透き通った空に浮かぶ星   作:哲学の階司書補

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遅くなりました


ポストモーテム

 

 

 トリニティの生徒会室。

 室内にいるのは3人の長。

 

「さて、一応情報交換と行こうか。特に尋問という訳じゃないよ。ただ持っている情報を吐いてくれればいい」

 

「それ、尋問じゃない? まあいいか。アリウスは大した脅威じゃないと思うよ。ほら、ビナーがやりすぎちゃったから、戦意はもう無いでしょ。あれが正義実現委員会でも、風紀委員会でも、絶対戦意喪失するよ」

 

「ミカさん、思い出させないで下さい」

 

 ナギサがあの赤い光景を思い出すと、口を押さえて顔色を一気に悪くする。

 

「さて、身も蓋もない話、私はほとんど知っている。が、それをもって事実を記録するのは都合が悪い。だから、自身で事のあらましを話してくれると有難いんだが」

 

「……意地が悪いね、本当に。アリウスがしくじったと聞いて、正直びっくりしたよ。予知夢で説得してのけたのかなと思ったら、まさか、反撃して勝ってしまった、なんて。セイアちゃんがそんな強くなってしまったのがビナーによるもの。全ての前提をぶっ壊しちゃった」

 

「ああ、本来なら、襲撃者であることをアズサを説得して、自身が死んだことにでもして、一時的に姿を隠すことを選んだだろうね。然し……私は悲劇に抵抗するだけの力を手にした」

 

 セイアは少しの間目を閉じると、その手に傘を現出させ、古びた衣を纏う。

 

「狐雨。私が未来を知りながら動かなかったことへの懲罰で。その心に雨が降ろうとも、きっとその空は晴れている」

 

 言い終えると、解けるようにE.G.O.が消え、普段の姿に戻る。

 

「これは私の心であり決意。現実から目を背けず、舞台に上がると決めた証明。楽園はそこになくとも、手の届く範囲なら、差し伸べられた手を必ず取ると決めた」

 

 まずは、一番身近なところからだろう? と、セイアは2人に微笑んだ。

 

「ああ、少し話しすぎてしまったね。ミカ、続きを」

 

「……正直、色んな気持ちがあってこの計画を始めたの。アリウスと仲直りしたかったから、ゲヘナが嫌いだから、セイアちゃんの説教がうるさいから、ビナーが居場所を奪っていくように感じたから。最後のは後押しみたいな感じだけどね」

 

「ミカさん……」

 

「理由の一つだったセイアちゃんに、今こうやって助けられて、ティーパーティーのままで居られるなんてね」

 

「調印までの期間は、一応監獄にいてもらうことになるだろうが」

 

「それでも、一生を過ごすよりはいいよ」

 

 

 ──────────────

 

 監獄にて。

 

 ギィィ──、ガタン!!! 

 

「人が来る度に思うけど、厳重すぎると思わない? いらっしゃい、ハナコちゃん。愚かな私を嘲笑いに来たのかな?」

 

「……ミカさん、どうしてこのようなことをしたんですか?」

 

 おちゃらけた雰囲気で話すミカを、ジッと睨みつけるように見つめるハナコ。

 

「もう、怖い顔しないでよ。話せることも話せないよ。でも、なんで、かぁ。強いて言うならゲヘナが嫌いだったから、かな」

 

 探偵ごっこでもしに来たかな、と、嘘は言わず、真実の一部を切り取って伝える。

 

「正直、セイアちゃんが元気に暴れ回ってるおかげで、推理とかそういうの、意味無いよ? シスターフッドの回し者なんでしょ? ちゃんと必要最低限の共有はしてあげたはずなのに」

 

「最低限過ぎたから私に声がかかったんだと思いますよ? それに、ゲヘナが嫌いだったからセイアちゃんとナギサさんを手にかけようとしたなんて、少なくとも私は納得出来ません」

 

 ミカは、シスターフッド側が致命的に見逃している要素があることを理解している。ビナーという存在が、この話を如何に台無しにしたのか、無茶苦茶にしたのか。

 

「勝手に人の心をわかったような口叩かないで欲しいな。それに、ハナコちゃんが持ってる情報はそんなに多くないってわかってる? シスターフッドがコソコソと集めたものと、先生から聞いたもの、それくらいでしょ?」

 

「…………それは理解しています。ですが、ティーパーティーの派閥の長が、このようなことを起こして、ゲヘナが嫌いだからやりました、で通るとお思いですか?」

 

「はぁ……それは浦和ハナコとしての気持ち? それともシスターフッドの意見? この際だから言うけど、ハナコちゃんが考えてる推理は破綻してる。今は戦ったから知ってるだろうけど、セイアちゃんがあんな強かったって知ってた? 身体が弱かったあのセイアちゃんが、正義実現委員会長とやり合えるなんて、悪い冗談だよね。どうしてそうなったか。ちゃんとあるんだよ、原因ってのはね」

 

「なるほど……それが、シスターフッドが知らない情報。先生が言っていた、ビナーという大人、ということですか」

 

「そういうことだよ。結局、私の計画は最初から破綻していたし、ハナコちゃんの推理も、同じく破綻している。とんだ無駄足だったでしょ?」

 

「いいえ、ミカさんの心を一部を垣間見れただけでも、十分な収穫だったと思います」

 

 はぁ、と1つ溜息をつき、ミカは口を閉ざした。もう話すことはない、と言わんばかりに。

 それを察したハナコは席を立ち退室しようとする。

 

「……最後に言い忘れてた、ビナーとは会わない方がいいと思うよ。ハナコちゃんみたいなタイプは、特に」

 

 少し立ち止まり、考えをめぐらせる。

 その後会釈をして、ハナコは監獄を後にした。

 

 

 

 

「今のハナコちゃんなら壊れることは無いかもしれないけど、相性は悪いだろうなぁ、私以上に」

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