透き通った空に浮かぶ星   作:哲学の階司書補

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筆が乗りましたので、描き上がってすぐ投稿しました。
誤字報告本当に助かってます、表現で悩んだところで誤字しがちなの、分かってても見逃しちゃってますね……

感想や評価、お気に入りにしおりも嬉しいです!励みになってます!特に感想はほんと飛び上がるほど嬉しいんだ…


恐怖に直面し、未来を創り出す

 お茶会から数日後、ヒナとホシノが秘密の会合をしている頃。ビナーの姿は、トリニティにあった。

 この学校の生徒会に相当するティーパーティー。そして3人いる生徒会長の内の1人、百合園セイア。彼女に招待されたのだ。

 

「遠方から遥々来てくれたことを感謝する。予知夢で貴方のことを見たので、などという、正気とは思えないような手紙だったことは自覚している。なので、改めて感謝を、ありがとう」

 

 本来ならセイアはこのような積極的な行動は取らなかっただろう。夢の中で出会って話すことができるから。しかしそうしなかったのは、空が赤く染まるキヴォトスの崩壊よりも身近な悪夢を見てしまったから。ゲヘナの風紀委員長がその姿を変え、天秤の怪物と化してしまうのを見たから。

 

「早速だが本題に入らせて貰おう。私はずっと起きて居られるわけではないからね。私は夢という形で未来を覗くことができる。そして、ゲヘナの風紀委員長、空崎ヒナが天秤の怪物へと変貌し、このキヴォトスを滅ぼす夢を見た。あれはトリニティもゲヘナも等しく全てその天秤にて断罪するだろう。風紀委員長が変貌した時、それを貴方はただ見守っていた。どうか空崎ヒナを止めて欲しい。そばに居た貴方になら、きっと止められるはずだ」

 

 セイアは知らない。それはもう過ぎ去ったと事だと。既に一度、ヒナは天秤の怪物になっていた事に。そして、目の前の大人、ビナーが自分よりも遠回しにものを言う事を。

 

「修復は為された。己を任せられる相手に依って。更に言うなら、既に枝は折られて居る」

 

「……貴方もそう言うタイプか…………修復……枝……」

 

 必死に考えを巡らせるセイア。自分自身も遠回しな言葉を使うことが多いが、情報がどうにも少ない。修復、つまり壊れた物があったということだろう。風紀委員長が任せられる相手、これは風紀委員の行政官あたりだろうか。そして折られた枝。これはわかりやすい、恐らく可能性の話。しかしそれを変貌したヒナによってキヴォトスが滅ぶことは無い、と考えてもいいだろうか。

 いや、そう考えなければまともに思考もまとまらない。

 

「傍観者で在ったお前をそうまで駆り立てたのは何だろうね」

 

 未来のことを知ったとしても、それを話すことにほとんど意味はないだろう。伝えた先の未来を知らないから。それでもセイアがビナーを見つけ出し連絡を取ったのは、ヒナと自身が、ゲヘナとトリニティのトップ同士であることによるだろう。もし、ヒナが変貌したなら、自分の元にやって来るだろうという確信があった。未来を知りながらも動かない、動けない。予知夢による未来視を知っていたとしても知らなかったとしても、あの天秤は自分を裁くに違いない。恐怖による強迫観念だった。

 

「恐怖……だろうか。私が知っている顔で、しかもゲヘナの事実上トップ。罪に傾いた天秤。恐れるなという方が無理がある」

 

 ああ、今話している声は震えていないだろうか。

 光すら飲み込みそうな漆黒の双眸は、セイアをただじっと見ている。

 

「この隈を見てわかるだろう? ほとんど眠れなくなってしまったんだ。眠ることが、夢を見てしまうのが恐ろしい。あぁ、あの姿を再び見れば卒倒してしまうかもしれない」

 

 眠らせないでほしい。それがここ数日のただ一つの願いだった。

 

「耐えられなくなった私は、こうやってあなたを招き、助けを求めた」

 

 自分が舞台に上がることを選んでまでしたこの行動は、今ならはっきりと言える。これは正解だったと、目の前の大人に助けを求めて良かった、と。

 

「恐怖に直面したお前は、私に助けを求め、安寧の未来を創出した。今のお前が己に向き合うなら、何を思う」

 

「…………未来を知ることへの恐怖、停滞を望む気持ち。それは未だにある。しかし、自分の意思で絶望の未来を脱した。私はこの手で自分の未来を変えた。恐怖に怯えるだけではなく、打ち勝ち、自分の未来を手にする力が欲しい。いつでも誰かが助けてくれる訳では無いから」

 

 今回はセイアが悪夢に苦しみ喘ぎ、救いを求めて伸ばした手をビナーは取ってくれた。しかし次はどうだ。誰が解決してくれるだろうか。

 己の行動によって暗く絶望の未来を変えられるのなら、それを成し遂げる為だけの力が必要だろう。

 

「恐怖に心を歪める処か、力を求めるとは。其れは上に立つ者としての責か。或いは未来を知った者として、その最悪に立ち向かう為か」

 

 どこか愉しげに言葉を紡ぐビナー。恐怖に直面し、未来を創り出す。かつて自分が居た所でのスローガン。それが意味するものが全く同じではないにしろ、懐かしく思えたから。

 

「私はお前の手を取ろう。而して共に舞台で踊る力を授けよう」

 

 差し出されたビナーの手を取ったその時、セイアの未来は大きく変わった。




大丈夫?キヴォトスの先生の交流範囲。
セイアさんは司書補くらいの力は得られるんじゃないでしょうか。
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