透き通った空に浮かぶ星   作:哲学の階司書補

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着地点が迷走気味です


エデン条約の調印

「落ち着きなさい、騒ぎの原因はトリニティじゃない」

 

 ヒナがマイク越しにそう告げると、騒ぎがトリニティの仕業だと、聖堂前で暴れていたゲヘナ生達はビクリとしながらその声の方向へと向き直る。

 

「敵はゲヘナでは無いよ。そして、敵は既に排除された」

 

 今度はセイアが話す。すると、トリニティの生徒たちは落ち着きを取り戻し、じゃあ誰なんだ、とザワザワと騒ぎだす。

 

「第一回公会議において排斥されたアリウス分校による襲撃、それが今回の騒ぎのあらまし。尤も、それも仕向けられたもののようだが」

 

「問題は解決された。だから、ゲヘナ学園代表であるこの空崎ヒナと」

 

「そして、トリニティ総合学園代表、百合園セイアが、ここにエデン条約を調印しよう」

 

「同時に、エデン条約機構の設立を宣言する」

 

 ゲヘナとトリニティの代表によるエデン条約の調印が為されたことにより、アリウススクワッドにより書き換えられた文言は消滅、同時に肉の歯車も活動を停止した。

 

「今回襲撃してきたアリウス分校については、ティーパーティーが責任をもって調査を進めるから、トリニティ生は安心して過ごして欲しい」

 

「それについて、風紀委員会も協力するわ。両校の協力の第一歩として」

 

 そうしてヒナとセイアは和平の証として握手をする。

 その後、シスターフッドの代表であるサクラコが条約を見届けたことを宣言し、エデン条約の調印式は、無事閉会となった。

 

 

 ──────────────

 

 そのころセイアの自室に残されたアビドス復興委員会とアリウススクワッド。

 4人の中で一人先に意識を取り戻したサオリ。見える範囲で他のメンバーが無事なことが分かり安堵するが、同時に自分が牢獄などではなく、豪華な部屋に置かれていることに困惑する。

 

「この子達の扱いってどうなるんだろうね?」

 

「元々はトリニティって聞いた、ここで引き取るのかな」

 

 聞こえてくる会話は恐らく自分たちについて。話している生徒たちの服装は統一されていて、金の刺繍があしらわれたスーツと、トリニティでは無いことが分かる。

 体をできる限り動かさず、見える範囲での情報を集めるサオリ。抵抗しようと言うのがバレれば、再び意識を奪われかねない。

 

「(恐らくこいつらは通信があった一つ目の仮面の連中……単独で部隊を制圧するほどの実力者。リーダー格だけがそうならまだ勝機はあるが、特徴を消されてたせいで何も情報がない)」

 

「エデン条約が再調印されるまで暇ね……人の部屋でそんな長い間待てってのも困るわ」

 

「いつもの遊びをするに外じゃないといけないですし、確かに退屈します」

 

「あの遊び、私はただのピッチングマシーン扱いだから好きじゃないわ……ほんと、強くなりすぎなのよ」

 

「3発当てたら勝ちなんですから、もうちょっと頑張って欲しいですね」

 

「ライフルで撃った弾を素手でたたき落とす方がおかしいの、わかってる?」

 

「は?」

 

「「あっ」」

 

 何でもない日常的な会話を聞いていたはずが突然とんでもない発言が聞こえてきてつい声が出てしまったサオリ。セイアの時もそうだったが、放たれた弾丸を素手で止めるというのは、いくらキヴォトス人であっても普通じゃない。

 

「委員長、起きたみたいよ」

 

「うへぇ、寝ててくれれば楽だったのに」

 

「ん、本音漏れてる」

 

 委員長、と呼ばれたピンク髪の少女、ホシノがサオリの前に立つ。

 

「今からいくつか質問していくけど、沈黙は肯定と見なすから、適宜回答してね」

 

「…………」

 

「アリウスに異形頭の大人はいる?」

 

「っ……(彼女のことを知っている? アズサが情報を漏らした可能性もあるが……)」

 

「ああ、これは尋問って訳じゃなくてただの確認だから、そんなに気を張らなくてもいいよ。ティーパーティーのホストさんが既に観た情報らしいし」

 

 ティーパーティーのホストであるセイアは、既に捻じ曲げられたこのエデン条約の大きな流れについて把握しており、結末も知っている。それはアビドスにも共有されているため、このやり取りは確認以上の意味は無い。

 

「未来予知……最初からセイアの掌の上ということか」

 

 ズキリとサオリの腹部が痛む。虚しい結果に終わったな、と言われセイアに空けられた穴。応急処置は施されているものの、意識を向ければ、大きな傷を見ずとも認識できる。

 

「さあ、最初から最後まで全部知ってるのかはわからないけど。わざわざこうやってお話し出来るようにしてるんだし、悪くはしないんじゃないかな〜。少なくともヒヨリって子はウチで引きむぐぐぐ」

 

 ホシノが爆弾発言をしようとした所をシロコが口を手で押える。警戒を程々に解くのも仕事だというのに、警戒度を無駄に上げるような発言をしてはいけない。

 その後真っ当に怒られてしょげるホシノだった。

 そんな緊張感のない空気にサオリも少し絆されていた。

 

「ま、他の子も起きたら言ってよ。これからどうなりたいか、どうしたいかくらいは聞いてあげるからさ」

 

 ん〜、と伸びをしながら、どこか適当に言うホシノ。

 ちょうどその時、付けてあった小型テレビからセイアとヒナによりエデン条約の調印が執り行われたことが報道された。

 

「これでひとまずお仕事は終わりですね〜」

 

「まあ、アリウスの制圧もあるでしょうけど、私たちにお呼びがかかるかはわかりませんしね」

 

 計画が完全に失敗に終わったことを見届けながら、サオリは3人が目を覚ますのをじっと待つことにした。

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