透き通った空に浮かぶ星 作:哲学の階司書補
気が向いたら続き書きます
「求めなさい、そうすれば与えられる。探しなさい、そうすれば見つかる。扉を叩きなさい、そうすれば開かれるだろう。神を騙る訳では無いが、大人として、求められれば応えるのが道理だろう?」
「それでも、姫には平穏に過ごして欲しい」
「人の在り方を決めるのはいつだって本人が最後。己の敷いた線路を外からねじ曲げるのは傲慢とは思わないかい?」
「……それは、先生も同じじゃない……ですか」
「尤も、雨の粒1つが落ちたとして、川の流れは変わることがない。無用な心配だよ、それは」
サオリとビナーの議論は最後まで平行線を辿る。
どうしてもサオリは、アツコが強大な力を得たことを許容できなかった。
ロイヤルブラッド、それがアツコにもたらそうとしていた悲劇。そしてアツコを、家族を守り抜くと決心したあの日の自分。
「それでも私は……」
何度も先の見えない問答をビナーと交わしたサオリ。
結局結論が出ることは無かったが、ビナーの判断を信じることにした。
ベアトリーチェの呪縛からアリウスを救ったのはビナーだから。
強き者に付き従うことに変わりはないけれど、きっと先生は悪い大人じゃない。
姫は未だに血の檻の中にいるけれど、檻の鍵は姫の手の内だ。
血鬼には求血衝動が伴う、と聞いて心配したが、先生曰く「信仰と崇拝は熱き流れに、その雫は渇きを満たすだろうね」との事で、安心していいのかは分からないが、きっと大丈夫なのだろう。
アツコが血鬼の力を得てから、彼女は意図してサオリやミサキ、ヒヨリとかなりスキンシップを取っていた。自身にとっていちばん家族と言える存在と共にいることは衝動を抑えるのにはちょうど良かった。
ビナーから無闇に眷属を増やさないように、と忠告を受けた際に、血鬼の性質の説明も受けた。
血鬼にとって家族という概念はとても大きなものだと。
うっかり噛んで眷属にしないように、欲求を抑えるべく普通にキスとかしていた。なんならたまに舌を入れてた。
祖なる者でありながらも、強い意志を持っているアツコだからこそ衝動に打ち勝てており、第2、第3と血が薄まれば、打ち勝つのは困難になっていく。
無闇に血鬼が増えれば、再び排斥される側になることだろう。
それを理解していたアツコは、スクワッドを色んな意味でしゃぶり尽くしていた。
ホシノにさんざんむちゃくちゃされていたヒヨリは『苦しいとは口が裂けても言えませんけど、これもまた……』と遠い目をしながらも、色々と元気になったアツコの姿を喜んでいた。
ミサキは『姫が好きに振舞っている姿を見れるのは、私にとってひとつの希望なのかもしれない』と、スキンシップについては少しマグロ気味ながらも、アツコが好き放題していることを喜んでいた。
一方で、サオリの感情は困惑だった。
アツコの身体が丈夫になり、ベアトリーチェの呪縛からも解放され、自由に振る舞えることは喜ばしい。
しかし、2人は受け入れているが、そもそもアリウスの生徒はスキンシップなどの経験がそもそも少ない、ないと言ってもいいレベルだろう。
お互い空腹と寒さから身を寄せ合うことはあれど、愛や好意と言うものとはかなり縁遠い。
感情を殺し、全て虚しいものとして割り切り、兵士として生きてきたからこそ。
本来の先生と出会っていれば、固く閉ざされた心は、トラウマを抱えながらもゆっくりと解されて行っただろうが……
身内、それも己が最も大切な人から、突然そういうスキンシップを受けるというのはぐちゃぐちゃになった感情を更に混沌へとかき混ぜるには充分だった。
そして、そんなサオリの混乱と困惑、葛藤を見て、精神力+45になっていたアツコだった。