サイバーパンクと青春記録   作:水面どり

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無事にマキちゃんお迎えできました!


34話 メインジョブ 『悪友/』 9

「正義実現委員会、救護騎士団、シスターフッド、そのうえにティーパーティー、か」

 

「はい、それが私達トリニティ総合学院で内外問わず名の知られている部活動、委員会なんです」

 

俺はヒフミと言う生徒と共にアイスの行列に並んでいた。 だが、ただ行列が消化されるのも暇だったので、彼女からトリニティ総合学院の解説を頼んだのだ。 頼んだのだが……

 

「そんでもって、パテル、フィリウス、サンクトゥスの分派、挙げ句の果てには、寄せ集まってできた学校の『善良な生徒達』ね……善良じゃない生徒はどうなるのやら」

 

出るわ出るわ、胡散臭い話の数々が。 しかもそれを目の前のヒフミは若干自慢げに話してるのがきな臭さに拍車を掛けてしまっている。 コーポの事を特に根拠もなく信じきっているピカピカスーツ野郎と重なってしまう。 流石に目の前でモモフレンズなるキワモノキャラクターに夢中になるこの少女は、そんな奴らとは無縁だろう。

 

どうしよう、すごく関わり合いなりたくない。

 

「どう考えてもドロドロの政略入り乱れる戦国時代だよな」

 

例えるならテーブルの上では上品に紅茶を嗜んだり、口に手を持っていきクスクスと柔かに笑ってはいるが、クロスに隠れたテーブルの下はヒールの入った靴で鍔迫り合い、ドッタンバッタン大騒ぎしてる奴だろう。 流血沙汰になってない事を祈るばかりだ。

 

「内部分裂しかけてるアラサカみたいになってねぇだろうな?」

 

紺碧プラザの騒動によって齎された混沌としたアラサカ社の権力闘争。 ハナコ率いるハト派、ヨリノブ率いるタカ派、旨い汁を啜ろうと群がる有象無象。 そんな火種塗れのコーポに突撃するレリックによってケツに火のついた俺とジョニー。

まさしく地獄絵図。 最大の武力抑止力であるアダムも御臨終、最大規模のプロジェクトであるレリックも御輿の破壊で頓挫、今頃アラサカはどうなっているのだろうか。『株価上昇、気分上々』だけはないだろう。

 

「えっと、アラサカ?」

 

「……こっちの話だ、気にしない方がいい」

 

ヒフミはコテンと首を傾げながら此方をじっと見てくるが、俺は話すつもりはないと行列の先へと視線を逸らした。

こんな純粋無垢な、争い事とは無縁そうな生徒にナイトシティの赤黒い裏話は刺激が強すぎるだろう。

 

「列は残り数人だけか……ん?」

 

そこで一番先頭の生徒、今まさにアイスを買いクジを引いてる生徒の様子をキロシが捉えた。 アイス屋のロゴが刺繍された店員がコクリと頷くと、クジの入ったボックスを客の前に持っていき、客もそれに頷く形で返事をしてるように見えた。

 

「……なあヒフミ嬢ちゃん」

 

「あはは……嬢ちゃんなんてそんな、私はただただ普通の生徒ですよ。 気軽にヒフミと読んでください」

 

「そうか、じゃあヒフミちゃん。 つかぬ事を聞くがこの場所、トリニティ自治区だとどんな犯罪が多いんだ?」

 

「? えーっと、暴動とか強盗とかの目立つ犯罪はまず見かけませんね。 あるとすれば、トリニティ生徒を狙った身代金目的の誘拐、小規模の破壊工作、後は……トリニティは高級な物を取り扱う事が多いので、転売とか、ですかね?」

 

「転売?」

 

なんだそりゃ、転売? 転がして売る? どう言う事だ?

 

「転売というのは、限りある商品とか人気な品物を狙って買い占めて、それが本当に欲しい人に高値で売りつけて、不正商売をする事です」

 

「あー、うん?」

 

ダメだ、全然ピンとこない。 そもそも売り切れまで買われたなら企業が更に生産すれば済む話だし、そんなので儲けられるとはとても思えない。 ただただ企業が物が売れて大喜びする様しか想像できない。

 

「超大量消費世界じゃ絶対ありえない行動だな」

 

「うーん、じゃあ……」

 

ヒフミが顎に手を当てながら考え込むと、俺の腰に下げた拳銃、マロリアンアームズに視線合わせて口を開いた。

 

「おめでとうございます! 貴方の拳銃と同モデルの新商品が発売されます!」

 

「マジで!!!!!!???」

 

あの、マロリアンアームズ3516が新発売だと!!? 確かジョニー専用に製作された非売品で、それが販売される!!!? え、ちょっと待って、気持ちが追いつかないどうしよう!? 先ずは購入するために金がいるよな。 あと収納用の武器ラックに、改造パーツ、アップグレード部品も集めなきゃだよな。 あとは、

 

「ですが残念、転売屋が全て買い占めてしまいました」

 

 

 

 

は?

 

 

 

 

 

「転売屋が売りに出した金額は相場の10倍の値段でーー」

 

「よし、殺すか」

 

「待ってください待ってください例え話、例え話ですから!!? なんで拳銃抜いて何処かに行こうとしてるんですか!!?」

 

「大丈夫、不正商売って事は企業の認可はねえんだろ? ぶちのめして奪えばタダだ」

 

「全然大丈夫じゃない!? Vさん落ち着いてください!!」

 

銀色の拳銃を抜いて行列から抜けようとする俺を必死に裾を掴んで引っ張るヒフミ、そんなコントをかましているとカランカランとベルの鳴らす音がフロア中へと響いたのだ。

 

「おめでとーございまーす!! こちら大当たりのコラボ版アングリーアデリー人形になります!!」

 

俺とヒフミが音の鳴る方へと首を向けると、そこには笑顔でアイスカップを被った独特な色合いのペンギン人形を渡す店員と、淡々と、特に感慨に耽るでもなく受け取った客の姿がそこにはあった。

 

「よ、よかった〜。 アングリーアデリーさんも欲しかったですが、ペロロ様が引かれなくてよかったです」

 

「それも時間の問題、かもな」

 

え、と掴んでいた裾を手放したヒフミに正気に戻った俺は向き直って改めて質問をする。

 

「なあヒフミちゃん、もう一回聞くようで悪いが転売ってトリニティじゃ多い事なんだな?」

 

「は、はい。 正義実現委員会がキチンとパトロールや夜間の見回りも繰り返してくれてるので、不良な生徒達が動きづらくなってるようで……その結果、他の自治区へ移動したり、転売といったグレーゾーンな行動を起こすって聞きました」

 

「なるほど。 先輩の言ってた、火は燻ってるってこういう事か」

 

トリニティの不良達はさぞやりづらいだろう。 重武装されたジープでパトロールされ、やり合ったらPTSDを発症しかねない正義実現委員会の最強に怯え、最悪トリニティ総合学院の権力闘争に巻き込まれかねない。 それ故に鬱憤が溜まっている。

 

「……よし、逆に利用してやるか」

 

「??? それってどういう……?」

 

「あの店員と客の一部がグルって事さ」

 

「え? えーーーー!!? グルってなんですか??!」

 

「文字通りだ。 店員がくじの中身を操作して、自分の仲間である客にアタリを引かせてやがる。 そして景品は全て総取り、後は転売して大儲けって算段だろうな」

 

随分とみみっちい事をするもんだ。 わざわざアルバイトって形で潜り込み働いて、仲間を集ってやる事がたかが人形の独占。 スケールが小さすぎて話にならない。 小悪党未満だ。 コレだったらナイトシティのバカがやらかす盗みの方が酒のつまみになるだけマシである。

 

「ど、どうしよう……このままじゃペロロ様が……」

 

「まあ落ち着けよヒフミちゃん。 俺がなんとかするさ」

 

「なんとかって、どうやって?」

 

俺は自分の目を指さし、不敵な笑みを浮かべた。

 

「ちょいと目には自信があるのさ」

貴方はどれくらい知識がある?

  • サイバーパンクは名前だけ知ってる
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  • サイバーパンクで知らないことなど何もない
  • サイバーパンク? なんそれ?
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