サイバーパンクと青春記録   作:水面どり

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報告が遅れましたが、周年ガチャで無事ワカモ先輩引けました。 やったぜ(800連)


39話 メインジョブ 『悪友/CHIPPIN‘IN』 13

返り血でも浴びたかのようなスカート、細く痩せたような黒い翼、長い黒髪に、やたら鋭い目をした生徒、剣先ツルギがシロコに擬態した俺に手を伸ばすとフロア中にけたたましい警報が鳴り出した。

 

「・・・・・・セキュリティシステムがハッキングされてたか」

 

予想していたかのように淡々と呟くと、インフォメーションセンターの受付に指をさした。

 

「隠れていろ」

 

「おう、じゃなく・・・・・・ん、わかった」

 

あやふやな記憶を頼りにシロコを再現するが、やはり生体データだけの模倣では十全な演技が出来なかった。 感情のブレを観測して所得する行動データがないからだ。

 

「とはいえ行動データの取り方なんて知らないしな」

 

ドッグタウンで起こった一連の事件の一つ、ブラックサファイアでの作戦はアレックスというFIA、いや今は元FIAのエージェントの協力があったから成功したのだ。

 

「行動データは俺が観測した感情のブレと動きをアレックスがデータとして処理してくれたからだしな」

 

つまり今の俺では完全な擬態が出来ても、演技に関しては穴だらけになってしまうのだ。

 

 

 

穴だらけなのはテメェのモノマネが下手くそだからだろ。 なんでスットボケとか急なアドリブは出来んのにモノマネだけ出来ねえんだよ。

 

 

 

口喧しい汚い妖精の小言が飛んできたように思えたが、きっと気のせいだろう。

 

「さて、キヴォトス最強候補の実力見せてもらおうか」

 

俺がインフォメーションセンターに隠れると様々な通路から無数のハッキングされた警備ドローンが雪崩れ込んできた。 黄色いボディの下に二門の機関砲を備えているそれが、ツルギに向けて一斉に掃射を始めた。

 

「フゥン・・・・・・」

 

だが動じることもなく二丁のショットガンをぶら下げた正義実現委員会の委員長はその身に弾丸のシャワーを浴びながら警備ドローンへと歩みを進めた。

 

「おいおい、随分ガッツがあるな」

 

なかなか見応えのありそうな戦闘を予感しながら、手元にポップコーンが無いことを悔いた。 少なくともブシドーXよりかは面白そうだ。

 

攻撃をその身に晒していたツルギは片腕を上げ、銃口をドローンへと向け

 

「ヒャッハァァァーーーー!!!」

 

奇声と同時に散弾が吐き出された。

 

「・・・・・・・・・・・・えっと、正義実現委員会、だよな?」

 

あれ正義って面か? 目は完全に逝っちゃってるし、奇声と銃声を鳴らしながら暴れ回る様はサイバーサイコを疾患してるようだ。 何も知らなければ、アレがトリニティの治安維持機関のリーダーと紹介されてもジョークと受け取っていただろう。

 

俺の疑問を他所に古い型のショットガンで次から次へとドローンをなぎ倒していく。 技術格差など神秘の前では無意味だと言わんばかりだ。

 

「たった一射撃でドローンが纏めて爆散する様は見ていて爽快だな」

 

そして一通り掃射した後、俺の安全を気にしたのか、それとも警戒しているのか、コチラを一瞥するとレバーを下げ中に薬莢を装填した。

 

なるほど、左右の銃2発ずつ、合計4発か。

 

「ハハハハハハハハハッアーー!!」

 

そして引き続きショットガンを振り回しながら掃射し、あっという間にドローンの群れは数えられる数字にまで減らしていた。

 

「銃は旧式なのにドローンの装甲を簡単に食い破る、装弾数は4発、四方八方から撃たれても微動だにしない頑丈さ、戦闘しながらも俺を気にかける余裕があるって事は相当場数は踏んでそうだな。 しかも必ず1発で複数を巻き込んでる辺り、サイバーサイコのようにただ闇雲に暴れてるだけじゃない」

 

総評とするなら頭の回る戦闘狂、タフネスだけならアダムスマッシャーに並ぶかどうか・・・・・・

 

「負ける気はないが、油断できる相手でもなさそうだ」

 

ワカモ先輩の頼みとはいえ、いささか無茶な要望だとも思う。

 

「圧倒しろ、か」

 

分析はある程度終わったし、そろそろ仕掛けるとしようか。

 

「不平不満を閉した蓋を蹴飛ばしてやろう」

 

ツルギが最後のドローンを破壊したのを確認し、監視カメラに向けて手を振る。 腰に差したマロリアンを手で撫で、気さくにツルギに向けて歩みを進めた。

 

「やるじゃないか、まるで花火会場だったな」

 

そして彼女はショットガンを下ろし

 

 

 

もう片方の銃口を俺へと向けた。

 

 

 

「おっと、治安維持機関のリーダー様が一般人に銃口向けるのかよ。 コイツはスキャンダルだな」

 

分かりきっていたように両手を上げ減らず口を叩く俺に、ツルギは目を細めゆっくりと確かめるように口を開いた。

 

「・・・・・・V」

 

口笛を吹き、手を上げたまま手首を軽く回して拍手してもいいかと伺うが、威嚇射撃という形で拒否られた。

 

「へぇ、名推理か、当てずっぽうか、勘かな?」

 

肩を竦めながら煽るようにスットボケる。 だが彼女は意にも介さずに淡々と答え合わせを始めた。

 

「ドローンは私だけに殺到してきた。 隠れていたとはいえ、近くにお前がいたのにも拘らずだ。 ワカモなら私に手間をかけさせる為に敢えて一般人を狙うだろう」

 

だろうな、あの先輩なら躊躇なく敢行しただろう。 そして監視カメラ越しにほくそ笑んで次の一手を打ち、ツルギの対処を後手に回し続けその間に退散してるだろう。

 

「じゃあ俺がワカモ先輩だと思わなかったのか・・・・・・いや、愚問か」

 

あの先輩が自身の安全を投げ打って剣先ツルギの前に出る理由こそない。 それだったら・・・・・・

 

「お前を変装させて前に出し、不意打ちを指示する。 ワカモには高度な変装技術を持っていると記録されていた」

 

「ブラボー、殆ど当たりだ」

 

「・・・・・・殆ど?」

 

ツルギの疑問を他所に、背後に向けてダッシュして光学迷彩を起動する。

 

ツルギは瞬時に発砲するが・・・・・・手応えを感じなかったのか鋭い目つきが更に狭くなる。

 

「・・・・・・光学迷彩、ミレニアムから盗んだのか?」

 

「さてな、答え合わせも兼ねてそろそろ始めようか?」

 

透明状態になった俺はマロリアンアームズを発砲、ツルギの胴体に難なく命中はしたが特にダメージを受けた様子もない。 弾道から場所を割り出したのか、多少ズレていたがツルギはお返しにショットガンをぶっ放してくる。

 

「そもそも、なぜワカモ先輩は逃げなかったのか?」

 

だがそれも空を切り、更に別方向から銃弾が跳んでくる。 それも被弾するがお構い無しにショットガンを2発、それぞれ別々の場所を狙い広範囲に銃弾をばら撒くが全て床と壁に吸い込まれてしまった。

 

弾道コンプレッサによる跳弾だ。 コレにより被弾によって割り出される場所を俺は誤魔化していた。

 

「なぜここで俺がお前を待ち受けていたのか?」

 

ツルギの弾数は残り1発、俺の弾数は5発、仕掛ける。

 

光学迷彩を解除し姿を現す。 ツルギが俺を視認すると同時に目を血走らせ凄まじい勢いで突撃、俺もツルギに向けて走り出す。

 

「そこかあああああああああ!!」

 

マロリアンを構え、ガンパウダーを構え、接近していくその様は、まるで中世の騎乗による決闘にも見えただろう。

 

ギリギリだ。 ギリギリまで引きつける。 ツルギは確実にダメージを与える為に、俺はツルギに再生されないほどの大きなダメージを与える為に。

 

見ているものがいれば、焦燥感で熱くなったのだろうが、二人の心は冷や水に漬け込んだかのように冷たかった。 二人とも、踏んだ場数の多さ故だ。

 

そして遂に、ショットガンの適正距離より内側に入ったその瞬間

 

 

 

 

 

「サンデヴィスタン」

 

 

 

 

 

イカサマ同然の力が発揮された。

 

全てが加速していく。 ツルギのくぐもったような音と同時に放たれた散弾を通り抜け、時間は元に戻っていく。

 

この一瞬の加速が、余りにも無慈悲だった。

 

「!!!?」

 

「それはなーー

 

そしてツルギの真横に立つようにダッシュし、ケレズニコフが起動する。

 

ーー俺がテメェより強いからさ」

 

再び加速された時間、俺は全ての弾丸を、ツルギの頭、5発全部、全く同じ場所へと叩き込んだ。 ツルギの体が傾いて

 

 

 

視界の端に、何かが見えた。

 

 

 

「あ?」

 

それは黒と赤でカラーリングされた銃で、この女が持っていた物の筈で、投げ捨てられていた。

 

「にへぇ」

 

一体いつから? 突撃前? そしてこの女は何を企んでいる? 

 

既に残弾はない、マロリアンアームズ至近距離5発を受けて体勢を崩しかけてる今なら制圧に掛かれる、だと言うのに目の前の生徒は服の中へと空いた手を何故突っ込んでいるのだ?

 

手を伸ばして胸ぐらを掴みにかかる。 何かされる前に一気に制圧する。

 

だが、俺の手が届く前に、それが引き抜かれた。

 

「ブラッドおおおおおおおおお!!!!」

 

それは、投げ捨てられたはずの銃だった。

 

「クソッタレが!!?」

 

それがコイツの神秘か、さっきまで投げ捨てられていたショットガンが今は手元にある。

武器のワープ、転送、移動、まるで俺がホシノと激闘を繰り広げる時にやったような神秘の使い方だった。

 

それが今、俺に牙を向いた。

 

ツルギは迷いなく、本能のままにトリガーを引き、散弾が俺にぶち撒かれた。 身体中に散弾が命中、そのまま俺の体を鋭い痛みが

 

 

 

「ディフェンジコフ」

 

 

 

駆け抜ける事はなかった。 散弾はまるで壁に当たったスーパーボールのように跳ね、飛び散り、俺に対して効果的なダメージを与えるに至らなかった。

 

皮膚系サイバーウェア、ディフェンジコフ

コレはケレズニコフ発動後4秒間、自身の皮膚を硬質化し凄まじいダメージ耐性を齎してくれるサイバーウェアだ。 コレと神経系サイバーウェア、ネオファイバーを採用する事で生存能力を飛躍的に高めることができ、今起きた現象の正体である。

 

 

目を見開いたツルギの髪を掴んで中央に聳える噴水に目掛けて投げ飛ばすが、ショットガンを身に受け崩れた体勢では力をこめる事はできなかった。

 

水飛沫が舞い、不敵な笑みで立ち上がるツルギに思わず舌打ちをしてしまう。

 

「まるでダメージがないな・・・・・・いや、凄まじい再生速度か」

 

お互いに手札を切り、結局仕切り直しの状態である。

 

「ワカモ先輩の言う通り、負ける事はないが倒すこともできない・・・・・・か」

 

まさに体力無限の化け物、コレを倒すには超高火力で一撃で倒さなくてはならないだろう。 少なくともアサルトライフルやサブマシンガンではキリがない。

 

というわけでワカモ先輩のプランに任せるとしよう。

 

「任せたぜ、先輩」

 

俺が監視カメラに向けてウィンクをかますと、フロア中の監視カメラが一斉に剣先ツルギと俺にそのレンズを向けた。

 

『うふふ、トリニティの優等生の皆さま、そして日陰を歩く不良生徒の皆さま、ご無沙汰しておりますワカモです』

 

避難誘導を表示していたスクリーンが別の物へと差し替えられた。 狐の面が画面中央で佇み、赤と黒で染め上げられるとそこから聞き覚えのある妖艶な声が響いた。

 

「狐坂ワカモ?」

 

ツルギが怪訝な声を上げつつもショットガンを俺に突きつけるが、俺はサンデヴィスタンを使い2階へと、射程範囲外へと移動した。

 

『この度私は・・・・・・いえ、私達はショッピングモールを占拠し、ご覧いただいたように剣先ツルギと戦っている最中なのですが・・・・・・チャンスだと、思いませんか?』

 

するとスクリーンは更に差し替わり、剣先ツルギと2階でカメラに向けてヒラヒラと手を振る俺の、シロコの姿が映し出された。 因みにこの中継はツルギがショッピングモールに入ったタイミングでトリニティ全域に電波ジャックされている。

 

『ご覧いただいた様に、私の後輩と剣先ツルギは互角の戦いを繰り広げております。 決着はまだまだ着きそうにありません』

 

 

 

『つまり、今、現在、正義実現委員会には剣先ツルギは不在です』

 

 

 

「・・・・・・・・・・・・っ!?」

 

ようやく気づいたか、現状に、誘い込まれた事に、罠に引っかかった事に。

 

『どうでしょう皆さま? コレはチャンスですよ? 今まで大きな面して取り締まってきた連中に目に物見せるいい機会ですよ?』

 

剣先ツルギは倒せない? なら逆で行こう。

 

「剣先ツルギ以外をぶっ潰す」

 

さあ、トリニティに火が付くぞ。




遂に動き出すvとワカモの計画
次回、「シロコvsツルギ」
「ん゛、冤罪! 私じゃない!!!」

貴方はどれくらい知識がある?

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  • サイバーパンクで知らないことなど何もない
  • サイバーパンク? なんそれ?
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