「そっち持ってー」
「おーけー」
「「せーの、よいしょ!」」
ショッピングモール・家具コーナー、流石はお嬢様学校トリニティの自治区内の商売店と言うべきか。 取り扱っている家具がどれも金やら銀、果てには宝石まで誂えた高級品がズラリと並んでいた。
とはいえ全ての生徒がお嬢様というわけではないのだろう。 普通のなんの変哲も、柄もない、木製のシックな作りの家具やプラスチックで軽量化された棚など幅広く品物を揃えていた。
だがそんな場所は既に過去。 客で賑わう筈の店内は防災シャッターをゴリラアームで無理矢理こじ開けられ、ガラス窓のあった場所は装甲車がバックで突っ込み、不良生徒達が次から次へと装甲車の中へと家具が運び込まれる無法地帯と化していた。
「では皆さん、取り分は家具から剥ぎ取った装飾品の売却額の山分けなります。 せいぜい張り切ってください」
「「「うーーっす」」」
ワカモ先輩の号令に適当な返事をしながら活動を起こす労働力として捕縛した不良生徒達。 どうやら彼女達は稼げればなんだって良いらしく、こちらの提案を快く引き受けてくれた。
彼女達はバックヤードから拝借したのだろう、ドライバーやトンカチで家具の装飾品である宝石や金細工を嬉々として剥がし始めた。
「因みに聞くが、売る当てはあるのか?」
「ブラックマーケットですよ? なんだって売れます」
「そうじゃなくて、足がつくんじゃないかって聞いてんだ。 明日も正義実現委員会とドンパチとか勘弁だぞ」
「ご安心を、その為に出発前に取り付けたジャミング装置が有りますので容易く振り切れますし、例え足取りを追われたところで問題ありません。 トリニティの品行方正が服きて歩いてるような連中がブラックマーケットの治外法権に足を運ぶ事はありません」
「わからないぞ、お嬢様ってのはいざという時とんでもない事をしでかすもんだ。 拉致誘拐犯の逃げ込んだモーテルにドールを送り込んだりとかな。 もしかしたらなんかの間違いで銀行強盗したりするかもしれないな」
「そんなまさか、うふふ」
俺の冗談を手元で口を隠して上品に笑って流すワカモ先輩。 こういう所が本当に様になってるなと感心する。 もしかしたらお嬢様、というのはワカモ先輩の方なのかもしれない。
「俺も家具を積み込むとするよ。 外の様子はどうだ?」
俺がそう尋ねると、ワカモ先輩はタブレットを取り出し、指で操作を始めた。 おそらく警備用の監視カメラ、もしくは警備ドローンにアクセスしてるのだろう。
「外は建物外周を正義実現委員会が完全包囲を準備してるようですね。 指揮者は糸目の生徒、私達とカーチェイスした仲正イチカという生徒ですね。 おそらく主戦力が揃うまで待機してるのでしょう」
「主戦力というと、例の委員長か?」
「ええ。 剣先ツルギ、正義実現委員会のリーダーにして、私たちのターゲット」
剣先ツルギ、トリニティ総合学院の治安維持機関である正義実現委員会の委員長、そしてキヴォトス最強候補の一人という話だ。
戦闘スタイルはショットガン二丁と持ち前の耐久力を駆使した突撃。 剣先ツルギが戦場に向かえば必ず事態が鎮圧する・・・・・・が、あまりにも被害がデカすぎるらしい。
生徒の拉致を救出に行けば、建物は倒壊、人質も犯人も仲良くPTSD化し救護騎士団なる医療機関に叩き込まれるのだとか・・・・・・ヒフミやワカモ先輩から聞いた話だけでは詳しい内情まで把握できなかったが、元トリニティ生徒のヘルメット団リーダーから詳しい話を聞く事ができた。
俺とワカモ先輩が縛られてるリーダーに腕と首を鳴らして『心をこめたお願い』をしたら情報提供に素直に応じてくれたのだ。
「うええええええーーーーん!! ごわがっだよおおおおーー!!」
「リーダー、鼻水拭いてから抱きついてください。 私らのジャージまでグチョグチョになるじゃないですか」
視界の端で黒いヘルメットの団員がリーダーを慰めてる様子を尻目に両開きの大型冷蔵庫に指をかける。 このサイズならビルの共用冷蔵庫として使えそうだ。
「よいしょっと」
ヒョイと、自慢の筋力とゴリラアームに任せて持ち上げ、鼻歌を奏でながら装甲車へと運んでいく。
「う、ぉ・・・・・・」
誰かがうめく様な声をあげ、家具コーナーは俺の鼻歌だけが響く。 どうしたのだろう? さっきまでトンカチに打ち付ける音やら泣き喚く声やら宥めるのに四苦八苦していた様子もピタリと止まってしまった。
冷蔵庫を装甲車の中へとあっさり運び終わると、全員が俺へと視線を注いでいた。 ワカモ先輩までもが。
「なんだよ、俺なんかしたか?」
「・・・・・・後輩、貴方のその腕が義手なのは知ってましたが、それは?」
どうやら見ていたのは俺でなく、腕の方、ゴリラアームの方らしい。 運んだ時にゴリラアームの機能も使っていたので、その時に腕の中を見られたのかもしれない。
「すまん、気分悪くさせたか」
サイバーウェアやクロームの技術のない世界で人体の中を覗くことなんてそうあることじゃないだろう。 しかもゴリラアームはシンプルな作りのサイバーウェアで、コンパクトに改造できる。 つまり肉の部分もある程度残せてしまうのだ。
「いえ、お気になさらずに。 多少驚いてしまっただけですので・・・・・・ふむ・・・・・・」
するとワカモ先輩は人差し指と親指を顎に当てて、何かを考え始めた。 パタパタと尻尾を忙しなく動かし、目はあちらこちらへと動かしているその様子は何かを悩んでる様でもあった。
「つかぬ事を伺いますが後輩、それって誰でも身につけられる代物でしょうか?」
「ゴリラアームのことか? そうだな、ナイトシティじゃ割とメジャーなサイバーウェアだな」
「メジャーって、もしかしてナイトシティじゃ珍しい物とかでは?」
「いや? 普通に一般販売されてるぞ。 流石にガッツリ戦闘用の代物は表じゃ売られてはないが、それでもコンクリートを軽々と壊せるぐらいのはCMで見かけたな。 確か同じ階層に住んでたおばちゃんがショットガン撃つと腕が痛くなるから〜って、新しくゴリラアームを買い替えてたな」
「すみません後輩、一気にツッコミどころ満載な会話しださないでいただけませんか? 貴方のナイトシティトーク結構ぶっ飛んでるんですよ」
「失礼な、キヴォトスの生きたロボットやなんでもあり神秘よか遥かにマシだよ」
何がどういう歴史を辿れば未成年の少女達が銃でドンパチを繰り広げるのが日常になる学園都市が生まれるのだ。
「コホン、脱線しました。 その、後輩の言う『さいばーうぇあ?』ですか、私にも搭載可能でしょうか?」
「やめとけ」
ワカモ先輩の質問に被せて俺は否定の言葉を投げつけた。 これだけは絶対に譲れない。 土下座して涙目で頼まれても、何が何でも許さない。
「・・・・・・なぜか聞いてもよろしいでしょうか」
「それは・・・・・・」
キヴォトスの人間にサイバーウェアを搭載したら、神秘という摩訶不思議エネルギーとどんな作用を齎すか不明だからだ。
もし、万が一にでも目の前の少女がサイバーウェアを身につけた瞬間、サイバーサイコシスという精神疾患を発症した場合、俺はワカモ先輩を殺さなくてはならない。
「治療法なんてナイトシティでも見つかってねぇしな」
ワトソンに拠点を置いたフィクサー、レジーナ・ジョーンズがサイバーサイコシスの研究に熱を入れていたが、結局何が原因でサイバーサイコシスを発症するのかはハッキリしていない。 そんな状況だ、当然治療法なんて見つかってない。
「治療法? もしかして、サイバーウェアには何か重大なデメリットがあるのでしょうか?」
もし、この事実を伝えたらどうなる? サイバーウェアを搭載してる俺だっていつかサイバーサイコシスを発症するかもしれないのに?
目の前で、不安そうな、俺を案じるように手を伸ばす少女がそれを知ったら・・・・・・
「ああ、コイツを身につけるには、特殊な技術を持った専門の医者、リパードクってのが必要でな。 キヴォトスにいるわけないから、不可能なんだよ」
「・・・・・・そう、ですか」
「それに定期的なメンテナンスだって必要だ。 体を機械化するんだから、当然体重だって増える。 あーどうすっかなー、メンテナンスしてくれる人を探さねーとなー」
ヒラヒラと手を振り、次の荷物へと軽い足取りで向かう。
「さて、さっさと運んでしまおう。 もしかしたら剣先ツルギって奴がもう来てるかもしれないしな」
大丈夫だ。 きっとバレてない。 嘘も言ってない。 感情だって固めた。 何も疑われてないはずだ。
「ワカモ先輩、洗濯機だけどどうする? この大きい方でいいか?」
俺はいつも通りの笑顔を貼り付けて振り向いた。
サイバーサイコシス、結局明確な原因は分かってないんですよね・・・エッジランナーズの描写から察するに、人間らしさの欠如が一因っぽいのですが・・・・・・うーむ
サイバーパンクエッジランナーズmadness 面白かったですね。
貴方はどれくらい知識がある?
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サイバーパンクは名前だけ知ってる
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サイバーパンクは動画勢
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サイバーパンクは雰囲気でプレイ済み
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サイバーパンクはガチでやった
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サイバーパンクで知らないことなど何もない
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サイバーパンク? なんそれ?