透き通った空に浮かぶ星 作:哲学の階司書補
「先生ごめーん。ずっと気になってたことだったからさ〜」
「其れは其れ、此は此。眼前の戦闘から気を逸らせば、身に危険を招くだろうね」
「うへぇー、善処します……あ、あれはシロコちゃん? もしかして地震が気になったのかなぁ」
地震発生から、いてもたってもいられず、ロードバイクを走らせ郊外までやってきたシロコ。そこにいたのはホシノとビナー。
ホシノに大地を揺らすほどの力は、多分ないだろうと推測し、自然とビナーの方を見つめる。
「あ……もしかして、地震の原因って、先生?」
「そうなんだよ〜。そのせいで、おじさん気が散っちゃって負けちゃったんだよね〜」
「ホシノ先輩には聞いて……いや、先生が言うと難しいから、むしろいいか」
「先生は言葉が難しいからね〜。そもそも、答え聞いても教えてくれないし」
「何時であれ、私は標であるから」
「でも、別に突き放してる訳じゃないところが、おじさんは好きだな〜」
「先輩、先生を信用しすぎ」
「お世話になってるのは事実だからね〜…………あー……シロコちゃんごめん、ちょいギブ〜……」
さっきまで息の詰まるような戦いをしていたのもあって、緊張の糸が切れてふらつくホシノ。そのまま倒れそうになる姿にシロコは駆け出すが、少し離れていたせいで、地面に伏す、かと思われた。が、ビナーが抱き寄せて支えていた。
「シロコ、学校迄連れて行く様に」
「ん、わかった」
疲労もあってかそのまま眠ってしまったホシノを受け取ると、背負った状態でロードバイクに跨り、学校へと戻って行く。
ビナーはそれを追いかけることはなく、登り始めた星々を静かに眺める。
「刺激と言うには、矢張り物足りないな」
ホシノとの戦闘を思い返しながら、嘗てのカーリーとの戦闘を懐かしむ。身を削がれ、死を眼前に捉える。突きを柱で潰し、妖精を反撃で弾かれ、突進に錠前をぶつける。大切断に身体を引き裂かれ、血に塗れようとも。なんて心が踊るんだろうか。
「美食を識るとは、なんて残酷な事だろうか。飢えを充たすのにすら、其れを求めてしまうのだから」
そんな寂しげな言葉が、砂漠の夜に溶けていった。
ぐっすり眠っているホシノを学校まで背負って帰ってきたシロコ。砂漠の上を転がされて砂まみれなので、服を脱がせて、濡れタオルで汗などを拭ってから、取り敢えず自分のジャージを着させた。変な気を抱かないように物凄い顔だったが、誰も他に見た人がいないので本当かは定かではない。
その後、もはやホシノのお昼寝用になっている教室に連れていき、起こさないようにゆっくりと寝かせて布団を被せる。枕元にスポーツドリンクも置いて、喉が渇いて起きても問題ないようにしてから、往復でかいた汗を流すべく、日課のサイクリング後含め、本日3度目のシャワーへと向かった。
夜も遅くなってきて、さっぱりというよりはぽやぽやした状態で、ホシノがいる部屋へと戻る。
まだビナーが学校に戻ってきた様子はない。学校に一人置いていく訳にも行かず、自分もサイクリングに戦闘演習、振り返りに砂漠までの往復としっかり疲れていたので、仕方なく、本当に仕方なくホシノが眠っている布団に潜り込む。
「おやすみ、先輩」
そう呟いて、シロコも眠りに落ちていった。
翌朝。アビドス高校にセリカの悲鳴が2度響き渡る。
ひとつは先輩2人が同じ布団で眠っていたこと。しかもホシノはシロコのジャージを着て。
そしてもうひとつは……
「完済証明書!? 9億もあったのに、誰が、どうやって!?」
カイザーローンからの、完済証明書。この瞬間、アビドスが抱える全ての借金が無くなったことを通知する書類であった。
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