透き通った空に浮かぶ星   作:哲学の階司書補

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最近投稿頻度が空きがちだったので、詫び連投です



ナギサ襲撃作戦

 アズサの告白。ハナコの決意。アリウスによるナギサ襲撃の作戦。それを阻止するための計画。

 そして、第3次特別学力試験当日。

 

 

 

「この前の試験はすまなかったね、もう少し待っていて欲しいだけなのだが、君らが大人しくしていてくれるとは思えなくてね」

 

「あ、貴方は……セイア様!?」

 

 ナギサのセーフハウスへと向かうその道中、補習授業部一行を阻むように立つ線の細い1人の少女。

 その正体に真っ先に気付いたのはナギサとも深い交友のあるヒフミ。

 

「な、なんでセイア様がこんな所に!? セイア様ってティーパーティーのホストでしょ!?」

 

『何の用かな、セイア』

 

 その事実に混乱するコハルと、嫌な予感がして冷や汗を流す先生。

 

「楽園への道は今にも拓かれようとしている。心を苦しめながらも頑張ってくれた友を報いたくてね。ああ、安心するといい、補習授業部を退学にするつもりはもとよりない。それはそれで、トリニティの汚点となるからね」

 

「当然ホストもグル、ですよね。そして……なるほど、態々退学にする、と脅迫したのは、私たちを焦らせるため。それで裏切り者がしっぽを出せば万々歳、といったところでしょうか」

 

「いや、裏切り者なんてものは最初から居ないよ。ナギサにも、私の要請に合わせて補習授業部を運営して貰っている。ゲヘナ……というより、万魔殿に余計な隙を作らないように、欲に負けた者、自身を正しく評価出来ない者、酷く怠惰な者。そして、アリウスの内通者。君らを隔離しておきたかっただけだよ」

 

『隔離……』

 

「エデン条約が無事締結された時には、部を解体し、厳重注意としようと思っていたが……思ったよりも心を入れ替えてくれたようで、私は嬉しいよ」

 

「え、えっと、今はそれどころじゃなくて、ナギサ様が危険なんです!」

 

「ああ、それは安心するといい。私が信頼を置く人に護衛を任せたから。過剰戦力な気もするがね」

 

 セイアは、何処からか傘を取り出す。

 

「そして……今を持って、第3次特別学力試験は科目を変更。体育、実技の試験と行こうか」

 

 そしてその傘を振るうと、少しボロボロになった、ローブを身に纏っていた。

 

「ここ1週間書類仕事ばかりでね。身体が大層鈍ってしまって」

 

 1歩、また1歩と、混乱し、まだ構えることすら出来ていない補習授業部へと近づくセイア。

 

『みんな、構えて!』

 

 状況を飲み込めて居ない4人に檄を飛ばす先生。

 

「合格条件は、私を満足させること、としようか」

 

 その瞬間、セイアの姿がかき消える。

 

「上だっ!」

 

 唯一、その軌跡をなんとか追えたアズサが指示を飛ばす。咄嗟に残りの3人はその場から離れる。

 まるで流星のような空中からの落下攻撃は、いとも容易く地面を砕く。いくらヘイローを持っていようと、直撃すればひとたまりもないだろう。

 

『みんな、もたもたしてるとやられる!』

 

 指揮官である先生を含めれば1対5というのに、セイアの表情は余裕そのもので。

 それに、さっきの初撃から、相手がティーパーティーホストだからと、加減なんてする余裕が無いことを、知らしめられた。

 

「ああ、これでやられてしまっていたら、流石に不合格を、言い渡さざるを得なかったよ」

 

 放たれる銃弾をほぼノールック、かつ最低限の動きで回避するセイア。

 1人1人に視線を向けて、誰から狙うかを吟味すると、ふむ、とひとつ置いて、再びその姿がかき消える。

 

「アズサ、あの日ぶりの、第2ラウンドと行こうか!」

 

 ターゲットはアズサ。初撃に反応した唯一の相手だったから。

 傘の切っ先は簡単に地に跡をつけ、皮膚すらも引き裂くだろうことは想像に易い。

 

「くっ、本当にその細さからは想像が出来ないな……!」

 

「あの日もその言葉を聞いたね。ふふ、懐かしいよ」

 

「あの人、後ろにも目が付いてるんじゃないの!?」

 

 背後からの攻撃も時に弾き、時に回避して、ほぼノーダメージのままアズサを追い詰めていく。

 セイアの苛烈な攻撃に防戦を強いられるアズサ。

 先生の指示やハナコの支援があるとはいえ、圧倒的な力というものは、簡単には乗り越えられない。

 

「ヒフミ。ある意味では、私は君がナギサを救うことを妨害しているとも言える。秘めたる激情を確りと私にぶつけるといい。コハル。ハスミがコハルは賢いから、きっと直ぐに戻ってこれる、と言っていたが、もう少しかかりそうかな?」

 

 セイアは、わざとそれぞれに火をつけるような言葉を紡いでいく。

 

「ハナコ……大人しくしていたなら、私は政治から距離を取れるよう助けたというのに。再び表舞台へと戻るのなら、この程度で止まる訳には行かないだろう?」

 

 ツルギと幾度となく戦い、共闘を重ねた結果か、それともビナーによって力を開かれた時からか、今のセイアは間違いなく戦闘狂の気があった。

 

 

 

「己の三歩先を見極めよ。そうすれば、相手の二歩先が見えてくるだろう。というが、動かす側になる力があってこそ成立する。そう思わないかい?」

 

 ペロロ様デコイを一撃で切り刻み、アズサ渾身の一撃を真っ二つに引き裂き、地面にクレーターを量産していく。

 結局、最後の最後にアズサがセイアの頬に弾を掠らせたのが唯一、ダメージと言えるものだった。

 

 

 

「ふぅ……手加減していたとはいえ、持久勝ちになってしまった……これは、合格という他ないだろうね」

 

 全員の力を合わせて勝ち取った合格。しかし、それはもう疲弊に疲弊を重ねたような惨状で。

 

「シャーレの先生。これにて補習授業部は無事全員合格、ということになるけれど、ちゃんと会場に試験も用意してあるから、そっちも記念に受けて帰るように」

 

『はぁ……わかった』

 

 先生もかなり疲れたようで、とりあえず補習授業部が起き上がるのを待つことにした。

 

 補習授業部

 第3次特別学力試験─全員合格! 

 

 

 ──────────────

 

「うん、良い薫だね」

 

「え、えぇ、そうですね、ビナーさん」

 

 セーフハウスにはいつもの光景。

 紅茶を嗜むビナーとナギサ。

 違うことがあるとすれば、セイアが居ないことと、ナギサの顔が青いことくらいだろうか。

 

「ミカも、アリウスも、結局は大きな流れに巻き込まれたものに過ぎない。理を捻じ曲げ、自身が流れを起こすものとなるには、あまりにも矮小。他の全てを変えてしまうような強い意志。喩えそれが呪いとなろうとも」

 

「セイアさんも言っていた、大きな流れ……死ぬことは無い、安心するといい、なんて言われても安心できるはずがないじゃないですか」

 

 バン! とセーフハウスのドアが開かれる。

 

「ターゲットが居たぞ! 確保しろ!」

 

「お客人のようだね? ナギサ」

 

「はぁ、招かれざる客です……あとは御願いします、ビナーさん」

 

「蜂蜜の様に甘い結末を待ち望むと良い」

 

 

 蹂躙。まさにその言葉が正しいだろう。

 妖精は嘲笑うように腕と胴体を引き離し、鎖は肉を綿のように引き裂き、容易く臓物を曝け出させる。

 死にはしないが、正しい対処が施されなければ、相当な後遺症を齎すのは火を見るより明らかで。

 ミカがセーフハウスへとたどり着いた時には、赤、赤、そして赤。

 壁には飛び散り乾きつつある血、床には新鮮な臓物が転がり、ヘイローが灯いたアリウスの生徒は誰一人としていない。

 辛うじて息はあるが、意識がある者はどこにも。

 部屋の中央には、テーブルと、予備のティーセット。そして、黒い1人の大人。

 

「ビナー……無茶苦茶だよ。あなたのせいで踏みとどまれなくなったのに」

 

「いいや、私がいようといまいと、お前はその道を選んでいたよ」

 

 カップをテーブルに置くと、ゆっくりと立ち上がるビナー。

 

「然し、結局、何も影響を及ぼすことはないのだよ。幸運だね。お前が牢に一生を過ごすことのないよう、ここで処罰を加えるとしようか」

 

 ビナーが手を翳す。ミカが飛び退くとセーフハウスを破壊せんとする勢いで柱が降ってくる。

 攻撃の隙、なんてものは存在しないようで、すぐさま弄ぶように鎖がミカを追いかける。

 

「(いくらなんでも無茶苦茶すぎる!)」

 

 室内というのもあり、逃げるのに精一杯なミカ。しかも床は血に濡れていて滑りやすく、邪魔な死た……けが人達のせいで足が引っかかりそうになる。

 反撃の隙を一切与えないビナーが悪いのだが、まともに反撃してこないミカをつまらなく思ったのか、着地地点に鎖を配置し捕らえてしまう。

 

「火事場力というのを期待したが、残念だったね。ナギサ、ミカとゆっくり話すと良い。私は少し席を外しているから」

 

 部屋の奥から、さっきとは別の理由で顔を真っ青にしているナギサが出てくると、足を震えさせながらも鎖に囚われたミカへと近づく。

 

 

 

 その後、様子を見に戻ってきたビナーは、2人が号泣しながら本心をぶつけている様を肴に、紅茶を飲んでいたのだった。




これにて補習授業部編は無事?完結ですね
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