サイバーパンクと青春記録   作:水面どり

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一気に書いたので長めです。

アップデートしました!

現在ver1.01 (6/7更新)


48話 メインジョブ 『悪友/CHIPPIN‘IN』 19 ver1.01(6/7更新)

今回の勝利条件はワカモ先輩が俺を迎えに来れる状況にする事だ。 それも可能な限り安全にだ。

 

正直言ってこの戦場、ワカモ先輩を庇いながら戦うのは厳しいものがあったので一人になれて動きやすくなっている。 

先生の指揮下に入ったツルギは厄介だろう。 あの突撃に戦略が加わるのだ、その状態で先輩を気にしながら戦うのは厳しいと言わざるを得ない。

 

「1対多数は俺の十八番でな!」

 

エラッタで接近してくるツルギと会敵、ツルギの散弾を切り落としながら突き進む。

 

「きええええええええええええええーーーー!!!」

 

赤黒い神秘は纏っていない。 流石に使い過ぎたせいか温存しているのだろう。 そのまま首に向けてエラッタを横振りしようとして・・・・・・スライディングでツルギの散弾とハスミの不意打ちを回避してユウカへと向かう。

 

「計算通りこっちに来たわね」

 

こうすれば撃ちずらいだろう。 正面にはユウカ、背後にはツルギ、ツルギの散弾は攻撃範囲が広いが、乱戦時にはその攻撃範囲が仇になる。

 

“今だよ”

 

だがその仇も戦術指揮官がカバーする。

 

ユウカは懐からスマートフォンのような物を取り出して操作を始めていた。

 

「悲しみも怒りも、全て因数分解してやるわ!」

 

訳のわからない言葉を呟かれると、ユウカへと迫っていたエラッタの紅刃は硬い音を打ち鳴らし見えない何かにその進行を阻まれた。

 

「何!?」

 

まさかコレは、エネルギーシールドか!?

 

だとしたら、ツルギの攻撃を受けないわけか。 コレでツルギは何も気にする必要なくショットガンをぶっ放せるようになった。

 

「死ねええええええ!!」

 

「んな単発射撃が当たるかよ!」

 

ジャンプして背後に迫るツルギの散弾を回避する。 回避されて素通りした弾はユウカのシールドへと消えていった。

 

そして跳んだ俺へとハスミの弾が迫るが、それをバレットカウンターで弾き、更に追撃しようとするミネにハスミの弾を返すがシールドで防がれてしまう。

 

着地した俺をユウカのサブマシンガンが襲いかかるが、これをダッシュで回避する事で最小限のダメージで抑える。 軽く被弾したがキチンで防げたおかげで、肉体技能の自動回復で十分だ。

 

“みんな、絶え間なく攻撃を加えてVのスタミナを削るんだ! あと空に跳ばさせないようにしよう!”

 

「「「「了解!!」」」」

 

「チッ、バレたか」

 

俺が空中で回避したり動いたりする度にスタミナを回復してるのがバレたのだろう。 全く生徒の事をよく見ている勤勉な先生だ。

 

ユウカがサブマシンガンを二丁持ちにして集中攻撃を加えて俺を動かし、ツルギが突撃して更に俺を追い立てる。 ハスミとミネが銃を撃たない、俺が空中に跳ぶのを待ち撃ち落とす算段だろう。

 

コレを切り崩すには・・・・・・

 

「なら、面白いイカサマを見せてやる」

 

エラッタからマロリアンに持ち替えてダッシュしながら拳銃を構える。

 

「ケレズニコフ」

 

時間の流れが遅くなった空間でハスミへと発砲する事で牽制する。 ケレズニコフを解除してエラッタを構える。

 

「サンデヴィスタン!」

 

圧倒的なまでに加速した状態になりツルギをエラッタで切り付け、ユウカの目の前でサンデヴィスタンを解除する。

 

「な!?」

 

今動けるのはミネだけだ。 ミネはユウカを救出せんと動き出して

 

「アポジー!」

 

そこへ再びサンデヴィスタン起動。 ユウカをフォローしようと防御が緩くなったミネへとターゲットを移し強攻撃を振り下ろした。 ミネは咄嗟に盾を構えるが、体勢は不完全のままだ。 エラッタの強力な振り下ろしがミネの盾を大きく退け反らせる。

即座にサンデヴィスタンを解除、息継ぎでもするようにサンデヴィスタンをクールダウンを入れる。

 

「先ずはお前からだ救護騎士団!」

 

ミネの神秘は俺の天敵だ。 奴の放つ衝撃波はサイバーウェアに異常を引き起こして回避性能と防御性能に著しい損耗を与えてくる。 しかも衝撃波はエラッタでは防げない。 故にミネを倒せば一気に勝ちに近づける。

 

「コレで一人脱落」

 

ガードがガラ空きになったミネに高速攻撃が迫る。

 

“ミネ!!”

 

一撃は肩に命中し、二撃目は左腕、三撃目は胴体に命中。

 

続けて四撃目を振り落とそうとするが、キロシが危機を感知したため中断、即座に身を引いてジャンプしてサブマシンガンを回避、続けてくる対空砲代わりのショットガンをダブルジャンプで回避しながらスタミナを回復する。

 

「トドメは刺せてないが、体力はもう限界だ」

 

ミネは血で濡れる肩を抑えて体力の消耗を軽減させようとするが、焼け石に水だ。 左腕は負傷して盾は使えない。 腹に良い一撃を受けて呼吸すらも大変のはずだ。

 

「俺のエラッタはそんじょそこらのアイコニックとは格が違う。 フル強化した最高級の一品だ」

 

それを元から消耗のある状態で強攻撃を一撃を盾越しとはいえ受けて、その後三連撃、限界のはずだ。

 

ミネさえいなくなれば後は消化試合だ。

 

「今の・・・・・・なによ!? 貴方のその、サンデヴィスタンとやらは使い終わったらしばらく使えないはずじゃ!!?」

 

「本来なら、その通りだ。 だがまんまと騙されたな」

 

サンデヴィスタンは本来、途中で使用を中断しても完全にクールダウンが完了するまで発動が出来ないサイバーウェアだ。

 

「だが俺のサンデヴィスタン、アポジーは特別なんだ。 クールダウンの途中でも発動できるし、他のサンデヴィスタンとはそもそもの加速力も段違いだ」

 

とはいえ無茶な使い方だからデメリットもある。 シャーレ襲撃の時のように全部使い切った状態では即座に再発動は出来ない。 クールダウン中に発動すると当然、使用時間は激減するし体への負担もでかい。

 

コレでミネの神秘を気にする必要はない。 次は・・・・・・

 

「お前だデカ女」

 

キロシで照準器のないスナイパーライフルを構える生徒、ハスミを捉える。

 

「お前には以前煮湯を飲まされたからな。 その借りを返させてもらおう」

 

光学迷彩、起動

 

俺の体が背中からベールに包まれるように半透明になり、次第に背景の一部へと変貌していく。

 

「な!?」

 

「消えた!?」

 

消えそうになった俺をツルギが捉えようとショットガンを放つが、それをダッシュで回避する。 そしてゆっくりと歩きながら音を立てないようにハスミへと接近する。

 

“・・・・・・コレであの時、チナツの前から完全に消えたんだね。 ユウカ!”

 

先生が指示を出すとユウカが走りだし、連邦捜査部のジープからゴーグルを取り出した。

 

「まさか光学迷彩まであるなんて・・・・・・でもこっちにはコレがあるのよ!」

 

そのゴーグルは、いやバイザーは耳に引っ掛ける部分に『m』の字が刻まれていた。 それを装着したユウカが周りを見渡して俺を探そうとするが・・・・・・

 

「あ、あれ?」

 

そしてカチカチとボタンを押したりダイヤルを回すが、それでもユウカの戸惑いは収まらなかった。

 

「な、なんで!? サーマルもナイトビジョンも、それどころか動体センサーも反応しない!?」

 

そんな物に光学迷彩が引っ掛かる訳がない。 この光学迷彩は最高品質のキロシのスキャンすらも弾く代物、性能で言えばアラサカの最高のボディガードであるオダと同レベルのステルス性能を持つ。

 

“ハスミ、走って! ツルギはハスミを守って!”

 

「ぎへへへへへへぇ!!」

 

“ユウカ! こうなったらアレも使おう!”

 

「あ、アレですか!? 一応持ってきましたけど・・・・・・凄い高いですよアレ! しかもエンジニア部の試作品だし」

 

“大丈夫! いざとなれば私のポケットマネーも使うから!!”

 

「ああもう! 領収書は取っといてくださいね!!」

 

躊躇いながらも、既に装填されていたマガジンを抜き、青いカラーリングのマガジンを装填したユウカ。

 

「特殊弾薬か」

 

ユウカのサブマシンガンでは俺のキチンを貫けない。 まさか対物弾か?

 

「エラッタのバレットカウンターを見ておいて? 先生がそんな指示を出すか?」

 

対物弾ならバレットカウンターで弾き返せる。 それにワカモ先輩曰く、特殊弾薬は神秘が乗せづらく、一部の生徒にしか扱いきれないとのことだ。

 

「ハスミはその数少ない生徒らしいが」

 

ハスミのアーマーピアッシング弾が一撃で俺の体力の大半を持っていったのに合点がいった。 正しく、俺を倒す上で最適解なダメージを叩き出す攻撃だ。

 

「スナイパーを処理すれば、十分脱出可能な状況のはずだ」

 

ツルギは神秘の使い過ぎで疲弊している。 ユウカのサブマシンガンでは装甲車を貫けない。 ミネは満身創痍。 条件は整ってきた。

 

「ワカモ先輩もこっちの状況は見てる筈。 もうエンジンをつけただろうな」

 

逃げろと言われてもどこに逃げればいいのかわからないハスミに十分近づいた。 サンデヴィスタンのクールダウンも完全でないものの十分だ。

 

納刀したエラッタに手を置いて構える。 ゴリラアーム最大出力、サンデヴィスタンスタンバイモード、雷鳴一閃準備完了。

 

「ぎへへへへ、ビシャーーーーーン!!」

 

ツルギがところ構わずショットガンを右へ左へ正面へと放ちまくり俺を炙り出そうとするが、全て見当違いだ。 まだ見せていないとっておきのそのまた秘密、それは

 

「雷鳴一閃は空中からでもできる」

 

俺が今いたのは、ハスミの真上だ。

 

ダブルジャンプで飛翔した俺は、後は落ちるだけで決着をつけることができる。

 

「これでチェックメイトだ」

 

誰も何も気づかないまま、決着が着く。 その筈だった。

 

「・・・・・・そうか、なるほどな」

 

砕けた床が粉塵となって空中を舞っていた。 ツルギが彼方此方へとショットガンを放っていたのは当てずっぽうではなく、俺の光学迷彩を粉塵で無力化して探す為だったらしい。

 

だがなんだ、それがどうした。 もはや間に合うまい。 先生も今俺を視認した。 ユウカもそうだ。 ツルギのショットガンでは射程が足りない。 だれの手も届かない。

 

だが、だがだ。 ここで勇気を振り絞った生徒がいた。

 

「っ!」

 

銃弾が、俺に命中した。

 

その銃弾は、ずっと隠れていた生徒が放った物だった。

 

イチカの神秘によって呼ばれたものの、普段は備品整理を主に活動していた為に銃弾だけ用意する筈だった生徒だった。

 

だけど人手不足を理由にこの包囲網に参加したが、一斉射撃に対物弾の装填が間に合わず、仲間がバレットカウンターの餌食となって全滅する中、一人だけ生き残っていたのだ。

 

鈍臭さが日の目を見たのか、それともイチカが残した最後の希望か、そのピンク色の髪をした一年生は、憧れの先輩のピンチに勇気を振り絞ったのだ。

 

「ハスミ先輩に手を出すな! わ、私が相手になってやる!」

 

震える足で、下江コハルは勇気を持って吠えた。

 

「良い根性じゃねぇか」

 

この勇気を振り絞るのに、どれだけの葛藤があったのだろう。 相手は正義実現委員会の完全包囲を一瞬で全滅にした傭兵。 戦略兵器と呼ばれるツルギですら一人だけでは相手になるかも分からない相手、それを相手に吠えたのだ。

 

Vは素直に称賛した。 それをできるやつがナイトシティでもどれだけいるだろう。

 

だがだ。 それでも現実は厳しい、コハルの放った弾丸はキチンで弾かれ体勢を僅かに崩すに終わった。 雷鳴一閃はまだ発動可能だ。

 

「救護!!」

 

そこへ、青い翼は飛翔した。

 

「なんだと!!?」

 

そんなバカな。 ミネは確かに戦闘不能の状態だった筈だ。 それなのになぜ回復している!? 理由はわからない、分からないがコレは非常にまずい。

 

 

 

「本当は・・・・・・よくありませんが」

 

戦闘を調査しているだけのフードを被った少女は、鞄から青い液体の入っていた注射器をしまった。

 

「アコ行政官に怒られてしまいますね」

 

運が良かった。 全員が光学迷彩で消えたVを粉塵で発見したタイミングもあってか、視界からミネが外れていたのだ。 そこへ更にコハルの援護射撃、注目しないはずがない。

 

だからフードを被った少女、トリニティに居てはいけないゲヘナの生徒、チナツは隠れながらミネの回復ができたのだ。

 

「御武運を、先生」

 

 

 

既にダブルジャンプは使用済み、これ以上高度は高く出来ない。 その状況でミネは俺より高く飛翔している。 コレではミネの攻撃を中断させることができない。

 

下では状況を即座に理解したハスミが対物弾の装填を始めた。

 

「舐めるなよ」

 

心にスッと冷たいナニカが入り込む。 焦りが鎮静化され、最適解を模索する。 そして雷鳴一閃の構えを解除した。

 

「こいよ救護騎士団。 逆に叩き伏せてやる」

 

ハスミに打たれる前にミネを叩き潰す。 上は取られているものの、エアダッシュはまだ残っている。 空中での機動力は俺の方が上だ。

 

ゴリラアームの出力はそのまま、ミネに向き直りエラッタを構える。

 

「最大出力、行きます!!」

 

ミネが纏っていた紫色の稲妻のような神秘が更に濃くなっていき、盾を全面に突き出し落下した。

 

「戦場に、救護の手を!!!」

 

「エラッタアアアア!!!」

 

盾と刀がぶつかり合う。 紅刃と蒼盾が衝突し、ショッピングモールを紫電が駆け抜け破壊していく。

 

「ゴリラアーム、リミッター解除だ!!」

 

エラッタが盾を押していく。 落下しているのはVの筈なのに、ミネが押されていた。

 

「くう!!?」

 

「完全回復はできてないみたいだな! コレで決着をつけてやる」

 

サンデヴィスタン、そう言おうとしたその時

 

「させないわよ!!」

 

ユウカのサブマシンガンがVの背中を強襲した。

 

「サブマシンガン程度でキチン装甲は貫けねえ、!?」

 

バチン!!

 

背中に命中した銃弾が爆発した。 いやちがう、コレは

 

「電撃!!?」

 

キチンは衝撃や物理的な物には非常に強い効果を発揮する。 だが絶縁性に富んでいるわけではない。 更に場所は背中、そこはあるサイバーウェアが搭載される場所で

 

サンデヴィスタン 電撃によって軽いショート状態

 

「やってくれやがったな先生!!」

 

本来想定していない銃弾の使用、それも試作品ということもあってかユウカのサブマシンガンは全ての電撃弾を撃ち放つとボフンと音を立てて黒い煙を吹き出していた。

 

エラッタはミネを抑え込んでいる。 バレットカウンターは疎か、ブロックすら出来ない。

 

落下先にはアーマーピアッシング弾を装填し終えたハスミがいた。

 

“ハスミ!!”

 

先生がタブレットを操作すると、ハスミから更に神秘が放出された。

 

「あの時のように、逃しはしません」

 

その神秘が全て、一つの銃弾に注がれた。

 

「確実に仕留めます!」

 

絶体絶命だ。 ミネの神秘の影響を受けたせいで足が言うことを聞かない、エアダッシュができなくなっている。 ハスミの攻撃を万が一耐えたとしても、ツルギが控えている。

 

 

 

 

 

『この強奪、無事に帰りましょう』

 

 

 

 

 

こんなところで終わっていいのかV?

 

お前はメジャーに行くんだろ?

 

だったらよ・・・・・・

 

「先輩の約束の一つや二つ、叶えてみせろよ!!」

 

条件は満たしていた。

 

イチカが呼んだ正義実現委員会をバレットタイムで一斉に倒したその時から、発動可能だった。

 

だけど

 

今の俺には引き返してくれる相棒、ジョニーがいない状態で発動するべきじゃないと考えていた。

 

きっと引き返せなくなると思ったから

 

きっと帰って来れなくなると悟ったから

 

きっと戻って来れないと理解していたから

 

 

 

「そうか、じゃあ迎えは頼むぜ先輩」

 

『ええ、任せなさい後輩』

 

 

 

なら、恐れる必要はない。

 

 

 

 

 

そして刀と盾で鍔迫り合いをしていたミネは、目撃する。

 

何重にも目がブレるVの姿を。

 

「フューリーモードだああああああああ!!!!」

 

「な!?」

 

がしりと、ミネの肩が掴まれた。 Vは片手でだけでミネの盾を抑え込んだ状態でミネの体勢を無理矢理返させ、その位置は、上下反転した。

 

フューリーモードによるサイバーウェアのリミッター解除、いや、限界を超えた出力は他の追随を寄せ付けない。 限界突破したゴリラアームの圧倒的なパワーでミネを地面へと叩き潰した。

 

その下には当然、ありったけの神秘を込めていたハスミが驚愕の表情で硬直しており、そのまま二人はVの下敷きになった。

 

「ハスミ!!」

 

“ミネ!!”

 

ムクリと衝撃に舞う砂埃の中、立ち上がる一つの影。 それはゆらりとカゲロウのように揺れると姿を消した。

 

“サンデヴィスタンだ!”

 

だが、だが、だがだ!

 

フューリーモードはありとあらゆるサイバーウェアを更なるステージに引き上げる言わば反則技だ。

 

「見えない!?」

 

「・・・・・・く!!」

 

サンデヴィスタンはもはや加速装置の枠組みを置き去りにし、トリニティ最強のツルギが集中しても目視が不可能の速度へと至った。

 

最初にコハルが紅い軌跡に倒れた。 たった一瞬だ。 何が起きたのかも想像もつかない。 攻撃を受けた本人ですら何をされたのか理解できてない。

 

ユウカが計算機を取り出してツルギと背中合わせになりカバーし合おうとするが、シールドを張る前に計算機が宙を舞った。

 

カツンと、計算機が床に落ちる音と共にユウカが崩れ落ちた。

 

残ったのはツルギだけだ。

 

“ツルギ!!”

 

先生がタブレットを操作して神秘をツルギへと注いでいく。

 

「ぐへへへへ、だらあああああああああああ!!!」

 

爆発するように噴き出す赤黒い神秘は先生から受け取った神秘、そして自分が持つ神秘を全て使った自己強化。

 

それでも、圧倒的に速度が足りなかった。

 

「雷鳴一閃」

 

背中から切り付けられた。

 

「雷鳴一閃」

 

脇腹から胸にかけて切られた。

 

「雷鳴一閃」

 

そして最後に、頭に向かって振り落とされた。

 

通常の状態でもミネを一撃で戦闘不能間際まで追い詰めた一撃が、フューリーモードで強化されて三連撃、耐えれる筈がない。

 

「ぎへ、へ、へぇ・・・・・・」

 

それでもツルギはその瞳から闘志を消さない。

 

「その速度も、慣れてきた」

 

攻撃を受けながら順応するツルギ。 震える足、ショットガンを一丁だけ持って両手で構える。 姿勢を整え、ライフル銃で長距離射撃をするように静かに集中する。 普段の彼女を知る物なら、驚愕しただろう。

 

「・・・・・・」

 

先程までの狂乱は消え失せ、まるで荒野のガンマンの果し合いのような緊張が包む。

 

そして遂にその瞬間がやってきた。

 

煌めく紅を、ツルギが捉えた。 場所は正面ど真ん中。 後は距離だ。 タイミングだ。

 

「雷鳴」

 

ツルギがトリガーに込める力を強めていき

 

「一閃」

 

解き放った。

 

 

 

ツルギを通り過ぎた俺は、目を何重にもブレさせたまま刀を払い、頬に伝う血を親指で拭い取った。

 

「見事だ」

 

軽く掠めただけでこのダメージだ。 あと銃弾を1発でも喰らえば倒れてしまいそうだ。

 

頭の中で木霊する笑い声が精神を蝕むのを感じながら、エラッタを先生に向ける。

 

「さあ、俺の勝ちだ」

 

違う。 コレはハッタリだ。

 

ツルギの攻撃を掠めた衝撃とフューリーモードの無茶によってサイバーウェアにガタが来た。 悔しいが、もう動けない。

 

全サイバーウェア・過負荷により緊急停止 メンテナンスプロトコルを実施

 

キロシから飛んでくる警告文とサイバーウェアの現状、このまま動かしたら最悪の場合、ゴリラアームと強化腱が使い物にならなくなる。 サンデヴィスタンもそうだ、神経が焼けこげ一生車椅子生活だ。

 

あー、ヤバい。 あのフード女が銃を突きつけてきたら本当にお終いだ。 もう撃つ手がない。 ゲームオーバーだ。

 

だが、フードを被った少女は出て来れない。 本来なら彼女はここに居てはいけないゲヘナの生徒だから。 まだ、監視カメラの中継は続いている。 姿を出してVを拘束しに動くことが出来ない。

 

「あと、一歩なのに・・・・・・!」

 

チナツはギリギリと奥歯を噛み締める。 ゲヘナとトリニティの確執が最大の障害となってしまった。

 

“V”

 

最後、俺の前に立つのは先生だった。

 

“君の・・・・・・その目は?”

 

心配そうにそう声をかけてきた。 全くコイツは、エラッタを向けられてもその態度を崩そうとしない。 いや、突きつけたエラッタなんて見ていない、俺の何重にもブレた目を見てるんだ。

 

「さあどうだろうな? 先生はどう見える?」

 

“出来ればすぐにでも辞めてもらいたいかな”

 

「はは、お見通しかよ」

 

フューリーモードは今までジョニーが通常の状態に引き戻してくれていたが、今はいない。 このままでは間違いなくサイバーサイコシスを発症するだろう。

 

「ま、どうにかなるさ・・・・・・頼りになる先輩もいるしな」

 

“そっか、いい出会いをしたんだね”

 

先生は優しそうな人のいい笑みを浮かべ、俺の後ろで倒れるツルギを介抱しようとして歩き出した。

 

“次は負けないよ、V”

 

すれ違い際に告げられた言葉に、今まで感じた事のない心の奥でそっと燃え上がるような感情が湧き上がり、気づけば俺も口を開いていた。

 

「次は勝つぜ、先生」

 

先生はVを捕縛不可能になり、Vはワカモが迎えに来る前に戦闘不能、勝者のいない戦場で互いに宣戦布告を行うのだった。

 

 

 

俺も戦闘状態を解除してエラッタを納刀してその辺の瓦礫に諦めたように座り込む。

 

「あーー、ダメだ。 しばらく戦闘出来ねぇな。 フューリーモードも終わらない」

 

ツルギを仰向けにして救出すると、次はユウカを、その次はハスミ、ミネ、コハルを助けに行った。

 

頭の中で反響する笑い声に不快感を募らせていると、フードを被った少女がカメラを畳み、その場を去っていく様子を目撃した。

 

「覗き魔め」

 

きゃーえっちー、とか言えばよかったか? ダメだ、現実逃避染みた考えが過ってしまう。 本当にどうしようかフューリーモード、このままだとサイバーサイコシスへ一直線だ。

 

 

 

「後輩!」

 

そこへ赤い装甲車がかつてバックヤードに続く扉があった穴から飛び出してきた。 ようやくかおせぇよ。

 

「先輩遅い」

 

「こっちはこっちで後からやってきた自警団とドンパチしてたんですぅ!! って後輩どうしたんですかその目?」

 

俺がようやく動けるようになった足を引き摺りながら助手席に乗り込む。

 

「さっさと行こう。 やっとの思いで蹴散らしたのにまた戦うとか勘弁だぞ」

 

先生は介抱を続けてるようで、正義実現委員会の生徒たちも背負って救助していた。 その様子を見たワカモ先輩は目をハートにさせていた。

 

「ああ・・・・・・やはりこの張り裂けんばかりのこの思い、貴方様・・・・・・またいつか、お会いいたしましょう♡」

 

「うっわ、知り合いが全力でメス出してるところ見るのキッツイなぁおい」

 

「後輩、人の恋路をキッツイ呼ばわりやめなさい」

 

だって急に声が猫撫で声で反吐が出そうな甘ーい台詞が急に垂れ流されたのだ、精神的にくるものがある。

 

助手席の窓を開け、拳銃を構えるように先生に指を向ける。 次こそ決着をつけてやると。

 

「後輩、楽しそうですね」

 

「ああ、命のやり取りなく全力で戦うのがこんなに楽しいとは思わなかったよ」

 

勝つ事はできなかったものの、その顔は一切憂いのない晴れやかなものだった。

 

その瞳のブレも、少しづつ治まってきていた。




サイバーパンク2077 ANGEL MEMORY

大型アプデにより変更されたパーク

技術パーク『エッジランナー』
・サイバーウェア限度を最大50ポイント上回ることができるようになるが、超過ポイント1つにつき最大HP−0.5%
・戦闘で敵を無力化すると、限度超過ポイント1つにつき0.1%の確率でフューリーが発動。
フューリーの効果:
与ダメージ+10%
クリティカル率+30%
クリティカルダメージ+50%
持続時間12秒
フューリー発動中、敵を無力化するたびに持続時間+3秒

ANGEL MEMORY アプデ後

・サイバーウェア限度を最大50ポイント上回ることができるようになるが、超過ポイント1つにつき下限サイバーサイコシス値を0.4%上昇(最大20%)
・一度の戦闘で敵を一定数無力化すると発動可能、超過ポイントが多いほど少ない人数で発動可能になる。
フューリーの効果:
サイバーウェアの効果と攻撃力の上昇
与ダメージ+10%
クリティカル率+30%
クリティカルダメージ+50%
サイバーサイコシス値の上昇

解除方法・青春を過ごす



ジョニーがいなくなったため時間経過による解除が消失、貴方の帰りを待つ人との青春を過ごすことによって解除可能。

端的に言うと、「ゲーム本編のままの効果だとメリットに対してデメリットがデカすぎて死にパーク化するなコレ」と作者が判断して変更しました。

敵を倒せば勝手に発動するのではなく、光学迷彩や血液ポンプみたいに自分の判断で使用可能になりました。

そりゃまぁ、戦闘中急に叫んで暴れ回った挙句EMPバーストする主人公とか話が進まなすぎる。

因みに原作効果のままだとこうなります

V「こっちは倒したぜ先輩ヴォオオオオオオオオオオ!!!」 勝手にフューリーモード発動

狐「ええ・・・・・・すっごいバチバチしてるしすっごい笑ってるぅ・・・・・・なにこれぇ」

V「ヴォオオオオオオオオオオ・・・・・・ふう」 12秒経過

狐「急に落ち着かないでもらえます?」

うん、ダメだな! 話進まねえ!!

貴方はどれくらい知識がある?

  • サイバーパンクは名前だけ知ってる
  • サイバーパンクは動画勢
  • サイバーパンクは雰囲気でプレイ済み
  • サイバーパンクはガチでやった
  • サイバーパンクで知らないことなど何もない
  • サイバーパンク? なんそれ?
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