サイバーパンクと青春記録   作:水面どり

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今回いつもの倍ぐらいあります。 切時がわからなかったんじゃぁ・・・・・・


63話 サイドジョブ 『いつか、きっと/BABY』 4

テーブルに着いた俺が呼び出しベルを鳴らすと、ロボット従業員が注文票を片手に駆けてきた。

 

「は、はい!! ご、ごちゅ、ご注文は、おお、おおお決まりでしょうかっ!!!」

 

さっきの騒動で店側にはかなりの負担をかけてしまったらしい。 その証拠に、ロボット従業員が機械らしくカクカクに動いてしまっている。 別に店を破壊するつもりなんて微塵もないのだが。

 

「パフェは食ったから・・・・・・クッキーセットで、飲み物は無糖コーヒー。 スズミちゃんはどうする?」

 

「・・・・・・では紅茶で、アールグレイを」

 

メモをしながら顔色を伺う様に返事する姿に怯え過ぎだろと思いながら、逃げるように立ち去った従業員に手をヒラヒラと振った。 

 

「それで、何が聞きたいんだ?」

 

そう尋ねながら、俺はキロシを動かして周りの状況を確認する。 レイサちゃん相手に早撃ちを披露してから少し時間が経ち、人が集まってきている。

 

スズミちゃんは顎に手を当てて何を聞くか思案してるようだ。 その間に周りの状況を確認しよう。

 

・・・・・・・・・・・・ゲヘナが3人、ミレニアムが2人、探りに来てるな。

 

ゲヘナは2人組が近くのテーブルに態と座り注意を引いて、もう1人が遠目から情報収集・・・・・・かなり手慣れてるな。 噂に聞くゲヘナの情報部か。

現在、俺もアフターライフもゲヘナからは積極的なアプローチは受けていない。 エデン条約が近い事もあるのだろう、無闇に蜂の巣を突くつもりがないのだろうが・・・・・・混沌と自由を謳う割には消極的が過ぎると思う。

 

「警戒しても仕方ない事だろうけど」

 

そしてミレニアムは・・・・・・水色のブレザーを着た褐色肌の生徒が、こちらに突撃するアッシュグレーの髪をした生徒を必死に押さえつけていた。 やる気あるのかアイツら。

 

・・・・・・フードのミレニアム生徒は来てないらしい

 

あのユウカちゃんとの事件以降、ブラックマーケットでの目撃情報が増えている生徒だ。 俺がこうしてブラックマーケットの外に出れば尾行してくるかもと思っていたのだが・・・・・・

 

俺の調査が目的なら着いてきてるはず・・・・・・急な方向転換か?

 

合理性の化身と聞く調月リオの事だ。 これ以上裏から俺を探っても芳しい成果は上げられないと踏んで、ターゲットを変えたのかも知れない。

 

「姿を変えて、光学迷彩で消えて、常時立体起動するサイボーグを追い続けろは無理か」

 

もしかしたらワカモ先輩やアフターライフの不良連中を尾行してる可能性も出てきた。 前者は自分でどうにかできるだろうが、後者は不安である。

 

と、そこでスズミちゃんが顔を上げて見つめてきていた。 どうやら方針は決まったらしい。

 

「では、トリニティ生徒なら絶対に聞かなくてはならない事から」

 

真剣な面持ち、スズミちゃんから改めて向けられる瞳は嘘は許さないと言わんばかりに俺を射抜いていた。

その唯ならぬ自身の先輩の姿を見て、レイサは固唾を飲んだ。

 

「トリニティ生徒なら・・・・・・か・・・・・・」

 

つまりヒフミちゃんから聞かれた事だろう・・・・・・

 

 

 

「ペロロ様についてだな!」

「セイアさんについてです!」

 

 

 

被ってしまった声は、全く違う言葉を放っていた。

 

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・痛々しい沈黙が辺りを包む。

 

ゲヘナはポカンと呆然として、褐色肌のミレニアムガールはズルりとテーブルの上で肘を滑らせ頭をぶつけた。

 

「「え??」」

 

「あ、ごめーんなんでもない。 さ、続けて続けて」

 

俺は顔が僅かに熱を帯びるのを感じながら話を誤魔化した。 あと、そこで笑い続けているアッシュグレー、いつか敵対したら覚えてろよ。

 

ゴホンと咳払いして精神の荒波を無理やり沈めた。

 

・・・・・・確かにそうである。 トリニティ生徒が俺に第一に聞きたい事と言えばセイアとどう関わってるかだろう。 何故ヒフミちゃんはこの事を追求せずにいきなりペロロ勧誘をしにきたんだ。

 

あとその困惑した顔を向けないでくれレイサちゃん。 コイツマジかみたいな目もやめてくれスズミちゃん。 畜生、恨むぞヒフミちゃん。

 

「今の今まで行方を眩ませていたミネさんが、突如姿を現してまで貴方を問い詰めに来ました。 無関係とは思えません」

 

「ふ・・・・・・さて、どうだろうな?」

 

『ごめん本当に何も知らない』とは言わない。 もったいぶる事で交換条件を引き出させよう。 決して、どう言えば無実だと証明できるのか判らず適当に誤魔化した訳ではない。 違うったら違う。

 

「対価ですね」

 

スズミは再びバックを開け、中身をゴソゴソと探り始めた。

 

「よくわかってるじゃないか・・・・・・待て、そのバックから何を取り出そうとしてんだ。 もういらないからな! スタングレネードを取り出そうとするな!!」

 

バックから白い筒が顔を覗かせたので慌てて止めた。 何本入れてんだこの閃光弾女。 そして残念そうな顔しながら片付けないでくれ、俺が意地悪したみたいになるじゃないか。

 

「お前そのうち鼻にスタングレネードを埋め込めたりしないだろうな? オゾブみたいな真似するなよ?」

 

「は、鼻にグレネード?? スズミさんがそんな危険な事する訳ありませんよ! ねぇスズミさ・・・・・・」

 

そこには、満更でもなさそうな面持ちで己の鼻に手を当てるスズミの姿があった。

 

「どうして鼻に触れて本気で考えてるんですか!!? え、嘘ですよね!? 嘘ですよね!!??」

 

「・・・・・・本人曰く、ナンパの成功率は上がったらしいぞ」

 

「つまり鼻に閃光弾を埋め込むと友達が増える・・・・・・!?」

 

やっぱりトリニティってヤバい奴らの温床なのではないか? 自分の鼻をどうしようが本人の自由なので止めはしないが、ボクシング大会には出ないでほしいと切に願うだけだ。

 

鼻に閃光弾・・・・・・ふふふ・・・・・・、と呟くスズミちゃんをどうにか元に戻そうと奮闘するレイサちゃんを尻目に、テーブルに届けられたクッキーに手を伸ばす。

 

 

 

 

 

「あ、あのー・・・・・・」

 

と、そこで救出した不良生徒がおずおずと、顔色を伺う様に手を挙げた。

 

「その、どうしてVさんはわざわざコイツらの交渉に乗ったので? とっとと逃げた方が面倒がないんじゃ・・・・・・」

 

「ん? そうだな・・・・・・俺もトリニティの状況を知りたかった、って事もあるし・・・・・・先に手を出したのは俺だ。 トリニティでの自警団の立ち位置が不明のまま放置するのも問題だったのさ」

 

「立ち位置?」

 

「ああ、もし自警団がティーパーティーのお墨付きだったらどうなる? 救護騎士団とシスターフッドも加えた正義実現委員会がブラックマーケットに雪崩混んで込んできてもおかしくない」

 

そうなったら、カイザーの息のかかったマーケットガードを相手取ってる状況のアフターライフは壊滅するだろう。 俺とワカモ先輩が生き残れたとしても、それでも苦しい状態になってしまうのは明白だ。

 

「だからこうして交渉のテーブルに着いて、チャラにしてもらおうとしてるのさ」

 

「・・・・・・やっぱり凄い人って色々考えてるもんなんですね」

 

「考えてねぇよ、危険に対して鼻が効くってだけさ。 だからそんなキラキラした目をこっち向けるなやりづらい」

 

 

 

 

 

クッキーを頬張りながら、不良生徒から向けられる憧憬の視線から逃げる様に目を逸らした。 するとテーブルからカチャリと物を置くような音が聞こえた。

 

「ん?」

 

アサルトライフル、純白の一丁がテーブルに置かれた音だった。 スズミちゃんは自身の愛銃をテーブルに乗せたのだ。 アイコニック武器を置きやがったのだ。

 

「・・・・・・ふ、ふぅ〜〜ん?」

 

落ち着け、落ち着くのだ俺。 ウズウズと動きそうになるゴリラアームを理性で押さえつけ、極めて冷静を装う。 交渉では欲を面に出した方が負けだ。

 

だから頼むからアサルトライフルに釘付けになるな俺のキロシ!

 

「どうしましょうレイサさん、この人結構チョロいですよ」

 

「あともう一押しですよスズミさん!」

 

ちょ、チョロくないし・・・・・・!! ただちょっとだけアイコニックに目がないだけだし・・・・・・!!!

 

ちょっと?と汚い妖精の声が聞こえてきたが頭を振るって掻き消し、冷静さを引き戻した。

 

そうだ、正気に戻れ俺。 よく見たらスズミちゃんの銃は良くある形のアサルトライフルじゃないか。 装飾は特にないし、文字が彫られてる訳でもない。

 

というか何処かで見覚えがある気がする。しかも割と最近である。

 

「べ、別に俺の所有物にできる訳じゃないだろ? だったら別にそんな・・・・・・」

 

「はい、交渉中触らせてあげるだけです」

 

「・・・・・・・・・・・・うん、そう、だよね・・・・・・うん、知ってたさ・・・・・・・・・・・・うん、はぁ・・・・・・・・・・・・」

 

「台詞と態度が全然噛み合ってない・・・・・・!? そんなに凹みますか!?」

 

どうしよう。 もう帰っていいかなこれ。 一気にやる気が失せてしまった。 セイアの件は気になるが、だからといって焦って解決するような問題でも無し。

 

そして銃をもらえないショックで思い出した。

 

このアサルトライフル、ユウカちゃんのサブマシンガンと似ているのだ。 ユウカちゃんのサブマシンガンはブラックマーケットでの一件で借り受け、その時に機構や構造は解析済みである。

 

スキャン済みな物を見せるだけなら、得が薄すぎるのだ。

 

「くっ、ユウカさんが『Vは武器に目がないから多分余裕よ』と教えていただいたのに、私の銃ではダメでしたか・・・・・・」

 

ユウカちゃんは俺の事をなんだと思っているんだ。 確かにコレクターではあるが、見境無しという訳ではない。 武器だったらなんでもいい訳ではないのだ。

 

「交渉決裂だな。 ほらとっとと帰って先生の手伝いでもしてきな、お嬢ちゃん」

 

俺のお嬢ちゃん発言を挑発と受け取ったのか、目を細めて鋭く睨め付けてくる。 ナイトシティ出身の俺からすれば、鼻で笑い飛ばせる程度の圧だった。

 

追い払うように手を振り、席を立とうと足に力を込め──

 

「あ、じゃあ追加です」

 

──カシャンとレイサちゃんが無造作に置かれたそれは、今まで見たことのない機構のダブルバレルショットガンであった。

 

すかさず反応値20が炸裂した。

 

「受け取りましたね」

 

腕が伸び、気づけばレイサちゃんのカラフルなショットガンが手元にあった。 

 

「あっ」

 

せめてあと意志が2高ければ我慢が利いたかもしれないが、もう後の祭りである。 という訳で開き直る以外の選択肢は残っていなかった。

 

「ふっ、やるじゃないか。 まさかこの俺にいっぱい食わせるだなんてな」

 

「貴方が勝手に自滅しただけですよね」

 

精一杯の強がりにスズミちゃんの冷たい指摘が突き刺さる。 その上、ゲヘナからの視線が痛い気がする。 ミレニアムはそれ以上笑うんじゃない、ゴリラアームで張り倒すぞ。

 

「いーやレイサちゃんの作戦勝ちだ。 へえ、ポンプアクションを二つ繋げたような水平二連式ショットガンだな。 重量は重くて扱いづらいと思ってたが、結構軽いな。 ポリマーとアルミのパーツか、軽い分耐久力に難ありか・・・・・・いや、ダブルバレルの仕組みそのものが負担を軽減してるな。 かなりいい銃だ、撃ってみてもいいか?」

 

「そ、その前にスズミさんの質問に答えてください! コレは交渉なんです! 手に取ったからには答えていただきますからね!!」

 

自分の愛銃が褒められて満更でもなさそうにしてたレイサちゃんは、慌てて本題へと話を戻した。 

 

「安心しろ、交渉や契約を踏み倒すような、そんな大人気ない真似はしない。 するつもりはないが・・・・・・」

 

ショットガンをキロシで細部までじっくりスキャンしながら、疑問への返答を口にした。

 

「だからといって、お前達が望むような答えは持ち合わせている訳じゃない。 俺は百合園セイアという生徒については何も知らない」

 

透かさず、レイサがテーブルを叩きつけながら身を乗り出し、さらに追求してきた。

 

「何も知らない訳ないでしょう! あの時、貴方がトリニティを襲撃した時、確かにミネさんが貴方の名前を挙げたのですよ!」

 

「とは言ってもなぁ、知らないものは知らないとしか言いようがない。 俺はそもそもキヴォトスに来たばっかりだし、なんだったら学生証すら持ってないぞ?」

 

「が、学生証を持ってない!?」

 

そんな俺とレイサのやり取りをスズミちゃんはスマホでメモを取りながら、ずっと静聴していた。

周りの連中もそうだ。 紙に書き込んだり、耳に指を当て無線で報告したりと様々だ。

 

「ああ持ってない。 つかそもそも、俺がD.U地区に向かっていたのだって、身分証目的だったからだしな」

 

ピタリ、とスズミちゃんの文字を打つ手が止まった。 そして俺の顔へと向き直った。

 

「待ってください『D.U地区に向かっていた』というのは、もしかしてシャーレ奪還の時の話ですか?」

 

「おう、そのつもりだったんだけど・・・・・・まあ色々あってワカモ先輩と出会って、そんで仕事を引き受けてお前達の敵になったって訳さ」

 

俺の説明を受けたスズミちゃんは額に手を当てて、空を見上げていた。 まるで惜しい物を見逃していたことに今更気付いたような動きだった。

 

「・・・・・・では、もしワカモと出会わずにサンクトゥムタワーに到着していたら?」

 

「そうなってたら、戦力に困っていた先生に自分を売り込んでたんじゃないか? 何せ当時は一文無しだ、仕事だったらなんでも欲しかったしな」

 

「・・・・・・やはり先生やユウカさんの言う通り、単純に悪党という訳ではなさそうですね」

 

「仕事を選んでないってだけさ、以前に比べたらぬるい仕事ばかりで飽きてきそうだけどな」

 

セイア関連についてはまともに受け答え出来なかったから、オマケでいろいろ喋ってしまった。 喋りすぎた気がする。

 

「さて、もう十分だろ? それとも試し撃ちしてもいいのか?」

 

皿に乗った最後のクッキーを口に運んで席から立ち上がる。 的は何にしようかと視線を動かして、遠くから傍聴していたゲヘナ生徒と目を合わせた。

 

「いつまでも覗けると思うなよチーカ」

 

キロシで何倍にもズームした先には、目と目が合った衝撃で椅子から転げ落ちる生徒が映されていた。

 

「それともそこの2人が相手してくれるかい、ミレニアムガール?」

 

そう尋ねると二人組はそそくさと逃げていった。 アッシュグレーの子、『じゃーねー』じゃない。 手を振るな、友達じゃないんだぞ。

 

ギャラリーが減ったのを確認して、鼻でため息を吐いてレイサちゃんの銃を投げて返した。

 

「ほらよ」

 

「うわっとと・・・・・・えっと、もういいのですか?」

 

「的もないのにどうすりゃいいんだ。 街中で乱射でもしろってか、サイバーサイコシスでもないってのに」

 

サイバー・・・・・・?? とクエスチョンマークを大量に浮かべてるレイサちゃんを無視して立ち上がる。

この調子だとトリニティの内情についてはヒフミちゃんと同じくらいの知識量だろう。 なら長居する必要はない。

 

フェイスプレート、クールダウン完了

 

キロシに表示された完了報告を受けて、行動インプリントを起動。

覆われるように波打つ視界、黒色とピンクに変わる髪色、視線の高さもわずかに変化し、頭部に増えた耳、夕陽のようなオレンジ色の瞳は赤く染った。

 

「え゛」

 

自警団と出会う前にスキャンした生徒の姿に化けた途端、今までうるさかったレイサちゃんが固まってしまった。

 

京山、あ、え、カズ、ゑ??? カズサが、V?? いやVが京山????

 

思考と混乱の宇宙から帰って来れなくなったレイサちゃんを放置して、その場を立ち去ろうとする俺をスズミちゃんが呼び止めた。

 

「待ってください! まだ聞きたいことが・・・・・・」

 

俺は偽物の姿のまま振り返った。 スズミちゃんもテーブルから立ち上がっていたが、その手は宙で彷徨っていた。

 

「それはスズミちゃんが聞きたいことなのか? 他の誰かが聞きたがっていることをアンタが代弁してるだけなんじゃないのか?」

 

ずっと気になっていた。

 

『トリニティ生徒なら』聞かなければならないと言っていた最初から。

 

交渉を始めたのはスズミちゃんの筈なのに、質問は途中からレイサちゃんが主導を務めていた。

 

「そ、れは・・・・・・」

 

中途半端に伸びた腕は少し下がり、どこへも降ろせずにいた。

 

「別に誰かの為に行動を起こす事を悪いと言う気はない。 だけど、一番大事なのはアンタが何をしたいかじゃないのか?」

 

「私が、ですか?」

 

「ああ、それさえ分かれば、いざという時でも腹が据わる。 行動や思考に迷いが生まれない」

 

その為には原点が必要だ

 

振り返る為に必要な記憶であり、帰り道の道標

 

「それを忘れた奴は大抵、道を踏み外す」

 

それは一気に転がり落ちていくのか

 

少しずつ道を逸れて、そのまま帰って来れなくなるのか

 

その先が崖っぷちだと理解して尚、走り出すのか

 

「・・・・・・ちょっと語りすぎたな」

 

まあ、ワカモ先輩が一目惚れした先生が側にいるのだから致命的な間違いを犯すことはないだろう。 先輩の人を見る目は一級品だ。 そこに疑う余地はない。

 

らしくもなく語り出した自分自身に疑問符を浮かべてしまう。

 

本当にどうしてしまったのだろう・・・・・・キヴォトスに来てすぐだというのに、ナイトシティを離れた影響でホームシックにでもなってしまったのだろうか?

 

 

 

人様の事をとやかく言える立場じゃねぇ、って事だろ馬鹿野郎。 勝手に思い詰めてナイーブになってんじゃねえか、思春期かよ面倒くせえ。

 

 

 

本来聞こえるはずのない相棒の声が、頭の中で反響する。

 

 

 

そうか、そういう事か。

 

迷っているのは俺の方もなのだろう。

 

この街で、キヴォトスでどうすれば『メジャーリーガー』になれるかのビジョンが全く見えないのだ。

 

トリニティで大暴れしたものの、銃撃戦が日常的に横行しているキヴォトスではレジェンドとして語り続かれるには未だ遠いだろう。

 

心の奥底に眠る焦燥感にジリジリで焦がされそうになる理性、言いようのない焦りが確かに俺の内側にあるのを感じてしまう。

 

「何を焦っているんだろうな、俺は」

 

少なくとも頭の中に何時炸裂するかわからない爆弾はない、茶々を入れてくる汚い妖精もいない。 そして撃たれても死ぬことのない、命の危機が希薄な世界。

だがそれでも急げと駆り立てる俺の魂は、間に合わなくなるぞと言わんばかりだ。 どこへ行けばいいのかもわからないままなのに。 なぜ急がなければならないのか理解できないままなのに。

 

「V、貴方は一体・・・・・・!?」

 

 

 

 

 

キロシが反応した。 赤い反応、危険物、敵対反応だ。 そこへ首を振ると、幾つもの銃口がコチラを覗いていた。

 

今まで黙りこくってキラキラとした視線を送って来ていた不良生徒の首根っこを掴み、伏せて銃撃を回避した。

 

スズミちゃんは咄嗟に混乱したままのレイサちゃんの腕を掴んで、テーブルより身を低くして隠れていた。

 

続く夥しい数の銃声は窓ガラスをぶち破り、けたたましい音と客の悲鳴が店を上塗りしていく。

 

「ダァーッハッハッハ!!! たった今ここは!! アタシら、グルグルヘルメット団が占領した!!! さあ客も従業員も全員有り金を差し出しな!!!」

 

ライトマシンガンの一斉斉射によって打ち砕かれた窓ガラスはパラパラと崩れ、お洒落な壁紙が貼られていた壁は穴だらけになっていた。 客は怯え床に転がる者や、ヘルメット団を忌々しく睨む者がいた。

赤いヘルメットを被るリーダーが睨みつける客に銃口を向けた。

 

「なんだぁ、そんな目をして本当にいいのかぁ!! いいか、アタシらにはあの人がついてるんだよぉ!!」

 

「ぐあ!!?」

 

そして簡単に手を挙げた。 アサルトライフルの銃床で殴りつけたのだ。 殴られた客は壁まで吹き飛び、他の客も巻き込んで倒れ込んでしまった。

 

「「っ!!」」

 

それを目の当たりにしたスズミちゃんとレイサちゃんは立ち上がった。

 

「貴方たち、無抵抗な人達に何をしているのですか!!」

 

「そうです! いくらなんでもやりすぎです!!」

 

「ああん!? 関係ねぇよんなもん!!  つかお前ら、そんなでかい態度とってもいいのかぁ? コイツら全員蜂の巣にすんぞぉ!!」

 

「くっ・・・・・・!」

 

人質がいるとはいえ、随分と大きな態度だ。 ここはD.U地区、ヴァルキューレだっているというのに。

 

「アイツら、なんのつもりですかね? レジ盗んでとっととトンズラすればいいのに」

 

「同感だ。 全員から徴収するなんて、赤い羽根でもプレゼントしてくれるのか?」

 

なんにせよ、こっちには関係ない話だ。 どうせヴァルキューレが来て解決するだろうし、いざとなればスズミちゃんの伝手で先生が駆けつけるだろう。 俺が解決する理由がない。 今のうちに逃げよう。

 

「んじゃ帰るか」

 

「あ、じゃあウチも」

 

最後までここに残っていたら、ヴァルキューレから事情聴取を受けるのは間違いない。 そんな面倒は勘弁だ。 支払いはよろしくな、スズミちゃん。

 

身を低くしたまま移動を開始して、テラスからそのまま道路へと抜けようとした・・・・・・

 

 

 

「アタシらにはVがついてんだよ!!」

 

 

 

「「え??」」

 

・・・・・・んぇ?????

 

痛いような沈黙が挟まれ、周りの客たちもザワザワと周りの反応を確かめながら小声で話し始めた。

 

後ろをついてきていた不良生徒がこっちを驚いた目で見てくるが、驚いているのはこっちもだ。 何の話かさっぱりわからない。

 

「Vがここに現れたのはわかってんだよ!! あの人は破壊と略奪を楽しむテロリストだ、つまりこっちの味方なんだよ!!」

 

・・・・・・あん? 本当に何を言いたいのかさっぱりわからん。 なんで俺がお前らの味方をしなくきゃならないんだ??

 

「アタシらがここで暴れればVも参戦する! そうすりゃヴァルキューレだろうが噂のシャーレだろうが怖くねぇんだよ!!」

 

・・・・・・理屈は意味不明だが、言いたい事はわかった。

 

つまりコイツらは俺を都合のいいように使おうとしてる訳だ。

 

「上等じゃねぇか」

 

度胸が据わってるのか、ただ単純にアホなのか、確かめてやろうじゃないか。




ゲヘナ編来ましたね!

V「大丈夫か? ゲヘナ決戦の話に支障きたしてないか?」

ふふぶ、はーっはっはっはぁ!! はぁ・・・・・・どうしよう。

ワカモ「大分重症ですねコレ」

話のほとんど吹き飛んだ。 どうしよう。 なんだったら初手から消えた。 このままだとVSヒナまで持っていけないな・・・・・・本当にどうしよう。
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