サイバーパンクと青春記録   作:水面どり

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大変遅くなり申し訳ございませんでしたぁ!

色々忙しい事が重なりしばらく手をつけられませんでした!! ようやくひと段落したので投稿再開します!

途中途中で書いたり消したり繰り返してたので文章におかしなところがあればご報告いただけたら修正いたします!


58話 サイドジョブ 『回収』 6

「部長! またバイクが来ました!!」

 

「あーーもう! 何度も何度もしつこいですねぇ!!」

 

遂にユウカとVの追跡を振り切れたと思ったその僅か数秒後、再び現れたお邪魔虫に苛立ちを隠せないミライ。 アクセルを踏む足に力が入り更に加速していく車両の中で振り切る算段を思考する。

 

「ですけど・・・・・・一人? セミナーの算術使いだけです! Vはいません!!」

 

だが思わぬ朗報に眉間に寄っていた皺が絆されていく。 何だったらガッツポーズまでしていた。

 

「やはり規律のセミナーと反逆のテロリストでは仲違いを起こしましたか! Vがいないなら余裕ですよ! 何だったら逆に捕縛しちゃいますか?」

 

「それは迂闊だろう!? 一度自由にしてしまっているんだ、ミレニアムの戦闘部隊を呼ばれてたら詰みだぞ!?」

 

実際の所そんな事はないのだが・・・・・・この二人がその事実を知る由もない。 ミライの発想に苦言を呈しながら手持ちのタブレットで地図を広げ、最短距離でブラックマーケットから離れるルートを検索した。

 

「DU地区だ、そこが一番安全に身を隠せる。 検問所を通りさえすれば完全に振り切れるはずだ」

 

「検問? 何故そんなものが?」

 

「Vのせいだ。 あの変装名人がトリニティで暴れ回ったせいでどこの自治区も警戒を強くしている」

 

「・・・・・・ですけどそれなら我々も足止めを喰らって追いつかれちゃうのでは?」

 

「安心しろ、私はマーケットガード部隊の隊長だ。 こういう時のために偽装用の身分証を持っている。 コレを見せれば高速ETCの様に通れる」

 

隊長が取り出したバーコードの付いた身分証を確認しながらハンドルを右に切る。 距離は少しづつ縮められているが、所詮事務職のセミナーだ。 大した運転技術など持ってるわけが・・・・・・

 

「部長ヤバいです!! セミナーの算術使いが凄い勢いで追ってきてます!! なんだアレさっきまでとはまるで違う!!?」

 

「え?」

 

ミラーを使い後方を確認する。 そこには

 

 

 

空中で二回転しながら建物の壁面に着地して猛追してくるセミナーの姿があった。

 

 

 

「ほわあい!!?」

 

壁を走行しながらも落ちていくが前輪を持ち上げる事で地面と並行にし着地、スピードを一切緩めず100キロオーバーのまま90度の曲がり角を曲がり切りやがったのだ。 なおその間にいた不良グループはなんの躊躇もなく跳ね飛ばされた。

 

「なんだソレは!!? 本当に事務職の生徒の動きかアレは!!?」

 

「いやいやいやいや事務職じゃなくてもできるわけないでしょ遂に本性を表しましたね冷酷な算術使い!?」

 

騒ぎながらもアクセルを吹かすが距離は無慈悲にも縮まっていく。 そして一つの可能性がミライの脳裏をよぎった。

 

「ちょっと待ってください、本当にユウカでしょうか? 実はVが化けてるのでは?」

 

ユウカがいない状態のVならワンチャン交渉でどうにかならないかと窓から顔を出したその瞬間・・・・・・

 

ズダダダダダダダ!!

 

サブマシンガンの斉射が襲いかかってきた。 幸いにも直ぐに頭を引っ込めたお陰で被弾せずに済んだが、後ろ側に乗っていた助手が悲鳴を上げた。

 

「わあああああああ!!? やっぱりユウカですよ!? だってあの銃黒いやつでしたもん!!」

 

「泣いてないで早く迎撃して助手!!?」

 

「そんなこと言われても弾だってないし砂漠で見つけた意味深なケースも投げちゃダメだし何も投げれないし有りませ・・・・・・ん・・・・・・・・・・・・よぉ・・・・・・・・・・・・oh・・・・・・」

 

何かが着地した様な音と共に助手からの声が途絶えた。 恐る恐るミラーで後方を確認すると、ドライバーのいないバイクが慣性に従ったままポツンと走っている姿が確認できた。

 

「ま、待ってください!!? お願いします!! 私は部長の指示通り動いただけで何処と取引してるかなんて知らなかったんです本当なんですだからどうか平にご容赦仕りませんか? ダメですか? ダメですねごめんなさい靴でもなんでも舐めるので許しっ」

 

どっかばっきごっつんぼっこぼっこぺちことんビリビリビリビリィィィ!!!!

 

「おんぎゃああああああああああああああああああああ・・・・・・」

 

冷酷な算術使いの面目躍如、殴り蹴られ関節技を決められ何かを置かれ叩かれ電撃を流され、助手は生まれたての赤ん坊のような断末魔と共に青白い光となって消えた。

 

合唱、隊長とミライは心の中で冥福を念じた。

 

三段アイスクリーム(タンコブ)を頭に乗っけた黒焦げの助手は車両から投げ出され、『AL』とロゴの付いた資源用リサイクル箱に頭から突っ込んでいた。 命乞いは無意味である事を証明した彼女、助手は安らかに眠った。

助手を可能の限り無力化(ボコボコ)にした大魔王はトラックから飛び降り、空中でダッシュしながら単独走行するバイクに戻っていた。

 

「ちょっと待ってください今何しました空中で動き回りませんでしたか!? いくらメチャクチャでも物理法則には従ってくださいよーー!!」

 

ミライの泣き言が車内を満たすが事態は進行しており、バイクはアクセル全開で猛追してきている。 マーケットガードの隊長が窓から顔を出して拳銃で応戦するも全て避けられ、逆にサブマシンガンの応酬を受けてしまう。

 

「ぐっ! 奴めカーチェイスに慣れすぎだ?!!」

 

隊長が撃とうと身を乗り出した途端に運転席側へとハンドルを傾けトラックの車体その物を遮蔽物として使い、相手が戸惑っている間に制圧射撃を貰われ距離を詰められてしまう。

 

どんどんと近づいてくる地獄の体現者に対し、遂にミライの精神は根を上げてしまう。

 

「あわわわわ・・・・・・つ、次は私の番ですかぁーー!??」

 

「おい!? 嫌な未来を想像してテンパるな!? 次の突き当たりを右だ! そうすればDU地区の検問までもうすぐだ!!」

 

涙目の運転手はアドバイザーの指示に従い右に曲がろうと視線を向けるとそこからーー

 

 

 

ーー曲がろうとしたその先から悪鬼羅刹が如く怒涛の面持ちのユウカが飛び出してきたのだ。

 

 

 

「うわあああああああああ!!! ユウカが増えたああああー!!??」

 

「構わんそのまま跳ね飛ばせ!!」

 

異常事態にも拘わらず咄嗟に指示を出せたのは、彼が無法地帯で活動を続けていたからだろう。 だがその指示が届いているのかいないのか、混乱を極まりながらもアクセルから足を離さずユウカを轢きに行った、轢きに行こうとしてしまった。

 

「悲しみも怒りも、因数分解してみせるわ!!」

 

手慣れた様に計算機を操作すると、ユウカを半透明な水色の壁が覆った。 エネルギーシールドだ。

 

「シールドでこのトラックを無理矢理止めるつもりか!!」

 

目を回しながら車両を操作するミライのハンドルを無理やり奪い、衝突を避けるためにマーケットガードの隊長は逆側に回す。

 

車体はなんとか向きを変えることに成功したが、それでもユウカの張ったシールドとぶつかり火花を散らしてしまう。

 

「!?・・・・・・っと!」

 

「ぐっうううぅ!!」

 

凄まじい衝撃が車内を襲うが、余りの衝撃からかユウカが数歩下がったおかげで正面衝突は回避できた。 スピードはかなり落としてしまった上に急なハンドル操作で逆方向へと進んでしまったが、トラックが完全停止するという最悪の事態は避けることには成功した。

 

「も、もうやだ、もういや!! 冷酷すぎですあのセミナー!!! 増えるってなんですか空を走るってなんですかバイクでアクロバットってなんなんですかもーーーー!!!!!???」

 

遂に限界を迎えたミライは泣きながら叫び散らし逃げ回る。 だが大きく道を逸れ、本来通るべきDUの検問所とは見当違いの方向へと進んでしまった。

 

「おい!? そっちは違う戻れ!!」

 

「いやです!! あっち冷酷なセミナーいるじゃないですか!!」

 

どうにか戻そうとハンドルに手を伸ばそうとするがギュンギュンと回しまくるミライの操作に弾かれてしまう。 このまま揉めても事態が好転することはない。

 

「こうなったら、もう一つの方だ。 より近い検問所がある」

 

「はぁ!? なら先に向かうべきだったじゃないですか!!? このスカポンタン!!」

 

「こっちの方は問題があるのだ!! DUなら偽装した身分証でどうとでもなるがあっちは・・・・・・っ、来たぞ!!」

 

もう一人にサムズアップを立てながら障害物を使い飛び上がる。 前輪は持ち上げ、後輪のみで着地、スピードはそのままで曲がり切り体勢を凄まじいハンドル捌きで整える。

 

ユウカの猛追とスピードは更に激しさを増していた。

 

片手で放たれるサブマシンガンの弾丸はミラーを砕き、迎撃する隊長の肩を撃ち抜きアサルトライフルが路上へと落ちてしまう。

 

「ぐあ!!?」

 

いったいどうする!? どうすればいい!!? このままでは追いつかれてしまえば取引の内容と履歴が暴かれてしまう。 そうなれば私は切り捨てられ、隊長の座を追われてしまう!!

 

「考えろ・・・・・・考えるんだ・・・・・・この状況を打開する術はなにか・・・・・・!」

 

藁にもすがるかのようにさわしなく動くモノアイ。 そしてある一点を捉えた。

 

目線の先に浮かぶ存在、隣でハンドルを握るミレニアム生だ。 彼が取引していた相手であり、敵が追っている相手で・・・・・・

 

「・・・・・・そうだ、そうじゃないか」

 

追っている連中はなんと言っていた?

 

 

 

『・・・・・・で、それがなんです? コレをSNSやモモトークで広めた方が効果的だったでしょうに、それをこんな原始的な方法で広められても痛手にはなりませんよ』

 

『それにこの周辺は既に我々マーケットガードが完全に封鎖している。 聞かれて困る奴などいない』

 

『それはどうかしら? 実は私以外にもブラックマーケットを彷徨うミレニアム生を探している奴がいたのよ』

 

 

 

『私以外にもミレニアムの生徒を探している奴がいる』

 

「アイツらの目的はミレニアム生なのだ。 決して私ではない」

 

なら話は簡単だ。

 

非情なことだがコレがブラックマーケットであり、治外法権の領域に足を踏み入れた自身を呪え。

 

「は!? ちょ、何をっ!?」

 

ミラーが砕けた事で後方が確認出来なくなったミライ、彼女はドアを開けて追手を目視していた。 そこへ魔の手が伸びた。

 

その背中を突き飛ばしたのだ。

 

 

 

 

 

「!!」

 

考えるよりも判断が早かった。

 

アクセルを全開で回し無理な加速をかける。 元々はジャンクヤードで売られていたバイク、それが軋みを上げマフラーからボフンと黒い煙を吐き出した。

 

「スタントジョッキー!!」

 

今までの無茶の積み重ねと今行った急加速が決め手となって壊れ始めたバイクを乗り捨て、加速の勢いをそのままにスライディング、更にサンデヴィスタンも追加し更にスピードを重ねる。

 

ミライがアスファルトに叩きつけられるよりも先に、Vの手が届いた。

 

「よっと!」

 

スライディングの摩擦熱を足裏に感じながら、痛みが来るのを目を瞑り続けているミライの頭にデコピンを入れる。

 

「痛っ・・・・・・って、アレ? 突き飛ばされた筈じゃ・・・・・・??」

 

「よおチーカ、危うく地面にファーストキスを奪われるとこだったな」

 

「でぇえ!? セミナー!!?」

 

状況をいまいち飲み込めていないのか、暴れて逃げようとするミライにフェイスプレートの擬態を解く事でネタバラシ。 青い髪が白髪と金髪を混ぜたようなプラチナブロンドに変わり、瞳も夕暮れを想起させるオレンジ色へと変貌していく。

 

「まだ気づいてないのか・・・・・・俺だよ」

 

「・・・・・・V!? セミナーにも化けれるのですか貴方!?」

 

「生体データさえスキャンできれば誰にでも化けれる。 なんだったらこんな風に・・・・・・とミライちゃんに化けたいところだけどクールダウンが終わらないな」

 

お姫様抱っこから解放してやり、今度は米でも担ぐかの様に肩で持ち上げる。 腹が圧迫されたのか、グエ!?と悲鳴が聞こえてきたがVは無視した。

そのまま桜マークのシールが貼られた折り畳みケータイを開き、通話を繋げた。

 

「ユウカちゃん? ミレニアム生全員確保。 パソコンや情報媒体は何も持ってない・・・・・・そうそう、全部トラックの中だろうな」

 

「ふ、ふふ・・・・・・残念でしたねセミナー、取引の目録やデータは全てあのパソコンの中・・・・・・貴方たちが欲していた物はトラックの中です」

 

「あっそ」

 

「あっそ!? え、アレ?? 取引データが目的じゃないのですか!??」

 

「あー、なんつーのかな・・・・・・確かに目的ではあったけど、別に俺やユウカちゃんが欲しかったわけじゃないからな」

 

「・・・・・・・・・・・・・・・・・・んーー???」

 

疑問符だらけのミライ、敵の目的が全く把握できずただただ混乱する事しかできないでいた。

 

「・・・・・・えっと、私たち擬似科学部の邪魔をする為に悪きセミナーが動き出したのでは?」

 

「いや、そもそもユウカちゃんお前らの事覚えてなかっただろ。 多分セミナーの誰もお前らの事知らないんじゃないか?」

 

「グハァ!!?」

 

悲しすぎる真実に甚大なダメージを受ける米俵ミライ。 誰にも覚えられない残酷さを目の当たりにしていると、背後から影が伸びていた。

 

「・・・・・・」

 

誰だ? ユウカは先ずありえない。 セミナーの会計という事務仕事を専門にしている彼女がこの短時間でバイクが走破した距離を縮められるとはとても思えない。

 

可能性があるとすれば・・・・・・トリニティに情報をリークした存在。 今回の騒動の影に隠れていた奴。

 

「黒幕、もしくはその下っ端か?」

 

何にしても重要な手掛かりのはずだ。 絶対に逃さない。

 

カチャカチャと静音モードで悟られないように戦闘体制を整えるゴリラアーム、サンデヴィスタンを量子チューナーで強制的にクールダウンさせ意識だけ身構える。 あえて隙だらけの背中を見せて迂闊な攻撃を誘う。 そこを一気に刈り取りゲームセットだ。

 

 

 

「後輩?」

 

 

 

だがしかし、背中には攻撃ではなく言葉が投げかけられた。 それも知った声だった。

 

振り返ると後ろに立っているのは見知った顔だった。 和服と制服を合体させたような服に『AL』と記された缶バッチを上着の裾に取り付けた生徒、Vの先輩である孤坂ワカモが佇んでいた。

 

「・・・・・・あ? 先輩だと?」

 

さて、状況が一転した。 ここにいるべき存在は黒幕かその手先だ。 そしてソレが先輩だった。 つまり俺と先輩は敵対関係という事か。

 

徐々に鋭くなっていく目つき、静音モードでゆっくりと起動していたゴリラアームを一気に展開し戦闘モードへと移行していく。

 

「ふふふ、コレは行幸ですねぇ。 仕事が簡単に終わりそうで・・・・・・待ちなさい後輩、どうして戦闘態勢を取るのですか!? こ、コラ! 話を最後まで聞きなさい!」

 

最初の優雅な余裕は何処へやら。 両手で静止を促すジェスチャーを送るワカモの姿に警戒しつつも構えを解く。 構えを解くだけでゴリラアームは展開したまま、顎で催促する。

 

「まさか後輩と遭遇するとは・・・・・・私の受けた仕事はとある生徒の回収です」

 

視線の先にはVの抱える生徒、疑似科学部部長吾妻ミライがいた。 やはり黒幕からの刺客だったかと嫌な予想通りだったことに内心舌を打つ、だが同時に妙な違和感も覚えた。

 

「レスキュー依頼? 破壊の権化、エブリデイテロリズムのような生徒に? 依頼した奴も大概だが・・・・・・よく引き受ける気になったな先輩?」

 

「私だってこんな面倒、積極的に引き受ける気なんてありません。 ですが少々借りが有りまして、無碍にする訳にも行きませんでした」

 

「先輩に借りを作らせた?」

 

誰だ? ワカモ先輩を顎で使えるほどの借りを作れる人物は・・・・・・

 

オーナー? いやありえない。 そもそも俺を動かしたのはオーナーだ。 あの人が同士討ちさせるようなバッティングは起こさないはずだ。

 

スケバン共? いや実力不足だ、ますますありえない。 借りがあったとしても、先輩なら吹き飛ばして無かった事にしてしまうだろう。

 

指をこめかみに当てて更に深く思案する。

 

本当に誰だ? 少なくとも俺が会った事のある人物ではないだろう。 そしてワカモ先輩が脱獄してから借りを作るような相手はいただろうか・・・・・・・・・・・・

 

・・・・・・いや違う、考え方変えろ。

 

そもそもワカモ先輩はどうやって矯正局を脱獄した? いくら先輩でも矯正局を、連邦生徒会長不在の混乱に乗じたとはいえ警備の厚い刑務所を準備も無しに脱出できるわけがない。

 

つまり・・・・・・

 

「ワカモ先輩の脱獄に協力した存在、いやというよりも・・・・・・『孤坂ワカモの脱獄』を企てた存在?」

 

Vがそう言い切るとワカモは片手で目を覆い、空を見上げていた。

 

「・・・・・・なんだリアクションは」

 

「いえ、その・・・・・・何で普段はバカなのにこういう時に限って妙に鋭いのでしょうかコイツと、感心すればいいのか呆れればいいのか・・・・・・」

 

「生まれも育ちもナイトシティのストリートキッドだからな。 悪意や思惑にある程度敏感じゃなきゃやってられん。 あと誰がバカだ」

 

意を決したようにVに向き直ると、絶対に関わり合いにならないようにと一言入れてから言葉を紡いだ。

 

「今回の事件、裏で糸を引いていたのはニヤニヤ教授と呼ばれる謀略家です」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「やった、やったぞ!! 逃げ切れる!! やはり奴らの目的はミレニアムだった!! 私は正解したんだ!!」

 

一台のトラックがブラックマーケットの通りを慌てて走っていた。 もう追う者すらいなくなったと言うのに逃げ惑う姿は、もはや哀れでしかなかった。

 

検問所が見え、追手のいない事を確認して減速した。 検問所が自分を出迎えるアーチのようにも、ゴールテープの張られたトロフィーのようにも見えた彼は無いはずの頬が緩むような気がした。

 

「DU地区では無いが、それでもこの身分証は使える。 多少時間は取られると思うがその程度何の問題はない」

 

あとはほとぼりが覚めたタイミングでブラックマーケットに戻り、いつも通りガキ共を利用し騙し打ちのめせばいい。 あのアフターライフとかいう新勢力が楯突いて来るが、それも時間の問題だ。

 

「ブラックマーケットを支配するのは我々マーケットガードだ。 支配権を自ら捨てた愚かな老害共ではない!」

 

「何が『私達は選択を間違えた』だ! 犠牲の上に立つ覚悟がないだけだろう!! 生徒なんて所詮コマだ!! 如何うまく利用するかだ!! どうせ不良なんてゴミだろう、いなくなっても誰も困らない!! 寧ろ我々がリサイクルしてやってるのだ感謝すらして欲しいほどだ!!」

 

拠点に襲撃をかけて来るアフターライフの生徒共もマーケットガードの一員に加えてタダ働き同然のように使い捨ててやる、と頭の中で権謀術数を巡らせていた・・・・・・その時だ。

 

視界の端で、何かがキラリと光った。

 

なんだ? その言葉は出なかった。

 

口から音が出るより先に、凄まじい衝撃がトラックを襲いかかったからだ。

 

揺れる視界、エアバックで白く覆われる。 激しく揺さぶられた頭が状況を把握しようと脳を動かしたその時・・・・・・こめかみに冷たく、無機質な感触が走った。

 

「はーい動かないでくださいね」

 

「!? き、貴様その制服は・・・・・・!」

 

銃を突きつけている存在、黒い制服に身を包み、何処か気だるげだが不誠実さは微塵も感じられない少女がいた。

 

「正義実現委員会、仲正イチカっす。 ちょっと詳しいお話を伺わせていただきます」

 

なぜ?

 

なぜ正義実現委員会がここにいる?

 

ここはまだブラックマーケットの中で、検問所には辿り着いていない。

 

「いや、それはブラックマーケットの住人がそう認識してるだけで本来はここもトリニティ自治区だからっすよ」

 

「なんだと・・・・・・!」

 

「ほら、聞いた事ないっすか? 昔トリニティとアビドス、そしてまだ小さかったブラックマーケットの間で起きた大事件。 その影響でブラックマーケットは学園自治区並に大きくなったんすけど、別にトリニティは所有権を放棄したわけじゃなかったんすよ」

 

イチカが片手を挙げると、物陰から黒い制服の生徒がゾロゾロと湧いて来た。

 

「だからウチらがここにいても何の問題もない、というわけっす」

 

正義実現委員会が完全にトラックを取り囲むと、数名が荷台の扉に突撃用の爆弾を張り付けて突撃準備を整えていく。

 

「貴様、こんな事してタダで済むとっ!!」

 

脅しは最後まで言えなかった。 イチカが放った銃声が無理やり黙らせたのだ。 普段は安心感のある閉じられた双眼が僅かに覗かせ、平坦な口調のまま逆に脅しをかけた。

 

「あのっすね、今トリニティがどんな状況かわかってるっすか? あのテロリスト共のせいで上も下もめちゃくちゃっすよ。 休みだった子達も駆り出されて検問引いて、Vと聞いたら飛び出して度々ブラックマーケットに突撃しようとする転入生、行方を再び眩ませた救護騎士団の団長、セイアさんの安否の再確認、ツルギ委員長の敗北、こんな状況でもエデン条約に固執するティーパーティー、何処ぞの子たちも危険だと通達してるのにチョコミントの仇だ何だとVを探し回ってるしで・・・・・・超忙しいんすよ」

 

「それなのに・・・・・・ミレニアムの情報リークで更に燃料投下、ははは笑えるっすねー」

 

「な、なにを・・・・・・貴様は何を言って・・・・・・っ!!?」

 

ここで完全に悟った。 知らない情報の数々、自分の知らぬ間に進んでいた事態、マーケットガード隊長は自身が見下ろしてコントロールする側でなく、見下ろされて操られる側だと理解した。

 

「イチカ先輩! 見つけました!!」

 

助手席を漁っていたグループがノートパソコンを2機確保した事を確認すると、支給品の通信機に手を伸ばした。

 

「あーハスミ先輩っすか? はい、目標物はたった今確保して届けさせてます。 ソレで運転していた人はどうしましょ・・・・・・は・・・・・・?」

 

イチカの言葉は最後まで告げられなかった、ソレを目にしてしまったから。

 

小さな爆音と同時に荷台を制圧した正義実現委員会の生徒がパタパタと非常に慌てた様子でソレを持って来たからだ。

 

手に持ったソレはキラリと太陽の光を銀色に反射し、自己主張の激しい紅色の持ち手、そして何より軽装甲を容易くぶち抜けるであろう拳銃とは思えないサイズの口径。 不良達の間で横行している、ただ銀色に塗った偽物では決してない。

 

脳裏によぎるのは諸悪の根源。 トリニティ自治区を滅茶苦茶にした張本人。 キヴォトスには似合わない紅の刀でトリニティのエース達を鎧袖一触にしたテロリスト。

 

銀色の拳銃の持ち主、『銀銃』の二つ名で呼ばれているテロリストVの拳銃、マロリアン・アームズだった。

 

「・・・・・・・・・・・・ちょっと、検問所の取調室までいいっすか? テロリストの関係者さん」

 

「ま、待て!? 私はそんな物知らん!! 本当だ信じてくれ!! 私はVとは何の関係もーー」

 

パチン、とイチカが指を鳴らすとマーケットガード隊長の隣の席が吹き飛んだ。 跡形もなく、シートの内側にあったであろう綿を撒き散らして。

 

「いやー実はウチも今対物弾を放った子もVには煮湯を飲まされたことがあって・・・・・・申し訳ないっすけど、拒否権はないっすよ」

 

有無を言わせぬ気迫で詰め寄るイチカに首を振ることしかできないマーケットガード隊長、そんな二人のやり取りをただ見ることしかできなかった突撃部隊の生徒の手からマロリアンアームズは忽然と消えていたのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

神秘ポイント −1

 

 

 

「というわけで私は此処に来たのです・・・・・・って後輩、そんな難しい顔をしてどうしたのですか?」

 

「あーいや、一度呼び出した銃なら神秘を使わないで済むかと思ったが・・・・・・そんな甘くはないみたいでな」

 

「・・・・・・とにかく、今回の件は教授からの挨拶みたいな物でしょう。 私を使って貴方への、ね」

 

ワカモ先輩の事情を把握した俺は呼び戻したマロリアンアームズを腰に戻してゴリラアームの戦闘モードを解いた。 どうにもニヤニヤとかいう奴は一癖も二癖もある悪党のようだ。 しかも俺が苦手な頭を使うタイプのだ。

 

「とりあえずワカモ先輩の言いたい事はわかった。 ニヤニヤって奴には極力関わらないようにする。 それで? 俺の提案には乗ってくれるのか?」

 

「ええ、この場で貴方とドンパチしても勝てる光景が見えませんから」

 

降参と言わんばかりに両手を肩まで上げてヒラヒラと掌を振るワカモ先輩にミライを投げ渡す。 だが先輩は受け取らず横に避け、ミライは地面と激突する羽目に会った。

 

「ふぎゃ!?」

 

「あら申し訳ございませんつい」

 

全く申し訳なさを感じない平熱的な事を口にしながら、何処からともなく取り出したロープでぐるぐる巻きにしていく。

 

「あの、話はイマイチのみこめませんが私は今『大切な荷物』何ですよね!? なんか扱い雑じゃありませんか!?」

 

「災厄の狐が物を丁重に扱うと思うか? 見境なしのデストロイヤーだぞこの先輩」

 

「あら? 貴方もそのデストロイヤーとやらでは?」

 

「俺は仕事やケジメで破壊することがあるだけだ。 先輩みたいに趣味じゃない」

 

そう、発電所をぶっ壊したのも俺が生きる為の手がかりが欲しかったからだし、ヴードゥーボーイズの拠点を叩き潰したのもそもそもアイツらが俺を裏切ったからだ。 そう、決して趣味じゃない。

 

被告人V、お前ケリーと一緒になってクルージング船に火をつけて片っ端から壊しまくっただろ。 つーかケリーよりノリノリだったじゃねぇかよ。 よって有罪、ナイトシティに戻ってきて光輪つけたサイバーサイコ共と刑務作業しろお人好し。

 

なんか汚い妖精が見えた気がするが、きっと気のせいだ無視しよう。 というかマス掻きながら裁判長ぶってんじゃねぇぞアイツ。

 

「・・・・・・本当に気のせいなのか? なんか聞き捨てならない事言ってたような気がするが・・・・・・」

 

ナイトシティにいた時より伸びた、肩にかからない程度に伸びた髪を捲って首を摩るが当然そこには何も入ってはいない。 やはり気のせいだろう。

 

俺が幻聴と決めつけると、荒い息遣いが聞こえてきた。 コレで役者は勢揃いだ。

 

「ぜぇ、ぜぇ・・・・・・ようやく・・・・・・・・・追いついた、わよ・・・・・・」

 

荒い息遣いの正体は俺の予測通りユウカちゃんだった。 胸元のボタンを一つ外して電柱に手をつけながら呼吸を整える姿は妙な色っぽさを感じてしまう。

 

「あー、お疲れさん。 飲み物はいるか?」

 

「・・・・・・い、いらない・・・・・・ぜぇ・・・・・・はぁ・・・・・・というか、どういう状況なの・・・・・・?」

 

震える指でワカモ先輩とぐるぐる巻きになりながらも必死に逃げようとグネグネ暴れるミライを示した。

 

「ん゛ーーーー!!! ん゛ーーーーーー!!?」

 

「うるさい」

 

荷物少女の必死の抵抗に対し、ピシャリと言い放ちボディブローを叩き込んで黙らせた。 それ一応ワカモ先輩の荷物だよな? 目覚まし時計より雑に止めるなよ。

 

「説明するより先に、ワカモ先輩との取引を済ませよう。 俺は先輩の求める『ミライの身柄』を提供する・・・・・・その対価として」

 

ミライの身柄と聞いて食ってかかろうとするが、咳き込んでしまい何も言えなくなったユウカを尻目に俺は先輩に指で寄越せとジェスチャーする。

 

「私は貴方にコレを」

 

懐から取り出した一枚の紙を俺へと手渡した。 内容を確認した俺はそのまま流れるようにユウカちゃんに渡した。

 

「んで、ほいコレ」

 

「いったい何をして・・・・・・って!!?」

 

渡された紙の内容を見た瞬間、奪い取るように受け取った。 彼女は目を左から右に何度も動かして精査していき、疑いの眼差しを此方へと向けた。

 

「・・・・・・何が目的なの?」

 

「おいおいワカモ先輩疑われてるぞ。 日頃の行いが悪かったんじゃないか?」

 

「あらあらうふふ、何処かのポンコツサイボーグがトリニティを壊滅一歩手前まで追い込んだからでは?」

 

「どっちもよォ!!」

 

ユウカへと渡った紙、それはワカモ先輩が盗品のハッキングツールを購入した事を記したもの、買取証明書だった。

 

正しくユウカが欲していた物、トリニティの事件にミレニアムが関係していない事を証明する代物だった。

 

「取引相手はブラックマーケットで活動するトレーダー、出品者はマーケットガード・・・・・・盗品のハッキングツール」

 

盗品、コレが一番重要だ。 ミレニアムから不正に持ち出された代物、つまりミレニアムも被害者だった事にできる。

では盗まれたミレニアムの管理能力が低かったからこの事件が起きたのか?

 

それもまた違う。 此処でさらに絡んでくるのが『連邦生徒会長の失踪』だ。

 

この大事件で多くの学区、キヴォトスそのものが重大な機能不全を引き起こしていた。 当然その被害は最大規模の学区を持つトリニティだって、最先端技術を持つミレニアムだって受けた。 そんな最中、盗品一つに目を向けろなどと無茶が過ぎる話だ。 しかもその盗品がトリニティで大事件を引き起こすなど予想できるはずもない。

 

「トリニティが原因追及すれば連邦生徒会も巻き込んでしまう。 それで軋轢なんて生まれてしまえばエデン条約どころじゃなくなってしまう」

 

エデン条約は連邦生徒会が中立として立ち会うからこそ成り立つものだ。 軋轢だけは何としても避けたい事態のはずだ。

 

「・・・・・・つまりコレさえ証拠として突き出してしまえば、飲み込むしかなくなる」

 

「どんな感情を抱こうとも、な」

 

息を整えたユウカの肩に手を置き、いい笑顔を浮かべる。

 

「さてユウカちゃん! 俺はコレを君に渡した訳だが・・・・・・当然君も俺に対して何かしらの対価を渡す必要があるよなぁ!」

 

俺の浮かべたイヤーな笑顔に頬を引き攣らせたユウカが一歩後ろへたじろぐ。 ワカモ先輩は俺に対して胡散臭そうな目を向けていた。

 

「まーた後輩が何か変なことしてますね」

 

先輩シャラップ

 

目だけでそう訴えると荷物を抱えた先輩は手をヒラヒラ振りながら退散を始めた。 これ以上関わる気はないらしい。

 

「うぐ・・・・・・で、でも今の私はセミナーとしての肩書きはないわ! あくまで此処にいるのはただのミレニアムの生徒、早瀬ユウカよ!」

 

「いやいや、そんなセミナー様の手を煩わせるような大したお願いはしないさぁー! ほんのちょーーっとだけ手助けしてくれればいいからさぁー!!」

 

どうにかこうにか対価を安く済ませようと画策するユウカに、手をワキワキさせながら更に迫る。

 

よしよし、この調子なら先輩が持って行った荷物について言及させられなさそうだ。 正直ミライの身柄で一悶着起きそうな気がしていたから大助かりだ。

 

「ふっふっふー、アレがいいかなぁーー!! それともコレかなぁーー!! あーんなことやこーんな事でもいいなぁーー!!」

 

「さっさと言いなさい!! こうなったらなんでもやってやろうじゃない!!」

 

よし、言質取った。

 

ヤケクソ気味に叫ぶユウカに指を突きつけ、いや正確に言えばその背後へと指した。

 

「一緒に修理しようぜ♪」

 

横転したバイクへと。




次回で『回収』は終わります。 ようやく次のサイドジョブが書けそうです。

貴方だったら、どっちのルート? 対策委員会編

  • アロナの依頼ルート
  • ヘルメット団依頼ルート
  • どちらも選ばない、便利屋ルート
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