透き通った空に浮かぶ星   作:哲学の階司書補

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ホルスは眼を醒ます

 

 

「おはよう、ご機嫌いかがかな?」

 

「最悪の気分だよ〜、なんか幽霊も見えてるし」

「ん、私は幽霊じゃない。それに、みんなも気絶はしてたけど無事」

 

 ホシノが目を開いた時、纏っていた黒はどろりと溶け落ちて、ヘイローも本来のホルスの目へと姿を戻した。

 いつもの気の抜けた声を聞き、シロコが振り返ると、苦笑いをしながらツッコむ。ホシノがああなってしまったのは、きっと自分たちに何かあったからだろう、と推理し、3人の無事を伝える。

 

「眼を醒ましたようだね。視界が晴れただろう?」

 

「……まあね、最悪だけど、気持ちの整理は着いたよ。最悪だけどね」

 

 身体に巡る神秘、それが圧倒的に強まっているのをホシノは感じていた。絶望し、暴走してしまっていた時よりも、ずっと指先までも神秘が馴染んで行く。本当に最悪だけど、目の前の大人は自分の力になってくれた。そうじゃないと、私はとっくに死んでいただろうから。

 そんな、私の神秘を引き出した、結局名前もわからない、突然顧問になると言い出した謎の大人。

 黒い外套を纏い、ヘイローを持たない。にも関わらず圧倒的な力を振るい、どこからともなく鎖を生み出し、心に穴を開ける柱を放つ。

 全てを見通すような瞳を持ち、その言葉は心の奥に入り込んでくる。

 

「それで、結局何者なんだ、あなたは」

 

「私はビナー。嘗て調律者であった者。対策委員会の顧問となり、お前達を見守る者だよ」

 

「顧問、先生ってこと?」

 

「好きに呼ぶといい。私は呼び方で在り方を変えないから。其れじゃあ、教室に戻ろうか。そろそろ他の子供達も目を覚ます頃合だろうから」

 

 ビナーは1人、他になにか説明をするでもなく、ザッザッと、学校の方へと歩いていく。

 ホシノは急に戻ってきた日常の空気に、緊張が解けて座り込んでしまっていた。

 

「ホシノ先輩」

「うへへ〜、ずっとピリピリしてたから、気が抜けちゃったよ」

 

 

 シロコが手を伸ばす。当然その手を取ってホシノは立ち上がる。

 どちらからでもなく、2人は数秒だけ抱き合い少し顔を赤らめると、先に行ってしまったビナーを追いかけて行った。

 

 

 

 

 

 

 教室に取り残された3人はほぼ同時に目を覚ました。お陰で誰もパニックを起こすことはなかったが、状況をよくのみこめていなかった。ここに来る途中でビナーが監視カメラもドローンも視界を閉じてしまっていたから、分かることは自分たちがいつの間にか気絶していたこと、ホシノとシロコが居ないこと、壁になんかでけぇ穴が空いていることだけ。

 混乱しながらも顔を見合わせると、壁だったものから外を覗き込む。そこには黒い外套の大人と、それを追いかける少し顔が赤らんだ2人の姿があった。

 

「なんだか、青春の1ページみたいですね!」

「あの大人に、明らかに危害を加えられた気がするんだけど!?」

「まあまあ、怪我はありませんでしたから」

「壁に大穴空いてるのよー!修繕費もタダじゃないのに……」

 

 それはもう姦しく騒いでいた3人のもとに、ビナーが戻ってくる。

 

「お早う子供達よ。幼きホルスはとうとう眼を醒ました。確かな眼を持ち、見詰めた先は漸く縛られた物ではなくなり、遂には鎖を断ち切った。死を内包した子供は利他的な在り方を見付け、それを成すだけの確かな勇気を手にしただろうね。これは、お前達にも期待することが出来そうだ」

 

 大人が何かを話している。多分、自分たちのこと、なのだろう。

 ビナー語の奔流に、3人の頭の上にはハテナが浮かぶ。浴び続けたホシノにもイマイチ理解出来ていないのだから、仕方の無いことであった。

 

 




短くて済まない……
やっと合流なんで、次から話を進めて行きたいです。
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