サイバーパンクと青春記録   作:水面どり

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わァ・・・・・・ぁ・・・・・・

V「なんだアレ」

先輩「Switch2が外れた悲しい生き物です。 せいぜい笑ってやりましょう」



してぇなぁ・・・・・・Switch2でサイパン・・・・・・


44話 『CYBERPUNK2077/百合園セイアは機械の夢を見る』 1

深い、深い微睡の中、まるで深海のようにも思えるほど暗く、静かな眠りの世界で百合園セイアは蹲っていた。

 

ここは夢の中、時折シャボン玉のように浮き上がる光景は未来なのか、はたまた過去なのか、それとも現在進行形の惨劇なのか、いったい誰の夢なのかすらもセイア自身にも把握できていない。

 

百合園セイアは諦めていた。 自身が観測した予知夢は非常に高精度の未来を予測し、それが故に破滅的、悲劇的な未来の到達にはなす術がないからだ。

 

夢で観測した内容と同じく、白州アズサは厳重なトリニティの警備網を突破し、その上でセイアが隠れていた秘密の部屋に到達した。 セイアにとって予知夢とは避けようのない未来である。 変えたくても変えられない悲劇であり、絶対に訪れる破滅である。

 

「無意味だったね」

 

ああ、もう全てがどうでもいい。 誰かが百合園セイアの死を望み、エデン条約は歪み、誰も望まない終わりを迎え入れるしかない。

 

「足掻いても仕方がない」

 

そう、そうだ。 諦めていいんだ。 どうしようもないのだから。 何をしても意味もなく、価値もなく、何もしない。

 

これがきっと、一番賢いやり方だから。

 

 

 

『かもしれないな。 だがそれだけじゃないだろ?』

 

 

 

意思の籠った声が、海底を揺らす。 揺らぎが波紋を起こし、何処までも響いていく。

 

「?」

 

声が聞こえた方向へと向く、だが瞳に映ったのはただただ広がる海底のような景色、暗くて先は見えない。

 

『お前はずっと後悔していたんだ。 テメェのお友達、ジャッキーウェルズを目の前で死んでいく様をただ見ていることしか出来ず、無力な自分自身を許せなかった。 そうだろ?

だからそれ以来、紺碧プラザの一件以降、更に相手を殺すのを躊躇しちまった。 敵にもジャッキーウェルズみたいなお友達がいるんじゃないかって考えちまった』

 

この声は一体なんだ? 一体誰の声だ? ジャッキーウェルズ? 紺碧プラザ? どれも聞き覚えがない名称である。

 

セイアを保護した蒼森ミネの声ではない、彼女の声はこんなに低く、力強い声ではない。 彼女は優しくもありつつ、凛とした声だ。

 

気づけば立ち上がり、声のする方向へと導かれるように歩みを進めていた。 一歩、また一歩とぎこちなく松葉杖を突く病人のように前へと進んでいく。

 

「私は、何をしてるのだろうな」

 

『いいかV、お前は確かに馬鹿野郎だ。 ナイトシティで殺しをためらって、挙句に感情を殺しながら引き金に指をかける大馬鹿だ。 でもな、最後の選択で俺を助けたのも後悔したからなのか?』

 

声が段々と大きくなっている。 いや、声だけじゃない、違う音も聞こえてきた。 決して繊細ではなく、その真逆、荒々しく魂が震えるような音だ。 ギターの音だ。

 

何の意味もないと理解しているのに・・・・・・ギリギリと、奥歯に力が入る。 気づけば早足で歩いていた。

 

『パナムも、タケムラも、ジュディも、ナイトシティの連中を助けたのも全部、後悔があったからか? 違うだろ』

 

何かに期待してるわけでもないのに・・・・・・手を握り、気づけば息を荒げて走り出していた。

 

ギターの音がうるさい。 ずっと耳の奥の脳にまで響いて頭を揺らしてくる。 心臓が早鐘を打つように高鳴る。

 

『それはお前がお前だったからだ。 後悔でも何でもない、気づけば体が勝手に動いて人を助けてしまう。 そこに考えなんて何もない。 後悔だって入っちゃいない。 唯一つ、あるのはお前の魂だ』

 

躓きかけ、倒れそうな体のまま、前傾姿勢でそのまま走る。 ここは夢で体の病弱性は関係ないが、普段のセイアを理解していれば彼女がこんな全力疾走をするなんて想像もつかない姿で駆け抜ける。

 

ふと気づけば、そこは微睡の海底ではなかった。

 

何処までも続く、蛍光灯で淡く照らされた薄暗い廊下、セイアが近づけば勝手に開く扉の先には、また同じような廊下と扉がある。

 

『くそ、もうオネンネかよ。 V、忘れるな。 俺がいなくなったとしてもお前の在り方を見失うな。 後悔を抱えてでも、例えそこが自分の全く知らない地獄だったとしても前に進め。 そして……』

 

ダメだ、ダメだダメだダメだ。 まだ終わらないでくれ。

 

この声が聞こえなくなったらきっと辿り着けなくなってしまう。 だと言うのにギターの曲が遂にサビを終え、フィナーレを奏で始める。

 

ドアを何度も潜るが、続くのはずっと同じ廊下、同じことを繰り返してるせいか、渦を巻き捻れて歪んでいるようにも見える。

 

 

 

どうしてこんなに必死になって走っているのか、セイア自身も理解していなかった。

 

どうせ未来は変わらないのに

 

訪れる結末は変えようがないのに

 

この声と音を聞いてるとなぜこんなにも

 

 

 

「心が張り裂けそうになるんだ!」

 

 

 

そしてついにーー

 

『もう一度、夢に火をつけろ』

 

ーー曲が終わると同時に、最後の扉が開かれた。

 

 

 

 

 

「ここ・・・・・・は・・・・・・?」

 

 

 

 

 

扉の先に広がっていたのは、セイアがずっと見ていた海底のような暗い空間だった。

 

ただ一つ、違う点があるとすれば・・・・・・

 

 

 

黒い壁があることだろう。

 

 

 

セイアは息を整えながら壁へと近づく、壁は黒く、ただただ黒く、端が見えず、何処までも永遠に続いてるように見えた。

 

「・・・・・・なんとも面妖な光景だ」

 

もうあの意思の強さを感じる声は聞こえない。 ギターの喧しい音もだ。

 

眠りついたような静けさの中、この夢の世界では一度も見た覚えのない黒い壁の前へと立つ。

 

「何かが散見される・・・・・・数字?」

 

黒い壁は数字で形成されていた。 それも0と1でだ。

 

「コレも誰とも知れぬ者の夢なのだろうか?」

 

初めての事態に困惑しつつも、とりあえず触れて夢の内容を閲覧しようと躊躇いながらゆっくりと壊れ物でも触れるように壁へと手を伸ばす。 さながら街頭に導かれた蝶々のように。

 

「この不可思議な物は本当に誰かの夢なのか・・・・・・っ!!?」

 

そして壁に手を触れたその瞬間、身体中から燃え上がるような痛みが襲いかかった。

 

「ぐっ・・・・・・これ、は!!??」

 

頭に雪崩れ込んでくる凄まじい量の数字の羅列、処理しきれない、いや処理のしようがない情報の波が百合園セイアを襲いかかった。

 

すぐに脳がオーバーヒートを訴え、夥しい熱量が身体中を覆い尽くしたのだ。 いや、より具体的に言えば体の内側から無限に湧いてくる溶岩だ。

 

「ぐう・・・・・・うぅ・・・・・・!!」

 

今まで経験したことのない未知の痛みに体を丸め押さえ込むようにしゃがむが、それでも灼熱が噴き出る激痛は治らない。 寧ろヒートアップしてきている。

 

こんな事なら触らなければよかった。 あんな声に向かって走らなければよかった。 と後悔してもすでに遅く、その黄色い瞳から雫が垂れそうになる。

 

すると突然、冷たい感覚が走り抜けた。

 

誰かがセイアの頭にピタリと冷たい何かを貼ったのだろうか? だが、それでも焼石に水。 全く体の熱が収まる気配はまるでない。

 

更に身体中あちこちに冷たい感覚が走るが、それでも意味はなさなかった。

 

このまま焼け死んでしまうのだろうか、そんな諦めにも似た感情が湧き始めた頃にピチャリと足先が水に濡れる感触が現れた。

 

そして一気に全身が濡れるような、体が浮くような感覚に包まれ、すぐさま体が冷え始めた。

 

「助かった・・・・・・のか? いや、まだ頭が熱を吹くような感覚がある・・・・・・暫くはこのままか」

 

セイアは自身の状態の変化を観察し、漸く一区切りついたと息を入れる。

 

「手は・・・・・・この壁から離れないね」

 

右手はセイアが熱で苦しむ最中でもピッタリと黒い壁に触れてる状態で、強力な磁石同士が張り付いたようにくっつき、離れそうな気配は見せない。

 

「私は、どうなってしまったんだ? この壁に触れた途端に頭が割れそうなほど膨大な情報が流れてきて・・・・・・今も流れていて頭痛はするが・・・・・・」

 

だが最初の熱暴走を起こしたような苦しさはない。 まだ耐えれる痛みだ。

 

「おそらくだが、ミネ団長が私の変化に気づいて何かしらの対処をしてくれたのか」

 

この夢の世界にいるからといって、体との感覚が完全にたたれたわけではない。 少し意識を浮上させたり、体が強い刺激を受ければ夢にいるセイアも同調する事はできる。

 

「水風呂? 体が少し浮いてるような気配がするし、冷たい何かが当たってるような・・・・・・まさか氷風呂か?」

 

まさか、とは思うが確かにあの内側から噴火でもしたような熱量を収めるにはそれしかないだろう。 とはいえ普通寝たきりの病人を氷風呂に叩き込むだろうか・・・・・・

 

「・・・・・・彼女は必要と判断すれば、それがどんな事だろうと迷いなく実行できる強固な精神の持ち主だ。 良くも悪くも、という言葉はつくがね」

 

頭の中で蒼森ミネの主観による情報と噂話を統合し再編集しながら紡がれた言葉には、多少の棘が含まれていた。

 

軽くため息をつき、右手が繋がった黒い壁を観察する。

 

「こんなに攻撃的な夢は初めてだね。 それに形状もだ、普通なら風船かシャボン玉のような物に誰とも知れぬ夢や未来が投影されるのだが・・・・・・明らかにそれらとは一線を画する異質さだ」

 

「触れればその夢に入り込み干渉なり閲覧なりできるのだが・・・・・・いや、待て」

 

顎に左手の人差し指を当て考え込むように沈黙する。

 

「微睡の世界でこうして存在しているということはだ、この黒い壁は誰かの夢で間違いないはずだ」

 

言葉を紡いで更に数分、突如ピンと立った狐の耳と尻尾。 その知的な双眸が開かれた。

 

「先ほどの発熱現象、攻撃ではなく、まさか夢の情報が私に送られてきたが故の副産物なのか」

 

先ほどから黒い壁に映る0と1の羅列、パソコンやケータイの電子的なやり取りにも見える。

 

「・・・・・・酷くありえない事だと理解しているが、この夢を見ている存在は、データそのもの?」

 

だとしたらこの壁はセキュリティシステムなのか? ファイアーウォールとか言う代物?

 

「そもそも何故データが夢を見る? 人のように意思を持つデータを誰かが作った?」

 

ふわりふわりと迷うように揺れる尻尾、再びの沈黙、思考という泥沼へと意識を伸ばす。

 

「逆?」

 

意思を持つデータを作った? どうやって? 人の精神構造なんて誰も知る由もないだろう。 そんな物を一から作るなんて不可能だ。

 

ではどうやって作るか?

 

不可能なのは一から作る事だ。

 

であれば

 

「・・・・・・っ」

 

悍ましい可能性に喉の奥から気持ち悪い感触がする。 言葉にできず、嗚咽を鳴らし一度多くの唾液を飲み込む事で押さえ込む。 そして漸く言葉にできた。

 

 

 

「誰かの意思を、データ化させた?」

 

 

 

セイアが解答を言葉にすると、暗証番号を当てたかのように黒い壁は脈動し、淡い紫色のネオンが走り抜けた。

 

右手は離れ、変貌を開始する黒い壁、ルービックキューブやパズルのように形を変えていく。

 

そして出来上がったのは、薄汚れた左右にスライドして開くドア、右には上を示すボタンが付いていて、ボタンの上には今がどの階層なのかを示す小型スクリーンが配置されている。

 

「エレベーター?」

 

今度はくっつかないように袖越しにボタンを押す。 押した瞬間に即座に距離を取り、自身の体に異変がないか確認を取りながらエレベーターが稼働する音を耳にする。

 

「なんとも、ないね・・・・・・それにしても珍妙だ」

 

エレベーターは一体何処と繋がってるのか、上を見上げても何かが見えるわけでもなく、いつもの深海のような空間が広がるだけだ。 それなのに長い時間をかけてエレベーターは到着し、両開きのドアがセイアを迎えるように開かれた。

 

「・・・・・・ここまで来て引き返すのもおかしな話か、毒を食らわば皿まで、というものか」

 

一瞬、撤退の二文字が脳裏をよぎったが、セイアはそれを頭を振る事で払拭する。 頭痛は今だにするし、熱だって治っていないが、それでも進むしかあるまい。

 

「さて、鬼が出るか蛇が出るか・・・・・・」

 

セイアはエレベーターの中へと侵入し、恐る恐る袖越しに上のボタンを押す。

 

扉は閉まり、何処へ繋がってるとも判断できない上へと動き出した。




というわけで変なところに迷い込んだセイアちゃん

黒い壁といってもブラックウォールではなく、Vの中で一番頑丈そうなイメージがあるモノが出力されただけです。

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  • サイバーパンク? なんそれ?
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