透き通った空に浮かぶ星   作:哲学の階司書補

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書き溜めてすぐ投稿するから期間が空くんですねー
今回はホシノ視点です


ホシノの覚悟

 

 

 私は力を得た。正確には無理やり得させられたんだけど。過去を見つめ直して、それに恐れ続けて。これはこれで、それはそれと、分別のつく心を手にした。後悔は今もしてる。ユメ先輩を喪ったのは自分のせいだって。故人に縋り続けるのが、悪だと断ずることは出来ない。ユメ先輩の事が頭を占めて、何にも本気になれなかった。私も後を追うつもりだった。砂漠で力尽きて、そのまま消えてしまいたかった。言い訳だった。私は怠惰だったから。でも、アビドスの再建、先輩の夢を叶える為にも、立ち止まってちゃいけない。

 

 だから、黒服と会うことにした。

 あいつは私の神秘が目当てだと言った。アビドス最高の神秘、暁のホルス。そう呼んだから。

 今の私はどう映るんだろうか、神秘の性質が変化したのは自覚してるけど、客観的な意見が欲しいという気持ちもあった。それが黒服なのは気に食わないけど。

 私が実験に協力することを条件に借金の一部を肩代わりすると言っていた。今なら分かる。莫大な借金の内一部を肩代わりすることになんの意味もない事が。少なくとも5億以上の借金に、利子まであるのに、何が今と変わるんだろうか。

 だから、全額の肩代わり、それをこちらからの条件として提示する。私の神秘と天秤に掛けた時、あいつはきっとこっちを取る。それに、取らなかったとしたら蹴ればいいだけ。

 

 先生がやってきた日の深夜、私は黒服の待つビルへと向かっていた。

 

「幼き子が斯様な時間に外出とは関心しないな」

 

 目的地はすぐそこ、という所で後ろから聞こえた声。全てを見透かすようで、心を溶かすそれ。振り返ると居たのはやはり先生だった。

 

「先生こそ、わざわざこんな所までどうしたの。この辺りは何も無いよ?」

 

 一般人ならヘイローもないのに、って言えたけど、ヘイローを持ってる私たちよりも強いから、先生を帰らせる言い訳にならない。

 

「……何か危機があれば呼ぶといい。私はお前の先生でもあるから」

 

 じっと私の目を見たあと、先生は踵を返し去っていく。何だったんだろうか。でも、少し安心できたような気がした。

 ふぅ、とひとつ息を吐く。覚悟を決めて、廃ビルへと足を進めた。

 

 

 

 

 

 

 指定された部屋に入ると、そこに待っていたのは黒い靄に白い亀裂が入ったような頭をし、黒いスーツを着た異形。私は黒服と呼んでいる。

 

「なんと…………なんと素晴らしい! 神秘の中に確かに恐怖が混じり合い、いや、飲み込まれ、いえ、克服……どう表したものでしょうか」

 

「出会い頭にそれ? 私はお前に神秘お披露目会に来た訳じゃない」

 

 

 私を視認した瞬間に興奮し出す黒服。嫌悪感程までは行かないけど、正直少し引く。

 でも、これならいける。今まで以上に私の神秘は、コイツの興味を引くだけのものであるという証拠でもあるから。

 

 

「黒服。今まではお前が私に契約を持ちかけて来てたけど、今回は私がひとつ提案をしに来た」

 

「おっと、失礼しました。私がしようとしていた実験の答えのようなものが目の前に現れてしまったものですから。そして……小鳥遊ホシノさん、あなたから交渉とは」

 

 

 表情の変化は分かりづらい、というかいつもニタニタ笑っているようにしか見えない。けど、少し驚いたような、そんな声色なのは分かった。まだまだ子供である私からアクションを起こしたのが意外だったのかもしれない。

 

 

「私のことを観察、検査することを許可する代わりにアビドスの借金の全てを肩代わりすること。過剰な干渉は契約違反とする。期間は私が高校を卒業するまで」

 

「直接実験することは叶わず、あくまで検査の範囲内を条件とする、ですか。それでいながらアビドスが抱える借金全てとは、随分と大きく出ましたね」

 

「お前にとって私がそれだけの価値があると踏んだ。それに、過去のお前の提案に乗って、借金を少し減らしたところで、なんの意味もないのは分かってる」

 

「よく分かりましたね。ククッ、貴方も少し大人になったんでしょうか」

 

「……悪い大人め」

 

 

 反吐が出る。甘く見える誘いでも、蓋を開ければこれだ。これは憶測だけど、私がアビドスを退学するとなると、正式な生徒会メンバーが居なくなる。もしそうしてたら、アビドス高等学校に、大きな隙を作ることになってた。また学校が危機に瀕すことがあれば、多分黒服は同じ契約を持ちかけただろうし、状況によっては、多分私は乗るしか無かっただろうから。

 

 

「元より、私の目的はホシノさん、貴方でした。砂漠に用があったカイザーとは目的物がアビドスにある。と言うだけの協力関係。いいですよ。乗りましょう。ああ、しかし。これは悪い大人としてのアドバイスですが、契約には自分がより有利になる内容を混ぜ込んだ方がいい。対等な協力関係を結ぶ契約でもないのであれば、見逃した相手が悪い。と言い払えてしまいますからね」

 

「私は悪い大人にはならない。必要のないアドバイスだよ」

 

「ククッ、そうでしたか。それは失礼しました。それでは、後日改めて研究所へと招待します。お支払いはその時に。あぁ、連絡は、モモトークでいいですかね。なんと言っても、あなたは学生、学業が本分ですから。定期テストと被っては目も当てられないでしょう?」

 

「うへぇ、お前からモモトークって単語が聞けるとは思わなかったよ」

 

 

 急にフランクになった黒服に少し困惑しつつもモモトークを交換する。アイコンがマスコット風のちびキャラ黒服なの、妙に可愛くて腹が立つ。

 私が後輩たちに出来る1番大きなことは、これで出来たかな。

 

 

「それではまた。会える日を楽しみにしていますよ。それと……」

 

「何?」

 

「せっかくですから、人間ドックもいかがですか? アビドスで受ける機会は無いでしょうから」

 

 無視して行くことにした。そんなキャラだったっけ、黒服って。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ホシノが部屋を出ていくと、ぽつり、と黒服は呟く。

 

「私の研究を真に理解していれば、その姿だけで9億程度、安いくらいというのに。まあ、せっかくの協力関係、有難く検査させてもらいましょうか」




先生の出番は……?
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