返事をしつつクラクションを鳴らし、青信号を渡る生徒を無理矢理退かしていく。

慌てて信号を渡る生徒達の1人が落としたチョコミントアイスをグシャア!と踏み潰しながらバックミラーを確認すると、5台の正義実現委員会の車両が追いかけてきているのが確認できた。

ついでにアイスの亡骸に泣きそうになってる生徒の姿も確認できた。

 

『そこの暴走車、いい加減止まるっす! 実力行使も辞さないっすよ!』

 

「ちょっと悪いことしたかな」

 

「アイスに謝るくらいならさっさと自首なされては?」

 

「はは、冗談」

 

俺はブレーキを踏んでスピードを緩め、正義実現委員会の追手に距離を近づけ、手をヒラヒラと振った。 その後指でチョイチョイと招くように煽り、アクセルを全力で踏む。

 

「かかってこいよ、お嬢ちゃん」

 

『上等っすよ。 総員! 対象を無力化させるっす!』

 

真ん中のスピーカーで警告を発していたリーダー格と思われる車両に乗った生徒が吠えると、残りの車両達が各々動き出した。

 

2台が脇道に外れ、2台がスピードを上げ俺たちの乗る輸送車の両サイドを挟むように固め、助手席に座る生徒がアサルトライフルを構え始めた。 狙いはタイヤか。

 

「教範道理の動きだな」

 

「優等生でしょうしね」

 

助手席に乗っていたワカモが窓を開けてスナイパーライフルを構え、俺はマロリアンアームズを顔の前に持っていく。

 

「サンデヴィスタン」

 

先ほどまでの高スピードは何処へやら。 全てを置き去りにする加速世界の中で、俺はマロリアンアームズで此方を狙う生徒に発砲する。

着弾を確認せずにサンデヴィスタンを解除しながら再びハンドルを操作すると、ワカモ先輩も発砲。 両サイドを固めていたジープは2台ともスピンを起こし、激しい衝突音を巻き上げた。

 

「残念だがガリ勉ちゃんはリングアウトだ」

 

「それ、優等生に対して偏見が過ぎません?」

 

と、追いかけていたリーダー格、糸目女がケータイと呼ばれる板を取り出して何処かに電話をかけ始めた。

 

「いったい何してんだ?」

 

「アレは……まさか」

 

と、ワカモ先輩が心当たりがあるように呟くと突如、更に追加の物々しいジープが6台、何処からともなく合流してきた。

 

バックミラーに映るのは、合計7台の戦闘車両。 全車に2名づつ登乗し、更に……

 

「おいおい、そこまでするか普通!?」

 

合流した車両全てに、設置型の重機関銃が搭載されていた。 あの口径の重機関銃に一斉に打たれ続けたら幾ら重装甲の輸送車といえど無事で済むはずが無い。

 

「増援を呼び出す神秘ですか、そういえば武器の不法流通を取り締まる為に警備を強化したとか聞きましたね」

 

「増援を呼び出す神秘ってなんだよ!? なんでも有りか?!」

 

ハンドルを咄嗟に切って回避運動を行うが、それでもこのデカい輸送車では的がデカすぎる。 激しい銃撃と装甲がぶつかり合う音が運転席を襲いかかる。

 

「うっるせえんだよ!!」

 

このままでは不味いと、急遽作戦を変更。 一気に殲滅を図る。

 

俺はギアを数段変え、ブレーキとアクセル踏んで、思いっきりハンドルを回した。 そして軽度にハンドブレーキを噛ませることでタイヤとアスファルトが熱を放ちながら大音量を奏で始める。

 

「後輩、貴方まさか」

 

「プロレスラー真っ青の大技だ」

 

直線だと言うのにドリフトがかかり、輸送車の体が大きく揺れ、傾き、まっすぐ進んでいたはずのそれは

 

『っ!!? 全員ブレーキ!!』

 

180°の大回転が行われ、気づけば追いかけていた正義実現委員会増援部隊の真横へと迫っていた。

 

「へ?」

 

ハンドブレーキを解除し、重装甲の大型車でしかできないパワープレイが、増援部隊に炸裂した。

 

「「「「「「うわああああああああああああああーーーーー!!!???」」」」」」

 

まるでボーリングのピンのように、増援部隊が薙ぎ倒された。 上下逆さにひっくり返り、ゴロゴロと横転し、店に頭から突っ込んで行ったり、全員涙目だったりと、まさに大事故だった。

 

「ストライク、か?」

 

「残念、一つ残ってます」

 

先輩が親指で指差した方向には、戦闘不能の増援部隊を避け、凄まじいドライビングテクニックで迫るリーダー格がいた。

 

『よくもやってくれたっすねー!! お陰で反省文確定っすよ!!』

 

「反省文で済むのかよ」

 

ナイトシティだったら責任追及で首が飛ぶぞ、物理的にも。

 

ホールド状態だったエンジンをブレーキを離すことで火を灯し、カーチェイス再開。

 

「せめてスペアは取りたいな」

 

「とはいえ、いい加減に振り切らないと戦車が飛んできますよ。 ほら、連邦生徒会襲撃で使ったクルセイダー型とか」

 

「うーん……普通の車なら余裕で振り切る事もできるが、コレだけデカいと流石に厳しいぞ」

 

エル・キャピタンからの依頼で大型の医療トラックを盗んだ時は追手を全て殲滅してから悠々と逃げたが……

 

「流石に正義実現委員会の全部を相手するのは骨が折れるかと」

 

「だよなあ」

 

なんて話していると、追い抜かれてしまった。 流石にトップスピードに乗ってない状態でレースを再開したら向こうに軍配が上がるか。

 

「ワカモ先輩」

 

「はいはい」

 

先輩は再び窓を開けて、スナイパーライフルを構えた。 その標的はもちろん糸目女。 俺は追い立てるように輸送車を右側に寄せて突撃するフリを行うと、まんまと左側、助手席側へと追いやられて行った。

 

「くっ!」

 

向こうもそれを理解してるのだろう。 苦々しい顔でハンドルを捌いて右へ左へとフラフラ動かしてどうにか回避しようとするが……

 

「妙だ」

 

なんだ。 あの動きは?

 

さっきまでの踊るような動きはどうした? 増援部隊を蹴散らした時のハンドル捌きは何処だ? コレではまるで、馬の前に吊るされた人参のようでは……

 

 

 

サンデヴィスタン

 

 

 

己の経験則と直感に従い、サンデヴィスタンを起動。 加速する世界の中、キロシの機能を最大限に発揮し、周囲を探る。

 

罠、無し

 

隠れた敵、無し

 

敵車両に隠し武装、検知できず

 

そしてグルリと周囲を見渡して……

 

 

 

 

 

3キロは離れた建物の屋根から対物ライフルを構える、やたらスカートの短い生徒が此方を覗き込んでいた。

 

その肩と耳にはあの糸目女が使っていたケータイと同じものが挟まれていた。

 

「一番恐ろしい事はスナイパーの狙撃、だったな。 狙いはワカモ先輩か」

 

サンデヴィスタンを解除してすぐさま量子チューナーを起動。 サンデヴィスタンのクールダウンを強制的に終了させ、技能を発動させた。

 

「悪い、ワカモ先輩」

 

「え? 後輩?」

 

 

 

「スタントジョッキー!」

 

 

 

運転席という揺籠から解き放たれ、俺の体は、宙へと舞い上がった。

 

「「「は?」」」

 

スタントジョッキー

・様々な方法で乗り物から降りられるようになる。

・ジャンプアウト解放(高く空へと跳びながら降車)

・スライドアウト解放(スライディングしながら降車)

・コレらのアクション中も武器を抜いて射撃することが可能

運転中

・移動による銃弾拡散ペナルティを無力化

・全銃弾拡散−50%

 

「後輩いいいいいいーーーーーーー!!! いきなりハンドルから手を離すなああああああああーーーっ!!!」

 

下からワカモ先輩の怨みのこもった叫びを聞きながら、体を重力に対して逆さにし、マロリアンアームズを構えた。

 

「サンデヴィスタン」

 

加速する世界の中、『集中モード』と『デッドアイ』が発動。 コレによって『深呼吸』『ロングショット』を解放させた。

 

3キロ以上離れた相手でも問題ない。 ロングショットによってピストルの距離減衰は消滅し、深呼吸とサンデヴィスタンで十分狙いをつける時間の余裕はある。

 

「正直、このカーチェイスで一番ヒヤッとしたよ」

 

全く以て大したものだ。

 

武器を狙って3発撃ち込み、そのまま眼下に広がる糸目女の車両のタイヤに跳弾を利用して5発打ち込む。

 

サンデヴィスタンの効果時間が切れ、そのまま輸送車の屋根に落下する。

対物ライフルを俺の射撃によって落とされた生徒は慌てて下へと降りていく様子を眺めた後、今度は後輪全てがパンクしたせいか、ドンドンスピードを落としながらアサルトライフルを輸送車へと叩き込んでくる糸目女に手を振る。

 

「じゃーなー」

 

『おーぼーえーてーろー!!』

 

最終的にはグルグルとスピンしながらクラッシュを起こし、再起不能になったようだ。

 

コレで完全に撒けただろう。 俺は空いた窓から再び運転席へと戻り、

 

 

 

カチャリ

 

 

 

大変ブチギレられていらっしゃるワカモ先輩にスナイパーライフルを突きつけられた。

 

「後輩ィ、覚悟の準備はよろしいですねェ」

 

「ごめんごめんごめんごめん、いや、本当にごめん、ごめんなさい。 でもしょうがないだろ? 流石に対物ライフルで撃たれたらひとたまりもないし」

 

「そもそも貴方が道交法を守れば良かっただけの話ですよね?」

 

「………………はい」

 

「説教」

 

この後、目的地に着くまで道交法の勉強会を開かれたのは、言うまでもない事だろう。

 

「まさかテロリストに道交法を教えられる羽目になるとはな……」




仲正イチカの話し方ってコレでいいのだろうか・・・

貴方はどれくらい知識がある?

  • サイバーパンクは名前だけ知ってる
  • サイバーパンクは動画勢
  • サイバーパンクは雰囲気でプレイ済み
  • サイバーパンクはガチでやった
  • サイバーパンクで知らないことなど何もない
  • サイバーパンク? なんそれ?
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