「いらっしゃいませー、ご注文はお決まりでしょうか?」
余裕そうな俺と不安と緊張で顔を固めたヒフミは列を進み、ようやくアルバイトが担当してるカウンターに着くことができた。
俺はわざとらしくアイスの並ぶショーケースを覗き込むフリをしながら、チラチラと抽選ボックスをキロシに捉えていた。
「ふーん、どうしよーかなー?」
抽選ボックスにスキャンをかけて、内部構造の解析に取り掛かった。 だがあまり見ていても怪しまれてしまうので、そこでヒフミに気を引いてもらうことにした。
「えっと、じゃあ私はペロロ様キャラメルとアデリーストロベリー、ウェーブソフトにスカルチョコ、ブラザーミントとそれから……」
さて、パンドラの箱の中身はどうなってることやら。
「……特に変哲もないただの箱か、中に合金が仕込まれてるわけでもなく、ただ単純な、それこそどこにでもあるダンボールでできた抽選ボックスだ」
それなら特に難しい仕組みでイカサマをしてる訳ではないのだろう。
と、そこで抽選ボックスがアルバイトに持ち上げられてヒフミの前へと動かされた。
「はい、それではアイスを15個ご購入されましたので、5回分クジを引いてください」
ヒフミは俺に視線を向け、俺はそれに頷くことで返事をした。 意を決したように勢いよく手を突っ込み、グルグルと手で中身をかき混ぜていく。
「当たりますように、当たりますように〜!」
そう一生懸命に念じる彼女をアルバイトは営業用のアルカイックスマイルで見守っていた、だが
「口元がさっきより上がってるぞマヌケ」
アイツはボックスの中のクジをグチャグチャに混ぜられても余裕があった。 つまりあの中、少なくともヒフミがかき混ぜてるクジの中には当たりがないのだろう。
そしてヒフミはかき混ぜながら俺を見て小さく首を横に振った。
「二重底じゃないし、底に穴が空いてるわけでもない」
ヒフミに勢いよく手を突っ込んでもらったのは、底に仕掛けがないか確かめてもらう為だった。
ボックスの中で埋もれたクジの中には当たりはなく、底に仕掛けがなく、それでボックスの中にはしっかり当たりクジは入っている。
「子供騙しじゃねぇか、くだらねぇ」
手口のおおよその見当はついた。 俺は人目も憚らず、堂々とヒフミにジェスチャーを送った。 何の当たりクジを引けるかは彼女の運次第、日頃の行いが良ければ問題ないだろう。
「?」
ヒフミは不思議そうにしながら手をわずかに引っ込め、何かを探るように動き出した。
「あ!? おいお前!!」
ヒフミの動きに気づいたのだろう、アルバイトが無理矢理にでも止めようと動き出すが……
「手品がバレたからって狼狽え過ぎだろ三流マジシャン」
ピタリと、動かなくなった。 そしてゆっくり、ゆっくりと俺へと首を回し始めた。
「ヒッ」
腰に下げたマロリアンに指をかけ鋭く殺気を向ける俺を見て、動きを止めたアルバイトにウィンクをかましてやる。 それと同時に、視界の向こう側でヒフミは大物でも釣り上げたかのように勢いよく腕を引き抜いた。
その手には他のクジとは違う、金色のクジが握りしめられていた。
「まさか1発で引き当てるとはな」
全くもって羨ましいことだ。 俺なんてドッグタウンで何回も投下物資を漁っても望みの武器が手に入らなかったというのに。
彼女の発揮した豪運に舌を巻いていると、金色に輝くクジを此方にも向けてきた。
「やった!! やりましたよVさん!! コレはペロロ様の当たりクジです!!!」
「やるじゃないか、日頃の行いが良かったんじゃないか?」
俺はそう言いながらそっとヒフミの前に移動しながら、手を使って彼女を庇うように俺の背後に回す。
「いったいどうしたので……?」
「ふん、手品がうまくいかないから今度は実力行使かよ。 とことん三下だなテメェら」
俺たちの周りには列に並んでいた不良だけでなく、ヘルメットを被った生徒が銃を抜いて取り囲んでいた。 数にしてざっと10人程度だろうか。
そこでアイス屋の制服を着たアルバイトが赤いヘルメットを被った姿で、堂々と徒党の真ん中を割って入ってきた。
「はーいお客様、ズルはいけないなぁ、ズルはよぉ!!」
いけしゃあしゃあと良く言う物だ。 先にイカサマしていたのはそっちだろうに。
俺はケータイを弄りながら、時間稼ぎがてらに口を開いた。
「はん! 何がズルはいけないだエセマジシャン共。 テメェらこそ徒党を組んでやる事がたかが人形の独占とか、みみっちいんだよ三下未満が」
「んだとお!!」
沸点低すぎだろ。 もうブチギレて引き金に指をかけて……ああ、なるほど。
「焦んなよ。 そんなに怖いか? 正義実現委員会がよ」
「っ! てっめぇ……!」
「ビビリの癖に狡い真似しやがって、そういうところが三下未満なんだよ。 ガキはさっさと家に帰って勉強でもしてな」
おっけ、ワカモ先輩に計画を早める旨のメールを送っておいた。 後はペロロ人形を確保して、コイツらとの戦闘で騒ぎを起こせば準備万端だ。
「ヒフミちゃんは早く景品持って立ち去りな。 ここは、いや、トリニティ中が大パニックになるからさっさと家に帰りな」
「それってどういう……?」
「よそ見してスカしてんじゃねぇぞ!!」
俺の飄々とした態度が余程気に入らなかったのか、取り囲んでいた不良の一人が引き金にかけた指に力を込めてーー
ダァン
ーーそのまま崩れ落ちた。
キーホルダーの付けられたアサルトライフルは音を立てて床に落ち、その口から火を吹くこともなく、沈黙した。
硝煙を上げていたのは、銀色の拳銃、マロリアンアームズだった。
「おせえよ、三下未満」
俺が指でマロリアンアームズを回して腰に戻すと、俺の銃声によって齎された静寂が次第に喧騒へと変わった。
「お、おい、あいつ、まさか」
「ニュースでやってたよね、あれ」
「銀色の拳銃」
「ありえない速度の早撃ち」
「白色が混じった金髪に、オレンジ色の目」
それは、俺たちを取り囲む不良が言ったのか、はたまた周りにのさばる客共が口にしたのか。
だが、この言葉だけは、隣の少女、阿慈谷ヒフミがつぶやいたのは間違いなかった。
「銀銃のV」
メインジョブ 『悪友/CHIPPIN‘IN』
・トリニティに火を点けろ
「なんだ、俺はそんな風に呼ばれてるのか?」
「えっと、そう、ですね……ニュースでそう呼ばれてました」
銀銃のV、ね……
「ジョニーみたいで嫌だな」
遠い何処かで、タケムラとオダに追いかけ回されている汚い妖精がくしゃみをしたような気がした。
それに、俺にとってはマロリアンアームズはあくまでサイドアームだ。 メインは近接武器での斬り合いである。
話題になってるであろう早撃ちにしたって、確かにそういう技能は持ち合わせてはいるが大半はサンデヴィスタンのおかげである。
「とはいえ、生徒相手に刃物振り回すのは、いくらなんでも大人気ないよなぁ。 だけど先輩からは全力で戦って欲しいとか言われてるし……」
これからの作戦に頭を捻らせていると、クイクイと裾を引っ張られた。 そこには不安そうな面持ちのヒフミが何か言いたそうにしていたが、口を閉じてしまった。
「あー、あれか」
ヒフミの行動の意味に思い至った俺はサンデヴィスタンを発動させて、アイス屋のカウンターへと侵入。 ある物を手にして即座に帰還。
「え? 今消えて、あ、あれ!?」
「ほら、取ってきてやったぞ」
サンデヴィスタンに戸惑うヒフミにクジの景品を押しつけて、そのまま背中を向ける。
「あ! ペロロ様!」
「コレで依頼は完了だろ? 出口はあっちだ。 さっさと行け」
報酬のアイスを食えないのは少々残念だが、仕方あるまい。 今はワカモ先輩の計画を進めるとしよう。
だがヒフミは出口と俺を交互に見て、何か悩むようなそぶりをしだす。
「じゃあ、最後に一つだけ、いいですか?」
「急いでるから手短にな」
「Vさんって、悪い人、なんですか?」
「……テロリストらしいから、そうなんじゃないか?」
少なくとも善人ではない。 この手は何人も殺してきたし、不幸を齎したことだってある。
「私はとてもそうは思えません」
そう言い捨てながら、ペロロという奇怪な人形を胸に抱えた少女は出口へと走っていった。
「必ず! ペロロ様のお礼はしますからね、傭兵のVさん!」
そう言いながら彼女は、最後に此方に向かって手を振って立ち去るのだった。
「期待しないで待っとく」
あの子、自分は平凡だとか普通だとか言っていたが
「絶対に嘘だろ」
そう呟きながら、マロリアンに指をかけながら今度は不良共に向き直る。
「さて、精々利用させてもらうぞ三下未満共」
「どうするリーダー!? 流石にアレ相手はキツイですよ!! 噂だとイケイケの連中、アイツにやられたって」
「話と違うじゃねぇか、ただクジ引けばいいとか言ってたじゃん!」
「あ、アタシは抜けさせてもらう! このままアイツを相手にしてたら正義実現委員会が来ちまうよ!」
「あ!? ズルイぞお前!?」
俺とヒフミが別れてる間に何があったのか、随分と揉めてるようだ。
「さっさと片付けるか」
敵の前で揉めてんじゃねぇよと思いながら、俺は何の躊躇いもなくサンデヴィスタンを稼働させて、全員にゴリラアームの拳骨をくらわせるのだった。
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