サイバーパンクと青春記録   作:水面どり

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恒常アンケートの内容ですが、票数が多かった方をストーリーに組み込むわけではありません。 なので気負わずじゃんじゃん票を入れてくれると助かります。


54話 サイドジョブ 『回収』 2

調査に動き出して数日・・・・・・古塗マキからの事情聴取、先生からの情報提供、そしてユウカ自身の地道な聞き込みによって、ある一つの場所が提示されたのだった。

 

「ブラックマーケット・・・・・・1人で立ち入るような場所じゃないけど、そうも言ってられないわよね」

 

 

 

「え? 未完成というか、あの作ってる途中で飽きたハッキングシステム? 買い取りたいって生徒がいたからカラースプレー代金ぐらいになりそうだったから売ったけど・・・・・・それがどうかしたの、ユウカ? なんか凄いニコニコしてるけど本当にどうしたの!? ちょ、なんか逆に怖いよユウカ!?」

 

「む? 買い取りを申し出されたか、だって? ・・・・・・ああ、確かに部員の一部がそんな事もしていたみたいだね。 とはいえ売った代物は未完成、というか完成が頓挫した子達のようだが・・・・・・どうかしたのかい? いやなに、君がいつも以上に清らかな笑顔だったから妙な寒気がしてね・・・・・・何でもないならそれでいいんだ。 藪蛇、というやつさ」

 

「コユキちゃんは最近大人しくしてますよ? 特に問題を起こしたとか、脱走したとか、壊したとか、そんな話は聞きませんが・・・・・・しばらく私にセミナーの仕事を任せられるか、ですか? ええ、別に構いませんよ。 ユウカちゃん最近頑張っていましたから、少しぐらいリフレッシュが必要だと思っていました。 手続きはこちらで済ませておきますので、判子だけお願いしますね」

 

“ユウカ、今大丈夫? 掲示板の書き込みの話なんだけど、妙に大荷物を持ったミレニアム生がブラックマーケットを出入りしているみたいなんだ。 それに、怪しい商売をしてるって話もある。 ゲルマニウム? とかなんとか・・・・・・今トリニティで事件解決に動いて注目を浴びてるシャーレが動くと今回の騒動が表に出るかもしれないから、私にできるのはコレぐらいしか出来ないけど、何か危険なことや不安な事があったら遠慮なく連絡してね”

 

 

 

「まったく、何でこんな場所で商売なんかしてるのよ!」

 

現在、ユウカはビジネススーツのような黒いブレザーは着用せず、白いカッターシャツに青いネクタイ、黒いスカート、そこへ丸メガネと袖が余る白衣を着た状態だった。 コレが彼女の涙ぐましい努力の籠った変装術だった。 スッゲーバレバレだが。

 

そんな彼女は袖をパタパタ靡かせながら、サイズが合わず落ちそうな伊達メガネと格闘しながらブラックマーケットを探索していた。

 

だが成果は芳しくはない。

 

なんせこのブラックマーケットは凄まじく入り乱れ、乱雑したように建築されている建物があまりにも多く、迷路のようになっているからだ。 路地裏に一歩踏み出せば元いた場所に戻れる保証はない。

 

「あーーもーー!! 何なのよこの適当すぎる場所は!!」

 

そのあり方は全てが計算し尽くされたミレニアムとは天と地ほどある。 適当に建てたような建物が行く手を遮り、戻ろうと踵を返しても元の場所には戻れない。 ユウカは案の定迷子になった。

 

「案内用看板は落書きされて意味ないし、GPSだって無駄に建てた建物のせいで碌な案内もできない。 どうすればいいのよ!!」

 

正に八方塞がり、ここに詳しい人物にでも案内を頼めば良かったと後悔したが、こんな場所に精通してる奴もどうせ碌でもないやつなのは違いないのでどのみちだろうと首を横に振るった。

 

「情けないけど先生に助けを呼ぶべきかし、ら・・・・・・?」

 

恥を忍んで先生にナビして貰おうとスマートフォンを取り出した、その時だ。

先に見える屋台の暖簾を掻き分けながら見覚えのある顔が飛び出してきた。

 

「ごっそさん。 本物の焼き鳥なんて初めて食べたぜ大将」

 

「だっはっは! いいってことよ! 嬢ちゃんの食いっぷりが良かったぜ!」

 

「そうか? なら売上に貢献したって事で一つ聞いてもいいか?」

 

そう、その顔はーー

 

「わ、私!???」

 

ーーユウカだった。 屋台から串を咥えたユウカが現れたのだった。 現実味を帯びない光景に唖然としかけるが、ある存在が脳裏をよぎりすかさず物陰に隠れる。

 

隠れたユウカに気付いた様子はない。 彼女はそのまま屋台の店長との会話を続けていく。

 

「実はブラックマーケットで最近増えてるミレニアムの品物に興味があってな・・・・・・何か知らないか?」

 

「ミレニアム? いや、しらねぇなぁ。 なんせここはただの屋台だ。 ハイテク装置なんて置いても仕方ねぇしな!」

 

「そうか・・・・・・DU地区近辺じゃ流石に活動してないか」

 

「そりゃそうさ。 偶にヴァルキューレも通りがかる時もあるし、その上治外法権の領域だ。 真っ当な商売も違法な商売もしづらい場所なのさ」

 

「そんなとこで屋台なんか良くやれるな?」

 

「商売のコツがあんだよ、コツが」

 

え? ここDUの近くなの? 結構奥まで歩いたと思っていたのだが、実際はそんな事はなかったらしい。 今までの徒歩移動は何だったんだとユウカはガックシと項垂れた。

 

「というか、アレってもしかして・・・・・・V、よね?」

 

いったいどうやって自分に化けてるのかと問い詰めたくなるし、そもそも何故自分に化けているのかとも問い詰めたくもなるが、グッと我慢する。

 

「私に化けて何してるのよアイツ! 何か悪い事でもしてないでしょうね!?」

 

もしそうなったら最悪である。 素行不良なセミナー会計という噂でも流れたら、その後処理だけでどれ程の時間と労力がかかるのかなど考えたくもない。

 

一人で戦々恐々としているとVは手を上げる事で別れを告げ、歩き出してしまった。

 

ユウカも慌ててその後を追う。

 

自分の知らないところで自分の体がどう扱われるかわかったものではない。 それにもしかしたらブラックマーケットの奥地に向かってくれるかもしれないからだ。

 

「ん? 双子なのか? 仲がいいねぇ」

 

その様子を屋台の店長は微笑ましげに見届けた。

 

 

 

 

 

ブラックマーケットの奥へとズンズン進むV、その足取りに迷いはなく迷路のような路地裏を飛んだり跳ねたりしながら軽快に進んでいく。 その後を必死に追いかけるユウカ。

 

「おいそこのアンタ、ここを通りたかったら通行料をグヘェ!!?」

 

通行料を求めた不良に鉛玉という代金を支払い

 

「ピピー!! ここは今通行止めで・・・・・・跳んだぁ!?」

 

工事用のヘルメットを被った傭兵が交通整理する工事現場をダブルジャンプとエアダッシュで通り抜け

 

「テメェさっきはよくもやってくれやがったな!! 俺たちに楯突くとどうなるか教えてイタタタタタ!!? ちょ、ま、まだセリフの途中!? せめて最後まで言わせて!!?? アイターーーー!!!?」

 

「・・・・・・一応聞くが、この辺りでミレニアム生を見たか?」

 

「知りません見てませんほんとです何も分かりませーーん!!」

 

再び立ち塞がった不良とその仲間たちに機械化した腕で殴り、拳骨、関節技を決めていく。 一通り制圧したら再びバッタ移動を再開した。

 

 

 

そんな事を続けて1時間、ユウカは遂に根を上げた。

 

「ぜぇ、ぜぇ、い、いい加減に止まりなさいよ・・・・・・はぁ、はぁ・・・・・・」

 

ユウカは肩で息をしながら、Vを追いかけ続けたが・・・・・・遂に限界を迎えた。 彼女はセミナーの会計担当、運動は余りしない方だ。 その上、いくら強靭なキヴォトス人神秘マシマシボディでも反応値20のバッタ移動についていく事はハードルが高すぎたのだ。

 

「しかも跳ぶたびに息が整ってるし・・・・・・アレにスタミナの概念はないの??」

 

ユウカはVの追跡を渋々諦め、ベンチに座り込み息を整えた。 風が汗を撫で、熱った頬に心地の良い冷たさを与えてくれた。 それと同時に茹だった頭が冷静になっていく。

 

「確か、ミレニアムがどうとか言ってたわよね?」

 

もしかしたらVと自分の目的は同じところなのかもしれない。 そう思うと足取りを追えなくなったのは手痛い失敗だった。

 

「もう一回見つけられるかしら・・・・・・いや、ここのブラックマーケットはかなり広かったわね、かなり厳しい」

 

キヴォトスにブラックマーケットは幾つか存在してるが、大半がかなり小規模なものだ。 この一自治区分の大きさを誇るブラックマーケットはその昔、トリニティとアビドスの間で勃発したとある事件がキッカケでここまで大規模に膨れ上がったと聞いた。

 

「でもそれ以上ここのブラックマーケットを調べようとしても、何も出てこなかったのよね・・・・・・不自然なくらい」

 

更に思案に耽ろうと足を組んで手を顎に当てた、その時・・・・・・日に当たっていた筈なのに、急に影が差し込んだ。

 

天候が変わったのだろうかと顔を上げるとそこには。

 

「おい、例のブツは持ってきたか」

 

真っ黒な戦闘用ロボットがユウカを取り囲んでいたのだ。

 

「へ?」

 

「さっさとしろ。 アイツが来たらどうする」

 

「隊長、ついさっき例の傭兵が別部隊を襲撃したようです。 場所も近いですし、場所を移した方がいいかと・・・・・・」

 

「ちっ・・・・・・おい! 場所を変える、ついてこい!」

 

ユウカが状況を整理しようと頭を回してる間に状況は更に急変していく。 目が回りそうになるが、それでも目の前のロボット集団の発言を噛み砕き飲み込んでいく。

 

「コイツら、マーケットガードよね? それが私の変装姿を見て取引相手と判断した・・・・・・って事はもしかしたら」

 

渡りに船、というやつかもしれない。 当然リスクはあるが、もはや四の五の言っている場合ではないだろう。 ハスミの提示したタイムリミットには余裕があるとは言いづらく、他に辿れる糸も見当たらないのだから。

 

「虎穴に入らずんば虎子を得ず、ね」

 

白衣の内側に隠した二丁のサブマシンガンの感触を確かめ、決意を固めていく。 大丈夫、普段事務仕事しかしないとは言え、それでもセミナーの一員としてそれなりには戦える。 最悪何かしらの手がかりだけでも入手してトンズラこいてしまえば、再チャレンジの機会だってある筈だ。

 

「よし。 いくわよユウカ」

 

小さく、自分自身に呟いて覚悟を決めてユウカはマーケットガードの後に続くのだった。




V視点で進めると話数が長くなりそうだと判断して、ユウカ視点でお送りさせていただきました。

貴方だったら、どっちのルート? 対策委員会編

  • アロナの依頼ルート
  • ヘルメット団依頼ルート
  • どちらも選ばない、便利屋ルート
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