サイバーパンクと青春記録   作:水面どり

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2話 メインジョブ 『目覚め/NO SAVE POINT』 1

「おい! いったいどうなってんだ!?」

 

オルトはどうした? ブラックウォールは? あの建物はなんだ、アラサカタワーその2か? だとしてもあの巨大な天使の輪っかはなんなんだ? というかなんで天辺から光が伸びているんだ? ここはナイトシティなのか? 一体何がどうなってこうなった? 頭の中は疑問符だらけだ。

 

「オルト!! いないのか! オルト!!」

 

何が悲しくて相棒の彼女の名前を叫ばなければならないのか。コレじゃ別の意味で捨てられたみたいじゃないか。

 

「いないのかよ、どうすりゃあいいんだ」

 

ああ、だめだ。目の前の状況に対して全く頭が回らない。キロシに映る視界がぐるぐると揺れて見える。そのせいでバランスが取れず、足を引っ掛けてしまい尻餅をついてしまった。

 

「クソ、……?」

 

コツンと指先に硬い感触が当たった。

 

それは銀色の銃身、燃え上がるような真っ赤な持ち手、相棒の命を奪った宿敵にトドメを刺した拳銃。その名は

 

「マロリアン・アームズ」

 

俺の中にいた相棒が持っていたその銃は太陽の光を受けてキラリと反射していた。まるで俺に語りかけるように。

 

なんだV、隣に絶世の美女がいた童貞みたい狼狽えやがって。お前はメジャーリーガーになるんじゃないのかよ。そんなんじゃベンチを温めるどころか、スタジアムにすらはいれないと喚き散らす小便臭えガキだぜ。

 

そんな声が聞こえたような気がした。

 

「……」

 

非常に癪ではあるが相棒の愛銃を見て少し落ち着いてきた。もしこの光景をあいつに見られていたら『人の何を見て落ち着いてんだよホモ野郎』と罵られているだろう。

 

「よし、行こうか」

 

ピストルを手にし、意志を持って立ち上がる。

 

先ずはこのスクラップ場から脱出だ。

 

 

 

メインジョブ 『目覚め』

 

目標

・スクラップ場からの脱出

 

 

俺の埋まっていたゴミ山から降り、壁へと向かって移動しながらあちこちへと眼球のサイバーウェア『キロシ』を使いスキャンを行っていた。

 

「このゴミも……エラー」

 

だが少しも調査は進まなかった。スキャンするもの全てが悉くエラーを排出しているのだ。唯一まともにスキャンできたのは手に持つマロリアン・アームズぐらいだ。後は構成物質がどうとかしか出なかった。

 

「企業のロゴを読み込んでもエラー、商品の裏側の文字を読み取ってもエラー、しまいにはサイバースペースにすらアクセスできない。どうなってやがる?」

 

こんなこと普通はありえない。サイバースペースなんてパソコンやサイバーウェアだけでなく、洗濯機や電子レンジなどの電気の通る物であれば何であれ生じている代物のはずなのに、それがこのスクラップたちから少しも検知できない。例えこの場所が既に廃棄されたものだとしても、キロシの情報収集能力が完全に機能してないなど前代未聞だ。このスクラップ場を出たらリパーを探そう。間違いなくキロシ、サイバーウェアのバグだ。ブラックウォールを超えた時にイカれたのだろう。

 

「いや、そもそもブラックウォールを超える時は、コンストラクタ化、だったか? オルトからの情報が正しいなら俺は精神データのはずだ。電子空間にサイバーウェア、というか肉体を持ち込めるわけが……ないよな? もう少しその辺を勉強するべきだったか」

 

テックに対する知識は自信はあるが、ネットが絡むと途端に弱くなってしまう。

こうなってくると他のサイバーウェアもおかしくなっていないかと不安になってきた。

 

「ゴリラアームはさっき動かした限りは大丈夫だった。強化腱は……よし!」

 

空気蹴り、ダブルジャンプが出来ることを確認した俺は空中ダッシュも試してみる。

 

「よし、問題なし! コレならすぐにでも脱出できるな」

 

そうして俺はジャンプ、空中ダッシュ、ダブルジャンプと組み合わせて風を感じながら一気に移動する事で、あっという間に壁にたどり着くことができた。

 

「後はこの壁を辿って出入り口を見つければ」

 

それにしてもこのスクラップ場はやたらデカい。いったい何処の会社の物なのか。ここまで大規模なスクラップ場、ゴミ処理施設なんてそうないぞ。

 

「ゴミ処理施設という割にはガラス、鉄、プラスチック、壊れた銃に薬莢、スクラップしかない。 生ゴミがまるでない、妙だな」

 

壁に沿って移動していると大きなロゴが描かれた両開きの大きな扉に行き着いた。貨物輸送用と思われるその扉のロゴは王冠を被ったタコのようなデザインだった。スキャンモードを再び起動し、ロゴに書かれた文字を読み取る。

 

「カイザーコーポレーション?」

 

聞いたことのない名前だ。もしかしたら新進気鋭のゴミ処理専門の新企業なのか? それとも大企業がバックにいるのか? そうでもなければこんな大きなゴミ処理施設を用意したりはできないだろう。

 

ヴー!! ヴー!! ヴー!! ヴー!!

 

唐突に扉の上に取り付けられた黄色いランプがパトランプのように回りだし、ギギギギギと唸りを上げながらゆっくりと扉が左右に開き始めた。

 

「っ!」

 

咄嗟に外皮系のサイバーウェア、光学迷彩を起動させ、目についた廃材の後ろに隠れる。

 

「なんだ? あのロボット、アラサカ製じゃないな」

 

ようやく開き切った扉の奥から数台のスクラップを載せたトラックと護衛用なのか、二足歩行型の銃を携行したロボットが数機ほどが姿を表した。

俺は物陰に隠れながらそれらにもスキャンを行っていく。

 

ロボットに描かれたロゴは……カイザーPMC? PMC!?

 

「民間軍事会社だと? それ以外のロゴは、見当たらない。 まさかあのロボットはカイザーに造られたロボットなのか? で、それをカイザーPMCが運用してる? どんだけデカい会社だよ!?」

 

自分でロボットを作り、そのロボットを自分のPMCで使い、自分の所有する建物を警備させる? そんなことできるのアラサカやミリテクみたいな大企業だけだ。

 

そもそも二足歩行ロボット開発はアラサカの十八番だ。 勝手に作ってアラサカが黙っているはずがない。

まさかカイザーとは対コーポを掲げる秘密組織なのか? いやだとしたらロゴを貼り付ける意味がないし、ロゴにはコーポレーションとも名乗っている。 間違いなくコーポ側の立場だろう。

 

「だがアラサカやミリテクが新しい大企業の台頭を許すとは思えない。もしそんなことになったらまた企業戦争が始まる筈だ」

 

だが企業戦争が起きたなんて話、一度も聞いた覚えがない。 いくら遠く離れた所の戦争だとしても、ナイトシティに届かない筈がない。

 

そんな考えをしている俺に、更に衝撃的な信じがたい現実が繰り出された。

 

「なあ、ウチのお偉い方はどうしてこんな何もない砂漠を開発してるんだろうな? お前なんか聞いたか?」

 

「さてな、ウチの理事が何かを探してるって話を聞いただけで何も」

 

…………ロボットが……会話してる??

 

まて、なぜ会話してる? そういうAIが搭載されてるのか? いやいやいや! 日常会話をしあうAI搭載した企業が作った戦闘ロボットってなんだ馬鹿じゃないのか。 じゃあネットランナーのお人形遊び……と言う割には動きにぎこちなさを感じない。 実は中に人が入ってるのか? だがスキャンモードのキロシが出す答えは『ロボット』だった。生体反応なし。

 

「? ?? ???????」

 

ダメだ、これ以上考えたら頭がおかしくなる。

 

「よし、アレはスキッピーの同類ということにしよう。 開発理由とか深く考えたら頭サイバーサイコになる奴だ。 もうやめよう」

 

バンバンビータンバンバンビータンとか意味不明な待機音をならし、勝手に発砲してNCPDに追い回される羽目になったポンコツスマートピストルが脳内に溢れ出したので思考を中断する。今はともかく脱出だ。

 

「クールダウン完了。光学迷彩起動」

 

そうして俺は閉じ始めた扉をダッシュで潜り抜け、カイザーコーポレーションの所有するゴミ処理施設から脱出した。

 

「ん?」

 

「どうした?」

 

「いや、今足音がしたような気がして……気のせいか?」

 

 

 

 

 

「そういえば……言ってたな、砂漠とかどうとか」

 

ゴミ処理施設を後にした俺の目の前には、どこまでも続くような広大な砂漠が広がっていた。

 

え、俺ここを歩いて行くの?

 

途方に暮れながら、俺はとりあえず天使の輪のついた馬鹿でかい建造物を目指すことにした。

 

メインジョブ 『目覚め』

 

目標

・サンクトゥムタワーを目指して進む

 

「先ずは車だな」

 

・車を探す(任意)

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