サイバーパンクと青春記録   作:水面どり

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うわあああああああああああああん!!!!


47話 メインジョブ 『悪友/CHIPPIN‘IN』 18

雷鳴一閃を発動させる為に納刀させたエラッタをそのままに、先生を牽制するかのように横へと歩く。 コレまでの激闘によって粉砕され砂利と化した壁の上を靴が踏む。

 

「酷いものだと思わないか? 寄ってたかって俺一人の為にゾロゾロ来やがってな・・・・・・おかげでブルジョワ姿勢のショッピングモールもこんな有様だ」

 

配線は千切れ火花を散らし、埋められたはずの排水管から水は溢れ、かつて噴水だったオブジェは跡形もない。 店を示す看板は宙ぶらりん、彼方此方に弾痕と空薬莢、ここにあるもので一番綺麗なのは不良生徒に撃たれた跡のあるシャーレのジープだという事実に辟易してしまう。

 

「トリニティの権威主義にはウンザリだ。 そんなに俺を倒した実績が欲しいのか?」

 

“そう言うVは、何が欲しくてここに来たの?”

 

「俺? 俺はただの小遣い稼ぎさ」

 

戯けるように手を広げ、親指と人差し指で輪っかを作る。 煽るようなニヒルな笑みも忘れない。

 

「小遣い稼ぎって、たったそれだけの為にこんな騒動を引き起こしたの!?」

 

「ああ、傭兵としての宣伝も兼ねてな。 いいプロモーション映像だろ。 『トリニティの戦略兵器と救護騎士団団長と渡り合う凄腕傭兵!』 完璧なキャッチコピーだ」

 

後付け設定を飄々と語り、肩を竦ませる。 その態度が気に入らなかったのかハスミとユウカが敵意を剥き出しにしていく。

 

「『その後、無様にも矯正局に叩き込まれた無謀な生徒』という言葉を忘れてますよ」

 

ハスミの返しをつまらなさそうに鼻で笑い、スキャンモードでグルリと見渡す。 反応は6つ、ユウカ、ハスミ、ツルギ、ミネ、フードを被り物陰に隠れている生徒、店の中で震えている奴が1人。

 

・・・・・・先生が敵性反応としてキロシが表示しない。

 

「先生、一応言っとくが敵同士だからな」

 

“うん、お手柔らかにね”

 

・・・・・・敵性反応なし。 赤く表示されずグリーンシグナルのまま、なんで敵意を向けてこない、この大人は。

 

先生も含めれば敵は7人か。

 

「・・・・・・まあいいか、別に不利になるわけでもない」

 

ちょっとだけやりづらさは募るが、頭を左右に動かし振り払う。 エラッタのグリップに手のひらを乗せ構える。

 

「さて始めようか? ワカモ先輩、準備はいいな!」

 

以前と違い、向こうのメンツは増えてるがそれはこっちも同じことだ。 後ろにいるはずの厄災の狐をカウントに含みながら戦闘態勢に移行する。

 

向こうも一斉に銃を構え、先生が後ろに引いていく。 だがその顔は不思議そうにこちらを見つめていた。

 

“・・・・・・ワカモ?”

 

そう言って俺を見続けていた。 周りの生徒もその異変に気付いたのか俺を注視し始める。 いや、厳密には俺の後ろを。

 

そしてだ。

 

準備はいいな! と、聞いたのに返事が聞こえてこない。

 

「・・・・・・・・・・・・ワカモ先輩?」

 

まさかと、首を回す。 グルリと180°回転。

 

そこには度重なる戦闘の余波で吹き抜けとかしたショッピングモールの景色が見えるだけ。 何もなかったのである。

 

「・・・・・・・・・・・・」

 

グルリと反対180°回転。 景色に変わりなし。

 

“えっと”

 

「・・・・・・・・・・・・」

 

いない。 何処にもいやがらない。

 

オーケー、何故いないかは知らないが状況は把握した。 思考を切り替えていけ、先ずは先輩の安否の確認が最重要だ。 最悪の場合、先生も強奪した家具も放置してワカモ先輩を最優先に動くべきだ。

 

で、あればだ。 ここでこのカードを切るべきだ。

 

俺は正面へと、先生へと向き直る。

 

「なあ先生、つかぬ事をお伺いするがいいか?」

 

“うん、もちろん。 生徒の質問にはなんでも答えるよ”

 

生徒の質問、という言葉に少しの安堵を感じてしまう。 キヴォトス全体はどうかは知らないが、少なくとも先生は俺を生徒として見てくれてるようだ。

 

「先生、俺はあの時・・・・・・そう、連邦生徒会の建物を襲撃した時だ。 先生のお願いを一つ聞いたよな?」

 

“そうだね”

 

一つ息を吐き、安堵の気持ちを隠して真剣な眼差しを向ける。 俺の変化に気付いたのか、ピリピリと緊張感の張り詰めた空間へと変貌していき、生徒達が銃を握る手に力が加わる。

 

「つまりだ。 先生は俺に一つ貸しが有ると言うことになるわけだ」

 

初めて行う行動に緊張感が走る。 口が鈍く動き、喉から一段階低い音が絞り出される。 口腔の中が乾いていく。

 

俺から放たれる圧に生徒達の額に汗が出てきていた。 どんな加速が行われても反応できるように瞬きすらしない気概を感じる。

 

「ここでその貸しを返させてもらおうか」

 

俺はエラッタに乗せてた手を離し、体の前に持っていきクロスを組む。

 

「先生、私の後ろに! シールドを展開します!」

 

ユウカが先生を守ろうと何かを懐から取り出して先生を庇うように飛び出した。 何をするつもりかは知らないがコッチだってやらせて貰う。

 

そして遂に、重苦しい口が開かれた。

 

 

 

 

「作戦タイム」

 

 

 

 

ズシャアアアアアアアアアーーーー!!!

 

ユウカが顔でスライディング、無題18番を見ても何も感じない俺ですら芸術性を感じた。 野球なら感動的な逆転ホームインの絵面だろう。 実際はただズッコケただけだが。

 

“いいよ”

 

「サンキュー」

 

え? と、事情を知らないツルギとミネが目を点にして硬直する。 一度は経験してるハスミはズッコケたまま銅像の如くピクリとも動かないユウカの介抱を始めた。 フードを被った生徒は我関せずと言わんばかりに調査用カメラを回し始めた。

 

 

 

俺はTの字に組んだ腕を解き、先生に手を振る形で軽く礼を言いながらケータイを取り出した。

4回程鳴ったところでお目当ての相手が応答した。 誰かに連れ去られた訳ではないようだ。 つまり自身の足でここを離れたという訳だが。

 

「おいこら、何一人で逃げてんだ」

 

『いや、あの・・・・・・なんというかその、心の準備がまだ出来ていなくてですね』

 

はぁ? テロリストが心の準備? ここまでの大騒動を起こしておいて日和り始めたとでも言うつもりか貴様? 土壇場で日和るとか、さては貴様クソコーポか? と内心怒りとおふざけを混ぜながら荒々しい心の中和を図る。

 

俺の沈黙が催促だと勘違いした先輩が更に言葉を重ねた。

 

『違うのです後輩、別にビビったわけじゃなではなく・・・・・・難しい乙女心と言いますか・・・・・・』

 

「あん? なんだ急に乙女心だのなんだのと、まるで恋したチーカみたいな事言い出しやがって。 俺が聞きたいのは甘酸っぱいラブロマンスじゃなくて逃げた理由だ」

 

一度息を吐いて、感情を落ち着かせる。 確かに勝手に逃げ出した事には怒りはあるが、だからとなんの事情もなく裏切る先輩でない事は知っている。 もし誰かに脅迫されていたのなら、その時はそいつを完膚なきまで叩き潰すだけだ。

 

「言ってみろよ。 なんか理由があるんだろう? いくらでも力になるぜ」

 

ワカモ先輩の長い沈黙、俺は黙って待つ。

 

『・・・・・・後輩、私』

 

ようやく口を開いた。 さて何が出てくる?

 

脅されていたのか?

 

それとも騙されたが故のやむをえない事情?

 

まさか知らないうちに甚大なダメージでも受けたか、病気?

 

ナイトシティではいろんな事情をどいつもこいつも抱えていた。 故に何度も裏切られたこともある。 だけど、それでもだ、俺は依頼人や人を信じて仕事をしてきた。

 

ヴードゥー然り、ソングバード然り、デクス然り、カーク然りだ。

 

彼らのような一癖も二癖もある連中を信じて仕事をしたのだ。 今更生徒の一人や二人、裏切られたところでどうって事ないし、俺はワカモ先輩を信じると決めた。

 

ならなんだってやってやるさ。

 

 

 

『私、恋をしたのかも・・・・・・しれません』

 

 

 

・・・・・・・・・・・・・・・・・・恋???

 

余りにも見当違いの答えに考えを放棄しかけてしまうが、ワカモ先輩の声色からその真剣さは汲み取れる。 俺も茶化さず向き合うべきだろうが・・・・・・

 

「あーー、その、なんだ、良かった・・・・・・でいいのか? それともおめでとうか、この場合は?」

 

ダメだ。 なんと言えばいいのか分からず、適当な言葉だけが放り出てしまう。 恋だの愛だのとは無縁の生き方をしてきた俺に何ができるというのか。

 

『一目見た時から、目が離せなくなるような・・・・・・ずっと燻るような物が内に渦巻いていて・・・・・・その時は後輩の事も考えなくてはいけなかったのでハッキリと気づけなかったのですが、この度再び目にして確信致しました』

 

どうしよう、甘酸っぱいラブロマンスが上映されてしまった。 このままでは孤坂ワカモの初恋という名のラブトレインに完全に置いてけぼりにされてしまう。

 

参考になるのはなんだ?

 

ジョニー? あれはダメだクズオブザイヤーノミネートテロリストなんてなんの役に立つと言うのだ。

 

ぺぺ? ・・・・・・ダメだ。 アイツ妻が不倫をとか言い出してドロッドロの浮気調査を依頼してきた。 少なくとも初恋まっしぐらな生徒には早すぎる展開だ。

 

ジュディ? どうだろう・・・・・・報われなかった恋、死別の話は重たい上に、ワカモ先輩が好意を向ける相手はまだ死んでないだろう。 これもまだ早いな。 純粋な恋、という点ではドンピシャか?

 

「と、その前に。 相手は誰だよ? 先輩の視線を独り占めしてるスペシャルさんは?」

 

『誰って、一人しかいないではありませんか』

 

「いやどっからどう見ても5人いるぞ」

 

『5人って、異性は一人だけではありませんか』

 

「・・・・・・まさか、キヴォトスって同性同士って禁止なのか!?」

 

『当たり前じゃないですか!? 何言ってやがる!??』

 

じゃあダメだ。 ジュディはこの世界で幸せになれないし、ジュディの話はジョニーレベルでなんの役にも立たないと言う事だ。

 

なんて事だ、ぺぺの不倫事件(不倫はしてない)しか参考資料がないでないか! しかもその参考資料、要らんことに聞くに堪えないクズオブザイヤーのモノローグ付きである。

 

俺が頭を抱えて恋に悩む少女の相談の乗り方を模索していると。 俺の悩んでる様子でも伺えたのか、電話からクスクスという笑い声が聞こえてきた。

 

「なんだよ。 人が真剣にお悩み相談してやってんのに、笑うことないだろ」

 

『ふふ、すみません・・・・・・でも、相談してる私より頭を抱え始めていたので、これじゃどっちが相談してるかわかりませんね』

 

「恋だの愛だのとは無縁で気の利いた言葉が思いつかないんだよ・・・・・・」

 

『気にしなくていいですよ。 こうして聞いてくれるだけでも助かります』

 

ワカモ先輩はそう言ってくれるが、いくらでも力になると言ったのは俺だ。 せめて何かいい話は・・・・・・そうだ!

 

「ナイトシティの人気女優の話とかどうだ! リズィー・ウィジーっていう金属女なんだが」

 

『結構です。 絶対参考にならないので』

 

話ぐらい聞いてくれてもいいだろう。 ガックシと項垂れるとそんな様子を想像できたのか、呆れるようなため息を吐かれた。

 

『後輩、私はまだ大丈夫ですから。 先生とはまたいつか会えるでしょうし焦らなくても平気です』

 

「だが、鉄は熱い内に打てと言うし・・・・・・恋だってそんなもん、って言われたしな」

 

『誰ですかそれ言ったの』

 

「テロリストロッカーボーイ」

 

『私が言うのもなんですが絶対そいつ碌でもないやつですよ』

 

知ってる。 なんせ頭の中でルームシェアした仲なのだから、知らないことの方が少ないほどだ。

 

『今日はひとまず帰りましょう。 金目の物は全て回収、既にヘルメット団の方々は逃走済み、我々の逃走ルートも後輩のおかげで確保』

 

「そうか、じゃあ迎えは頼むぜ先輩」

 

『ええ、任せなさい後輩』

 

 

 

『この強奪、無事に帰りましょう』

 

 

 

電話を切って、先生の方を向き直る。

 

無事に帰るか・・・・・・そういえば以前の強奪は酷いものだったな。 アラサカの親子喧嘩に巻き込まれて犯罪者になる、お目当ての物レリックは俺の体を侵食、フィクサーから裏切られて殺され、相棒とは永遠の別れを告げるハメになった。

 

「ああ、無事に帰ろう」

 

今度こそ、必ず。

 

「待たせたな。 そろそろやろうか」

 

“うん、みんな頑張ろう!”

 

この場にいる全員が武器を構え、走り出した。




というわけでこのショッピングモール強奪事件、話のモデルはサイバーパンク2077の紺碧プラザ事件でした。
どうブルーアーカイブで再現しようか何度も頭を捻って生まれた話・・・・・・流石に長く書き過ぎましたね・・・・・・話が上手くまとまらず苦戦してしまいました。

エヴリン/ヒフミ 後に闇に紛れた連中に繋がるキーキャラクター
ロイス/ヘルメット団リーダー パワードアーマー
ミネ/サブロウ コイツのせいでVにあらぬ疑いをかけられた
Tバグ/マキ(ハッキングソフトウェア) ハッカー
アダム/ツルギ 絶対に倒せない強敵
ジャッキー/ワカモ 相棒

追記
ワカモが裏切っておいて無罪放免なのもアレなのでエピローグでお仕置きします。

ついでにVも

狐&V「ゑ?」

貴方はどれくらい知識がある?

  • サイバーパンクは名前だけ知ってる
  • サイバーパンクは動画勢
  • サイバーパンクは雰囲気でプレイ済み
  • サイバーパンクはガチでやった
  • サイバーパンクで知らないことなど何もない
  • サイバーパンク? なんそれ?
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