透き通った空に浮かぶ星 作:哲学の階司書補
今回は舞台が割と転々とします
過去の生徒会の書類を引っ張り出して、書類の山を作りながらその中身を精査していくアヤネとホシノ。
「うへぇ、こんなに沢山書類が埋もれてたとは……」
「借金どころか利息を支払うのでいっぱいいっぱいでしたからね。あ、これは……」
アヤネが発見したのは、使われていない砂に埋もれた区画をカイザーに売却した記録。しかし、立て続けに似たような書類が出てくる。遂には市街地近辺のものまで。
「あー……これは、甘い提案に騙されて、引くに引けなくなっちゃった、ってことかなぁ」
「……最初から土地目当てでアビドスにお金を貸していた……ともとれますね」
「まあ、それも全部取り戻せた訳だし、一件落着だねー」
よかったよかった、と関係ない書類を纏めるホシノ。アヤネはその様子を眺めながら、何か違和感を感じていた。カイザーが買い取ったはずの土地の権利書をホシノが持ってきて、その後にどうしてそれの所有者がカイザーだったのかを調べた。良く考えると、なぜホシノが権利書を持っていたかの説明がつかない。
「あの、ホシノ先ぱ……あれ、もういない」
いつもぐうたらしてる印象なのに、既にほかの書類は整理されていて、ホシノはどこかに行ってしまっていた。
まあ自分も今日はオフだったし、今度でいいか、と、アヤネもささっと書類をファイルに詰めて、シロコの戦闘記録が入ったUSBと書き置きを残して教室から出て行った。
シャワーで汗を流してさっぱりしたシロコは、アヤネが置いていってくれたビナーとの戦闘の録画を振り返る。
「ん……先生、私の視線の方向に鎖を置いてる。回避方向を見ないように……いや、予め戦況からどう動くかを頭でシミュレートして、そこに体の動きを合わせる、か」
移動方向にちょうど被弾するように設置される鎖。その仕組みを理解はしたが、回避のために要求されている技術に頭を悩ませる。
映像を何度か見返すと、シロコは自分が一瞬、明らかに回避する方向を見ているのが分かる。その瞬間はビナーから視線を外してしまっているから、妖精も鎖も回避が困難になり、どんどん後手に回っていく。
ヘルメット団なんかの雑多な相手との戦闘なら今まで通りで問題ないだろう。しかし、ホシノやそれに近しい実力を持つ相手なら、視線から動きを予測したり、自分の動きの癖を見抜いて、それに合わせて攻撃してくる可能性は十分にある。
視線による動きの誘導はビナーとの戦闘で、得られる技術だろう。ただ、自分の動きの癖というのは、会って間もないビナーよりも、長い時間を共にしてきた対策委員会のメンバーの方が知っているはず。相談するなら、いつも後ろから見てくれているアヤネか、自分のことを1番よく知るホシノだろうか。
そんなことを考えながら、ひとつ伸びをして、凝ってきた体を解す。
気晴らしに逆にビナーの癖を見つけてやろうと、再び画面に向き合おうとした時。
校舎が、地面が揺れた。
少しの時間で、その規模も大きなものではなかったが、確かに揺れた。さっきまで外にいたシロコは、今日は風が穏やかな日だったのを覚えている。数日前、それを境に砂嵐が止み、ヘルメット団の襲撃も無くなったあの地震。それに近いものを感じ、胸騒ぎを抱いて、校舎を飛び出し、砂漠の方へとロードバイクを走らせるのであった。
夕暮れの砂漠。対面するのは盾を構えたホシノと相変わらず手に武器を持たないビナー。
「お昼はシロコちゃんの相手してくれてたみたいだね〜。せっかくだからさ、おじさんの相手もして欲しくって」
「新生したお前は、その扱い方を憶えるのが良いだろうね。自身を護る者とするのならば……」
ホシノの足元が鈍く光ると足を搦めとるように黒い波が発生する。
「いきなりだねっ、先生!」
対応するようにビナーに向かって飛び込む。懐に潜り込み、シールドバッシュを放つが、片手で容易く受け止められる。
「結構本気だったんだけど!」
危険を察知し飛び退くと、元いた場所には柱が降ってくる。それは当然のように地面を砕き、当たればまずいことになるのは一目瞭然だった。
弾幕を張るように放たれる妖精を盾で、銃撃で弾きながら離された距離を詰めていく。やっとの思いで至近距離でショットガンを放つが、その幾つかは妖精に相殺され、命中した弾丸も大したダメージにはならない。
ホシノが柱でのカウンターを見据えて距離を取る。
しかし、選ばれた行動はカウンターではなく。ビナーが片腕を掲げるとそこに光が集まっていく。如何にも強力な攻撃をしますよと言わんばかりの露骨な予備動作。
「盾で受けるしか……ないよね」
ホシノは深呼吸をひとつして、しっかりと盾を構える。神秘を循環させ、吹き飛ばされないように、押し負けないように意志を強く持つ。
「砕けよ」
放たれた衝撃波は、岩を砕き、地面を巻き上げながらホシノへと迫ってくる。
かなり出力は落とされているとはいえ、圧倒的な力の奔流は、大地を揺らすには十分で。
その瞬間、頭の中で、数日前の地震と目の前の光景が繋がった。
しかし、余計なことに意識を割いたがために、盾が揺らぎ、防御は決壊。砂の上を数m吹き飛ばされてしまった。
「加減というのは難しい物だね」
ビナーは、その様子を少し残念そうな声色で呟く。
せっかくいい所まで来ていたのに、目の前で視線を逸らしてしまうとはなんと勿体のないことか。そんなことを思いながら、ホシノが起き上がるまで、ただじっと眺めていた。
「いってて……余計なこと考えなきゃ多分、ギリギリ耐えられてた……先生には悪いことしちゃったな」
その一瞬で崩れたのが何となく分かるだけに、悔しさと申し訳なさに起き上がる気力を失いそうになる。
そう思いつつも盾を支えに立ち上がると、盾を鞄状に戻してゆっくりとビナーのところに戻って行った。
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