透き通った空に浮かぶ星 作:哲学の階司書補
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「高潔なる血よ、世界は変わったかな」
「力……って、こういうものなのね」
支配される者から支配する者となったアツコ。
何を言うでもなく、掌に血の塊を生み出し、形状を変え弄ぶ。尖らせて銃弾を象ったり、球状に丸めてみたり。
「既に鳥籠は取り払われた。然して、此処はお前にとっての新たな巣となることだろうね」
「ホシノ達にはとても良くしてもらったから、そうなるのは自然ね」
アツコは、様変わりした生活に思いを馳せながら血の球体を握りしめると、それは飛散することなく姿を消す。在るべき処へ還った、というのが正しいだろうか。
「先生、少し運動でも?」
「ああ、付き合おうか」
アツコは妖しげな笑みを浮かべ手を差し伸べる。
ビナーは差し出された手を取り立ち上がると、グラウンドへと出ていく。
その背中を追って着いていくアツコの足取りは、プレゼントを貰った子供のように楽しげであった。
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血と金の光が交錯する。
アツコは指を銃に象り、その先からは血の弾丸が咲き乱れる。
「弾切れも息切れも全てが無縁。この力は素敵ね」
涼し気な顔でその一つ一つを捌くビナー。血の一滴もその下へたどり着くことは無い。
わざわざ弾丸という形状に拘るアツコも、自ら攻撃に転じることの無いビナーも、お互い飽くまでもこれは運動、遊びにすら満たないものであるということを示しているようで。
演習中であったアリウスの面々、その中でも特にサオリは、アツコの変化に動揺を隠せずいた。
もちろんそんな見え見えの隙を逃すシロコではないので、容赦なく腹に銃床をぶつけてくる。
「よそ見は厳禁」
「かふっ……」
まともに一撃貰ってしまったサオリはその場に蹲ることしか出来なくなる。
「付け入る隙を与えないようにってことくらいは、アリウスで学んだと思ってたけど」
「全く容赦が……ないな。くっ……」
銃を支えになんとか立ち上がるサオリ。リーダーが先に落ちれば、そのチームは指揮を失いそのまま離散しうる。自身の立場の都合、上に立つものとしての立ち回りは十二分に教えられてきた。
しかし、ああも様変わりした姫を見せつけられては、冷静でいろという方が無理な話。大切に思い合う、家族のような仲であるからこそ。
「スクワッドは全滅、か。今日は随分とだらしなかったね」
「イメチェンしたくらいの印象だったけど、そんなに大きな変化だったんですか〜?」
息を切らすことなく平然としてるシロコとノノミに、ミサキは内心悪態をつく。
リーダーであるサオリの動揺で連携が崩れたのは事実とはいえ、にしたって2人して体力おばけすぎる。
チラリとアリウス生たちの様子を見ると、数人が接近戦でいい線行っているくらいで、ほとんどの生徒は伸されてしまっていた。
そんなこんなで、血鬼の姫の軽運動と、今日の実習の授業が終わったのだった。
なお、ヒヨリはホシノにユメ先輩コスをさせられていた。もはや抵抗する体力など、地獄の追いかけっこで残されてはいなかった。