サイバーパンクと青春記録   作:水面どり

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43話 メインジョブ 『悪友/CHIPPIN‘IN』 16

「後輩、本気を出しなさい」

 

先輩からの言葉に心がスッと鋭くなるような感覚が入り込む。 のたうち回るようなブレの激しい感情の波は畝りを消し、夜海が広がるように静寂に包まれる。

 

「いいんだな」

 

平坦になった声色で確認を取るように聞き返す。 本気を出せ、という事は『そういうこと』なのかと、文字通り全力で排除にかかっていいのかと。

 

俺の変化に気づいたのか、ミネとツルギが警戒の色を強くさせた。 

 

「ミネ、構えろ」

 

「アレは、危険過ぎますね」

 

冷や汗を垂らし、息を飲む二人に殺気を放ちながら相棒の愛銃を顔の前に持ってくる。

顔の半分をマロリアンアームズで隠すように縦に構え、さらに心を研ぎ澄ます。

迷わないように、余計な事を考えないように、淡々とこなす機械のように告げた。

 

「サンデヴィスターー

 

加速された世界に入ろうとしたーー瞬間、後頭部から軽い衝撃が走った。

 

即座に振り返り、立ち膝の状態でマロリアンアームズを両手で構える。

 

「待ちなさいおバカ」

 

そこにいたのはワカモ先輩だった。 彼女は呆れたように息を吐き、もう一度俺の頭を軽く叩いた。

 

「・・・・・・なんの真似だ」

 

「なんの真似だ、じゃありません。 それはこっちのセリフです」

 

その顔は狐の仮面越しだというのに少し悲しそうにも、しかし怒っているようにも見えた。 俺は内心焦りながらマロリアンを下げた。

 

「後輩、私言いましたよね。 『それやめなさい貴方』って」

 

「・・・・・・シャーレ襲撃の時に自販機前のやつか?」

 

「はい。 貴方、今あの二人を殺そうとしましたね」

 

「そこまでする気はねぇよ。 ただ、それぐらい本気でやらないとこっちが負けるかもしれない。 『キヴォトスでは殺しは厳禁』なんだろ。 ちゃんと覚えてるさ」

 

「でも貴方、必要だと思ったらヤりますよね」

 

「・・・・・・」

 

沈黙は肯定だと捉えかねないのでなんとか口を開こうとするが、喉からは何も出てこない。 ただ、ワカモ先輩から目を逸らすことしかできなかった。

 

その様子を、ミネとツルギは黙って見ていた。 口を挟まず、何か行動を起こすでもなく、ただ見守っていた。 まるで大切な儀式の最中のように、静かに。

 

「後輩、貴方・・・・・・楽しかったですか?」

 

「私は楽しかったですよ」

 

「初めてでした。 私の提案に報酬や金で付き合わず、ノリで付き合ってくれた人は」

 

「初めてでした。 こんなに大規模な破壊ができたのは、自治区丸ごと大混乱に叩き込むような祭りは」

 

「初めてでした。 私を止めようとせず、最後まで付き合おうとしてくれた後輩は。 百鬼夜行にはそんな生徒はいませんでした」

 

「後輩、もう一度聞きます。 今日、貴方は楽しかったですか?」

 

仮面の奥に光る瞳が、俺をまっすぐ見る。 俺はその輝きを受けて、今まで動かそうと思っても動かなかった口が動き出した。

 

「楽しい、か」

 

今まで仕事をしていて楽しいなんて感じただろうか? 感じていたとしても作戦が上手くいった時や、仲間とくだらない談笑をしてる時とか、少なくとも銃の撃ち合いの最中でそんな感情を持った記憶はない。

 

それはなぜか、自分がいつ死ぬかもわからない状況でそんな気持ちになれる訳がないからだ。 もし楽しめる奴がいるなら、それこそサイバーサイコシスだろう。

 

 

 

頭に過ったのは、ホシノの言葉だった。

 

『楽しかったね』

 

アレはてっきり、ホシノが強いからこそ出た言葉なのかと思っていた。 余裕があるからそんな事が言えると思っていた。

 

 

 

そういえば、ツルギも笑いながら戦っていたなと思い出す。 試しに銃をしまって手で顔を触れてみる。

 

「・・・・・・こうか?」

 

「ぷっ、なんですそれ、舌出す必要ありますか?」

 

ワカモ先輩から笑われてしまった。 どうやらキヴォトスの一般的な笑い方ではないようだ。

 

「ほら、こうですよ」

 

先輩は俺の口端に親指を当てて少し上にずらした。

 

「・・・・・・なんかワカモ先輩の笑い方と違わないか?」

 

「貴方に上品な笑い方が似合うとでも?」

 

「酷くない?」

 

俺がうろんげな目を向けると先輩が手を口元へと持っていき、クスクスと見本のように笑う。

 

俺もそれをマネして手を口元に当て声を出してみるが、シンと静まり返ってしまった。 どうやら本当に似合ってなかったらしい。

 

「どうです後輩、少しは気が楽になりましたか?」

 

「ああ、ありがとう」

 

俺は立ち膝の状態から立ち上がり、胸に溜まっていたものを吐き出すように息を抜く。

 

「もしも、万が一です。 キヴォトスが貴方のことを受け入れなかったら、その時は」

 

目を閉じて、行動インプリントを解除して元の顔に戻る。 そして自身のうちにある小さな神秘に集中する。

 

「その時こそ、この街を破壊してやりましょう」

 

想い描くのは、一つの刃、古い発電所の溶鉱炉の中に置かれていた紅の刀。

 

「さあ後輩、私は楽しみました! 貴方はどうですか! これで満足ですか!」

 

自然と、俺は銀色に輝く銃を左手に持ち、自身の頭上、己の光輪、レリックを模したようなヘイローへと銃口を向けた。

 

「盛大な入学式を始めましょう! ここからが貴方の、青春の始まりです!」

 

ワカモ先輩がリモコンを操作して、いつの間にか落とされていた監視カメラが再起動、そのレンズは全て俺へと向いた。

 

 

 

 

 

「来い、エラッタ!!!!」

 

 

 

 

 

俺がマロリアンの引き金を引くと、銃口から青白い光を伴った銃弾がヘイローへと吸い込まれた。

カチリカチリと動き出し、廻る光輪、そしてガチャリと、重厚な施錠をされた扉が開くような、まるで金庫の分厚いロックが解かれたような音と共に、それは伸びてきた。

 

赤い持ち手、黒い刀身、そして俺の記憶には無い鞘に仕舞われた刀が右手に握られた。

 

鞘には乱雑だが、どうにか綺麗に仕上げようとした形跡が残った文字が打たれていた。

 

 

 

『GOING TO HEAVEN』 天国へと行く貴方に送る

 

『Johnny+V』 ズッ友

 

 

 

「アイツ、鞘をメッセージカードか何かかと勘違いしてるんじゃないか」

 

ふん、テメェが最後までつけなかったタトゥーを入れてやっただけだ。 せっかくのサプライズをお前は湿気た虎のタトゥーに変えやがって、今度は最後までつけろよ。

 

俺が苦言をこぼすと、何処からか頭をルームシェアした相棒の声が聞こえた気がした。

 

前の相棒からの贈り物に自分の顔が緩むのを感じ、前へと一歩進む。

 

俺は監視カメラを見渡し、ツルギとミネに向き直る。

 

「待たせたな」

 

俺が獰猛な笑みを浮かべると、ツルギも目を見開き、舌を出しながら笑い始める。

 

「ぐっふふふふふふ、ブェハハハハハハハハ!! いい面になったなああああ!!!」

 

ズッ友が打たれた面を内側に回し、GOING TO HEAVENと打たれた方を外側にして、左の腰に、いつもの位置に装着する。

 

「要救護者のようでしたが、もう良さそうですね」

 

ミネが険しい顔つきで、ライオットシールドを強く握り込み、紫色の稲妻のような神秘を纏い始める。

 

「申し訳ありませんが、もう私には時間がないので本気で救護させてもらいます」

 

左に付けた鞘に親指を当て、ゴリラアームを認証キー代わりにロックを解除する。 右手で柄を握り、トリガーを押しながら右へと切り払うように抜刀。

 

その刀は、ただの刀ではない。 トリガーを押す事で起動状態になった刃は赤く輝き、紅の剣筋を作り出す。

 

「・・・・・・サーマルブレード」

 

いいや違う。 俺はツルギの言葉を否定しながら左へと切先を向け、鞘を押さえていた左手で右から左へと赤く燃える刃をなぞる。

 

「サーマルカタナ。 名はエラッタ」

 

両手で柄を握り、身を低くして構える。 刀を下にし、刃を上向きにする。 今まで稼働してなかった二種のサイバーウェア高密度骨髄、スタバーが唸りを上げる。

 

「サンデヴィスタン・セット ゴリラアーム・完全展開」

 

見るがいいキヴォトス。 刮目せよ世界。 コレが、自身を裏切った女の為に国を敵に回し、たった一人で世界を牛耳るコーポに正面から喧嘩を売った男、伝説のロッカーボーイから認められた『エッジランナー』

 

 

 

「雷鳴一閃」

 

 

 

ツルギが気づいた時には、既に目の前から消えていた。

 

「?」

 

だが一瞬だ。 ほんの一瞬だが赤い光が駆け抜けたような気がした。

 

光の軌跡を追うように首を動かし振り返ると、そこにはカタナを振り終えたVが立っていた。

 

バタリと、何かが倒れる音がした。

 

続いて、カタンと硬い何かが床へと落ちた音が響いた。

 

「くっあぁ・・・・・・っ!!?」

 

蒼森ミネが、あの救護騎士団の団長が倒れていた。 服には焼け焦げたような黒い跡が背中に走り、今も外気に晒され蒸気を放っていた。

 

「先ずは一人、いや・・・・・・まだ立つか」

 

ミネは落とした盾を拾って、杖の代わりに立ち上がり力強い目でVを睨みつけた。

 

「はぁ、はぁ」

 

それでも受けたダメージは甚大だ。 荒々しく息を整え、背中に渡る焼けた刀傷は痛々しく焦げていた。

 

「コレがV」

 

「ああ、コレが俺さ」

 

そこにはもう、感情を殺して戦う傭兵はいなかった。

 

挑発的な笑みを浮かべて、先輩からの期待に応えようとする後輩がいた。




遂に振り切ったVでした。 コレで生徒の道に一歩踏み込みました。

コレに更にスキルの火力アップが乗ります。

ソロ45 強攻撃と高速近接攻撃の与ダメージが+25%

シノビ60 サンデヴィスタン発動中:クリティカル率+40% あらゆる移動動作でスタミナを消費しなくなる

シノビ55 空中/タイムスロー状態で攻撃する際、遠距離攻撃精度と近接攻撃速度がスタミナ低下の影響を受けなくなる。

シノビ45 高速攻撃の与ダメージ+25%

更に更にアラサカ決戦前の状態なら生体モニターと血液ポンプの代わりにマイクロローターとアイソメリックスタビライザーもついてくる模様。

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