サイバーパンクと青春記録   作:水面どり

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第5次抽選・・・・・・次こそSwitch2を引き当てて見せる! 俺たちの冒険はコレからだ!!


51話 ACT1 エピローグ

さて諸君、開口一番で哲学的な問いを投げかけるようで申し訳ないが一つ問題を重ねてみようじゃないか。

 

『地獄』とはどんな状況を示すだろうか?

 

「えー、こっちの方がVさんの雰囲気にあってよくなーい?」

 

目の前で国家レベルの企業の親玉が死んでその犯人に祭り上げられた時か? まあそうだろう。

 

「いや、そこを敢えてこういうフリフリのギャップで攻めてさぁ」

 

脳内に巣食うテロリストに殺されかけた時か? ふむふむ、それもまた地獄であろう。

 

だがしかし、しかしである。 俺の目の前で繰り広げられるキャッキャウフフ空間はどうだろうか?

 

「ほーら上の方もつけましょうねー」

 

地獄のような光景とは、今まさに女性物下着を持って迫ってくる先輩を目の当たりにした時である。 尚、背後ではいろんな衣装を手に持ったスケバン達もいるものとする。 難易度ベリーハードを通り越してトーメントである。

 

「フシャアアアアアアアアアーーーー!!!」

 

俺は毛を逆立て全力で威嚇するが、お構いなし。 俺の尊厳は現在進行形で掘削作業現場と成り果てていた。

 

「後輩ブラぐらいつけなさい」

 

「ふざけんじゃねえ!! 俺は男だっつってんだろゴラァ!!」

 

「そういうのいいですから・・・・・・胸小さいの気にしてるのですね」

 

「一ミリも気にしてねぇわ先輩お前マジで覚えてろよ」

 

見当違いな事をほざく先輩を睨みつけながらガッタンガッタンと俺自身を固定した椅子諸共揺れて必死の抵抗を示すが、成果は芳しくない。 Tシャツは剥がされ、ピンクのブラジャーを装着させられた。 ついでにパンツもピンクの奴に履き替えさせられた。

 

「うぅ・・・・・・惨めだ・・・・・・」

 

俺がオーナーの肉切り包丁で意識を奪われてから一晩空け、サイバーウェアはメンテナンスを完了。 完全復旧する筈だったのだが・・・・・・何故かエラーを吐いてウンともスンともいわない。

 

「俺の脳天に刺さってる包丁抜いてくれオーナー!? このままじゃ俺の貞操がテロ狐に奪われちまう!!?」

 

「いいかげん観念して着替えちまいな、ウェイトレスとして取引失敗の損失分は補填してもらうからね」

 

「ファーーーーッッッック!!!!」

 

サイバーウェアが動作不良の原因、それはこの肉切り包丁のせいだ。 俺の脳天に深々と突き刺さっているのにも拘らず血は一滴持たれてこないし痛みもまるでない。 ただ一つ、体がうまく動かせないのだ。 まるで鎖で雁字搦めにされた挙句そのままコンクリートで固められたかのように体が動かない。

 

「孫悟空の緊箍児みたいですね」

 

「頭にぶっ刺さってる肉切り包丁のせいで、見た目は巨大化する光の国の特撮ヒーローっすけどね」

 

「うるせえよ」

 

別に働いて金を稼ぐのはいい。 寧ろドンと来いと言いたいほどだが、ウェイトレスというのがダメだ。 野郎があんなヒラヒラしたスカートを履いて接客するとかどんな拷問だ。

 

「働くから! ウェイトレス以外だったら何でもするから!! もうカイザーだろうが連邦生徒会だろうが何だろうが滅ぼしてやるから!!」

 

「アンタトリニティ自治区を滅ぼしかけたせいでこうなってんだよおバカ!! ったく、本当に反省してないね・・・・・・ワカモ、アレ持ってきな」

 

そう命じられたワカモはそそくさと持ち場を離れていった。 そして代わりに様々な衣装という名の拷問道具を携えたスケバン達が代打として現れた。

 

「はーいおめかししましょうねー」

 

「ヒッ」

 

手に持つのは様々な学校、委員会、部活の制服の数々だった。 更に後方には鏡やらリボンやらカチューシャやら髪留めやらシュシュやらエトセトラ・・・・・・小道具類も豊富であった。

 

「そんなもんどっから持ってきやがったテメェら!?」

 

「ワカモさんが、後輩の服は単調的すぎるのでショッピングモールから色々持ってきました、って言ってたっすよ」

 

「あんの先輩・・・・・・!! なんか遅えと思ったら・・・・・・いや待て、先輩は外で不良を焚きつける為の爆弾の設置やハッキングやら電波ジャックしてた筈、流石に服まで盗む時間は・・・・・・まさか」

 

 

 

ヘルメット団が、準備を終えた、いつでも呼べる、ね。

 

 

 

「あ、あの時かよ!!? なんかヘルメット団にやらせてるとは思ってたが・・・・・・服!? 俺そんなのの為にツルギ相手に時間稼がれたのかよーー!!」

 

なんの準備だろうとは思っていたが、まさかまさかの俺の服だった。 余計なお世話すぎる。 というかトリニティのショッピングモールなのになんで他校の制服まであるんだおかしいだろ。

 

「Vさん! アンタもいい歳した女性なんすから、お洒落にも気を回すべきっすよ! コレはアタシらスケバンみんなとワカモさん、それにオーナーの総意っす!!」

 

「喧しいわ!! んなヒラヒラした服なんざ着れるか、俺はカッコいい系でまとめて・・・・・・待て待て待て待てスカートを持って近づくんじゃねぇ、つーか短すぎだぞそのスカート!? は? なに? 正義実現委員会のスナイパー用制服? バカじゃねぇの!!?」

 

そんな丈の短いスカートを履くスナイパーなんぞいるわけないだろメチャクチャ言うんじゃねぇよ。

 

「んじゃこっちって、スリットキツすぎだろパンツ丸見えになるじゃねぇか、は? なに? 副委員長を模した制服? バカじゃねぇの!?? いい年した娘なんだからもっとこう、肌の露出とか考えろよもーー!!」

 

「まったく、わがままっすねー」

 

「コレ俺が悪いのか? コレ本当に俺が悪いのか?? 理不尽過ぎないか???」

 

はーやれやれ、と言わんばかりに肩を竦めてため息を吐くスケバン共に苛立ちを覚えながらどうにかこうにか脱出しようと画策する。 頭に突き刺さった肉切り包丁さえ取れれば俺は自由である。

 

「ふん! ふん!!」

 

「そんな頭を振ったって取れるわけないだろう。 まだ元気そうだね、もうちょい深めに刺しとくかい」

 

オーナーが俺の脳天に刺さった肉切り包丁を指で押すとズプズプと更に深く入り込んでいった。 それと同時に全身に力が入らなくなっていく。

 

「あびゃあ」

 

あたま、しこう、おそい、できない、なんこれぇ?

 

「おっと刺し過ぎた。 もうちょい引っ張って・・・・・・こんなもんかね」

 

オーナーが突き刺さった肉切り包丁を少しだけ抜くと、霞がかった俺の頭がクリアになっていく。 そして数テンポ遅れてゾッとしたような怖気が背中を駆け抜けていった。

 

「オーナーコレ何? スッゲー怖いんだけどどうなってんだその肉切り包丁」

 

「昔いた職場の小道具」

 

どんな職場だよ、とツッコミを入れる前にワカモ先輩が一つの衣装を持って帰ってきた。

 

「はーい後輩、可愛いお洋服ですよー」

 

その手に握られていたのは、ウェイトレス衣装とは色と形は似てるが明らかに布面積が少ない服だった。 スカートの丈は太ももを隠せるか怪しいぐらい短く、あちこちにリボンやらフリルやらでヒラヒラとしたエプロン、仕舞いにはカチューシャとシュシュ・・・・・・

 

「ナン、ソレ?」

 

嫌な感覚が拭えないまま震える声で尋ねるが、ニコニコとしたワカモ先輩は無言のまま近寄ってくる。 そして答えはオーナーから齎された。

 

「アタシが昔作ったバイト用のメイド服」

 

メイド服、その言葉を頭で反芻するが上手く消化できない。 え? 俺が? メイド服を着るの?? 何で???

 

「この店を開ける時に作った服でね、給仕係の服は何がいいかと前の職場の連中に聞いたら、メイド服がいいんじゃないかと提案されてねぇ・・・・・・アドバイス通りに作ってみたけど、誰も着たがらなくてそのままタンスの肥やしになってたのさ」

 

後ろで更に何か言っているが聞き取る余裕はない。 そして現実逃避すらままならない思考を塗り潰すように現実は進行していく。

 

ワカモ先輩は俺の足を上げさせ、スカート装着させようとしていた。 スケバン共はそれをキラキラした目で眺めており誰も助ける素振りも見せない。 それどころかケータイをこちらに向けパシャパシャと激写を始める始末だ。

 

「いいいいいいいいいいいやああああああああああああああ!!!! た、たすけ、たすけてええええええええええええ!!! ジョニーーーーーー! へーールーープーーーーーー!!!!」

 

遂に感情がオーバーフローした俺はなりふり構わず叫び暴れ出すが、虚しいことにスケバン共に取り押さえられメイド服を着させられるのだった。

 

今、この瞬間ほど、疑似エンドトライジンが欲しいと思ったことはない。 ジョニー俺と代わってくれ頼む。

 

代わるわけねぇだろ。 誰が目に見える厄札を引きに行くかよ。 そんな事すんのはどこぞのお人好しの専売特許だろうが。

 

聞こえるはずのない声が聞こえた気がするが、この地獄が産んだ幻聴だろう。

 

「お仕置きってのはね、そいつにとって一番嫌な事をするのが効果的なのさ」

 

煙管を吹きながら呟かれた言葉が、粉々に打ち砕かれた俺の尊厳に冷たく染み入った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「こ、コレは・・・・・・」

 

孤坂ワカモは目の前に映る光景に度肝を抜かれていた。 黒い生地のワンピースに白いエプロン、白い襟にカフス、そしてカチューシャを装着した艶のあるプラチナブロンド、そんな生徒が目の前にいたからだ。

 

「か、かわ・・・・・・」

 

隣に佇むスケバンが震える声でスマートフォンのカメラで激写する。 その目はキラキラと輝いているが、対照的に撮られてる方の目は死んでいた。

 

「「「「かわいいーー!!」」」」

 

そう、この騒動の中心はメイド服を着た存在、Vという孤坂ワカモの後輩が齎したものである。 彼女は死んだ顔で、ブツブツ呟きながら世界全てを呪わんばかりに負の感情を撒き散らしていた。

 

「ばにたすばにたすばにたすばにたすばにたすばにたすばにたす・・・・・・」

 

余りのストレスのせいか、トリニティ自治区のゲヘナ方面から謎の電波を受信したVは壊れたラジカセのように同単語を口から放ち続けていた。

 

「いやー、Vさんには光るものがあるとは思ってたんすよねー! カッコイイ系も良かったっすけど、このフリフリいっぱいの服でギャップを感じさせて可愛さが限界突発っすよ!」

 

「うるさいだまれ何がかわいいだ畜生・・・・・・」

 

完全に不貞腐れた傭兵を尻目に各々化粧品やら衣装を片付けを始めた。 一部のスケバンは更衣室へと向かい、従業員用のウェイトレスを身に纏いに行った。

 

「後輩、コレも必要な事ですよ」

 

「あ? 何処かだよ? 俺をこんな格好にして辱めて、まさか全部俺の為でしたとかほざくつもりかよ」

 

「後輩着せ替え人形ショーは楽しく過ごさせて貰ったので、流石にそこまで言うつもりもございませんが・・・・・・貴方別の生徒によく化けるでしょう?」

 

「・・・・・・それがなんだよ?」

 

ワカモがVの脱いだ黒いTシャツと青いジーンズを広げて、険しそうな表情を浮かべた。

 

「この格好で化けてもしょうがないでしょう?」

 

「・・・・・・まあ、確かに」

 

大抵の生徒は何かしらの学校に所属して制服を着ている。 スケバンだってスケバンの制服を着て活動してるし、ヘルメット団だってジャージやら制服を着込んで行動を起こしている。

 

「後輩、キヴォトスでは制服を着ての活動が必須と心得なさい。 今回の騒動でキヴォトス中の要人達から貴方の能力も含めて強く警戒されてるでしょうし」

 

郷に入っては郷に従え、俺も傭兵兼生徒として活動するのだ。 制服一つにいちいち抵抗を覚えても仕方ないだろう。 抵抗はメチャクチャあるが。

 

「誰かに化ける際も、その方が所属する学校の制服を着ればバレづらくなるはずです。 ですが、私が用意した制服もあくまで制服に似せて作られただけなので細部が異なります。 活動する際は余りジロジロ見られないように気をつけてくださいね」

 

 

 

チュートリアル『他校の制服』

・Vの衣装に制服が追加されました。 対象自治区内で該当する制服を着こなせば様々なステルスなどのパラメーターにボーナスを与える事が可能です。 現在所有している制服は擬似制服の為大きなボーナスはありませんが、もし本物の制服を手に取る事ができれば、対象自治区でさまざまな行動を起こす事ができます。

例) 正義実現委員会の制服でトリニティ自治区内において治安維持活動が可能になる。 所謂報酬ガッポガッポのNCPD依頼である。

 

 

 

「といっても、男の身からすれば制服着るのに抵抗が・・・・・・」

 

「ですから、もういっそメイド服でも無理やり着替えさせて、そのまま接客業もやって耐性でもつけてください」

 

「うぐ」

 

ビシリと言いつけられたVはガックしと項垂れ、その場でダンゴムシの如く丸まり始めてしまった。 メンタルへのダメージがデカ過ぎて完全に打ちのめされてしまっている。

 

「さて、コレでVのお仕置きは一区切り着いたとして・・・・・・ワカモはどうしたものかねぇ」

 

あくまでもお仕置きというのは痛みの伴う教訓でなくてはならない。 つまりお仕置き対象の為になる行為でなくてはならないのだ。

 

「ふふ、さあ一体どうしますオーナー?」

 

「もうめんどくさいし100本位やっとこうかね」

 

ジャラリと黒い浴衣の裾から大量の包丁やナイフが取り出されると笑顔のまま固まったワカモは扉へと後退りを始めた。

 

「ちょっと私だけ雑じゃありませんか!? さっきまでの痛みの伴う教訓でなくてはならないとか速攻でほっぽり出しやがりますか!!?」

 

「ここにいる奴らがそんな道徳を守る連中だとでも? 生憎ここはブラックマーケット、金と武力とコネが物をいう世界だよ」

 

「・・・・・・なるほど、教訓、ね」

 

ダンゴムシの如く丸まっていたVがのっそりと立ち上がった。 その姿は疲れ果てた中年親父か、はたまた幽鬼か、復活したゾンビのようにも見えた。

 

「こ、後輩! まさか私の危機に立ち上がってくれたとかそういう感動的なやつでしょうか!」

 

目を煌めかせて戦闘力最高峰の後輩に縋り付くワカモ、しかし頼りにした後輩の様子がおかしい。 妙な威圧感と迫力がワカモに向けられていた。

 

「なあオーナー、俺ワカモ先輩にしてやるべきお仕置きを思いついたよ」

 

おっとぉ? 風向きが変わってきたぞぉ??

 

ワカモのなけなしの希望は反旗を翻し、今まさに厄災の狐へと突きつけられようとしていた。

 

「こう、はい?」

 

「ワカモ先輩、俺はアンタの恋路を応援したい。 だけどアンタは先生相手に逃げ出しちまう。 だからそれを克服しようじゃないか」

 

Vはメイド服のままですっげー爽やかな笑顔でワカモへと向き直り、言葉を連ねていった。

 

「アンタ、よくも人様に向けて爆弾投げ込んでくれたな」

 

「・・・・・・あの」

 

「よくも先生と相対した時、一人だけ逃げ出してくれやがったな?」

 

「・・・・・・その」

 

「よくもよくも、人様を着せ替え人形みたいにしてくれやがったな?」

 

「わかりました後輩、謝ります。 調子に乗ってました。 だからその、笑顔やめなさい貴方、その不気味すぎるスマイルはタダでも入りませんから!? ちょ、オーナー!? ナイフ100本コースでお願いします!! 今の後輩何しでかすか本当にわからなくて、ヒィ!?」

 

オーナーは部屋の隅に椅子を置き、我関せずと言わんばかりに煙管を吐いた。 その間にもVはワカモの眼前にまで迫っており、機械的な目が不気味に蠢いていた。

 

「オーナー肉切り包丁」

 

「はいよ」

 

オーナーがVの脳天に刺さった肉切り包丁を抜くと同時に、Vの体からサイバーウェアが躍動を始める音が鳴り出す。 そしてVの顔が変貌していき・・・・・・

 

 

 

“やあ、ワカモ”

 

 

 

先生の顔に変わったのだ。

 

「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」

 

もはや何も言えなかった。 それも当然だろう。 孤坂ワカモという少女は先生に心の奥底から心酔しており、敵対状態でもその姿を一目見た瞬間鼓動が高鳴り、目が離せなくなる、所謂一目惚れしたのだ。

 

では問題である。

 

Vの装着した行動インプリントと呼ばれるサイバーウェアは2070年の新アメリカ合衆国の情報局FIAのエージェントが使用する物だ。

行動インプリントは声やIDだけでなく、生体組織すらもスキャンさえすれば完璧な擬態が可能なメタンスロピック•クローキング技術が使われ、ミリテクの最新技術である。

それに加えてVはコレに神秘による超強化も施してしまっていた。 そんな状態で、ワカモの目の前で、一目惚れした相手である先生に擬態したのだ。

 

ミリテクと先生のクロスオーバー、いや、カオスオーバーである。

 

「後輩すみませんでしたそれだけは勘弁していただけませんか」

 

“何が、ダメなのかな?”

 

「んんんんんんんんんんんんんんんん」

 

端的に言おう、ワカモはバグった。

 

ミリテクの超技術と神秘の組み合わせから放たれる100%先生ボイスと顔にワカモは先生判定を下しかけてしまったのだ。

 

“ごめんね、私じゃワカモの為になれなくて”

 

「い、いえ! コレは私の不得の致すところであり、決して貴方様が気に止むようなじゃねえええんだよおおおおーー!!!」

 

ぐわんぐわんと両手で押さえながら頭を振るう厄災の狐、いつもの口調と余裕は何処へやら。

 

“おもろ、もうしばらく弄っておこう”

 

「あ、そのセリフは先生っぽくないですね、もっとこう落ち着いた感じで・・・・・・」

 

“ダメだししてんじゃねーよ”

 

こいつ本当はこの状況を楽しんでるのでは? と疑問に思いつつも拷問・・・・・・じゃなくてお仕置きを進めていく。

 

“ワカモ、どうしてシャーレを襲ったりしたの?”

 

「そ、それは・・・・・・その・・・・・・」

 

“もしかして私の事恨んでた?”

 

「そのような事はございません! このワカモ、いつまでも貴方様のことをお慕いして、ちがあああああああああう!!! あっぶねぇ後輩に告るところでした!!」

 

“そっか、ワカモは私の事が嫌なんだね”

 

「そのような事は決して・・・・・・後輩これ辞めませんか? 死にたくなるんですけど??」

 

“大丈夫だよワカモ、死ぬまで一緒にいよう”

 

「ああ、そのようなお言葉を頂けるなんて・・・・・・このような幸せな心地は今まで感じたことももももももももももmmmmm」

 

“あ、やべ・・・・・・なんか溶け出した”

 

「キャパオーバーだね」

 

Vがゴリラアームの電撃機能を僅かに稼働して、両手をすり合わせ始めた。 微弱の電気同士が反応を起こし、そして黒い液体になりかけてるワカモの脇へと差し込んだ。

 

“なんちゃってAED”

 

「あびゅん!!?」

 

電撃を受けたワカモはすぐさま元の姿に戻り、Vは顎へと手を添えた。

 

“ワカモ、愛してるよ”

 

「み゛っ」

 

全力で舌を噛み、その痛みでこの幻覚から逃れようとするワカモ。 ブシューと血が出るがそれでもお構いなしに噛み続ける。

 

だが現実は非常である。 Vはワカモを抱きしめ、耳元で囁く。

 

“ワカモの答えが聞きたいな”

 

「」

 

なんてタチの悪い行動インプリントの使い方、FIAもこんな使い方をされるとは夢にも思わなかっただろう。 ワカモは再びゲル状に溶け、シワシワの顔のまま地面へと染み込んでいった。

 

もしVの擬態が感情データと行動データも集めた完璧な物なら逆にワカモは幸せだっただろう。 だが今回は中途半端な、見た目と声だけ完璧に擬態できてるのが悪辣さに拍車をかけていた。

声と見た目は完璧に先生なのだが、所作がVの為ワカモは苦しむ。

Vを相手にほんの一瞬でも先生という判定を下しかけた自分自身が許せなくなり、激しい自己嫌悪に陥ってしまう。 それがこの現状のカラクリであった。

 

先生に対し人一倍敏感が故に苦しみ続けるのだ。

 

「うぅ、助けてください貴方様・・・・・・」

 

消え入りそうな声でそう呟いた。

 

電撃蘇生と擬似先生ASMRを繰り返されて1時間後、様子を見にきたスケバンが目撃した光景は・・・・・・

 

 

 

ダンゴムシのように転がったまま動かないメイド傭兵、狐耳が飛び出したシワシワ顔の黒いスライム、オーナーの煙管から吐き出された煙で充満した空間。 正しく死屍累々。

 

 

 

「地獄みたいな光景っすね」

 

本日の営業は、1時間遅れて始まったそうな。




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