透き通った空に浮かぶ星   作:哲学の階司書補

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今回は平和です。
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鎖を断ち切り、恐怖に向き合う

 ホシノとビナーが戦闘している頃、教室に残された対策委員会のメンバーは、頭と胴体を『閉じられ』、閉じられていた血液の流れを『開かれ』た。

 つまり、頭と胴体が離れ離れになったのは事実だが、死んではいなかった。とことだ。

 

 最初に意識を取り戻したのはシロコだった。倒れている3人、しかし室内に先輩の姿はなく、壁には大きな穴。

 そして聞き馴染みのあるEye of Horus の発砲音が外から聞こえてくる。

 ホシノが生きている事を確信した彼女は、未だ気絶しているアヤネ、セリカ、ノノミのもとへと駆け寄る。

 

「ん、みんな呼吸はある。外傷もほとんどなさそう」

 

 最低限、呼吸がしやすい姿勢に3人を寝かせる。人を抱えあげて、というのはやはり大変で(主にノノミ)少し息が乱れる。

 深呼吸をひとつ、息を整えようとした時、あれからホシノの発砲音が聞こえなかった事に気がつく。

 

「助けないと」

 

 

 

 

 

 

 戦う気力を失い、膝をつき項垂れてしまったホシノ。全身に傷を負いながらも、その神秘がほとんどを癒していた。それでも戦うのを止めてしまったのは、心が折れてしまったから。

 

 

「もはや私は表舞台に立つことはないだろう。それは嘗て捨てた身であったから。舞台を降りた人間が、再び舞台に登るとは、なんと傲慢なことか。己の意思で沈黙を選んだというにも関わらず。然し、生を新たに受けたのであれば、新たな星が空に浮かんだのと何が違うだろうか。この透き通った空にとって私は旅人だろう。安心するといい、私の在り方は大きく変わらない。私は沈黙し、見守っているとも。私は星であるから。それは砂漠に迷えるお前たちの標となるだろうね。

 少しばかり話をしようか。初めの私は恐怖に対し自身を飲み込んだ。それは私の初めての生において、最初で最大の愚行だったと憶えている。お前は正しく恐怖から逃げていた。向き合わない。それも一つ、正解であることを誰にも否定する事は叶わないだろう。だがお前の眼は、恐怖から逃げながら、恐怖だけを見ていたな。現在も未来も見えない瞳は、疑う事は出来ても、見詰めた儘の過去を正しく評価しなかった。お前の恐怖に染まった眼を見た時、私は哀しく思ったのだよ。お前は確かに恐怖に向き合う眼を持っているのに」

 

 

 

 

 

 

 目の前の大人が何かを言っている。

 何を言っているか分からないのに、その言葉は私の胸にすっと入ってくる。過去の鎖を断ち、恐怖に向き合う。黒く澱んだ心に、一つ、光の種が落ちるようで。

 決して手を伸ばしてはくれない。他の大人と同じだ。

 でも、道を教えてはくれている、のかもしれない。

 仄かな光は、私が踏み出そうとしていた1歩の先に、道などなく、昏く、底の見えない谷が広がっていた事を照らした。

 このまま堕ちていたらどうなったんだろうか。

 ユメ先輩を喪ったあの日なら、きっと私はそれを知っていても前に進んだのだろう。

 でも、今なら。あの大人が、見守ってくれるのなら。何か変わるのかもしれない。

 みんなの分まで、私、頑張れるのかな。

 

 

「ホシノ先輩っ!!!」

 

 

 なんで、なんであなたの声が聞こえるの。

 

 シロコちゃん……! 

 

 

 自分の意志で目を開くのはいつぶりだろうか。

 そこには。

 

 笑みを浮かべた大人と、間に割って入ったシロコの姿があった。




大丈夫、みんな生きてる。
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